駅伝経営:外国人材にも襷(たすき)を渡すという選択肢

出生数最低値更新

前回のブログでは、2024年生まれの出生数を基に、20年後の労働市場の環境を予想しました。先週の報道では、2025年生まれの出生数がさらに減少したことが伝えられています。

NHKの報道によると、厚生労働省の発表では、去年1年間に国内で生まれた日本人の子どもの数は67万1,236人となり、2024年より1万4,937人減少しました。出生数の減少は10年連続で、1899年に統計を取り始めてから最も少ない数字となりました。

国立社会保障・人口問題研究所が3年前に公表した将来予測では、日本人の出生数が67万人台になるのは2040年と推計されていました。つまり、想定より15年ほど早く少子化が進行していることになります。

日本人の出生数は、最も多かった第1次ベビーブーム期の1949年には269万人余りでしたが、現在はその時と比べておよそ4分の1にまで減少しています。


都道府県別の状況

厚生労働省「人口動態統計」によれば、2024年の出生数は概ね下記のとおりです。

都道府県      出生数(概数)

東京都       約9.4万人

神奈川県      約5.4万人

大阪府       約4.8万人

愛知県       約4.5万人

福岡県       約3.4万人

鳥取県       約3千人

島根県       約4千人

高知県       約4千人

徳島県       約4千人

国全体の出生数が減る中で、地方の出生規模はさらに小さくなっています。また、ご承知の通り、地方から東京など大都市への人口流入も続いています。


地方で特に厳しくなる若手人材獲得

その結果、国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別推計によれば、秋田県、青森県、岩手県、高知県、島根県などでは、15〜24歳人口が2045年頃に現在より30〜50%減少する見込みです。

つまり、出生数が減るだけではなく、若年人口そのものが地域から消えていくという状況です。

この傾向は、現在の有効求人倍率、すなわち若年人材獲得競争のデータにも顕著に表れています。例えば、近年の有効求人倍率は以下のような水準で推移しています。

都道府県     有効求人倍率

福井       約1.8倍

富山       約1.6倍

石川       約1.6倍

岐阜       約1.5倍

東京       約1.3倍

つまり、地方では若者人口が少ない中で、その若者を取り合う企業間競争がより厳しくなっている状況が見えてきます。


企業規模が小さいほど高くなる新卒3年離職率

厳しい求人競争を経て何とか採用を果たしても、会社に定着してくれなければ意味がありません。

最新の厚生労働省データでは、大卒新卒者の3年以内離職率は33.8%です。つまり、3年後の定着率は約66.2%です。

企業規模別に見ると、そこには大きな差があります。

企業規模      3年以内離職率      3年後定着率

1,000人以上    約27%         約73%

100〜499人    約34%前後      約66%前後

30〜99人     約40%前後      約60%前後

5〜29人     約45〜50%      約50〜55%

5人未満      50%超         50%未満

厚生労働省の事業所規模別離職率データおよび近年の集計から整理すると、「規模が小さいほど定着率が低い」という傾向は一貫して続いています。

つまり、中小企業では次のような状況が生じています。

 

  • 採用しても、3年後には半数近くが離職する
  • 小規模企業では、2人採って1人残るかどうかという状況になる

 

すでにお伝えしているように、出生数減少に伴い、新卒者の労働市場参入規模は2040年に現在の6割程度に縮小すると見込まれています。

これと組み合わせると、2040年頃には中小企業の場合、現在の採用・定着者数の良くて半分以下しか確保できなくなる可能性があります。さらに、人員規模の減少が事業規模の縮小を招き、それがさらなる人員減少につながるという悪循環に陥る可能性すらあります。


2040年問題

今年2月3日の日経新聞朝刊は、「2040年、外国人材が経済左右 『人手不足1100万人』備えよ」というタイトルの記事を掲載していました。

ここで取り上げられている「2040年問題」とは、出生数が年200万人超だった「団塊ジュニア世代」が労働市場を「卒業」することを指しています。

出生数200万人超の世代が労働市場から退出する2040年頃に、新たに労働市場に参入するのは、出生数わずか60万人台の世代です。つまり、労働市場から出ていく人数と、新たに入ってくる人数のギャップが非常に大きくなることで、人手不足が一気に深刻化するという問題です。

同記事によれば、リクルートワークス研究所が2023年に公表した報告書では、2040年の労働供給不足が1,100万人に達すると試算されています。


2025年度の人手不足倒産は441件、従業員退職型も100件超

帝国データバンクによれば、従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産(法的整理、負債1,000万円以上)は、2025年度に441件発生しました。これは前年度の350件から約1.3倍の増加です。

年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しています。

業種別では、建設業が112件にのぼり、全体の25.4%を占めています。施工に欠かせない資格・スキルを持つ現場作業員や営業担当者の退職が相次ぎ、事業継続が困難になるケースが目立っています。

また、ドライバー不足や高齢化が深刻な課題となっている道路貨物運送業は55件でした。さらに、老人福祉事業22件、飲食店21件、労働者派遣業12件など、労働集約型産業を中心に、それぞれ業種別で過去最多を更新しています。

人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部などの退職を原因とした「従業員退職型」の倒産は118件となっています。

会社としてAIやDXの導入により省人化・省力化を進めたとしても、個々の業務で襷を渡す相手がいなければ、組織は成り立ちません。これは、組織の「継続」や「存続」が将来的に危機に陥りかねないことを示しています。

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出所:帝国データバンク

女性とシニアの労働市場参入・復帰の促進

これらの人手不足問題に対して、日本企業も手をこまねいているわけではありません。より多くの女性やシニアの方々の労働市場参入・復帰を支援する制度や環境整備が、着実に進んでいます。

今年3月8日の日経新聞朝刊では、「職場の女性活躍『前進』実感 働く男女1000人 日経アンケート」というタイトルで、日本の職場における女性の進出状況を報じていました。

特に、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)の中でも、「職場の女性活躍が直近1年で前進した」と感じる人が約4割にのぼっているそうです。

          5年前に比べ      1年前に比べ

大いに進んだ    19.6%         6.0%

ある程度進んだ   40.9%         35.6%

あまり進んでいない 22.7%         42.3%

全く進んでいない  9.8%          13.4%

職場が変わった   7.0%          2.7%

厚生労働省作成グラフ:労働力人口及び労働力人口総数に占める女性割合の推移

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出所:総務省「労働力調査」 「労働力人口の男女別構成比」は、厚生労働省雇用環境・均等局作成。

また、シニアに関する報道でも、同じ日経新聞の3月12日朝刊の記事によれば、2025年10〜12月に実施された郵送世論調査で「何歳まで働くつもりか」を尋ねたところ、次のような結果が示されています。

70歳以降も働くつもり  42%  このうち70〜74歳まで23%

75歳以上も働く     19%

65歳以上になってもこれだけの規模の就労者が働き続ければ、2040年に向かっての労働力人口の減少も、極端な落ち込みというよりは、なだらかなカーブを描く可能性があります。

労働力人口層およびシニア層の就労比率の推移

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出所:内閣府

外国人材にも襷を渡すという選択肢

ただ、上述の「人手不足倒産」の項目で触れた建設業界や運輸業界では、2040年どころか、今現在すでに深刻な人手不足に悩まされています。

5月28日付の読売新聞朝刊では、「輸送力確保外国人頼み」というタイトルで、ヤマトHDが来年から5年間でベトナム人の運転手を全国で最大500人採用し、物流大手SBSHDも10年以内に運転手の3割に当たる約1,800人を外国人にする計画であることを報じています。

また、1月6日付の日経新聞朝刊では、「α20億人の未来 新Made In Japan トヨタ×外国人、挑む融合」というタイトルで、日本経済を支える自動車産業での人手不足を報じています。

日経新聞が、車産業に必要な外国人労働者の比率を厚生労働省などの資料から試算したところ、α世代の多くが社会人になる2040年には、外国人労働者の比率を現在の3倍に当たる27%まで増やさないと、現在と同規模である年800万台の国内生産は維持できないとされています。その場合、生産規模は25%ダウンする可能性があると警鐘を鳴らしています。


おわりに

前回と今回のブログでは、中小企業・ファミリービジネスの「継続」や「存続」について、襷を渡す相手としての人手不足・労働力不足という問題を取り上げてきました。

また、その対応策として、女性やシニアの労働市場参入・復帰、そして外国人材の必要性について見てきました。

次回のブログでは、中小企業・ファミリービジネスの「成長」について議論していきたいと思います。

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