· 

日賑グローバルニュースレター第310号

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第310号)

 

1. 米国のEV化に立ちはだかる充電ステーション問題

2. 世界最大の人口となるインドの南北問題

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

 

-------------------------------------------------------------------

1.米国のEV化に立ちはだかる充電ステーション問題

 

米国環境省は先週水曜日に新たな排ガス規制を発表、これを満足させるには2032年までに新車の3分の2以上が電気自動車(EV)に置き換えられる必要があるという。 

ただ、現状は、アメリカの今年1月の新車販売台数の7%のみがEVの状況である。 

昨年8月に法制化されたインフレ削減法においてバイデン政権はEV購入者に高額の補助金を出す予算を確保し(今週の発表では日産リーフは対象外となったが)、EV化加速を進めようとしている。 

ところがそこに最大の障壁として充電ステーションの問題が立ちはだかっている様子を今週のワシントンポストが伝えている。

そもそも米国内の充電ステーションの数も中国の120万はさておき、欧州の40万に比べてもはるかに少ない14万箇所しかない

そしてその中でもしっかりと充電機能を果たしているのはテスラ車専用の専用ステーションだけで、それ以外のところは様々な問題からユーザーの不満が噴出している

問題の一つは整備・修理不足で壊れている或いは機能しない充電器の数が非常に多いこと。

昨年カリフォルニア大学バークレー校がサンフランシスコのベイエリアの充電ステーションを調査して回ったところ総数の4分の1を超える657もの充電器が機能しなかった

また自動車業界に詳しい市場調査会社のJ.D. PowerによればEV保有者でつい最近充電ステーションを訪れた5人に一人が充電器の不具合などの理由で充電できなかったと回答している。 

やっと機能する充電器にたどり着いても、予めスマホにその充電器用のアプリを登録して、引き落とせるお金をデポジットしておかないと使えないという問題もある。

テスラはテスラ専用充電ステーションを2024年にテスラ以外のEV車の充電にも一部開放すると発表しているが、テスラの充電ネットワークの信頼性が理由でテスラ車に乗り換えるEVドライバーもいる。 

民間の充電ステーションではElectrify America, EVgo, ChargePointなど様々な会社が独自の充電器と支払いシステムを設置している。

そのため平均的なEVドライバーは8つものスマホアプリといくつかの無線周波数IDカードを携帯して居合わせる充電器での支払いに備えている

そこにバイデン政権によるインフラ投資資金を目当てに電力会社も参入を図ろうとして新たな充電ステーションを設置しようとは拡大しつつある。 

ドライバーはガソリンスタンドのように会社のブランドにこだわらず単に給油(給電)したいだけなのにサプライサイドの都合に振り回されている状況に、アメリカでのテスラ一人勝ちの背景と、脱炭素に向けての大きな障害の様子が見て取れる。

 

2.世界最大の人口となるインドの南北問題

 

国連によれば今月中にインドの人口が中国を上回り世界最大になるという。 

ただ、インドの出生率は人口維持に必要といわれる2.1をすでに下回っており、2060年をピークとして下降線をたどると予想されている。 

1947年に独立を果たして早々から国の指導者たちは一人の女性が平均6人の子供を出産するという高出産率を抑える方策を導入してきていた。 

1952年には2人子政策を導入し避妊具や避妊手術を積極的に奨励していった。 

そうした努力で国全体としては出生率を徐々に下げていったが、国の中で南北問題が強く残っている様子をワシントンポストが特集していた。 

同国の南部を象徴するのがタミル・ナードゥ州で、出生率は先進国同様1.8程度に収まっているが、北部の象徴のビハール州の女性は平均3人の子供を出産している。 

タミル・ナードゥ州の多くの女性は高等教育を受け、学士などの学位を得た後に結婚し、出産するが、ビハール州の女性の多くは通学したこともなく、4割の女性は十代で結婚し出産する。 

タミル・ナードゥ州の女性の84%は読み書きができるが、ビハール州ではそれが55%に落ちる。 

結婚している女性の過去12か月の就労率は前者が46%に対し、後者は19.2%となっている。 

南部の州は経済が発展し、それが州政府をして教育や避妊支援(避妊具購入や避妊手術時の直接費用支援など)支出を支えるといった好循環が続き、北部はその逆という様子が見えてくる。

知り合いのインド人からは「人材がインドの最大の輸出商品」と半ば冗談とも本気ともつかぬ話を聞くことがあるが、少子高齢化の先端を行く我が国とってはますます大切な人材源となることは間違いないであろう。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  北方領土問題の認識を変えた習近平

中国の習近平国家主席がロシアのプーチン大統領との最近の首脳会談の中で、日露間で領有権を巡って争っているクリル列島(千島列島)の北方四島に関して、「中立」の立場を明らかにしたと最近、報告されたとし、ロシア国内からは、「画期的な変化」という評価も出ている。

これまで北方四島の領有権問題に関しては、日本側を支持していた中国が立場を変えたという点で評価されている。

ロシアでは、「中国本土の姿勢変化は画期的な状況であり、中露間の信頼協力関係が更に強いものになるだろう」との声も強まっている。

中国は1964年7月、当時の最高指導者であった毛沢東氏が、訪中した日本社会党代表団に対して、「北方領土は日本のもの」と表明してから公式に立場を変えたことがなかった。

当時、中国は旧ソ連と国境紛争中であった為、意図的に日本の肩を持ったという解釈が支配的であったが、千島列島に関する今回の中国側の言及は中国が外交戦略でロシアに対する重要性を浮き彫りにしたものであり、ウクライナ戦争以降、対ロシア制裁に参加している日本がロシアの非友好国名簿に入っており、ロシアは中国のこのような立場変化を高く評価していると見られている。

更に、中国の立場変化が日米韓安保協力と日・フィリピン間の軍事協力強化を牽制する為のものという見方もある。

 

l  台湾半導体製造装置市場4年連続増で世界第二位

世界的な業界団体である世界半導体装置原材料協会 (SEMI) は、2022年の半導体製造装置の世界売上高が前年対比5%増の1,076億米ドルとなり、過去最高を更新したと発表している。

世界の半導体業界では、長期的成長とイノベーションを維持する為、設備投資には依然として比較的積極的であると見られており、こうした結果、半導体製造装置の売上高増加に繋がっているとSEMIでは分析をしている。

そして、中国本土は3年連続で最大市場となったことも確認されている。

中国の設備投資は減速し、前年対比5%減となったものの、それでも3年連続で世界最大の半導体製造装置最大市場となり、市場規模は総額283億米ドルとなっている。

一方、世界第二位の市場である台湾は4年連続増加となる8%増の268億米ドルを記録した。

こうしたことから、台湾の半導体業界では、半導体製造装置も充実させ、台湾半導体業界の総合力を更に強めていきたいとしている。

尚、韓国は14%減の215億米ドルとなっている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

l  仁川空港1~3月期国際線旅客数前年同期比10.5倍

世界的な観光需要の回復を受けてと見られているが、韓国・仁川国際空港の今年1~3月期の国際線旅客数が前年同期の10倍以上に増加している。

そして、今年年間の国際線旅客数は新型コロナウイルス流行前の2019年の76%水準まで回復する見通しとなっている。

同空港の1~3月期の国際線運航数は6万7,000回で、前年同期の2倍に増えている。

国際線旅客数は1,143万2,000人で前年同期対比10.5倍となった。

更に、コロナ流行前の2019年と比べると、今年1~3月期の国際線運航数は68.6%、旅客数は64.3%水準まで回復した。

 

l  拡大を続ける韓国防衛産業

韓国防衛産業界が明らかにしたところによると、ハンファ・エアロスペース、韓国航空宇宙産業(KAI)、LIGネクスワン、大宇造船海洋、現代ロテムの5社の防衛産業受注残高は昨年末基準で合計101兆2,160億ウォンに達したと見られている。

ハンファ・エアロスペースの受注残高52兆6,586億ウォンをはじめKAI(24兆5,961億ウォン、LIGネクスワン12兆2,651億ウォン、現代ロテム(防衛産業部門・5兆2,749億ウォンなど、創業以来最大の受注残高を記録した企業も出ている。

また、「K防衛産業」は、昨年1年間で過去最大となる173億米ドルを受注し、こうした流れは今年も続いている。

ロシア・ウクライナ戦争を契機として世界が国防予算を増やす中、韓国メーカーの武器が性能と経済性の面で高く評価されていると韓国国内では評価している。

欧州・中東だけでなく東南アジア・オーストラリアにまで武器販売の領域を広げ、韓国が「自由民主主義の武器庫」の役割を果たしているとの評が出ているとも自画自賛している。

 

l  EV販売で世界トップ3を目指す現代グループ

韓国完成車大手の現代自動車、起亜自動車と自動車部品大手の現代モービスの現代自動車グループ3社は、2030年までの8年間に韓国国内の電気自動車(EV)分野に24兆ウォンを投資し、EV販売で世界トップ3に入るという目標を提示、ユン政権もこれを側面サポートする姿勢を示している。

ユン・ソクヨル大統領や現代自動車グループのチョン・ウィソン会長をはじめとするグループ経営陣、現代や起亜の社員ら約200人が出席する華城新規工場建設の竣工式でこうした意向が示されている。

 現代自動車グループは、2030年までに国内のEV分野へ21兆ウォンを投資すると発表していたが、投資額を3兆ウォン積み増し、多額の投資を通じて2030年に国内のEV生産台数を年151万台に引き上げ、海外工場を含めEV世界生産364万台を達成するとの決意を示している。

そして、先ずは韓国国内での生産能力の拡大に向け、華城のEV専用工場の新設に加え、既存工場で生産ラインのEV専用への転換などを進めるとしている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,302.35(前週対比+11.88)

台湾:1米ドル/30.48ニュー台湾ドル(前週対比-0.09)

日本:1米ドル/133.12円(前週対比-0.95)

中国本土:1米ドル/6.8540人民元(前週対比+0.0141)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,571.49(前週対比+81.08)

台湾(台北加権指数):15,929.43(前週対比+92.93)

日本(日経平均指数):28,493.47(前週対比+975.16)

中国本土(上海B):3,228.153(前週対比-99.493)