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日賑グローバルニュースレター第369号

1. 米国の消費者との共感力が問われているトランプ大統領

 

連邦政府が10月に公表した最新のインフレ報告書では、インフレ率は年率3%にまで加速しており、これは今年1月以来の高さであった

トランプ大統領がよく指摘するように、一部の品目の価格は下落している

ガソリン価格は最近1ガロンあたり3ドルを下回り、卵の価格も下がった

しかし、他の多くの価格はパンデミック前から二桁台の上昇を続けており、アメリカ人は住宅、医療、教育といった主要な支出が何十年も上昇し続けていることに苦しんでいる

昨年の選挙戦では、トランプは有権者のインフレ懸念を強調して政治的得点を挙げている。

大統領就任後、トランプは外国からの高価なプライベートジェットの贈り物をを受け取ったとの批判や、好ましくない人物の恩赦、ホワイトハウスの3分の1を取り壊した大改修など、通常の政治家なら致命傷になりかねない出来事でさえ、難なく受け流してきた

しかし今回の物価問題は様相が異なる

ワシントン・ポスト/ABCニュース/イプソスの最近の世論調査では、62%のアメリカ人が大統領の経済運営を支持しないと回答し、支持は37だった。

トランプの政治的強みが“天才的な実業家・金融の達人”というイメージに支えられていることを踏まえると、これは注目すべき数字である。

「彼はしばしば“別世界”に存在しており、多くの支持者は喜んでその世界に付き従う。

しかし、生活費の問題だけは、どれだけ熱心なトランプ支持者であっても、自分の世界を意識している」と、バイデン政権の経済諮問委員会議長を務めたジャレド・バーンスタイン氏は語る。

最近数週間で、トランプは食料品コストを下げるためにブラジル産コーヒー、果物、牛肉への関税を緩和し、自動車を安くするため燃費規制を後退させ、製薬会社と減量薬の価格を引き下げる合意を発表し、住宅ローンの月々の支払いを軽減する可能性がある50年ローンの構想まで打ち出した

ホワイトハウス関係者によると、大統領のアドバイザーたちは数か月にわたり、大統領に生活費問題についてもっと語り、頑固なインフレの中でも経済の進展をアピールするよう促してきたという。

しかし、トランプが卵やガソリン価格の下落、住宅ローン金利の低下、株価の最高値更新などを語る際には、「経済環境が一般家庭にとって依然として厳しい」という事実を認めない発言がしばしばある。

トランプの元経済顧問スティーブン・ムーア氏は、最近ではアメリカ人の中央値の家計所得が上昇しており、実際には生活の余裕が出つつあるとデータが示していると主張する。

しかし、人々は(自分の懐よりも)値上がりしている品目に注目する傾向があるという。

特に、トランプの経済政策の中心である関税の値上げや、その他の政策が有権者の生活コスト上昇と結びつけられるほど、彼の問題は大きくなる。

議会予算局(CBO)の元局長ダグラス・エルメンドルフ氏は、関税だけでなく、トランプが医療補助金の拡大に反対し、連邦準備制度理事会(FRB)に利下げを執拗に求めていることで状況を悪化させていると述べた。

バイデン前大統領も4年間の任期を通じ、高物価が経済はもとより、自身の政治的立場にも与える悪影響を和らげようと努めたが、成功を収めることはできなかった。 

物価に関する今後のトランプ大統領の言動が注目されますね。

 

2. 怒れる民主党支持層

 

最新のPewリサーチによると、連邦政府に対する民主党支持者の怒りは過去最高水準に達し、これまで共和党が記録してきた水準を上回った

1990年代後半から2000年代初頭にかけては、ワシントンに対して怒りを感じているアメリカ人は10人に1人程度に過ぎなかった時代もあった。

当時の調査では、連邦政府に対して「概ね満足している」と答えた人は、露骨に怒りを感じていると答えた人の3倍に上っていた。

今日では、民主党支持者は44%が「連邦政府に怒りを感じる」と回答しており、これは同研究所が過去に記録した最大の怒りの水準を大きく上回っている。

これまでの最高値は、トランプが一期目の最後に世界的なパンデミックへの対応を主導し、公民権活動家と公の場で対立していた2020年の春から夏にかけての頃で、民主党支持者のおよそ3分の1が政府に怒りを感じると回答した時であった。

一方、共和党支持者の怒りの最大値は38で、これは201310月、オバマ大統領が再選されてからほぼ1年後、議会共和党が政府閉鎖を強行したものの、自陣営への譲歩なしに終わった時に記録された。

政府に対する怒りや不満の単一の原因を特定するのは不可能だが、有権者の怒りが高騰し始めた明らかな転換点が約20年前に存在する。

それは、イラク戦争の死傷者が増える一方で、侵攻の名目とされた「サダム・フセインの大量破壊兵器の除去」が虚偽であったことが判明した頃である。

さらに、2008年の経済・金融危機が発生し、失業率が10%に達した際には、ケーブルニュースが当初の犯罪や訴訟中心の報道から、政治や政府に特化した報道へとシフトした頃も転換点といえる。

200610月、民主党がジョージ・W・ブッシュ大統領への大規模な反発の中で議会多数派を奪還する直前、Pewの調査で連邦政府に「満足している」と答えた有権者はわずか21だった。

Pewが質問を開始した1997年以来初めて29%を下回った瞬間となった転換点といえる。 

深く考えずにSNSで感情的に非難し合うことがアメリカの政治的分断を深めていることは間違いないでしょうね(ツイッター(現在”X”)がサービスを開始したのは20063月)。

一方、アンガーマネジメントで「怒りのメカニズム」として学ぶ「~はxxであるべき」と人々が信じる「べき」の期待が裏切られると「怒り」を生じるという説明からすると、有権者の連邦政府に対するあるべき姿への期待が裏切られた度合いが大きいとみるのが妥当なのでしょうね。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

 

(1)  中国・台湾

l  不動産関連の投稿を規制する中国政府当局

中国のサイバー空間規制当局である「国家インターネット情報弁公室(CAC)」の上海支局は、「不動産市場の先行きを悲観的にあおり、住宅政策を歪めて解釈する」との判断から不動産市場の動向に不満を示すようなオンライン投稿となる数千件を削除したと発表している。

CAC上海支局は11月14日以降、住宅局やインターネット警察と共に取り締まりを開始し、SNSである「レッドノート」や動画共有プラットフォームである「ビリビリ」を含む交流サイト(SNS)上で4万件以上の投稿を削除してきている。

また7万件以上の不動産関連アカウントと1,200件のライブ配信ルームも処罰してきている。

それだけ、不動産市場の悪化が顕在化している証拠であるとも見て取れる。

 

l  TSMCの米国生産比率上昇に懸念を見せる台湾の地政学者

台湾積体電路製造TSMCによる米国への投資拡大は、台湾の半導体産業に於ける地位を弱めるのではないかという懸念が台湾国内では出ている。

半導体を巡る地政学を長年研究してきた台湾の専門家たちの中には、米国がTSMCに多大な圧力をかけており、先端プロセスの米国生産比率を高めるよう要求しているとの指摘も出ている。

TSMCは対米投資を遅らせると言ったような戦術を取る可能性もあるが、長期的には台湾への依存度を間違いなく低下させるだろうとの見方もしている。

頼清徳総統は、台湾国内投資や人材育成も継続するようにとTSMCに要請はしているが、今後の動向をフォローしたい。

 

l  米国進出の足掛かりを得た台湾連華電子(United Microelectronics Corporation、UMC)

台湾の半導体受託製造企業である連華電子(United Microelectronics Corporation、UMC)は台湾積体電路製造TSMCに次ぐ世界第2位の規模を持つ大手ファウンドリーであり、1980年に台湾初の半導体企業として設立され、現在は成熟プロセスに注力しながら、シンガポールや米国への製造拠点拡大も進めている。

そのUMCは、高電圧、電力、センシング半導体に特化した米国のウエハファウンドリであるPolar Semiconductor, LLCPolar)と覚書(MOU)を締結したと発表している。

両社は、自動車、データセンター、民生用電子機器、航空宇宙・防衛などの主要アプリケーション分野をターゲットとした8インチウエハ製造に於ける米国での協力機会を共同で検討し、米国に於ける半導体供給能力を強化したいとしている。

 

l  最先端半導体に関する情報の不正入手で台湾高検に起訴された東京エレクトロンの台湾子会社

台湾高検は12月2日、半導体製造装置大手の日本の東京エレクトロンの台湾子会社を国家安全法違反などの罪で起訴したと発表している。

半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)から最先端半導体に関する情報を不法に入手したとして東京エレクトロン子会社の元従業員らが同罪で起訴された事件で、監督責任があったとしている。

 

(2)  韓国/北朝鮮                                  

l  好調な韓国のオンライン・ショッピング

韓国の国家データ処が発表した「オンライン・ショッピング動向」によると、10月のインターネット通販の取引額は前年同月対比4.9%増の22兆7,103億ウォンとなり、10月としては過去最高を記録している。

商品群別では、飲食サービスの取引額が同13.6%増加している。

国家データ処は地方自治体が運営する出前アプリでの民生回復消費クーポン・地域貨幣(地域デジタル通貨)の利用や割引イベント実施の影響で増加したと説明している。

オンライン限定で車両を販売している米国の電気自動車(EV)大手テスラの新モデルの販売増が続いた影響で、自動車・自動車用品も同38.6%増加した。

秋夕(チュソク、旧暦8月15日収穫祭)の連休の影響などで飲料・食料品は同4.4%増加している。

一方、秋夕の連休が例年より長かった影響で公演・コンサートの回数が減り、文化・レジャーサービスの取引額は22.2%減少した。

取引額全体に占める割合は、飲食サービスが15.7%で最も高く、次いで飲料・食料品(13.4%)、旅行・交通サービス(12.8%)などの順である。

モバイル・ショッピングの取引額は17兆7,143億ウォンで同5.9%増加した。

モバイル・ショッピングはネット通販の取引額全体の78.0%を占めている。

 

l  徐々に海外からの著作権収入を増すK-POP

韓国音楽実演者連合会(音実連)は12月4日、今年海外から徴収した著作隣接権使用料が13億4,000万ウォンとなり、前年対比約193%増加したと発表している。

音実連は増加の理由について、「昨年、米国の著作隣接権管理団体のサウンドエクスチェンジと相互管理契約を結び、実演権料約9億ウォンが追加徴収された為である」と説明している。

米国でのK―POPの人気が高まったことで海外徴収額も増加したとしている。

音実連は日本、英国、フランス、ドイツなど24カ国の著作隣接権管理団体と協力システムを構築したほか、国際音楽家権利連合(IMARA)の創立会員として活動している。

音実連のキム・スンミン専務理事は、「今後もグローバルパートナーシップを強化し、実演家の権利保護と収益拡大に向けて努力する」ともコメントしている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,472.47(前週対比-5.00)

台湾:1米ドル/31.27ニュー台湾ドル(前週対比+0.11)

日本:1米ドル/155.22(前週対比+0.91)

中国本土:1米ドル/7.0699人民元(前週対比+0.0051)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):4,100.05(前週対比+173.46)

台湾(台北加権指数):27,980.89(前週対比+354.41)

日本(日経平均指数):50,491.87(前週対比+237.96)

中国本土(上海B):3,902.808(前週対比+14.212) 

 

  1. 中東フリーランサー報告41 

 

三井物産戦略研究所の元研究員の大橋誠さんから掲題の報告を入手しましたので共有致します。 

大橋さんからは以下のメッセージを頂いています。

 

今年は新シリアの登場で始まりました。一方で悪化の一途を辿るばかりのガザ戦争は、レバノンからイランに飛び火し、遂にはイスラエルのイラン核施設攻撃に米国が参戦すると言う、以前からの想像が現実となりましたが、結果として「シーア派の三日月」はほぼ新月となり、その輝きを失いました。

そして先月、ガザ戦争が大きな転機を迎えました。いずれもイスラエルが中心となっての「自己防衛」と言う名の暴力の拡散が、膨大な犠牲者を生んでの一方的圧勝に国際世論の非難が集中し、イスラエルが孤立する中、結局トランプが強引な解決を持ち込み、イスラエル一強と言う「きなくさい落ち着き」の中で年越しを迎えることになりそうです。

後世から見れば、歴史的には中東地政学図が大きく動いた2025年でしたが、その割には石油価格が動かない2025年でもありました。「中東地政学=石油危機」と言う構図が、過去の常識に変わる転機の年となるのでしょうか。

今やトランプの関心もすっかりウクライナ戦争に移り、ウィトコフとクシュナーの中東チームがトランプ外交の「成功体験」を象徴するかのようにモスクワに乗り込みましたが、思うようにはなっていません。結局ウクライナ問題が片付かなければ、それをトランプは「ガザの成果」で覆い隠し、自らの「成功」を強弁するつもりなのでしょう。ノーベル平和賞を狙って・・・。

一方こうした陰で着々と変化しつつあるのがサウジアラビアです。イランは弱体化し、イスラエルとの間には米国を一枚かませ、一方でOPECプラスを通じたロシアとの関係も維持することで、むしろ地政学的変化をオフセットさせて距離を置き、ビジョン2030の追求に専心しているかのように見えます。これが来年以降さらに加速すれば、中東の見え方は大きく変わることになるのかも知れません。日本の中東観にも根本的な見直しが求められてくるのではないでしょうか。

そうした期待感(不安感も半分)の中で、皆様良いお年をお迎えください。

 

大橋誠

 

 

 

 

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