ダイバーシティマネージメント 2

Yoneyama, August 2022

#2 IKEAのダイバーシティマネージメント

 

社風・組織文化の強さ

社員第一、ビジネス第二のビジネスモデル。社員が気分よく自分の自由度を持って成長していくことで会社も成長し、その結果ビジネスの成功も付いてくるという発想。この文化を内外に発信することで、それに惹かれてくる人材を採用していく。IKEAの、世界での成功の主たる要因に強力な組織文化に基づくビジネスモデルを構築するという戦略がある。価値観や倫理的態度及びダイバーシティがこの組織文化のための基盤として働く。多様な職場を慎重に選ぶことと、異文化間の違いを良く管理することが組織文化を強力にしていく。

組織文化はやがて他社に対する競争優位につながる統合された社員の力へと発展する。この戦略は良く機能しており、ダイバーシティマネージメントや異文化障壁の縮減に多大な努力がなされている。IKEAの組織文化は長い歴史を持つ。創業者のIngvar Kampradが書いたクレドから作成されている。

 

それに則り、会社の成長と共に、トップマネジメントが文化を発展させ、採用していった。管理職はこの文化の通りに過ごし、ロールモデルを他の従業員に示した。それにより従業員は社内でどのようにふるまうべきかのガイドラインを得た。その次に採用が来る。会社が大切にする価値観を共有する人間を探すことになる。採用後も、日々何度も同じメッセージが繰り返され、その価値観を浸透させていく。

 

ダイバーシティに関する問題を乗り越える組織文化

ダイバーシティマネージメントと異文化マネジメントそして組織文化はIKEAがそのグローバル組織を成功裏に管理するための重要なツールとなっている。一人一人の社員が自分らしさを発揮できるようにするための自由度を与えることで創造性が育つ環境をつくっている。「多くの人々により良い生活を創造する」という志で動いている会社にとって、創造性は無くてはならないものである。

 

現代のビジネスの世界における組織は、文化の違いを理解し、グローバルな考え方を持つことが必要になる。この点で、IKEAははっきりとしたグローバルな思考態度を確立していると言える。社員がグローバルに動き回ることを促す手順や戦略が作られている。IKEAが異文化の課題を効果的に管理できている主な理由の1つが長期的なビジネスの方向性と共に倫理的なビジネス態度そして社員の幸福への責任への特別なアプローチにある。組織文化というものは1つの組織を他の組織から区別するものであり、組織文化の次元というものは組織生命の中心をなすものといえる。特にグローバル化された世界では差別化が難しくなる中、他者と異なろうとする強い想いと勇気がIKEAの1つの目立った特徴と言える。

 

#3 IKEAのダイバーシティマネージメント

 

下図のように、ダイバーシティと異文化マネジメント及び組織文化はつながっており、互いに影響し合っている。多様な社員からなる職場は異文化マネジメントの必要性をもたらす。1つの組織内での異文化マネジメントの質は重要な要因となる。ダイバーシティが創造的でイノベーティブな職場環境を有効性の高い潜在性と共にもたらすかどうかは異文化マネジメントの質次第で、もしそのマネジメントがうまく行われなかったり或いは忘れられたりした場合、ダイバーシティは文化間の断層と大きな能力発揮の低下につながる欠陥のあるプロセスをもたらしかねない。社員の大多数が共有する価値観に基づく強力な組織文化は組織におけるダイバーシティの負の影響を打ち消す強力なツールとして機能する。

 

それでは組織文化というものはどのように維持されていくのであろうか?

 

組織制度的な記憶を保存するための組織的適合化

今日のビジネス世界での多様な環境においては、異文化マネジメントを必要とし、強い組織文化がIKEAのダイバーシティ対応の優位性であり、それによりダイバーシティのメリットを享受していることが明らかである。

 

それでは何がIKEAの組織文化をそこまで強くしているのであろうか。下図は著者によりつくられたものでダイバーシティ、異文化マネジメント及び組織文化の3つの主要要素が含まれている。さらに重要なこととしてそこにはIKEAがその組織文化を強く保つために用いる重要なツールを強調されている。即ち、選択的な採用と組織的適合化並びに制度化である。3つの主要要素は白抜きで表現され、ツールの方は赤字で表現されている。

 

この図ではダイバーシティを、異文化マネジメントのニーズを作り出すものとして表現している。また、選択的採用のプロセスを、時の流れと共にIKEAに変化が必要な時に重要な戦略として表現している。

 

従業員も入れ替わり、世代交代や、規模拡大など、社員も継続的に代替され拡充されている。そして社員数は増えるだけでなく、国際化と、移動に対する抵抗感の減少と共に多様性を増している。よって雇用における選択的採用のプロセスは、IKEAの価値観と共に、真っ先に重要なIKEAの戦略となる。求職者の能力は明らかに大切だが、IKEAの価値を共有できるかどうかの方が重要である。