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日賑グローバルニュースレター第333号

1.オバマケアをトランプとの大きな差別化に位置づけるバイデン陣営

 

Affordable Care ActACA)通称オバマケア2010年に法制化された米国民のための健康保険加入促進法制で、低所得者層や既往症を持つ人々で保険加入できていなかった数千万人もの人々を救いあげ、国民皆保険につなげるためのオバマ大統領肝いりの政策であった。 

実際オバマ元大統領は8年間の大統領任期を振り返りACAを自らの最高の成果と評してはばからない。  

ただ、この法制の立ち上げ時期は野党共和党の扇動もあって、米国民から多くの反発を買っていた。 

20091月の就任当初のオバマ大統領の支持率は66%あったものが、ACA法案に署名して法制化した翌20103月には49%にまで下がりその年の中間選挙では下院与党民主党は25議席を失って野党に転落している。 

多くの有権者がオバマケアはメディケア65歳以上の人々のための国による医療保障制度)や既存の民間のヘルスケアに悪影響を与えるとの誤解を強く持っていた。 

また、オバマ大統領二期目の2013年にこのACAに基づく医療保険未加入者の加入用のウェブサイトHealthcare.govがクラッシュしてしまうという失態もあり、その年の世論調査でもACAを好感する人の割合はわずか33であった。 

ACA撤廃の法制化を公約に掲げて当選したトランプ前大統領は公約実現に向け議会に働きかけたものの、20177月の投票では故ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)他2名の造反によりわずか一票差で。撤廃できなかった。 

今日、45百万人もの米国民がACAに基づく医療保険への加入或いはその関連の支援を受けられており、直近の世論調査では59%もの人々がACAを好感している。 

特に既往症を持つ人々への保障の存在が大きいという。  

その存在は、年金(ソーシャルセキュリティ)、メディケア(前述)及びメディケイド(低所得層向け医療保険)に続く4つ目の重要な社会保障制度との位置づけとなりつつある。

かつては有権者に嫌われていたACAが、その実態が感じられるにつれ支持が高まる中、11月の選挙に立候補予定の民主党候補者も選挙演説においてACAの実績を積極的に語るようになっている。 

肝心の大統領選においてもACAの実績を強調、先週リリースされたビデオではオバマ元大統領、バイデン(当時副大統領)、ペロシ(同下院議長)が登場し、ACA14回目の誕生日を祝し、オバマ氏が、「この保険制度をもっと良くするチャンスもあるが、それはジョー(バイデン)とカマラ(ハリス)を11月にホワイトハウスに送り込んでこそ可能です」と有権者に訴求した。 

バイデン陣営は今やACAがトランプ陣営との大きな差別化となるとみて「トランプはACAを終わらせるために立候補している」というメッセージを広告、SNS、演説などで繰り返している。 

当のトランプは自身のソーシャルメディアで、「バイデンはいつも偽情報や誤情報を流している。自分がやりたいのはこの14歳の法制(ACA)をより良くしたいだけだ」と記した。

 

2.復活祭まで政争に利用するトランプ共和党陣営

 

復活祭(イースター)は毎年同じ日に祝われるのではなく「春分の日から数えて最初の満月の次の日曜日」と決められているそうで、今年は331日の日曜日となった。 

一方、2009年に始まったトランスジェンダー記念日International Transgender Day of Visibility)は曜日に拠らず毎年331で、バイデン政権は就任の年の2021年の331日から毎年ホワイトハウスが啓蒙のメッセージを送っていた。 

今年のメッセージは「我々とともにトランスジェンダーの人々の人生と声を国中で高め、性別に基づく暴力や差別を取り除いていこう」との内容であった。

選挙イヤーの今年のこの2つの記念日の偶然の一致を利用し、トランプ陣営がバイデン政権を強く非難している様子をワシントンポストが報じた。 

トランプの選挙広報担当は「復活祭の日をトランスジェンダーの記念日として認識するのはキリスト教徒にとっての冒涜」と表現。 

さらにはバイデンホワイトハウスが宗教のシンボルを記したイースターエッグをホワイトハウス内で行われる子供によるアートコンテストに出すことを禁じたとの誤解を招きかねないメッセージも出した。 

バイデン大統領はアメリカでは2人目のカトリック教徒の大統領で敬虔なクリスチャンであり毎週末教会に通っている。 

復活祭を祝うメッセージも従来通り出している。  

アートコンテストのルールは45年以上もの間不変で、政教分離の理由から宗教のシンボルは許されないのであって、これはトランプ政権時代も同じであった。 

一方、トランプは“God Bless the USA”のコーラスが手書きで記されたトランプブランドの聖書を60ドルで売り出している。  

これらトランプ陣営の動きはその数4千万人ともいわれるキリスト教福音派信者の票に対する訴求とみられている。  

宗教の政治利用こそ神への冒涜であるとのバイデン陣営の反論も何するものとトランプ陣営は様々なトランプブランドグッズも売り出しており、4件もの訴訟を抱えるトランプ自身の訴訟費用に充当するようである。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾、空母キラー就役

台湾は、「空母キラー」と呼ばれる国産軍艦2隻を追加で、当初予定より早く海軍に納入している。

中国の軍艦や航空機が台湾付近での活動を活発化する中、台湾は小型艦の大量建造を急いでいる。

2022年から5年間の特別予算を編成し、地元の造船所に建造を委託していた。

最初の船は2021年9月に就役、今回は5番目と6番目の船となっており、当初予定より20カ月早く海軍に引き渡された。

 

l  規制をものともせず利益を倍増させたファーウェイ

中国の通信大手で世界展開もしている華為技術(ファーウェイ)は、米国の様々な規制を受けているにも拘わらず、昨年の利益が2倍以上に増加したと発表している。

売上高は前年同期対比9.6%増の7,041億人民元となり、当期純利益は2.4倍の869億人民元に増加している。

米国政府は国家安全保障への懸念を理由にして、米国企業とファーウェイ間の特に貿易を厳しく管理している。

半導体の輸出規制はファーウェイのスマートフォン事業に打撃を与えたが、昨年、ファーウェイは中国本土製チップを搭載した新モデルを発表して、反転攻勢に出る意欲を示している。

スマートフォンなどの機器を販売するファーウェイの消費者部門の売上高も前年対比17%以上増加、更に、自動車ソリューション部門の収益も2.3倍増加している。

ファーウェイはこの数年間、厳しいビジネス環境にあったにも拘らず、なんとか成長を遂げたと自信のほどを示している。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  韓国無党派層を取り込む第3の新党「祖国革新党」

現在、革新系の前政権下で法相を務めたチョ・グク氏が率いる新党が注目を集め始めている。

既存の保革2大政党が競り合う展開が続く中にあって、両党に対して批判的な層、特に無党派層を取り込み、「キャスティングボート」を握る存在を目指しているものと見られている。

この新党である、韓国の革新系新党である「祖国革新党」は、第22代総選挙の費用を調達する為に募集した、「青い火花ファンド」が、募集開始から僅か54分で目標額の4倍にもなる200億ウォンの資金調達に成功しているところを見ても、無党派層の秘かな期待が窺い知れる。

また、一部の世論調査では、祖国革新党が進歩系最大野党である「共に民主党」及び保守系与党である「国民の力」の比例政党よりも高い支持率を記録しており、破竹の勢いを続けているとの見方も出てきた。

こうした状況で支持者から、僅か1時間で200億ウォンの自発的後援を得たとされている。

チョ・グク代表は26日、フェイスブックに、「祖国革新党の青い火花ファンドが僅か20分で100億突破! 大いに感謝します!」と書き込んでいる。      

                                  

l  国際特許出願件数4年連続世界4

韓国政府・特許庁は3月24日、特許協力条約(PCT)に基づく国内企業の国際特許出願件数が昨年は前年対比1.2%増加し、4年連続で世界4位であったと発表している。

PCTに基づき国際出願すれば、全加盟国に出願したのと同じ効果が得られる。

韓国の順位は2010~2019年は5位だったが、2020年から4位を維持している。

韓国のPCTに基づく国際特許出願件数は、国連機関の世界知的所有権機関(WIPO)が統計を取り始めた1990年から増加を続け、昨年は2万2,288件で中国、米国、日本に続き4位となっている。

上位3カ国はいずれも出願件数が減少した。

企業別では、三星電子が2位、LG電子が6位、LGエナジーソリューションが17位と、20位以内に韓国企業3社が入っている。

特許庁は、「世界的な景気減速、金利高にもかかわらず、韓国企業が革新の産物である知的財産保護のために努力している証拠である」とこれを評価している。

 

l  国会議員を最上位に置く韓国の職業観

韓国人が考える「最も社会的地位が高い職業」は「国会議員」であることが調査の結果分かったとの報道が朝鮮日報で出ている。

同じ調査では、米国とドイツでは1位が「消防士」となっており、韓国社会が他の国に比べ「職業には優劣がある」という認識が高いという分析結果も示されている。

この調査は、韓国職業能力研究院が実施したものであり、同研究院が今月初めに発表した「職業意識及び職業倫理の国際比較研究」と題する報告書にこのような内容が盛り込まれていると報道されている。

研究陣は昨年、韓国・米国・日本・ドイツ・中国本土の5カ国に住む満18~64歳の就業者それぞれ1,500人(計7,500人)を対象に、15の職業について社会的地位を5段階(「非常に低い」~「非常に高い」が5点満点)で評価するアンケート調査を実施した。

研究陣は社会的地位の意味について、「ある職業の権威や重要性、価値などに対する社会構成員の評価」と定義、比較群となる15の職業は、国会議員、映画監督、機械工学エンジニア、中学校・高校の教諭、消防士、日雇い建設労働者、人工知能(AI)専門家、薬剤師、銀行の事務職員(バックオフィス勤務)、中小企業の幹部社員、社会福祉士、デジタル・コンテンツ・クリエイター、飲食店従業員、ソフトウエア開発者、工場労働者となっていた。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,348.14(前週対比-21.61)

台湾:1米ドル/31.95ニュー台湾ドル(前週対比-0.05)

日本:1米ドル/151.35(前週対比-0.17)

中国本土:1米ドル/7.2201人民元(前週対比-0.0208)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,746.63(前週対比-8.23)

台湾(台北加権指数):20,294.45(前週対比+95.36)

日本(日経平均指数):40,369.44(前週対比-446.22)

中国本土(上海B):3,041.167(前週対比-35.946)

 

4.寺島実郎さんの多摩大学のリレー講座に登壇させていただきます。

 

 

多摩大学の学長も兼務されている寺島実郎さんが毎年同大学キャンパスにて開講されているリレー講座に登壇させて頂くこととなりました。 523日(木)に開催される第5回の講座で演題は「あえてイスラエルから学ぶ」です。 同講座のパンフレットを添付させていただきます。 ご参考まで。

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