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日賑グローバルニュースレター第334号

1.アラブ系アメリカ人370万人の注目を集めるミシガン州ディアボーン市

 

ミシガン州は米国大統領選挙において勝敗のカギを握るいわゆるスイングステーツの1つで、前回2020年の大統領選ではバイデン大統領がトランプ前大統領を2.78%のマージンで上回り勝利している。

同州におけるバイデンにとっての重要な票田は労働組合の組織票であり、日本製鉄によるU.S.スチール買収の案件に未だにゴーサインを出さず慎重な姿勢を示しているのも当初このディールに反対を表明した組合に対する配慮からと見られている。 

一方、ミシガン州の大都市デトロイトの西隣の人口10万の中堅都市ディアボーン市が今注目を浴びている。 

もともとミシガン州には約30万人ものアラブ系の人々が住んでいるが、ディアボーン市では過半数がアラブ系である。 

弱冠34歳のアブドラ・ハマウド市長もアラブ系である。 

このハマウド市長を中心に同市の活動家は、昨年107日のハマスによるイスラエルに対するテロに端を発したイスラエルによるガザ地区でのハマス掃討戦を一貫して支援してきたバイデン政権に抗議の声を挙げてきていた。 それが全米約370万人とも言われるアラブ系アメリカ人の抗議の声の中心となりつつある様子をワシントンポストが伝えている。 

実際、去る2月の大統領予備選挙においてミシガン州では10万を超える有権者が「支持者無し」の抗議票を投じ、その動きが他州や、ガザ地区でのパレスチナ住民の被害を抑えられないバイデン政権に反発する学生有権者に広がった。  

かかる状況下でホワイトハウス高官がハマウド市長を訪れ、バイデン政権の対アラブ外交に関する意見を求める動きも出ているが、バイデン大統領の再選を狙うキャンペーンマネージャーからの面談の申し出を断っている

ハマウド市長のメッセージはクリアであり、対アラブ外交に関する意見は述べても、大統領選に関する特定候補者への支持は現段階では行わないというもの。

むしろ選挙の勝利だけを期待して利己的に動くキャンペーンマネージャーに対する反発を隠さない。

とはいえ、アラブ諸国からの移民を真っ先に制限したトランプ前大統領の再選を支持することは今のところ考えられず、バイデンを支持するのかしないのかの判断を全米のアラブ系アメリカ人が注目することになる

4月18日から23日まで行われたCNNの世論調査ではトランプ前大統領を支持する割合が49%に対し、バイデン大統領は43%に留まっている。 

トランプがホワイトハウスを去った20211月に行った調査では55%がトランプ政権は「失敗」と回答したのに対し、今回の調査では同じ55%が「成功」と評価、一方、61%が今のバイデン政権は「失敗」と認識している。

この不利な状況において、従来バイデン政権と民主党が頼りにしていたアラブ票や若者の票がガザ地区の悲惨さが増すと共にバイデン陣営から失われていくことは致命的と言えるかもしれない。

 

2.インクルージョンの行き過ぎか、はたまた保守派の台頭か

 

当ニュースレターでもこれまでアメリカの保守層がトランスジェンダーに対する抑圧を強めてきている様子を伝えてきたが、それは専ら保守州の政治的動きであった。

今週のワシントンポストはトランスジェンダー含めたLGBTQにフレンドリーなスポーツクラブに対するヘイトクライムとしての嫌がらせが多発している様子を報じている。  

プラネット・フィットネスというスポーツクラブは、LGBTQを含めマイノリティと言われる人々が誰でも参加できるといういわゆるインクルージョン(包摂)を売りにして全米2,600か所にジムを展開している。 

今年3月初旬、アラスカにあるプラネット・フィットネスの女性メンバーがジムの女性用バスルームで、見た目が男性のメンバーがシェービングしていた様子に驚き、それをスマホで盗撮してSNSにアップした。 

その行為自体はプラネット・フィットネスの会員規則違反にあたるとして当該女性会員は除名された。  

この事実が発覚した後に、極右のインフルエンサーのChaya Raichikという女性が自らのアカウント@libsoftiktokにおいてプラネット・フィットネスを攻撃、同クラブをボイコットすることを300万人ものフォロワーを通じて拡散させようとしている

それが発端となったかどうかは不明だが、今日までに54か所のプラネット・フィットネスに対し、爆破予告の脅迫電話がなされ、会員はもとより近隣のビジネスや住民の人々の警察による退避命令が続いている。 

Raichik女史自身は、SNSで「今回のボイコットを昨年のバドライトビール不買運動に次ぐ勝利につなげよう」とフォロワーを扇動している。 

バドライトビールは元々はたくましい男性が飲むイメージを前面にブルーワーカーを中心とした多くの労働者層の共感を得て全米トップのシェアを保っていた。

ところが、バドライトの新たな顧客開拓のために抜擢された女性幹部がインクルージョンを意識し、トランスジェンダーの有名俳優でインスタグラムのインフルエンサーに同ビールを飲む姿をアップさせたところ、元々の購買層の強い反発を買い、それが大掛かりな不買運動につながってバドライトビール大きく首位を陥落したという経緯を持つ。 

プラネット・フィットネスは当初から、筋肉質でもない「普通の人々」が気楽に利用できるよう来店しやすさに配慮し、その結果、ボディービルダーなど筋肉を前面に出すような人々の入会は断ることまでしてきた。

その「普通の人々」への訴求が多店舗展開成功の背景にあるとのことだが、そこからインクルージョンを意識しすぎて、本来の顧客層を当惑させるところまで行ったところに今回の問題の原因がありそうである。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  蔡英文総統の路線を継承してスタートする頼清徳次期総統

今月20日には、台湾の新総統に頼清徳現副総統が就任する。

こうした中、新政権で安全保障や外交に関わる要職人事が発表され、蔡英文現政権の中核メンバーが起用されることとなった。

すなわち、国家安全会議秘書長に呉チャオシエ・現外交部長を充て、また国防部長に顧立雄・現国家安全会議秘書長を、新たな外交部長には林佳龍・現総統府秘書長を就任させる人事などを公表した。

安保や外交の分野での「蔡路線の継承」を人事でも示した形である。

台湾は、総じて、「水不足そして電力不足」が恒常的に懸念される国である。

こうした中、4月15日夕方、台湾電力の4つの施設で連続停電が発生し、台湾国内では電力供給が逼迫した。

台湾電力は電力配給危機の発生を避ける為、民間発電会社から緊急に電力を購入しこれを凌いだとされているが、電力供給の不安定さは今後の台湾経済の不安にも繋がる。

 

l  チェコとの交流関係を重視する台湾

チェコは、東西冷戦時代にチェコ(当時はチェコスロバキア)が旧ソ連に蹂躙されたというかつてのソ連の動きと今の中国の動きを重ね合わせ、台湾の置かれているポジションにはより深い理解と積極的な支援姿勢を示してきている。

こうした中、台湾政府・外交部は、「チェコは欧州に於ける我が国の重要なパートナーであり、近年、ハイレベルの交流が活発に行われ、両国関係が活発に発展している」と指摘している。

その上で、「チェコの経済発展ニーズに基づいて、台湾は、チェコ半導体産業の能力を強化する為の高度なチップ設計センターの設立を支援する為、チェコ政府と5カ年計画について交渉してきている」

とコメント、その具体化に向けた動きを取りたいとしている。

 

l  中国王毅外相のカンボジア、インドネシア等訪問の背景

中国の王毅政治局員兼外相は4月23日、3日間のカンボジア公式訪問をし、フン・マネ首相と会談している。

そこで、中国、カンボジア両国は防衛や安全保障などの分野で協力を強化することで合意している。

また、フン・マネ首相は、巨大経済圏創設を目指す中国の「一帯一路」構想を称賛し、カンボジアの発展に貢献していると述べている。

王毅外相は、「中国は常にカンボジアにとって最も信頼できる友人であり、最も強力な支援者でもあり続ける」と強調している。

王毅外相は、今回、インドネシアとパプアニューギニアも訪れている。

南シナ海を巡るフィリピンとの領土紛争の中、中国政府は、特に中国寄りのアジア太平洋地域の他国との関係を強化してきていると見られている。

 

(2)  韓国/北朝鮮                                  

l  ミクロには不安要因もあるがマクロでは好調を継続する韓国経済

国際機関である国際通貨基金(IMF)のクリシュナ・スリニバーサン・アジア太平洋局長は、2024年の韓国経済について、

「高価な半導体の世界的な需要により輸出に前向きな勢いが予想されるとしながら、内需の成長は漸進的である」との見通しを示した。

また、中国経済の成長鈍化が韓国などアジア太平洋地域に於ける大きなリスクとなると指摘した。

IMFはこうした見方の下で、世界経済見通しの中で、韓国の今年の成長率を2.3%と予測した。

同氏はまた、中国の輸出価格が2023年下半期に下落したが、これはベトナムや韓国のように中国と類似した製品を生産し、中国と競争する国の利益率に下方圧力を加えるだけでなく、輸出量にも否定的な影響を及ぼしかねないと説明している。

こうした中、韓国国内では、「韓国経済の二軸である半導体と自動車産業の代表企業が、本年第1四半期(1~3月)に揃って良い成果を出している。

即ち、自動車業界の雄・現代自動車と半導体業界の雄・SKハイニクスは、それぞれ第1四半期基準の歴代最高売上を記録するなど、市場予想を上回る実績となっている。

三星電子も今月初め、営業利益が6兆ウォン台を回復したという第1四半期の暫定実績を発表している。

昨年は米中覇権争いの中で、サプライチェーン再編問題が表面化、ロシアのウクライナ侵攻、そしてガザ問題の余波など、いくつかの外部変数により、事実上、自動車産業のみが韓国経済をリードしてきた。

半導体輸出が昨年は2022年より24%減少して低迷する中、全体の輸出が比較的堅調に推移したのは、自動車関連輸出が年709億米ドルとなり、歴代最大の輸出記録を立てて支え役を果たした」

との見方が出ている。

 

l  衛星コンステレーション用衛星1号機打ち上げ成功

韓国は、世界的に広がる、情報覇権争いを意識し、制宙権争いにも参画してきている。

こうした中、韓国独自の「衛星コンステレーション」の構築に向けた衛星1号機が4月24日午前、米国のロケット・ラボの小型ロケット「エレクトロン」で打ち上げられ、軌道に投入されたと韓国政府・科学技術情報通信部が発表している。

1号機の衛星を積んだエレクトロンは24日午前7時32分、ニュージーランドのマヒアから打ち上げられ、50分後の8時22分ごろ、1号機はエレクトンから分離され、目標の軌道に投入されたと報告されている。

衛星コンステレーションは、多数の超小型衛星を連携させて一体的に運用する仕組みであり、安全保障や災害への対応を目的に、朝鮮半島とその周辺を1日に数回観測する予定となっている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,375.46(前週対比-1.16)

台湾:1米ドル/32.58ニュー台湾ドル(前週対比-0.09)

日本:1米ドル/156.88(前週対比-2,31)

中国本土:1米ドル/7.2464人民元(前週対比-0.0061)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,656.33(前週対比+64.47)

台湾(台北加権指数):20,120.51(前週対比+593.39)

日本(日経平均指数):37,934.76(前週対比+866.41)

中国本土(上海B):3,088.636(前週対比+23.375)