1. 中小企業の雇用と、個人消費市場が冷え込むアメリカ
アメリカの中小企業の雇用緊縮と消費者の消費マインドの低下の様子をワシントンポストが報じた。
専門家によると、移民取り締まりから関税に関する断続的な政策まで、トランプ政権の流動的な政策形成が、企業の一部に一種の麻痺状態を生み、前に進むための戦略を立てることを難しくしているという。
政府閉鎖の影響で、最近2回分の米国雇用統計も発表されていない。
バンク・オブ・アメリカ・インスティテュートによる中小企業の採用指数は、2024年平均と比べて7月に続き、9月も7%低下した。
従業員500人未満の小規模・中規模企業は、10月に3万1,000人の雇用を削減したと、給与計算処理会社ADPが水曜日に発表した。
アウトプレースメントおよびエグゼクティブコーチング企業のChallenger, Gray & Christmasが、先月の人員削減が15万3,000人超に達し、前月比183%増となったことを明らかにした。
Challenger社の推計によると、今年はすでに約110万件の解雇が発表されており、UPS、Amazon、Intel、Microsoft、Procter & Gambleなどの大規模な人員削減も含まれている。
不確実性は消費者にも反映されており、ミシガン大学の消費者態度指数は10月に過去最低水準近くまで低下した。
特に、8月に導入された800ドル未満の商品の輸入税免除(「デミニミス」制度)の閉鎖が響いている。
現在の輸入税や、自動車部品や金属など幅広い輸入品に対する新たな関税は、米国向け製品を製造する企業の負担を増やしている。
フロリダ州ムーアヘイブンにあるMaxant Metals社は、エクアドル、ブラジルなどからアルミニウムを輸入し、フロリダ中部にある1万平方フィートの鉄骨工場でブラケット、バックル、サンルームやオーニング用部品、ホンダやカワサキのオフロード車向け金属プレートなどに加工している。
オーナーのデイビッド・リード氏は、新しい部門を立ち上げ、カーポートや屋根向けの3インチパンを製造するために、もう1名の従業員を採用したいと考えていた。
しかし、今年導入された輸入アルミニウムへの新関税が収益を圧迫し、中国から購入した新しい機械にも関税がかかった。
彼は雇用を維持する一方で、最近パートタイム従業員を1名追加し、シフトの穴埋めを行っている。
ただ、全体として、関税負担の増加によって自身がより多くの作業を担うことになり、事業拡大の機会も減っていると言う。
わたしが関わっている米国向けの日本からの越境ECビジネスも、デミニミスルール撤廃により、9月以降15%の関税がかかり、アメリカの消費者の買い控えの動きが見えてきています。
これが今月28日のブラックフライデーや12月1日のサイバーマンデーの大型ショッピング期間にどのような影響を及ぼすのか、あるいは買い控えのストレスをその期間に一気に晴らすのか注目されます。
2. 次期大統領選共和党候補占い
昨年の大統領選から1年が経ったところだが、ワシントンポストが早くも2028年の共和党大統領候補占いの記事を掲載した。
トランプが約10年にわたり保守思想を支配し、再定義してきたことを踏まえると、次の共和党のリーダーがMAGA(Make America Great Again)の価値観を維持しなければならないことは、ほぼ間違いない。
以下は、現時点での2028年の共和党予備選に向けた本命、対抗、穴馬である。
ただ、4年前の時点では共和党支持者がトランプを2024年選挙の本命視していなかったことを踏まえると、今後様々なサプライズが入り込む余地もある。
<本命>
副大統領 JD・ヴァンス:
ヴァンスは自らをトランプと差別化するような動きをほとんど見せていない。
自らの立場を翻す必要がある場合でも政権の政策を擁護してきた。
彼は政府閉鎖問題や、保守活動家チャーリー・カークが殺害された後に批判者を攻撃した件など、民主党との争いで主導的な役割を果たしている。
共和党支持者は、そうした姿勢を好意的に受け止めている様にみられる。
9月のYouGov調査では、彼は2028年に投票を検討する候補者のトップに立った。
41歳と若く、このリストで最年少であり、歴史上でも最も若い副大統領の一人であるため、共和党政治における彼の将来は長いものとなる可能性がある。
マルコ・ルビオ:
国務長官のルビオは、ガザ和平協議、イラン空爆(当初はトランプ支持層の一部を動揺させた)、そして物議を醸す対外援助削減など、重大な国際ニュースを主導してきた。
2028年候補としての早期の支持率は高くはないが、トランプは頻繁に彼の名前を後継候補として挙げている。
「マルコは素晴らしい」とトランプは語り、さらにヴァンスとルビオについて「この2人に対抗して出馬する者がいるか分からない。もし2人が組めば、止めようがないだろう」と付け加えた。
<対抗馬>
ドナルド・トランプ・ジュニア:
トランプ氏の長男は、公職経験はないが、父親の助言役であり側近でもある。
彼は最近、自身の出馬意欲について語りつつ、「その“呼びかけ”は確かにある。父は共和党を本当に変えたと思う。今や“アメリカ・ファースト”の党、つまりMAGAの党だ」と述べ、自身こそが正当な後継者だと主張しているように見える。
ロン・デサンティス
フロリダ州の社会保守派で闘争的な共和党知事デサンティスも、YouGovによれば、共和党寄りの有権者が予備選で投票を検討すると答えた候補者の一人である。
彼は2024年予備選でトランプに挑み、その後もFoxニュースや保守系イベントで存在感を保っている。
知事としての任期は2027年に終了するため、公職に就かない期間に大統領選の機運を作らなければならない。
他にテッド・クルーズ上院議員も対抗として掲載。
<穴馬>
トランプ自身?
トランプは「3期目にも出馬したい」と述べたことがある。
「(3期目を認めない)憲法は非常に明確だ」と、ジョージタウン大学の憲法学者ジョシュ・チャフェッツは語る。
たとえ権力維持のために憲法危機を引き起こすつもりだったとしても、議会の最も忠実な支持者の一部が彼を支えない可能性もある。
トランプは下院議長マイク・ジョンソン(ルイジアナ州選出)と非公開で話し合った後、記者団に対し、「明らかに、私は出馬を許されていない」と述べた。
さらに、2024年の勝利時点で彼は「史上最年長の当選大統領」であり、2028年には82歳となる。
それでも、かつてない形で大統領権限の拡大を推し進めているトランプの“3期目”発言は、完全に無視できるものではない。
他にクリスティ・ノエム国家安全保障長官、ロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官ほか
こうした観測記事が3年も前の今の時点から掲載されること自身、アメリカ人の選挙好きを表しているのか、それともトランプ劇場の注目度の高さの現れと言えるのか、何とも言えませんね。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)で初めて演説を許された台湾
欧州などの各国議員達が運営する「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)の年次会合が11月7日、ベルギーの首都・ブリュッセルの欧州連合(EU)の欧州議会で開催され、台湾のシア・オメイチン副総統が演説したとIPACが発表している。
EU加盟国の中に台湾と外交関係を締結している国は無いが、IPACによると、台湾の高官が欧州議会で演説するのは初めてとなり、大変画期的な出来事となった。
l 台湾との関係を深めるエヌビディアのジェイソン・ファンCEO
エヌビディア台湾本社が設置され、同社CEOのジェンスン・フアン氏はプライベートジェットで台南を訪問した。
フアン氏は台湾積体電路製造TSMCの台南3ナノファブを訪問し、TSMC副社長の王氏から直接出迎えを受けている。
エヌビディアは韓国と台湾を取り込み、経営基盤の安定性を図る方向で動いていると見ておきたい。
l 中国国際輸入博覧会開幕
中国政府は、各国企業が中国本土市場に売り込みたい商品や技術を展示する中国本土最大級の見本市である、
「中国国際輸入博覧会」を開催しているが、今年も11月5日に上海で開幕した。
10日まで。アフリカからの出展企業が前年から8割増えるなど、グローバルサウスからの出展増加が目立つと報告され、開発途上国の取り込みの現状が分かる状態となっている。
もちろん、日本からもパナソニックホールディングス(HD)や花王など300社以上が出展し、開発や生産の現地化を進め、過当競争に陥る中国市場を攻略しようとしている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 事実上の「中国侮辱処罰法」法案を提出した与党「共に民主党」
韓国与党・共に民主党議員達は、特定の国や国民、人種を侮辱すれば懲役刑に処すと定めた法案を提出した。
代表で提出した議員は、「最近は中国ヘイト(嫌中)集会の参加者たちがヘイト発言を乱発し、不正選挙に中国が介入したなどと虚偽の内容を訴えている」と主張している。
事実上の、「中国侮辱処罰法」を制定するという方向に動いていると見られるとの声も韓国国内では出ている。
処罰は最長で5年の懲役刑とされており、共に民主党は、例えば学校周辺でのヘイトスピーチやそれを助長する横断幕設置を禁じる法案も準備中としている。
親中的な動きを見せると以前から言われてきた共に民主党の動きが露骨に出始めたとの指摘もある。
l 利益を拡大させている韓国防衛大手4社
国内大型防衛産業4社の本年第3四半期の営業利益は1兆ウォンを突破すると見込まれている。
これら企業が受注した製品が安定的に輸出され、史上初めて年間営業利益合計額が4兆ウォンを超えるという期待も出てきている。
これら4社は、第2四半期に計1兆2,848億ウォンの営業利益を記録している。
上半期の累積は2兆2,088億ウォンとなっており、昨年上半期(7,508億ウォン)より増加している。
こうした一方。韓国政府・国防部は、北朝鮮への監視強化を大きな目的として、5機目の偵察衛星の打ち上げに成功したと発表している。
国防部は11月2日、韓国の軍事衛星がスペースエックス社のロケットで米国フロリダ州から打ち上げられ、予定の軌道に入ったと発表している。
l 中国の製造業の急速な追い上げに警鐘を鳴らす韓国製造業界
韓国の主要経済団体の一つである大韓商工会議所は、韓国の製造業370社を対象に調査した結果、「自社が中国のライバル企業よりも技術力が優れている」と回答した企業は32.4%に留まったとしている。
45.4%は、「技術競争力の差はない」とし、22.2%は、「むしろ中国がリードしている」と回答している。
韓国企業が低価格製品の代名詞だった中国を今では技術大国と認識していることを示す結果となった。
2010年に実施した同様の調査では、韓国企業の89.6%が、「自社は中国を技術でリードしている」と回答していたが、今回の調査結果は対照的な結果となった。
15年間で韓国国内企業の半分以上が中国に技術力で追いつかれたと感じていることとなる。
韓国の強みとされてきた生産速度でも中国に押されているとされている。
中国のライバル企業の生産速度が速いという回答(42.4%)は、韓国が速いとの回答(35.4%)を上回った。
中国製品の価格競争力は当然圧倒的となる。
回答企業の84.6%が自社製品が中国製品より割高と答え、うち半分以上(53%)は中国製品が30%以上安いと回答している。
世界貿易機関(WTO)傘下の国際貿易センターの資料によると、中国製半導体の価格は韓国製品の約65%となっており、電池、繊維、衣類でもそれぞれ韓国製品の73%、75%に留まっている。
大韓商工会議所は中韓の技術逆転の原因として、中国政府主導の巨大投資と柔軟な規制を挙げている。
中国が1兆8,000億米ドル規模の巨額の補助金を投入し、企業を支援しているのに対し、韓国は税額控除に依存している。
更に、韓国は企業規模が大きくなるほど控除率が低下する逆進的構造となっている。
大韓商工会議所のイ・ジョンミョン産業革新本部長は、「韓国製造業の競争力低下を認め、我々が得意とする産業分野に集中すべきである。
企業がより多く投資を行い、技術力を育成出来るように成長指向の政策に転換する必要がある」とコメントしている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,455.84(前週対比-28.55)
台湾:1米ドル/30.97ニュー台湾ドル(前週対比-0.27)
日本:1米ドル/153.40(前週対比+0.75)
中国本土:1米ドル/7.1219人民元(前週対比-0.0084)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,953.76(前週対比-153.74)
台湾(台北加権指数):27,651.41(前週対比-581.94)
日本(日経平均指数):50,276.37(前週対比-2,134.97)
中国本土(上海B):3,997.556(前週対比+42.766)
- 中東フリーランス報告 第40号
三井物産戦略研究所の元研究員の大橋誠さんから掲題の報告を頂きましたので共有させていただきます。
大橋さんからは以下のメッセージを頂いております。
しばしご無沙汰いたしましたが、中東フリーランサー報告をお送りします。
三井物産退職後、シリーズ名も新たにお送りして来ましたが、5年間をかけて、漸く40号を迎えました。
本号は、先月のガザの人質全員解放のCNN中継を見ながら書き出しました。
自分がイラク人質から生還した日を思い出し、つい感傷的な内容になってしまいましたが、そうした中で、今回のトランプの「20ヵ条要求」の内容をしっかり読み込もうと思ったのが本号の骨子です。
今やメディアの注目は、ガザの停戦がいつ破られるかに固唾をのんでいる感じですが、まずは今回の「停戦」に至った原点を知ることも、今後の情勢を見る上で、意味があるのではと思います。
いつもの通り、お時間ある時にご笑覧ください。
大橋
