駅伝経営ニュースレター第4号:中小企業・ファミリービジネスが「継続」と共に「成長」を図るには ― 現場の問題意識から生産性を高めるという成長

前回は日本の中小企業・ファミリービジネスの成長の一つの切り口として輸出を通じた売上・利益の成長を取り上げました。そして、2016年に外国人材の起用を開始してからわずか8年の2025年3月期で輸出を7倍の23億2千万円にまで伸ばした大和合金株式会社の成功事例を紹介しました。

 

今回の成長は生産性の向上という切り口で成長を見ていきたいと思います。社員一人当たりの売り上げや付加価値といったものが生産性の指標になります。  そしてその成長を考える場合、DX、IT化、省力・省人化といった設備投資や、社員のスキルアップのための教育研修などが施策として講じられます。

 

一方でなかなか捉えにくいのが社風や社内文化としての働き方です。昭和の「モーレツ社員」、「24時間働けますか」といったハードワークのカルチャーは、高度成長期には市場拡大の波に乗るという意味があったでしょうが、今は“ブラック”と言われますね。

 

一方で、低成長時代の今だからこそ、手間をかけた「そこまでやるか」のモノつくりや行き届いたサービスは日本の特筆すべき長所であり、差別化でもあります。 そうした日本の強みを生かしつつ生産性を現場から向上させるアプローチについて人材の面から考えてみたいと思います。

国際的に下位にある日本の労働生産性

 

まずは日本の生産性を客観的に見てみたいと思います。 下図①及び②は、労働生産性を一時間当たりの付加価値と従業員一人当たりの付加価値で算出し、国際比較したものです。

 

図①

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出典: 公益財団法人日本生産性本部生産性研究セ ン ター

 

図②

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出典: 公益財団法人日本生産性本部生産性研究セ ン ター

2024年時点でOECD加盟国38か国中、日本は時間当たりの労働生産性で28位、一人当たりで29位となっています。 円安がさらに進んだ2025年、2026年であればドルベースの日本の労働生産性はさらに厳しくなっていると思います。 また、日本の得意なモノつくりである製造業の労働生産性の国際比較においても、下図③の通り2000年ではトップであったものが、2022年以降20位と低迷しています。

 

図③

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出典: 公益財団法人日本生産性本部生産性研究セ ン ター

 

日本の労働生産性(付加価値額/従業員)の推移次に日本国内での規模別の労働生産性の推移を見てみます。中小企業白書・RIETI系研究などをベースに整理すると下表のとおりで、過去30年間、日本の大企業の労働生産性は上昇した一方、中小企業はほぼ横ばい乃至微減で推移し、生産性格差は拡大したというのが大きな流れです。

 

Article content1人当たり付加価値額ベースの概念整理 出典:中小企業白書及びRIETI

大企業の労働生産性を中規模企業のそれで割った倍率は以下の通りで、両者の生産性格差は拡大してきています。

 

年    倍率

1995   約2.0倍

2005   約2.2倍

2015   約2.5倍

2023   約2.7倍

 

つまり、「日本企業全体の生産性が低い」のではなく、「大企業と中小企業の格差が非常に大きい」というのが近年の傾向です。その格差の原因について厚生労働省と中小企業庁の分析では次の要因を主因として掲げています。

 

1. 設備投資格差大企業は、DX、自動化、AI、ロボットへの投資が継続。中小企業かかる投資が横ばいか一部では減少傾向。

 

2. IT導入格差2005年以降、ERP、生産管理、CRM及びデータ活用の分野で格差が拡大。

 

3. 人材投資格差大企業や必要に応じたリスキリングや専門人材採用を進めてきたが、中小企業は人手不足対応優先になりやすい。

 

資金的に余裕のある大企業がトップダウンで生産性向上に必要な設備的・人的投資を行っていることは想像できます。

 

外国人材で停滞の社風に風穴を開ける?

 

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ある金属メーカーでの外国人社員による問題意識共有シーン

 

中小企業・ファミリービジネスの強みとして、現場と社長との間の距離の近さがあります。

 

現場で思いついた改善のアイデアを意思決定者である社長に伝え、実行に移す速度は速いものと期待されます。ただ、その強みを生かすには現場の社員が今の仕事(の生産性)に問題意識を持ち、自らそれを改善・改良しようとする主体性があることが求められます。 上からの指示に従ってルーチン的に淡々と仕事をこなす方が楽と感じる社員がいることも否めません。

 

この点、筆者が経営コンサルティングを提供する様々な顧客企業(製造業)では大卒で日本語の上手な外国人材を正社員として採用することで現場にフレッシュな風を呼び込んでいます。

 

ある金属メーカーの加工部門に配属されたオーストラリア出身の男性は、従来の加工プロセスの生産性の低さに問題意識を持ち、試行錯誤を繰り返し、前処理としての粗加工プロセスを導入した結果、従来に比べ3倍の生産性を達成しました。

 

このオーストラリア人はさらに現在使用しているパソコンの性能が低く、使いたいCAD/CAMのソフトが使えない問題も指摘、社長に相談してワークステーションを導入することで課内の業務効率を高めることにも貢献しました。

 

このオーストラリア人と同期入社のアメリカ人の男性は開発部門に配属され、合金の組成や試験環境を変化させながら、その合金の強度を計測し、データ解析を行っています。

 

彼は、品質保証部門や加工部門など関連部門とのデータのやり取りでデータの標準化がなされていないことに問題意識を持ち、その標準化を推進することで社内のデータ収集、分析、利用の生産性を高めようとしています。

 

他社の場合でも似たような事例が見られます。 その背景を考えてみると、日本人が与えられた仕事やその処理の仕方を比較的素直に忠実にこなそうとするのに対し、外国人材、特に欧米系の人々は入社して仕事を与えられると、その仕事の目的や狙いを知ろうとします。

 

日本人がwhatとhowを大切にするのに対し、外国人材はまずwhyが気になります。 彼らはそのうえで現状のやりかたを経験し、そのやり方に疑問があれば仕事の目的・狙いに遡って納得するまで先輩や上司に尋ねる傾向があると感じます。

 

今のやり方に納得できなければ前述のオーストラリア人のようにより良い方策を生み出そうとするものも出てきます。もちろんそれを実現するために必要なスキルや知識が本人に求められますが・・・。

また、現場での時間の使い方に関しては、筆者の知る外国人材の多くが日本の職場での会議に疑問を持っています。

 

会議の目的、そこになぜ自分が呼ばれているのか、何を期待されているのかが不明であるという問題意識を持ちがちです。

 

同様に、社内を飛び交う多くのメールのコピーが自分にも落ちているものの、なぜ自分にコピーが落ち、何が期待されているのかについても疑問を持ち気味です。

 

もちろん彼らは日本企業内の助け合いや情報共有の姿勢、部下を大切に育成しようとする姿勢、報連相の大切さを日本組織の強みとして理解してはいるものの、一日8時間の使い方は仕事の目的に従って最も効率的にかつ効果的に進めるべきであり、そのためには最新の技術や方法を使うべきという意識や主体性が強いと感じています。

 

ということで、海外や日本の大企業に比べ生産性で成長の余地が大いにある中小企業では特に有意な外国人社員が現場に入り、日本の強みを理解しつつ、健全な問題意識を社長にぶつけ、最新のIT技術やスキルを活かしてボトムアップで生産性を向上させることは十分に期待できると感じています。

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