ダイバーシティマネージメント 1

Yoneyama, July 2022

日本では専ら女性や高齢者の職場での一層の活躍を目指すニュアンスの強いダイバーシティマネージメントですが、海外、特に移民やLGBTなど様々なバックグラウンドの違いを伴う“マイノリティ(少数派)”を意識的に迎え入れる欧米でのダイバーシティマネージメントには創造性発揮や国際展開などの企業の成長に大いにその効果を発揮している印象があります。

 

日賑グローバルのブログシリーズとして新たにこの欧米でのダイバーシティマネージメントの様子をご紹介しながら日本での適用を考えてみたいと思います。

 

#1 IKEAのダイバーシティマネージメント

欧米の様々な多国籍企業の中でもスウェーデンの家具製造・販売会社のIKEAは、それまでの高価で重厚感あふれる家具という商品を、リーズナブルな価格で様々なオプションを持ち、顧客自らが持ち帰って組み上げるというユニークなビジネスモデルで異彩を放っています。 このビジネスモデルを世界中に展開させているIKEAの組織管理にダイバーシティマネージメントがあることに着目した研究『The Effects of Diversity on Multinational Organizations An exploratory case study investigating the cross-cultural management and organizational culture of IKEA(著者Adam Larsson及びSimon Schiehle)』の内容を抜粋し、シリーズでご紹介します。       

 

ダイバーシティはIKEAの商業的成功と社員のモチベーション及び成長意欲のドライビングフォースとなっている。また同社はダイバーシティを創造性とイノベーションの本質的なツールと認識している。

母国語の多様性はコミュニケーション上の手間や費用を必要とするが、異文化マネジメント次第でそのコストを上回るメリット即ち、創造性、イノベーション、問題解決力、効率性をもたらす。ダイバーシティが職場環境にもたらすプラスをIKEAの管理職自身が認識している。

 

IKEAは、多文化チームの方が単一文化のチームよりも様々な点でより高い成果を出すと 理解しているように見える。創造性を阻害し、イノベーションの過程を減速させることで会社の能力発揮を大いに損なわせてしまう集団思考という現象に人々が陥る危険性をIKEAでは多様性のあるチームにより防いでくれている。こうした組織の多様性の価値観を共有しつつ、個人としてはユニークな考え方を持つ人材を採用していくことでIKEAは多様性の相乗効果を見出すプロセスを単純化できている。

 

この考え方が今のところIKEAをして均一的な組織に打ち勝つ戦略となっているようである。IKEAの社員はこの他社との違いを認識し、自社のユニークさを尊重し、同僚とのフラット(対等)な関係を築いている。創造性とイノベーションが繁茂するには職場環境が安全であるという感覚が求められる。社員にとっても安心感と所属意識が挑戦心と創造性を花開かせるための必要条件となる。

 

またIKEAの管理職の共通の認識として、英語はIKEAの公式言語ではあるものの、過半数の社員にとっては英語が必ずしも母語ではなく、言葉上の苦労への深い理解や配慮が大切である。即ち、管理職にはオープンマインドと許容力が大切なツールとなる。IKEAの管理職者はランゲージバリアをコミュニケーション上の障害とはとらえず、スピードバンパー程度に感じているようである。そしてより良いコミュニケーションのために口頭やボディーランゲージに加えての見える化(プリントや図示等)の工夫が取られている。