1. AI新市場創出に向けがむしゃらに働く米国のスタートアップ企業
読者は「996」という働き方をご存じだろうか。
これは中国で広まった言葉で、午前9時から午後9時まで、週6日働くという厳しい勤務スケジュールを指す。
生成AIの登場を機に勃興するアメリカのスタートアップ企業が996で働いている様子をワシントンポストが報じた。
これらのAIスタートアップ企業では従業員一人ひとりの労働時間を記録せず、中には頭をリフレッシュするために森の中を散歩するなどの休憩を取っている企業もあるという。
この企業の創業者は「仕事に“中毒”になっている人材」を採用したいと考えている。
「多くの人が“仕事”と捉えるようなことを、僕は仕事とは思わない」と24歳の彼は語る。
「まるでビデオゲームのようなもので、僕たちは一日中でもこれをやっていられる」
インターネット勃興期の90年台にGoogleやAmazonといった巨大テック企業を生んだ“グラインド文化(過酷な労働文化)”が再び戻ってきている。
AI競争が激化する中、シリコンバレーやニューヨークの多くのスタートアップ企業が「ハードコアな働き方」を生活様式として掲げ、労働時間の限界に挑み、それぞれが目指す市場で最初のプレーヤーになるためにスピードを求めている。
中には採用過程で「996」を美徳として宣伝し、企業の“グラインドスコア(過酷労働度)”をつけているところもある。
「生成AIの登場によって、巨大企業がまた誕生することは誰もがわかっている。だからスタートアップは『自分たちがその一社になれるか試そう』と言って、これまで以上に努力している」と語るのは、カリフォルニア大学バークレー校のスタートアップアクセラレーター「バークレー・スカイデック」のエグゼクティブディレクター、キャロライン・ウィネット氏。
「AIで最初に構築した者が市場を支配する。そしてそのチャンスの窓は2~3年しかない。だから、他の誰よりも速く走らなければならない」と、ベンチャーキャピタル企業ライフXベンチャーズのマネージングパートナー、イナキ・ベレンゲール氏は語る。
サンフランシスコ拠点のAIスタートアップ「Sonatic」でも、グラインド文化の中で、食事とジム通いそしてピックルボールの時間を確保しているとCEOのキンジャル・ナンディ氏は述べる。
ナンディ氏は最近、X(旧Twitter)上で週7日出社勤務を条件とする求人を投稿した。
彼によれば、1日10時間労働は長く聞こえるが、同社では最初の採用者にハッカーハウスでの無料宿泊、フードデリバリーのクレジット、出会い系アプリ「Raya」の無料サブスクリプションなどの特典を提供しているという。
同じくサンフランシスコのAI企業「Cognition」は、買収によって参加した新しい従業員に長時間労働の覚悟を求めた。
CEOのスコット・ウー氏はX上で、「週末も常に働いており、夜遅くまでの作業で最高の成果を出すことが多い」と述べている。
ニューヨークのベンチャーキャピタル企業Avenirのパートナー、ジャレッド・スリーパー氏は、最近X上で公開企業のソフトウェア会社を対象に「グラインドスコア」をランキングし、その内容が一気に拡散した。
就職情報サイトのGlassdoorのデータを用いて、従業員が会社に対してポジティブな展望を持っている割合と、ワークライフバランスに対する評価を比較している(数値が高いほどグラインドスコアは高い)。
「996の考え方には、『偉大なことを成し遂げるには膨大な努力が必要だ』という前提があります。それはトレードオフを承知の上で自ら選ぶ生き方なのです」とスリーパー氏は語る。
しかし、元創業者やベンチャーキャピタリストの中には、「996」型の労働文化を美化することは、燃え尽き症候群を招き、優秀な人材を遠ざけると警鐘を鳴らす人もいる。
経験豊富な労働者ほど、無限に働くことを望まないからだ。
「実際のところ、長時間労働は仕事よりも先延ばしを増やすことの方が多い」と、ベンチャーキャピタル企業Menlo Venturesのパートナー、ディーディー・ダス氏は述べる。
人間の脳が創造的な働きをするためには、リフレッシュが不可欠だという。
AIスタートアップ「Edexia」のCEO、ダニエル・ギボン氏にとっては、チームメンバーが燃え尽きたり体を壊したりせずに、自分の限界を押し広げる方法を学ぶことが鍵だという。
22歳のギボン氏は、ほとんどの週で午前4時から午後6時半まで、週7日働き、コーディング、顧客との会議、戦略立案を行っている。
しかし、家族や恋人に会う時間を取り、散歩にも出かけ、ときには自然を眺めながら屋外で仕事をすることもある。
「すべてを正しく最適化すれば、メンタルもフィジカルも含めて、自分の身体をかなりのところまで追い込むことができるのです」
今の日本では“ブラック”の名の下に、社会的にも法的にもたたかれそうな働き方ですが、「ワークライフバランスを忘れて働く」と宣言された新首相の下、政権与党は996で頑張ってほしいものです。
2. ラインマン(電線工)の技能を競う国際ラインマン・ロデオ
10月18日土曜日にカンザス州ボナー・スプリングスで開催された「国際ラインマン・ロデオ」の中のハートマン救助競技の一シーン
(写真:キャロライン・オドノバン/ワシントンポスト)
ワシントンポストによると、長年ほぼ横ばいだった電力消費量がAIブームで近年急増しており、今後4年間の負荷予測はほぼ倍増しているという。
この電力需要増によって、電線をつなぐために電柱を登るという危険を伴う作業を行う男女のラインマンたちに注目が集まっている。
米国労働統計局(BLS)は、この職業は今後10年で7%の成長が見込まれると予測している。
ラインマン・ウーマンたちが技を競い合う国際ラインマン・ロデオという競技会は以前からあったが、かかる電力需要増大の中で従来になく注目が集まっている。
今回の会場のカンサス州ボナー・スプリングスには、高さ約40フィート(約12メートル)の木製電力配電柱がずらりと並び、吊るされた電線や、救出を待つゴム製の人形(マネキン)があらかじめ設置されていた。
審査員の一人であるジョン・モーソン氏は、この40年続く大会について「これは私たちにとってのスーパーボウルだ」と語る。
出場者はチーム単位で参加し、さまざまな競技に挑戦する。
中には、電柱の頂上に吊るされた袋から卵を取り出し、それを口にくわえたまま割らずに地上へ降りるというレースもある。
昨年からは、現役ラインマンの子どもたちを中心にした子ども向けの部門も新設され、将来この業界で働くきっかけにしてほしいという願いが込められている。
「子どもたちがブルーカラーの仕事にワクワクするようにするのは本当に難しい」とミズーリ・バレーJATC(中西部全域の学生を対象にしたラインマン養成学校)のモバイル研修アシスタントディレクター、リー・コンデュシー氏は語る。「だからこそ、こういった競技で若いうちにその“種”を植えたい。自分の親の仕事を誇りに思ってほしい」
電線を吊り下げ、維持する作業は過酷で危険だが、報酬は悪くない。
米国労働統計局によれば、2024年時点で上位の稼ぎ手は年間12万6,000ドル(1,900万円)以上を得ているという。
トランプ2.0で再生可能エネルギーサイト新設が下火となり電線網新設もそれほどでないと思われたが、AI化に伴うデータセンター新設とその電力需要急増は当分の間ラインマンを必要とし続けるのでしょう。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l バルク海運市場のパニック化を懸念する台湾
台湾国内では、世界のバルク海運市場は、米国と中国本土が船舶に対して相互に港湾使用料を課したことによって、市場のパニックが発生しているとの見方が出ている。
台湾業界関係者は、世界のケープサイズ船の約70%が中国本土向けである為、バルク船が中国本土の港への入港を躊躇し、混雑を引き起こし、市場の需給を混乱させ、既に運賃の高騰に繋がっていると指摘している。
l 来年過去最高の設備投資を見込む業績好調のTSMC
台湾積体で露製造TSMCは2ナノ生産能力が徐々に立ち上がってはいるものの、供給が不足している為、Apple、AMD、Qualcomm、MediaTekなどの主要顧客は来年の2ナノ生産能力を想定して既に全て予約しており、先端パッケージのフル稼働に繋がっている。
業界では、TSMCの決算説明会で好材料が発表されるのではないかと楽観視している。
そして、来年の設備投資は今年を上回り、過去最高を更新する見込みとなっている。
2026年の売上高は3兆ニュー台湾ドルを超えて、過去最高を更新するのではないかとの見方も出ている。
尚、TSMCの本年9月単月の売上高は前年同月対比31.4%増の3,309億ニュー台湾ドルで、同月として過去最高を記録、またこれにより、本年7〜9月期:売上高は前年同期対比約30%増の9,899億ニュー台湾ドルとなり、四半期ベースでの最高を更新している。
こうした中、TSMCは日本の熊本県で予定している第2工場について、決算説明会で、「建設が始まっている。量産の開始時期は、顧客の需要と市場状況次第である」と説明したと報告されている。
l 米国との輸出入が減少を続ける中、輸出総額は増大している中国
中国政府・税関総署が発表した9月の貿易統計(米ドル建て)を見ると、米国向けの輸出が前年同月対比27.0%減の343億米ドルに留まり、減少幅は8月の33.1%減から縮小したものの、米国のトランプ政権の対中追加関税の影響はなお続いており、回復の兆しは見えていないと見られている。
対米輸出が前年同月を下回るのは、米中間で関税の掛け合いがエスカレートした本年4月以来、6カ月連続となる。
米国からの輸入も7カ月連続で前年同月を下回っており、9月は16.1%減の114億米ドルであった。
対米輸出から輸入を差し引いた、中国の米国に対する貿易黒字も31.5%減の228億米ドルとなっている。
米国は4月、累計145%の対中追加関税を発動、中国本土の対米関税も125%に達していたが、5月に米中閣僚級協議での合意に基づき双方とも115%ずつその関税を引き下げたが、対立の火種は残っており、両国間の貿易は大きく落ち込んだままとなっている。
トランプ大統領は11月から、再び中国本土に100%の追加関税を掛ける、また中国本土船の入港には高いチャージをすると宣言しており、両国間の通商は今後更に細る可能性もある。
一方、中国の輸出総額は前年同月対比で8.3%増の3,285億米ドルと、7カ月連続で前年同月を上回っており、米国向け以外の輸出が増えている。
東南アジア諸国連合(アセアン)向けが15.6%増、欧州連合(EU)向けが14.1%増と引き続き高い伸びを示しており、アフリカ向けは56.4%増と大幅増となった。
尚、日本向けは微増の1.8%増となっている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 消費市場の重心が若手からシニアに急速に移転している韓国
低出産・高齢化が進展、70代以上の人口が史上初めて20代の人口を追い越した韓国となった。
同時に高齢層が消費市場では、顧客ターゲットとなっている。
正に日本と同様であり、健康関連ビジネスなどを意識、「アクティブシニア」を軸にして、韓国経済再生を図ろうとする動きが出ている。
高成長期に不動産を中心として資産を拡大、更に安定的年金所得を獲得する高齢層が多くなり、消費市場の主導権が青年層から高齢層に急速に移動しているのが現在の韓国国内ビジネス市場の現状である。
これでは、経済の伸びしろが細っていくことは日本の現状を見ても明らかである。
l 軍用バルーンに注目する韓国軍
韓国は産官学金融で国防産業を国家の重要産業として事実上育成している国である。
こうした中、衛星とドローンが最先端の技術として注目されているが、時代遅れの「軍用バルーン」が新たに注目されていることに韓国も注目している。
米国をはじめとする各国軍隊が監視・通信・偵察を目的に18世紀から使った、また日本軍も米国本土へ風船爆弾を飛ばしたともされる熱気球を再導入して、低コスト・高効率の武器として注目されていることを受けての韓国の反応である。
l 韓国コスメ輸出過去最高を更新中
韓国政府関税庁は、本年1~9月の化粧品の輸出額が前年同期対比15.4%増加の85億2,000万米ドルとなり、1~9月の過去最高を記録したと発表している。
7~9月期の輸出額は前年同期対比17.6%増の30億米ドルで、9四半期連続での増加、また、四半期ベースでも過去最高を記録している。
化粧品の輸出額は昨年1~3月期から四半期ベースでの過去最高を更新し続けており、急成長していると関税庁はコメントしている。
尚、通常、10~12月期は前期より輸出が増える為、今年も昨年に続き、年間の輸出額を更新するものと見られている。
また、1~9月の輸出額の割合を品目別にみると、基礎化粧品が41.7%で最も多く、日焼け止めやシワ伸ばしスティックなどその他の化粧品が25.5%と次いで多かったと報告されている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,421.58(前週対比+7.46)
台湾:1米ドル/30.62ニュー台湾ドル(前週対比+0.06)
日本:1米ドル/150.55(前週対比+0.60)
中国本土:1米ドル/7.1264人民元(前週対比+0.0076)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,748.89(前週対比+138.29)
台湾(台北加権指数):27,302.37(前週対比+0.45)
日本(日経平均指数):47,582.15(前週対比-506.65)
中国本土(上海B):3,839.755(前週対比-57.273)
