ニュースレター国内版 2020年・春(241号)

1. “訴えてやる”戦法を加速するトランプ大統領と選対本部

2. ボイスオブアメリカの独立性に赤信号

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

4. 中東フリーランサー東京報告50

 

 

1.“訴えてやる”戦法を加速するトランプ大統領と選対本部

ボルトン前大統領国家安全保障補佐官の暴露本発刊の前にトランプ大統領の指示に基づき司法省が国家機密漏洩の嫌疑で緊急の出版差し止め命令を裁判所に求めた
が既に問題の本は市中に出回っているとして却下されている。 

先週、トランプ大統領は姪のメアリー・トランプを訴えるべく自分の弁護士と準備に入ったと語っている。 

理由は彼女が”How My Family Created the World’s Most Dangerous Man”という本を出すことで彼との守秘
義務契約を破ったためと。 

因みに彼はホワイトハウスに入る前にメラニア夫人との結婚契約書の内容も再交渉しているという(守秘義務のためとは書かれてはいないが)。 

また再選を目指すトランプの選対陣営はトランプがバイデンに14ポイントも差をつけられているというCNNの全国世論調査に関しCNNへ排除要求書を送り付けて
いる。 

その他、ワシントンポストが紹介した“法的措置”を取った或いは検討中の事案は下記のとおり。 


*  フェイスブックがトランプ陣営のキャンペーンが政治犯のナチのシンボルを使ったとの理由で当該コンテンツを削除したことに対し選対本部が訴訟準備中。 

*  ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ及びCNN夫々の報道に対し選対本部が訴えを起こした。  

*  ロシアゲートの件で、大統領自身がナンシー・ペロシ下院議長、アダム・シフ下院特別情報委員会委員長、ロバート・ムラー特別検察官等関係者を訴えるつもり
と。 

*  大統領のパンデミック対応を批判した広告を出した集団と掲載したテレビ局を訴えると。  

*  コロナウィルスの損失で中国を訴えると。 

*  バー司法長官はパンデミック対応措置が厳しすぎる州政府と自治体に対する法的措置を準備中。  


また、トランプが2018年に最高裁判事のブレット・カバノーを任命後、議会での承認期間中に判事が過去に性的嫌がらせを行ったと批判した人々が出たこと
に対し、そういった人々をカバノ―判事が訴えるべきと勧めたり、昨年の彼の弾劾裁判のきっかけとなったCIAの内部告発者を誰かが訴えるべきと語っている。 

気に食わない配下の者は辞めさせ、自分にたてつくものはツイッターで悪口を言い、それでも収まらなければ“訴えてやる”の行動を取るパターンはついに身内にま
で及んでいるという大統領の態度が浮き彫りになっている。

今年の大統領選に敗れたならばどういった“法的措置”に訴えるのか、そもそも選挙結果を受け入れるのかなどといった懸念がまことしやかに議論されているようであ
る。



2. ボイスオブアメリカの独立性に赤信号


ウィキペディアによれば、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、「海外の聴取者に正確・客観・公正的な、アメリカと世界のニュース及びにその関連情報を放
送し、以て放送地域の民主化を促進・強化させる」ことを職責としている。 

そのVOAの監督官庁は現在U.S. Agency for Global Mediaとなっているが、トランプ大統領は同庁のトップにマイケル・パクという保
守的な映画製作者でスティーブバノン(オルトライトの先導者で元大統領首席戦略官)の知人を据えた。 

パク長官は就任早々ピュリッツァー賞受賞者のアマンダ・ベネットを含むVOAの幹部とVOAの姉妹局のラジオフリーヨーロッパやラジオフリーアジア、中東放
送ネットワークおよびキューバ放送局の夫々のトップを解任した。

VOAの番組編集幹部2名はパクの就任が決まった段階で辞職している。 

同様にそれらの放送局の取締役会を解散させ、他の官公庁のトランプの政治任用者や自分の参謀、子飼いのスタッフで置き換えている。

さらには社外取締役としてLiberty Counsel Actionというキリスト教極右でかつ闘争的反LGBTQ団体のメンバーを採用している。 

トランプ大統領はかねてから「VOAが中国の宣伝をしている」と語るなど、政府系メディアへの不満を隠さず、上院与党共和党に圧力をかけ、個人としての倫理
上の問題をクリアできていないPack氏をそのまま承認させている。 

本来アメリカの国益のために政治から独立して海外に情報発信を行うべき組織になぜ大統領が意中の人を送り込み、自分好みの情報発信を行わせるという政治力を発
揮できるかというと、4年前に議会が政府広報改革の法律を通し、それまで放送局を統治してきた独立系で超党派の委員会組織の必要性を廃止したことにある。 

この委員会がそれまではホワイトハウスとVOA等の間の緩衝材になっていた。 

当時この改革を推進した議員もオバマ政権自身も未来永劫、米政府のメディア媒体の独立性や報道に対する完全性が損なわれることなど微塵も懸念していなかったとい
う。

それはとりもなおさずトランプのような考え方や行動を取る人間が大統領になるとは夢にも思っていなかったということの証ともいえよう。



3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化


(1)  中国

*  台湾を「人材センター国家」へ

蔡英文総統は、ポスト・コロナ時代を見据え、台湾を国際的な、「人材センター国家」

にすることで国際社会に於ける競争力を高め、各種の課題に取り組むと言う姿勢を強調している。

バイリンガルやデジタル人材育成のほか、高度外国人材招致に向けた規制緩和に注力するとしている。


*  中国保有核弾頭数320発に増大、北朝鮮数十発

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、世界の核軍備に関する報告書を発表した。

これによると、本年1月時点の世界の保有弾頭数の推計は、前年より465発減って1万3,400発となっている。

核弾頭の保有国は、米露仏中英の上記五大国に加えて、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた9か国となっており、核弾頭の約9割は米露が占めている。

最多のロシアは前年対比125発減の6,375発、米国は385発減の5,800発と、両国とも減少したが、報告書は兵器の近代化を指摘しており、核軍縮とは
なっていないことを示唆する報告となっている。

また、中国は30発増の320発、北朝鮮は20〜30から30〜40発となっている。



(2)韓国/北朝鮮

*  5月のICT輸出はまだら模様

韓国政府・科学技術情報通信部は、本年5月の情報通信技術(ICT)分野の輸出額は139億3,000万米ドルで前年同月対比2.6%減少したと発表している。

主力品目のディスプレーの輸出額が前年同月対比21.2%減、携帯電話が同21.5%減になるなど減少幅が大きかった。 

一方、半導体の輸出額は前年同月対比6.5%増の81億5,000万米ドル、コンピューター・周辺機器は同73.0%増の12億2,000万米ドル、ソリッド・
ステート・ドライブ(SSD)は同160.2%増の9億6,000万米ドルを記録し、健闘している。 


*  フッ化水素ガス国産化に向け前進

「日本政府が昨年7月に韓国への輸出規制強化に踏み切った後、規制の対象になった品目の国産化に着手した韓国企業が成果を上げている」

と韓国の保守系主要紙である朝鮮日報は伝えている。

同報道によると、SKグループは、半導体材料の生産を行うグループ内のSKマテリアルズが先ごろ、純度99.999%のフッ化水素ガスの量産を始めたと発表して
いる。

フッ化水素は日本が対韓輸出規制を強化した半導体・ディスプレー材料3品目に含まれ、半導体の洗浄に使われ、輸入依存度がこれまで100%だったものである。


[主要経済指標]

1.     対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,206.25(前週対比-4.39)

台湾:1米ドル/29.55ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)

日本:1米ドル/106.81円(前週対比+0.59)

中国本土:1米ドル/7.0749人民元(前週対比+0.0010



2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,141.32(前週対比+9.02)

台湾(台北加権指数):11,549.86(前週対比+119.92)

日本(日経平均指数):22,478.79(前週対比+173.31)

中国本土(上海B):2,967.634(前週対比+47.893)



4. 中東フリーランサー東京報告50


三井物産戦略研究所の大橋研究員から掲題レポートを頂戴しましたので皆様と共有させていただきます。

大橋さんからは以下のメッセージを頂戴しております。


本「東京報告」シリーズも愈々50号をお届けるすることになりました。2014年5月にドバイから帰国してから丸6年間、瞬く間に経ってしまいました。そし
て2009年3月にドバイの現地からドバイショックの実相をお伝えした「世界金融危機下の湾岸経済情勢概観(第一回)」から数えると丸11年間。この間に作成した
レポートを両面印刷でファイルしていましたが、今や厚さ6センチになりました。昔のように印刷で配っていたらどれだけ紙の無駄だっただろうか、と恐ろしくなった次
第です。

今回も相変わらずコロナ禍がすっきりしない状況の中でのご報告と相成りました。油価下落は中東産油国の経済に暗い影を落としていますが、これにコロナ禍がさら
に追い打ちをかける形になっています。ただ、これがドバイショックのような一過性・局地的なものではなく、かつ人間同士の交渉(ないしは闘争)で片付く問題でもな
く、世界を覆う普遍的な影響を与える点で、前号でも記した通り「現代文明の日蝕」だと思います。日蝕が終わってああ良かったと太平天国を決め込むか、日蝕の不安か
ら本質的な気付きを得るかは大きな違いになっていくのでしょう。

さて、本日はお知らせがあります。小生の三井物産との契約が9月末をもって満了することとなりました。今年は入社以来45年、かのイラク抑留から30年であ
り、さらにまた節目の年になりました。10月以降は文字通りフリーランサーとなりますが、どうしようかと思っているのがこの中東フリーランサー報告。ここま
で延々と続けて来られたのも、読者の皆様方の声援のお陰です。引き続きご希望があれば、ボケ防止と生存確認も兼ねて(笑)頑張ろうかとも思います。皆様の反応を
お待ち致します。(もちろん、9月まではまだ続編が続きますよ)



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