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日賑グローバルニュースレター第309号

1.デサンティス フロリダ州知事 vs. ウォルトディズニー

 

次期共和党大統領候補選への立候補が取りざたされ、トランプ前大統領に次いで人気の高いデサンティス フロリダ州知事がウォルトディズニー社と対立している様子をワシントンポストが報じた。

ディズニーのボブ・アイガーCEO43日の年次株主総会で話した内容によると、デサンティス知事はディズニー社のフロリダ州における新たな土地使用契約の調査を命じ、それが知事による同社への報復措置であるとの認識を示している。

ことの発端はデサンティス知事が2022年に小学校でグレード3(日本の小学校の3年生)以下の生徒が教室で自らの性の認識について語ることを禁じる「教育における親権に関するフロリダ州法」を提案したことに遡る。反対派からLGBTの子供を傷つけるものであると批判が生じた

このときウォルトディズニー社はこの法案に真っ向から反対している。

その後、知事はフロリダのディズニーワールドの敷地を監督する委員会のコントロールを握ろうと州議会に働きかけた。 

最終的にデサンティス知事のコントロールの及ぶ委員会が成立する前に、フロリダ州とディズニー社の間の土地利用契約の延長が合意された。 

期間は「イングランド国王チャールズ3世の最後の子孫の最後の生き残りが亡くなってから21年経つまで」となっている。

デサンティス知事は州政府を通じ4つの法律事務所を起用し、この皇族条項から同州を切り離す方法を検討させている。 

加えて、知事は州の主任監察官に対し、このディズニーとの契約を徹底して見直し、調査するように命じた。 

この動きに対し、アイガーCEOは知事の態度が反ビジネスであるだけでなく、反フロリダであると語った。

一方、フロリダ州知事の報道官は、「フロリダ州内にある企業は合衆国憲法修正第一条の権利(言論、出版の自由など)はあるが、政府を自ら運営する権利やフロリダ州法で規制することを超えて事業を行う権利は持たない」とコメントしている。 

ビジネスに対し強権を発動気味のデサンティス知事が今月日本を訪問するというが、大統領候補としての外交面の下準備をしつつ、フロリダ州に日本のビジネス投資を呼び込もうとするのか注目される。

 

2.言語生成的AIの功罪

 

当ニュースレターで以前ご紹介したオープンAI社の言語生成的AIChatGPTの利用が米国内はもとより世界中で広がり、様々な問題を生じつつあって規制を求める声が出てきていることを日々の報道で目にする機会が多いが、ワシントンポストがこのタイミングでAI導入の功罪を代表する2つの調査結果を紹介している。 

1つはゴールドマンサックスによる経済・雇用面での影響に関するものである。

それによると世界で3億人分の雇用がAIに置き換えられ、数千万人が職を失うという。 

その予想に至る積み上げの計算として、ホワイトカラー職のAIでの代替の困難度を1(最も簡単)から7(最も困難)に分けレベル4をAIによる代替の分岐点としている。 

具体的には事務的業務やパラリーガルなどは代替され、経営やソフト開発などはAI導入で人間の生産性が高まる。 

AIを通じた社員の生産性向上により、世界のGDPを7%押し上げるという。 

もう1つの調査は欧州刑事警察機構(Europol)によるもので言語生成的AIがどのように犯罪に利用されかねないかの結果をまとめている。

例えば、チャットボットがある特定の人々のコミュニケーションスタイルを忠実に模擬し、時に音声まで模写してなりすますケースや、悪意のソフトウェアを人間に代わってコーディングから生成するケース、あるいは犯罪者予備軍に、住居侵入の方法やブラックメールの出し方、パイプ爆弾の製造方法などをパーソナルタッチで分かりやすく一歩ずつ教えていくケースなどが紹介されている。 

もちろんすでに生じている合成画像などによる偽情報の高度化が進む。 

最新のチャットボットはユーザーの意図を判断し、悪意を見出せば応答しないように訓練されているが、言語生成的AIによる高度な言語に覆われた悪意を未然に防ぐことは困難であるとみられている。 

いずれにせよ、言語生成的AIのリスクを取り上げすぎてパニックになったり、その能力を過大視して逆にリスクを増したりするよりも、生産性のプラス面をもたらす製品の安全性や消費者の保護の観点でとらえていくべきではないか、というのがワシントンポストの提言と読み取れる。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾との外交関係維持を強調するグアテマラ

蔡英文総統は、中米のグアテマラとベリーズを訪問しているが、この両国は、台湾が外交関係を持つ数少ない国の一つであり、台湾としては両国を繋ぎとめようと必死となっている国でもある。

そして、グアテマラでは、両首脳が、台湾を孤立させる中国本土の圧力が強まる中、外交関係を強化することに合意している。

即ち、蔡英文総統はグアテマラに到着し、グアテマラのジャマテイ大統領と会談したが、ジャマテイ大統領は、「グアテマラは平和を愛する国として、台湾の主権と領土保全を尊重することを約束している」

とコメント、台湾とグアテマラの外交関係は非常に強固であり、誰もそれらを破壊することはできないと述べている。

これに対して、蔡総統は、グアテマラの台湾に対する支援に感謝の意を表し、台湾とグアテマラが強力な基盤に基づいて協力し続け、相互に「ウィンウィン」の状況を発展させることを期待していると述べた。

尚、グアテマラの隣国・ホンジュラスは3月26日、外交上の承認を台湾から中国本土に切り替え、台湾との国交関係を断ち切った。

 

l  フィリピンとの緊張緩和を目論む中国

南シナ海の領有権を巡って対立する中国とフィリピンは緊張緩和に向けた外交当局間の協議を行った。

中国側は、米軍がフィリピン国内で存在感を拡大させていることに不満を表明し、対立の解消に繋がる成果は乏しかったと見られるとしている。

尚、当該協議はフィリピンの首都・マニラで開催され、フィリピンからはラザロ外務次官、中国からは孫衛東外交部次官が出席、孫次官は、「話し合いで意見の違いを適切に処理したい」

とも述べたと報告されている。

 

l  人材不足と水不足の影響を受ける台湾半導体産業

台湾では、半導体産業分野を含めた人材不足が表面化してきている。

台湾国内では、こうした状況、特に半導体分野の人手不足に関しては、

「中国本土政府が、中芯、華虹、華為等の中国本土半導体企業への支援を拡大し、事実上、無制限の補助金の優遇措置を与える動きも出ており、台湾積体電路製造や連合電子及びその他の主要メーカーのプロセス・マネージメント及び装置統合などのエンジニアを対象として、3倍の給与条件を提示するなど、防衛しているが、人材確保に関しては、厳しい状況は続いている。今後、中国企業と台湾企業との間で、技術産業人材を巡る戦いは更に拡大するものと見られる」との見方が出ている。

尚、アジア最大の半導体産業の本拠地となっている台湾は、過去1世紀で最悪の干ばつを克服してから2年しか経っていないが、新たな水不足に直面しているとの見方が出ている。

半導体ウェーハ製造では水の需要は高く、例えば、世界最大のファウンドリーチップメーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の最新データによると、台湾南部のサイエンス パークにある半導体製造施設だけで、毎日99,000トンの水が消費されているが、改めて水不足が懸念され始めているのである。

そして、こうしたこともあり、TSMCは水の豊かな日本の熊本に新たな製造拠点の一つを置きに来たとも見られている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

l  THAADミサイル防衛システム発射台展開訓練初実施

韓国と米国が慶尚北道星州の在韓米軍高度ミサイル防衛(THAAD)体系基地で遠隔発射台展開訓練を初めて実施したと発表している、

本年上半期の米韓連合軍事訓練である「フリーダムシールド(自由の盾)」と連係して行われたこの訓練で、在韓米軍はTHAADのレーダーで照準した後、パトリオットミサイルを発射する過程を辿ったとしている。

 

l  史上最大規模の防衛装備品輸出

韓国国内の、所謂、防衛産業関連企業は昨年、史上最大規模の防衛装備品販売契約を締結し、国内の防衛産業関連5社の受注残高は初めて100兆ウォンを超えたと見られている。

即ち、韓国で防衛産業関連企業と言われているハンファエアロスペース、韓国航空宇宙産業(KAI)、LIGネクスワン、大宇造船海洋、現代ロテムなど5社の防衛装備品受注残高は昨年末基準で101兆2,160億ウォンとなっている。ハンファエアロスペースの受注残高は52兆6,586億ウォン、KAI(24兆5,961億ウォン)、LIGネクスワン(12兆2,651億ウォン)、現代ロテム(防衛産業部門・5兆2,749億ウォン)は創設以来最大受注残高を記録した。

「K防衛関連産業」は昨年一年、史上最大値である173億米ドルを受注し、このような流れは今年も続いている。

ロシア・ウクライナ戦争を契機に全世界が国防予算を増やす中、韓国国内の防衛装備品が性能と経済性で高い評価を受けていると韓国国内では自己評価している。

最近は、欧州・中東だけでなく東南アジア・オーストラリアにまで防衛装備品の販売先を拡大しながら、韓国が「自由民主主義国家陣営の中で優秀な防衛装備産業を持つ国家」としての立ち位置を確保しているという自己評価まで出てきている。

 

l  米国エネルギースター賞受賞の三星電子とLG電子

三星電子とLG電子は、米国政府・環境保護局とエネルギー省が主催する2023年「エネルギースター賞」で最高賞に当たる「サステインド・エクセレンス賞」を共に受賞している。

環境・エネルギー分野で最も権威ある賞とされるエネルギースター賞は1993年から毎年発表されており、三星電子は今年の受賞企業の中で唯一2冠に輝いている。

同社は多数の製品のエネルギー効率改善と青少年を対象に行った気候変動教育キャンペーンなどの功績が認められ、メーカー部門で10回目の最優秀賞を受賞したのである。

米国では昨年、前年対比24%増の474製品についてエネルギー効率に優れた製品に与えられる「エネルギースター」の認証を受けている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,306.11(前週対比-1.34)

台湾:1米ドル/30.53ニュー台湾ドル(前週対比-0.16)

日本:1米ドル/132.79円(前週対比-2.79)

中国本土:1米ドル/6.8676人民元(前週対比+0.0035)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,476.86(前週対比+61.90)

台湾(台北加権指数):15,868.06(前週対比-46.64)

日本(日経平均指数):28,041.48(前週対比+656.23)

中国本土(上海B):3,272.860(前週対比+7.206)