ニュースレター国内版 2019年・春(234号)
1. 感染抑制のための初動を誤ったトランプ大統領 -ワシントンポスト記事抜粋
2. 新型コロナウィルス用ワクチン開発状況
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 中東フリーランサー東京報告46
5. 外国人材アクセスドットコムのコンテンツのご紹介
1.感染抑制のための初動を誤ったトランプ大統領 -ワシントンポスト記事抜粋
2001年にアメリカで起こった細菌兵器炭疽菌(anthrax)テロで米国内がパニックに陥った際に当時の疾病管理予防センター(CDC)が中心となって、国のトップが国民に対しどのように説明を行うことでパニックの伝染を抑止するべきかについてまとめた450ページものマニュアルを作っている。
今回の新型コロナウィルスの発生時点では当然ワクチンも治療薬もなく、また検査能力も備わっていなかったわけだが、その段階で国が取りえる最良の初動対応は、正確かつ信頼できる情報を迅速に国民に提供することであり、そのやり方がこのマニュアルには記されていた。
例えば、「発言の一貫性を保て。 正確であれ。重大な情報を出し惜しむな。そして重大な衛生に関するメッセージを国民に伝えるための準備や知識、訓練を積んでいない人間を記者会見のポディウムに立たせるな」と記されている。
ところが、トランプ大統領はこのマニュアルのチェックリストを知ってか知らずか、2月末の時点で「我が国は感染者数はゼロであろう」と語り、その会見から2週間後の3月13日の本記事掲載時点で米国内で2,200人が感染し、49人が亡くなっている。
また、大統領がホワイトハウス内のパンデミックオフィスを解散させたことに対し記者会見で理由を問われ「知らなかった。それについては何も知らない」と回答。
次に、米国内の試験体制が大幅に遅れた責任を認めるかとの問いに、「悪いのは自分ではなく“状況”であり誰かが作った規制のせいだ」と答えた。
さらにはアメリカ国立衛生研究所(NIH)傘下のアレルギー症と感染症の全米研究機関のトップであるアンソニー・ファウチ博士の発言と矛盾する発言を繰り返す大統領に対し、国民はどちらを信じればよいのかとの質問には回答を避ける始末。
ホワイトハウスに入ってからトランプは科学者を追い出し、研究者を沈黙させ、気候変動に関する基本情報を抑圧してきている。
今週月曜日に国民に対しての様々な自粛要請を発表したトランプ大統領だが、科学的根拠を明かさずに「このウィルスは暖かくなればいなくなる」とか「中国ウィルス」などのメッセージを振りまき、既に彼に“感染している”岩盤支持層はさておき、一般的国民はこの重大事に何を信じて良いものやら、といったところであろう。
2. 新型コロナウィルス用ワクチン開発状況
新型コロナウィルス用ワクチンの開発ではアメリカのModerna Therpeutics社やInovio Phamaceuticals社、そしてドイツのCureVac社といったバイオテクノロジー企業がDNAとRNA技術を用いたmRNAというワクチンの開発を終え、現在安全性試験を行っている。
これは遺伝子操作でウィルスたんぱく質を大量生産するもので、これを抗原と感じる体が体内に抗体を作るというメカニズムである。
最近トランプ政権がドイツのCureVac社の研究開発拠点を米国に設ける様アプローチしているとドイツのメディアが報道していた(トランプ政権側は否定)。
一方、米国の地方紙ボストングローブの子会社で健康・衛生関連専門のインターネットニュースSTATが合成生物学(synthetic biology)に基づくワクチンの開発の様子を伝えている。
これはアメリカ国立衛生研究所(NIH)がワシントン大学とともに2017年から開発を進めているもので、マイクロソフトの創設者であるビルゲーツと妻のメリンダゲーツの基金が高額の寄付を行っている。
コンピュータシステムによりタンパク質から設計され構成されたナノ粒子にコロナウィルスの分子を棘のように繰り返しの配列で取り付けることで人体の免疫システムを起動させやすくするものである。
期待されている合成生物学の長所として数十億単位のワクチンの量産が可能であること、そして冷蔵の必要性が無く可搬性が高いことが挙げられている。
新型コロナウィルスはその猛威が終息したとしてもSARSのように根絶されず、インフルエンザウィルスのように地球上にはびこる可能性があることから今後大量のワクチンが必要とされ、また新たに登場してくる可能性がある派生型のウィルスへの応用も効く可能性があることからこの合成生物学型ウィルスに熱いまなざしが向けられている。
なお、参考までに日本の厚生労働省の新型コロナウィルスに対するワクチンに関するウェブサイトの情報も下記します。
Quote:
厚生労働省が創設に関わり、2017年より拠出を行っているCEPI(感染症流行対策イノベーション連合、本部:ノルウェー)は、3月10日、新型コロナウイルスに対するワクチン(COVID-19ワクチン)の開発を促進し、候補ワクチンを迅速に臨床試験に導くことを目的とし、新たに以下の2者とのパートナーシップ締結を発表いたしました。これらは、いずれも本年2月にCEPIが実施した公募を経て採択されたものです。
・Novavax社(米国)
・オックスフォード大学(英国)
【参考】
※CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)について
CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)は、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが拠出し、平時には需要の少ない、エボラ出血熱のような世界規模の流行を生じる恐れのある感染症に対するワクチンの開発を促進し、流行が生じる可能性が高い低中所得国においてもアクセスが可能となる価格でのワクチン供給を目的としている。
新型コロナウイルスに対するワクチン(COVID-19ワクチン)の開発においては、これまで以下の4者とのパートナーシップ締結を行っている。
・Inovio社(米国)
・クイーンズランド大学(オーストラリア)
・Moderna社(米国)、米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)
・CureVac社(ドイツ)
Unquote::
なお、ワクチンではなく治療薬としては、急性膵炎の治療薬の点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると、東大医科学研究所が昨日発表しておりました。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 米国が中国製医療関連用品の輸入関税を免除
米国通商代表部(USTR)がマスクや消毒用ウェットティッシュ、検査用手袋など中国から輸入される多くの医療関連用品に対する関税を免除し始めている。
新型コロナウイルスの感染が急速に広がる中、医療用品に対する関税免除申請の多くが迅速に処理されていると見られている。
しかし、その他の中国製品に対する関税免除申請の承認には数カ月かかっているとも報告されている。
l 本年1月~2月の貿易高減、貿易赤字へ
中国政府・税関総署が発表した本年1~2月の輸出額は、前年同期対比17.2%減の2,924億米ドルとなり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大きく落ち込んだとコメントされている。
1~2月基準では、2016年以来4年ぶりの減少幅となっている。
中国政府が打ち出した感染防止措置で企業の生産や物流が一旦、停滞していることなどが影響していることは間違いなく、この結果、世界全体の貿易を通じた実体経済の悪化も懸念される。
品目別では、工場が止まって生産が影響を受けた携帯電話や衣料品などの落ち込みが目立ったとされている。
一方、本年1~2月の輸入額も4%減の2,995億米ドルとなり、貿易収支は71億ドルの赤字となっている。
(2)韓国/北朝鮮
l 厳しい景気見通し
韓国政府・企画財政部が発表した「最近の経済動向」(グリーンブック)によると、本年2月の国産乗用車の国内販売台数は前年同期対比で24.6%減少している。
これは、世界金融危機となるリーマンショックの余波が残っていた2009年1月以降で最も低い数字である。
デパートの売上高も前年対比で30.6%減少している。
デパートの売上高は昨年12月から3カ月連続のマイナスを記録している。
そして、大型スーパーなど量販店の売上も同期間で19.6%減少した。
企画財政部は、「最近の韓国経済は新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済活動や経済心理が委縮し、実体経済・金融市場の不確実性が拡大している模様である。
主要国をはじめとする世界経済成長率の見通しが下方修正され、原材料・金融市場の変動性が増すなど、世界景気の下降リスクが拡大している。」
と分析した上で、「景気の改善の流れが現れている」と肯定的な評価を下してきていたものを、この1カ月で、「景気下降」と評価を下方修正している。
こうした中、韓国トップ企業である三星電子は、新型フラッグシップスマートフォンである「ギャラクシーS20」シリーズを韓国や米国、カナダ、シンガポール、ベトナムなど20カ国・地域で同時発売し、3月末までに発売国を約130に増やす予定であると発表している。
尚、三星電子は、韓国南東部の慶尚北道亀尾市の事業場で生産している高級スマートフォンの一部を一時的にベトナムで生産するとも発表している。
同社は新型コロナウイルスの感染者が出た亀尾事業場を閉鎖中で、同事業場からは感染者が出ていることからの対応策を取っている。
l 大統領支持率5%増
調査会社である韓国ギャラップが発表した最新の世論調査によると、文在寅大統領の支持率は1週間前の調査時の44%に比べて5ポイント高い49%を記録している。
これについて、「新型コロナウイルスの初期防疫失敗問題や中小企業・個人事業主の被害、株式の大暴落など深刻な経済問題を考えると、文大統領の支持率が大きく上昇するのはミステリーである」
との見方が出ている
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,208.50(前週対比-18.15)
台湾:1米ドル/30.02ニュー台湾ドル(前週対比-0.09)
日本:1米ドル/106.88円(前週対比-1.62)
中国本土:1米ドル/6.9848人民元(前週対比-0.0601)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):1,771.44(前週対比-268.68)
台湾(台北加権指数):10,128.87(前週対比-1,192.94)
日本(日経平均指数):17,431.05(前週対比-3,318.70)
中国本土(上海B):2,887.427(前週対比-147.08
4. 中東フリーランサー東京報告46
三井物産戦略研究所の大橋誠研究員から掲題のレポートを頂きましたので皆様に共有させていただきます。
大橋さんからは下記のコメントを頂いています。
「中東フリーランサー東京報告46 をお送りします。今回は前回書き切れなかったイラク・シリア情勢と米国の対イラン制裁とイラク経済の分析に加え、今後シリアの延長になりそうなリビア情勢を纏めたのですが、折からのコロナウィルス騒ぎが原油需給の将来不安を加速させる中、一層の減産拡大を目指した3月6日のOPECプラス会合がロシアの拒否で決裂、サウジが増産方針に転じたことから原油価格が暴落し、中東の話題の中心はすっかりそちらになってしまいました。日経の中東通である脇さんが、この流れの背後にMbS皇太子の指示があると報じていますが、まさしく2016年5月のサウジの減産凍結拒否に関するナイミ石油相(当時)とMbS副皇太子(当時)の衝突(MbSがイランの減産合意を絶対条件として譲らず、ナイミは解任)を彷彿させるものがあります。そして時を同じくして、MbS皇太子がMbN前皇太子と国王の実弟Ahmad王子(元内相)を「反逆罪」で拘束したとの報が入り、これはこれで2017年11月のリッツカールトン収監事件を思い起こさせるものでした。MbS皇太子が二つの出来事を敢えてシンクロさせたのか、それとも偶々ぶつかってしまったのか、この点はもう少し情報を収集分析して、次回にでもご報告させて頂きますが、MbS皇太子がいずれ来る国王就任に備え(G20前との噂もある)、現国王の実母兄弟グループである「スデイリセブン」の整理に愈々乗り出したと言うことかと推察します。今回もMbS皇太子は「強いリーダー像」を内外に焼き付ける必要に迫られていると思います。アラブ部族の伝統は、近い親族ほど敵であり、機会をとらえて排除するのはむしろ伝統とも言えるからです。」
5. 外国人材アクセスドットコムのコンテンツのご紹介
新たに外国人材アクセスドットコムに掲載したコンテンツを下記リンクにてご覧いただけます。
『アメリカ人女性Kさんの異文化体験』:→ https://www.gaikokujinzai-access.com/post/アメリカ人女性Kさんの異文化体験
---------------------------------------------------------------------------
本ニュースレターの配信の停止を希望される方は恐縮ですが、下記メールアドレス宛に「配信停止希望」のタイトルのみ打っていただき返信いただければ幸いです。