ニュースレター国内版 2020年・春(239号)
1. 米国の経済再開と第二波の懸念
2. コロナ対応でアメリカ人の評価を高めた人、組織、国
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 月刊「人事マネジメント」への拙稿のこと
1.米国の経済再開と第二波の懸念
ニューヨーク州での感染者数と死亡者数の増加率がピークを越えて下降気味であることなどから郡単位での経済再開なの報道が目立つアメリカであるが、第二波の到来を危惧する声も増している中、ワシントンポストが研究機関等のシミュレーションに基づく第二波の具体的なシナリオを報じていた。
フィラデルフィアの小児病院のPolicyLabが開発したシミュレーションモデルによれば、ビジネス再開がなされ、制限が緩和された後もソーシャルディスタンスを守る等住民が慎重に行動する限り、近いうちの第二波の高騰を避けることは全般的には可能と見られている。
一方で、ミクロで地域別にみると第二波の懸念の兆候は既に出ている。
アイオワ州のクロウフォード郡、ネブラスカ州のコルファックス郡、テキサス州全体、オクラホマ州全体、そしてリッチモンド市では感染者数が急増している。
クロウフォード郡の5月3日以降の感染者数はそれ以前の7.5倍、コルファックス郡は13.9倍に膨らんでいる。
同様に南部や中西部で新たなクラスターが生じつつある。
ダラスフォートワース地域では毎日の感染者数が3倍に増えており、このまま経済再開を進めると夏には感染のピークを迎えると見られている。
ヒューストンを含むハリス郡では毎日の感染者数が数百人であったものが2千人を超えている。
保健省とFEMAが準備した説明資料では次に来る感染の波の立ち上がりは険しく米国内にある人工呼吸器の数を上回ることが予想されている。
ジョージア州は積極的に経済を再開させているが、同州にある人工呼吸器の台数は2,853台で、第二波が来るとあっという間に不足に陥ると見られている。
アリゾナ州、コロラド州、テネシー州なども同様の状況である。
著名生物統計学者やマサチューセッツ工科大学などのシミュレーションモデルを総合したもので予想すると、COVID-19での一週間の死者数は今週の9千人から6月の第2週には4千人に下がり、6月中旬の米国の累積死者数は113,000人となると予想されている(昨日時点で100,421人)。
問題は、制限が解除されつつある今、人々の行動形態が予測しきれないこと。
地域単位でのソーシャルディスタンスや手洗いなどの啓蒙活動が行き届いているところ、例えばデンバー、コロラドスプリングス、オハイオ州コロンバス及びノースカロライナ州のリサーチ・トライアングルといわれる地域は当面感染の伸びは抑えられると予想されている。
一方、フロリダ州南部やアラバマ州では濃密な群衆ができあがっており、第二波の懸念が迫っている。
ニューヨーク州北部のロチェスターを含むモンロー郡では先週の金曜日の経済再開後、感染者数が18%増加している。
新型コロナウィルスに感染してから症状が出るまでに早くて平均5日、遅ければ14日かかる。
症状を感じてから試験を受け、試験結果が出て、陽性ならば入院という対応までとなると感染から1か月乃至2か月となる。
従い、今始まっている経済再開の第二波への影響が見えてくるのは少し先となり、その時に急増となってからまた制限を行っていくというイタチごっこが続くことになる。
増加率が減少傾向とは言え、絶対数ではまだ一日当たり18,263人の新規感染者と1,505人もの新たな死者(いずれも5月28日時点)を出しているアメリカで経済再開と言われても、一日の感染者数が数十人で死亡者数が10人未満であってもまだ恐る恐るの経済再開を進める日本の一国民としては別世界のような感覚を感じてしまう。
2. コロナ対応でアメリカ人の評価を高めた人、組織、国
以前の弊社ニュースレターでもご紹介した通り、ニューヨーク州のクオモ知事は連日トップダウンで新型コロナウィルスとの戦いのリーダーシップを発揮し、ニューヨーク州民はもとより全米での評価を高めている。
ワシントンDC在のシンクタンクであるピューリサーチセンターが4月後半から5月初めの間で行った幾つかの世論調査で、これまでのコロナ対応を通じアメリカ人の信頼感がどのように変化したかを調べた。
主な結果は下記のとおり。
Ø 医療科学者は公共の利益のために行動してくれていると信じる割合 89% (2016年は84%)
Ø 科学者は公共の利益のために行動してくれていると信じる割合 87% (同76%)
Ø 医者の倫理観を信る割合 92% (2019年87%)
Ø ドイツと中国でどちらの国がアメリカにとって重要ですか ドイツ 43%(2019年41%) 中国 44%(同44%)
Ø 次の国々のCOVID-19の対応を好ましいと思った割合
ドイツ 66%
韓国 66%
英国 59%
米国 47%
イタリア 34%
中国 33%
今回のこの世論調査のオチとして、支持政党別の回答があり、医療科学者や科学者への信頼度が非常に高いと回答した民主党支持者は夫々53%と52%に対し、共和党支持者は31%と27%という大きな差が出た。
やはりダーウィンの進化論よりも創造主を信じる福音派(専ら共和党支持)の影響か、はたまた感染者の割合に党派で有意な差があるということであろうか・・。
それにしても日本が比較対象に出ていないところが気になります。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 中国の「発展途上国」ステータスにクレームをつける米国
米国のトランプ大統領は、中国や韓国、シンガポール、メキシコなどが世界貿易機関(WTO)に「発展途上国」と申告し、優遇措置を受けているのは不当であるとして、WTOの制度改革を加速させるよう米国の通商代表部(USTR)に指示・命令を出している。
90日以内に制度見直しの進展がなければ、米国が一方的に対象国の優遇を取りやめると言い、改革に消極的な加盟国に圧力を掛けてもいる。
トランプ大統領は、ツイッターで、特に中国に関しては、「最も裕福な国が途上国であると主張し、ルールを逃れて優遇されている。そんなことは終わりだ!」とコメントしている。
l TSMCファーウェイからの受注差し止め
半導体受託生産の世界最大手である台湾の台湾積体電路製造(TSMC)は実際に、華為技術からの新規受注を止めた模様である。
米国の商務省が、米国製の製造装置やソフトウエア使って第三国で生産された半導体を許可なくファーウェイに輸出することを禁じたことに呼応するかのような対応であることを付記しておきたい。
(2)韓国/北朝鮮
l LG電子、国内ラインのインドネシアへの移転発表
韓国有数企業の一つであるLG電子は、南東部の慶尚北道・亀尾にある事業場のテレビ生産ライン6本のうち2本をインドネシアに移転すると発表している。
同社の亀尾事業場は現在、有機ELテレビや発光ダイオード(LED)テレビ、コンピューター用モニターなどを組み立て・生産している。
LG電子はこのラインのうち2本のラインを年内にインドネシア・チビトンの工場に移して同国でのテレビ生産能力を大幅に引き上げ、アジア圏のテレビ生産拠点として育成する計画をしている。
米国などは、産業の国内回帰などを、この新型コロナウイルス渦の中で進めようとしているが、LG電子は、人件費高騰などの国内ビジネス環境悪化等を背景に、国内から生産ラインを海外に移そうとしている。
l 文大統領高支持率の脆弱性
韓国ギャラップなどによる文大統領に対する国民の支持率は60%を超え、高水準を維持しているが、特に大統領を支持する理由のうち、
「経済政策」と「雇用創出」はそれぞれ1%程度に留まり、「経済問題にうまく対処している。」との回答は僅か2%に過ぎない。
こうしたことから、今後、もしも、失業者が増え、庶民の収入源に不安が生じてくると、一気に文大統領の支持は落ち、混乱に向かう可能性もあると見ておきたい。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,240.02(前週対比-5.93)
台湾:1米ドル/30.03ニュー台湾ドル(前週対比-0.06)
日本:1米ドル/107.57円(前週対比-0.59)
中国本土:1米ドル/7.1386人民元(前週対比-0.0324)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):1,970.13(前週対比+42.85)
台湾(台北加権指数):10,811.15(前週対比-3.77)
日本(日経平均指数):20,388.16(前週対比+350.69)
中国本土(上海B):2,863.765(前週対比-4.694)
4. 月刊「人事マネジメント」への拙稿のこと
3月から掲載しております掲題月刊誌の5月号の拙稿をご参考まで共有させていただきます。
ご笑覧いただければ幸いです。
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