製品やサービスに対する市場のニーズは時間と共に変化していくので、中小企業・ファミリービジネスの駅伝経営としても、それまでの製品やサービスから新製品、新サービスに徐々に変えて継続していく必要がでてきます。発明、発見、イノベーションや新市場開拓のアイデアに現場で気づくのはやはり社員であり、その社員一人一人の日ごろの問題意識や主体性から生まれてくるものと思います。
今回のブログでは女性や外国人材など現場の人材の多様な問題意識とそれに基づくアイデアが商品開発や市場開拓に役立っている事例を紹介します。
1.女性が意思決定者と気づいたビジョンケア
コンタクトレンズブランドの「アキュビュー」で有名なジョンソンエンドジョンソンの子会社のビジョンケア社は日本を含め世界に展開していますが、当初日本での売り上げが伸び悩んでいた時期がありました。
売り上げ低迷の問題意識を持ったジョンソンエンドジョンソンが日本市場を調査したところ、日本の視力測定医や眼科医の半分以上が女性であることを発見し、ビジョンケア社の日本の営業部隊にもっと多くの女性を加えることを提案しました。
ビジョンケア社はその提案を受け入れて女性営業職員を増やした結果、売上は3倍に伸び、今や日本市場はビジョンケア製品の最大の市場に発展しています。
2.廃食油で「東京を世界有数の油田にする」というアイデア
染谷ゆみ氏は、高校卒業後のアジア放浪の旅で環境問題の顕著なネパールで強い問題意識を持ちました。その後、天ぷらなどに使った廃食油を回収して精製、工業原料として販売する家業の有限会社染谷商店に入社、自らが中心となり「東京油田プロジェクト」を立ち上げ、使用済み食用油(廃食油)を回収して大気汚染の原因となる硫黄酸化物が発生しないバイオディーゼル燃料などにリサイクルする環境事業を推進しています。:
染谷ゆみ氏は、「東京を世界有数の油田にする」というアイデアの下、都市の廃棄物を資源に変えるエネルギーの地産地消を目指されています。
3.最貧国の素材を高級グッズに仕上げる女性のアイデア
マザーハウスの社長 山口 絵理子氏も学生時代バッグパッカーとしてアジアをめぐり、最貧国の一つのバングラデシュで貧困問題に強い問題意識を持ったといいます。
そして地元の良質な革素材を見て、日本の女性が好む「軽くて色合いが美しく、高級感があるのにリーズナブルな価格」というコンセプトで次々とバッグなどバングラデシュ製の革製品をマザーハウスのブランドでリリースし、成功を収められています。
山口氏は途上国での生産にこだわり、かつ上質なモノづくりを掲げ、貧しい途上国の人達に世界に通用する一流の技術を伝え、豊かになって欲しいという思いの実現を目指されています。
4.老若男女向けデザインにこだわったアップルコンピュータ
最初のMacBookのデザインチームは専ら若い白人男性のエンジニアで、明らかにアメリカ独自の考え方で占められていたそうです。
アップルのダイバーシティオフィサーがこの当初のデザインを見て、問題意識を持ち、チームに対し老若男女の多様なデザインニーズを基にデザインをし直すように命じました。
新たに組まれたチームメンバーは、よりグローバルで、民族的に多様で女性も多く、世代も多様でした。 その結果生まれた製品は世界中の老若男女に愛用され、数十億ドルの売り上げをもたらしました。
5.インバウンド客を呼び込むアイデアをもたらした外国人社員
沖縄ツーリストは日本を訪れるインバウンド客が増えているのに、うまく取り込めていないことに問題意識を持っていました。そこで、同社に勤務する外国人社員だけでインバウンド客を呼び込む企画から商品化、プロモーション、実行まで一貫して行うチームを組成し、権限委譲した結果、成果を上げており、経済産業省「ダイバーシティー経営企業100選」を受賞しています。
6.リスクテイカーの外国人材
発明、発見、イノベーションが目立つアメリカですが、起業の中心にいるのが外国人材(移民)のようです。
アメリカでは移民の創業率が生粋のアメリカ人(米国内出生者)の約2倍に達します。新規起業家全体における割合は 約70〜75% 評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ(ユニコーン企業)の過半数(約55%)は、少なくとも1人の移民創業者を持っています。
世界で最も企業価値の高いNVIDEAの創業社長のジェンソン・ファン氏は台湾からの移民です。
Google、Yahoo、SpaceX、Tesla、AT&TやPfizerなどの有名企業の創業者も外国人材です。
外国人材は母国を離れ、文化の異なる地で生活するリスクを冒し、自らの志や夢に向かってアイデアを出し、人脈を広げ、努力し続けるところが大いなる成果につながっている様です。
7.若手の力
イスラエルでユニークな発明発見やイノベーション、スタートアップが生じやすい背景を社会・文化的に分析した『The Genius of Israel』(Dan Senor & Saul Singer共著、Avid Reader Press / Simon & Schuster出版)の中で、ある世界規模の社会研究結果を紹介しています。 82か国の130万人もの人々を対象にして行われたこの研究の結論として、アントレプレナーシップはその個人の年齢だけでなく、社会全体の年齢と強い相関関係があると示しています。また、社会の年齢が増すごとにアントレプレナーシップは減少する傾向があり、中央値年齢が37歳以下の社会は、それが41歳以上の社会の倍アントレプレナーシップが発揮されるとのことでした。
8.社員の多様性の大切さ
下図の左側は考え方が似通った均質的なメンバーによるアイデア探しのイメージで、右側は多様なメンバーによるアイデア探しのイメージです。時間をかけてアイデアを求める際に、社員の視点、考え方が均質的でなく、多様なほど、「宝」である新商品や新規市場を探し出す可能性が高い様子を示しています。
従来の男性管理職の視点はもとより、女性、外国人材、若手、シニア、その他社員の多様なバックグラウンドを生かしたアイデア出しをしていくことで中小企業・ファミリービジネスの継続と成長の種が見いだされやすくなるのではないでしょうか。

Write a comment