ダイバーシティマネージメント 3

Yoneyama, August 2022

#4 IKEAのダイバーシティマネージメント

 

 

下図は新しく採用された従業員の組織的適合化のプロセスを可視化している。このプロセスは異文化マネジメントに組み込まれ組織制度のメモリーとして長期的に保存されることになる。これは全てダイバーシティの影響を受けており強い組織文化と相関があり、基盤として働くものである。組織的適合化は組織に新たに入ったメンバーが当該組織内で活動を開始する際に通るプロセスである。 

 

このメンバーは外部者の立場から統合された内部者となる。組織内で機能する方法を学習するプロセスはいくつかの社会階層において生じる。過去の研究によれば、同僚や上司による支援の方が書いてあるものを読んで学ぶよりはるかに効果的である。 

 

IKEAの場合、スウェーデン特有のマネジメントスタイルとフラットな階層から恩恵を被っている。 協力的な雰囲気は組織的適合化を成功に導く理想的な基礎を作ってくれる。というのも新入社員にとって同僚こそが組織的振る舞いを観察する主要な情報源となるからである。特に海外に従業員を送り出す際には、IKEAは官僚的な問題は一旦抜きにして、当該従業員が公私にわたり新しい環境にいち早く適合し、新しい同僚と仲良くできるように注力する。もちろん当該従業員は新たな環境に慣れる自助努力も必要であり、先輩方に尋ねたり、彼らの様子を観察して学習していくことが求められる。 組織的適合化に関連してIKEAが設けたプロセスは、組織に統合されるスピードを増し、従業員はもとより組織にもメリットを生じるようになっている。 

 

この組織的適合化プロセスが、先輩従業員から若い従業員に、価値観について語り継いでいくことで継続すると共に、この価値観は制度化される。組織制度的メモリーと呼ばれるコンセプトがある。組織制度的メモリーは、組織内の人々が代替されている際に、時を経ても生き残る知識として関係づけられる。時間と共に社員は退職したり、異動したり、転職したりしていく。企業は多くの資源と時間を社員に投じて知識を蓄えていく。その知識の一部は例えばポリシーとして印刷されて残る。

 

ただ、多くの知識は社員の頭や心の中に残る。従い、多くの大企業は社員が入れ替わるたびにこうした知識の喪失を経験している。IKEAはこれらの知識を、組織制度的メモリーを維持するプロセスを通すことでその知識の喪失を防ごうとしている。採用の際に慎重に選択し、組織的適合化のプロセスを通じて価値観を継承していくことにより、IKEAはその価値観を何とか組織制度化させているのである。これにより1つの強力な組織文化が築き上げられる。この組織文化派企業が拡大し、社員が入れ替わっていく中で会社を1つにまとめる糊の役割を果たしている。

 

 

 

 

#5 IKEAのダイバーシティマネージメント

 

 

結論

 

IKEAのような組織にダイバーシティがもたらす影響は何か?

今回のIKEAのリサーチでわかったことは、人的資源開発の早い段階でダイバーシティ戦略を実行することが効果的であるということ。IKEAは将来採用する可能性のある従業員の選別の過程でダイバーシティマネージメントを開始している。彼らは、書類選考上どの候補者が最良かの判断に注力するだけでなく、組織に最も適合する候補者で、IKEAの価値観と仕事の進め方の視点に合致する候補者に焦点を合わせる。

 

さらには、ダイバーシティは複雑な問題を解決するために創造的でイノベーティブな解決策や既成概念を超えた発想を大切にする組織にとって重要になってくる。今日のグローバルなビジネス世界において、競争は激しく、その中で成功していくためには新たな解決策を創造し続けることが重要である。 ダイバーシティは職場に創造性を増すための1つのツールと言える。加えて、ダイバーシティは従業員が効果的な方法で協働するために必要な集中力や意識を高めてくれる。

 

本稿ではIKEAについてのみ調査し、特にその会社の強みとしてダイバーシティをとらえたのでダイバーシティが組織に対しもたらす負の影響は記されていない。 ただ、本研究に際して得られたいくつかの従業員の回答から、ダイバーシティも慎重に管理されないと負の影響があり得ることが見て取れる。IKEAのダイバーシティ戦略はまだ発展の途上にあり、さらなる改良の必要性もある。例えば言葉の壁の影響や文化的な誤解の減少などである。