社員とのウィンーウィンの関係づくり(リンクトイン創業者リード・ホフマン著『ALLIANCE』より

Yoneyama, Nov 2022

#10 社員とのウィンーウィンの関係づくり(リンクトイン創業者リード・ホフマン著『ALLIANCE』(ダイアモンド社)より

 

前回ではコミットメント期間の3つの類型、すなわち「ローテーション型」「変革型」そして「基盤型」のそれぞれの割合を経営者が自社の経営方針に応じて考える人事戦略について触れ、あたかも「合金」のようにとらえて組織の強化と成長を図る考え方を紹介しました。

今回は、その人事戦略のさらに突っ込んだ詳しい考え方として著書に紹介されているものを幾つか披露します。

 

まず、ホフマン氏が創業したリンクトインもあるシリコンバレーです。

シリコンバレーの企業はスタートアップ企業を含めて主に変革型をよりどころにしており(ざっと80%が変革型)、基盤型とローテーション型の社員は少数であると言います。子の狙いは比較的短期間で大きな成果を上げる非常に適応力の高い労働力を現場投入できる、という効果だそうです。これと対照的に、あまり変化しない市場で独占に近いシェアを持つようなメーカーならば、おそらく、はるかに多くのローテーション型(付加価値の低い定型作業に充てる)と基盤型(代々継承されてきた知見を活かす仕事に充てる)の社員を頼りにするであろうと見ています。

ただ、時代の変化は激しく、昔のように安定していない今の世界においては、会社の適応力が益々求められているのは事実であり、その変化に適応するのにトップクラスの数人のスター社員だけに頼るわけにはいかず、急速な変化に対応するには、企業は組織のいたるところに起業家タイプの人材が必要であると語ります。

具体的には変革型社員を様々な形で社内に配置していくことでこの急速な外部環境の変化に順応していくべきと考えているようです。 彼は著書の中で下記のように語ります。

 

「企業のスター社員ではない中間層のコミットメント期間の区切りとなるのは人脈の質と量の変化、プロジェクトの進展、およびスキルと将来性の変化である。加えて、中間層のコミットメント期間は上司が全てを設計するのではなく、本人が中心となって設計作業を進める必要がある。自分が会社を改善できそうな見込みがどこにあるのか探し求め、同時に、どうすればキャリアアップにつながる時間と労力の使い方ができるのかを自ら見つけ出さなければならない」

 

確かに、外部環境の変化は経営者がマクロの目で捉えることも大切ですが、現場で感じる変化を積極果敢に捉えていく起業家タイプの人材が組織全体にとっては重要であるということですね。

 

#11 社員とのウィンーウィンの関係づくり(リンクトイン創業者リード・ホフマン著『ALLIANCE』(ダイアモンド社)より

 

今回は前回同様、コミットメント期間の3つの類型、すなわち「ローテーション型」「変革型」そして「基盤型」の人事戦略のさらなる詳細として、コミットメント期間終了前後に経営者としてどうするべきかという手法の話です。「ローテーション型」の場合、一つの部署から次の部署へ、あるいは転勤という異動がこのコミットメント期間の区切りとなりそうです。

 

一方、「変革型」の場合、コミットメント期間終了後は、社員は転職を望むかもしれません。コミットメント期間の間、会社側は当該社員が与えられたプロジェクトの初期の目標を達成したかどうかあるいは人脈の質と量の変化およびスキルと将来性の変化といったものを振り返り、継続して会社に貢献して欲しいと考えれば、次のプロジェクトや責任をオファーしようとするでしょう。その場合には、より高い報酬や役職が必要となるかもしれません。

 

一方、社員の方も、自分が会社を改善できそうな見込みがどこにあるのか探し求め、同時に、どうすればキャリアアップにつながる時間と量力の使い方ができる可能性があるのかを検討する必要があります。ホフマン氏は以下のように提言します。「コミットメント期間が終わりそうな時期を会社が把握していれば、その社員と早めに話し合いを始め、この会社での次のコミットメント期間を一緒に設計する作業に着手できる。その社員が他社にコミットメント期間を探し始める前に先手を打てるわけだ。その社員が転職の可能性も探りたいと考えていた場合でも、信頼関係が築けていれば、今の会社に「優先対話権」を与えてくれるだろう。これは、他社と接触する前にまずは今の会社と自分のキャリア展望について話し合ってくれることを意味する」

 

ということで、会社としてキープしておきたい逸材であれば、今のコミットメント期間をしっかりと把握し、前広にその社員との期間更新に向けた話し合いをし、先手を取っていく必要がありそうです。次回は、会社と社員のこうした話し合いにおける方向性のすり合わせ、いわゆる「ベクトルを揃える」ことについて本書の提言を紹介したいと思います。

 

次は会社と社員のこうした話し合いにおける方向性のすり合わせ、いわゆる「ベクトルを揃える」ことについて本書の提言を紹介したいと思います。

ホフマン氏は次のように語ります。

 

「会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させることではない。ある期間、一定の条件の下でのみ、自然な形で両者をそろえる「整合性」を目指そう。整合性を目指すには、「企業の目標と価値観」と「社員のキャリア目標と価値観」との間にある共通点をマネジャーが意識的に考えて明示しなければならない」と、社員のベクトルの方向性を上司が把握し、確認する必要性を強調しています。さらにホフマン氏は、

 

「全てに整合性を求めなくていい。アライアンスを長続きさせるのに、必要十分な整合性を実現するだけで良い。会社と社員の価値観と将来の展望の整合性を取るのは難しい作業だ。だが、コミットメント期間を導入すれば、整合性が必要となるのは特定の任務が終了するまでの限られた期間となり、整合性にまつわる諸問題を解決可能なレベルまで限定できる」と語り、その「ベクトルを揃える」期間をコミットメント期間に限ることで社員のうつろいやすいキャリアプランに期間を区切って沿って行く現実的なアプローチを提言する。距離を区切っての「良き伴走者」のイメージです。

 

一方で、3つの類型ごとに、ベクトル合わせの程度は異なるといいます。すなわち、「ローテーション型の場合、会社の利害と社員の利害が重なる部分は比較的少なくてもいい。変革型の場合、両者の価値観および利害はかなりの重複が必要になる。基板型になると、重複はほとんど100%に近い」と語ります。

 

日本企業の場合、従来は社員の方が会社のベクトルに自らの生活とキャリアプランを重ね合わせることを想定していましたが、社員のキャリアプランにおける選択肢が増えてきている中、会社側が社員の考えを知り、可能な範囲で社員の希望に寄り添うキャリアオプションを提示する柔軟性が少なくともシリコンバレーでは求められているということでしょう。