ニュースレター国内版 2021年・春(263号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第263号)

 

1. バイデン大統領の初めての議会両院でのスピーチ その①

2. バイデン大統領の初めての議会両院でのスピーチ その②

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

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1.バイデン大統領の初めての議会両院でのスピーチ その①

 

428日にバイデン大統領の初の両院議員総会でのスピーチが行われた。 

因みに大統領就任後最初の議会スピーチはState of the Union(一般教書演説)とは呼ばれないそうである。就任早々では国の状況を語れないためとのこと。 大統領の議会向け演説は通常1月から2月の年初に行われるものだが、今回は今年16日に起こった暴徒による議会占拠事件の教訓から警備を厳重にすることと、コロナ対策に時間を取ったことから、就任から丁度100日目に行われた。コロナ対策として、両院の如何なる議員もゲストを議場に招けず、議場をスカスカの状態に保った。 

 

また通常は演題の間近に控える閣僚メンバーも一人も参加しないと事前報道されていた。が、画面を見る限り、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官は出席していた。通常は全員参加する最高裁判事も今回はJohn G;. Roberts Jr.主席判事のみとなった。

同様に軍からも統合参謀本部議長のMark A. Milley大将のみの参加となった。その結果、通常は議場一杯に1600人もの人々が集うところ、今回はわずか200人前後に抑えられた模様。異例づくめの大統領議会スピーチだが、今回特に目立ったのは大統領の後ろで大統領を見下ろすポディアムに座る上下両院議長が二人とも女性となったことである。 

 

この点は、バイデン大統領がスピーチの冒頭に取り上げ、初の女性副大統領となったカマラ・ハリス上院議長を称え、歓迎した。大統領のスピーチ後に行われる反論役として、共和党の上院議員のTim Scott(サウスカロライナ州選出)が立ったが、それと共に、民主党のリベラル代表としてJamaal Bowman下院議員(ニューヨーク州選出)も反論スピーチを行っているこれまでの議会スピーチのテレビ放映の中で、最多の視聴者を集めたのがクリントン大統領で1993年に67百万人、一方、バイデンを副大統領として映し続けたオバマ大統領のスピーチは8回平均で40百万人であった。トランプ前大統領は4回の平均で44百万人であった(ただ、アメリカは毎年23百万人人口が増える)。 

 

CNNによる100日目の大統領支持率では50%台前半と、オバマ大統領の100日目に比べ10ポイント近く低いものの、40%台であったトランプ前大統領に比べればまだ高いただ、明らかにトランプ政権時代からの党派分裂の二極化傾向が続いていることが、バイデン大統領の支持率が歴代大統領に比べ低い原因であるとCNNは伝えていた。

 

2.バイデン大統領の初めての議会両院でのスピーチ その②

 

肝心のバイデン大統領のスピーチについては、まず就任から100日の成果としてコロナ対応の実績(ワクチン接種量の目標を上回る展開とマスク着用の徹底に伴うシニアの死亡率の低下、過半数の公立小中学校の通常授業の再開等)を強調した。また、Rescue Planによる弱者・困窮者の救済と雇用促進の結果、大統領就任から100日での新規雇用創出数で過去最高を記録したと強調。その上で、330日に発表した気候変動対応等のインフラ投資を中心としたJobs Planをアメリカの将来のための大切な投資と位置付け議会による早急な審議と承認を求めた。

 

具体的には中国にリードされているEVや再生可能エネルギー関連に重点投資し、中国に勝つと宣言。そのためにもバッテリーや風力発電のブレードなど中国製ではなく、必ずアメリカ製のものを買うというバイアメリカンを強調。大卒でなくてもブルーワーカーとして十分対応できる雇用創出と賃金増を図り、中間層を厚くするための雇用づくりを目指すとした。政府がやるべきことはアメリカの将来に必要な投資をすることとして、支出・出費というよりはリターンがある投資を強調。研究開発投資の必要性を強調した中で、DARPA(国防先端研究プロジェクト局)やNIH(国立衛生研究所)を取り上げたことは政府主導のRDにかなりの期待を持っていることが伺われた。 DARPAはインターネットやGPS、半導体をこの世にもたらし、NIHは小児まひワクチンなど人類にとって画期的な進歩をもたらしてきている。

 

さらに、American Families Planの承認を議会に求めた。これはチャイルドケア、12年の義務教育を16年に延伸、有給家族傷病休暇といったリベラルな政策に1兆ドルの支出と5千億ドルもの税還付を予定するもの。Jobs Planと共に、財資は富裕層トップ1%(年収40万ドル以上)と企業への増税外交面では同盟国、友好国に”America is back.”は良いが、”How long will you be back?”と言われるようではしっかりした信頼関係が築けないとしてアメリカ第一主義でない国際関係重視の姿勢への支持を求めたそしてコンセンサスづくりに手間や時間のかかる民主主義よりも、国の強権発動をより良い統治とみなす中国に象徴される専制主義の国に対し、平等と公平を理念とするアメリカが民主主義の盟主として民主主義の価値を示し、勝利するとした。パンデミックとの戦い、人権擁護の戦い、中国との戦い、気候変動との戦いに勝利するのは民主主義とした。習近平国家主席には米軍がインド太平洋へのミリタリープレゼンスを維持すると直接伝えたと強調。 

 

立法では、アジア系アメリカ人への差別禁止法を議会が超党派で通したことを称賛、議会に求めるものとして警察リフォーム、LGBTQ保護法、女性保護法、移民改革法、銃改革法、選挙権改革法を掲げた。やはり高齢のためか、エネルギッシュなトーンではなく、言いよどむことも何度かありましたが、1時間弱のコンパクトなスピーチに仕立て、ポイントを絞って強調したので政策のアピールとしてはわかりやすかったのではなかったでしょうか?

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  今年の台湾の経済成長率予想5.03%

中華経済研究院は今年の台湾の経済成長率を4.8%に上方修正している。

これは、現在、台湾国内の経済成長予測機関の中では比較的楽観的な見通しとなっている。

更に、台湾国内では、状況によっては、今年は5%成長も可能ではないかとの見方も出ている。

そして、実際に、台湾の輸出売上高は堅調に推移し、消費も増加していることを背景として、台湾経済研究所は、台湾の今年の経済成長率の予測値を、0.73ポイント引き上げて5.03%にしている。

 

l  台湾の水不足と半導体製造への悪影響の可能性

台湾経済部は、台中市にある2つの主要サイエンスパーク内の企業向けの水供給を15%減らすなどの政策を取っており、「台湾の水不足」は深刻である。最近では、工業用水以外の水供給も削減されており、いよいよ事態は悪化している。

この台中市には、台湾積体電路製造(TSMC)や米国のマイクロン・テクノロジーが半導体製造施設を置くが、水道水の供給制限が両社の業務に影響を与える可能性も出てきている。TSMCはタンクローリーから使用する水の量を増やす計画であり、問題ないとしているが、そもそもの水不足が顕在化してきているからである。台湾国内では、新たな井戸の掘削まで議論されているが、そもそも島国である台湾の水不足が今後もこうした形で発生することになってくると、世界の半導体生産基地の世界地図にも変化が出てくるかもしれない。

 

l  台湾への攻撃力を誇示する中国の爆撃訓練

中国軍の組織の中で台湾を管轄する東部戦区は、空軍の爆撃機「H6」10機以上が最近、連続9時間に及ぶ爆撃訓練を行ったとSNS上で伝えた。中国は、日米首脳会談の共同声明で台湾問題が明記されたことに反発しており、台湾への攻撃力を誇示し、日米台の連携を牽制したとも見られる。尚、今回の訓練では、中国東部の軍用空港を離陸後に編隊飛行し、敵地と想定した訓練場に爆弾を投下したと見られている。

 

l  久しぶりの国際モーターショーとなる上海国際モーターショー開催

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的なモーターショーの開催中止が続く中、感染抑制に成功している中国では、久しぶりの国際モーターショーとなる「上海国際モーターショー」上海市で開幕されている。国際社会の環境問題に対する意識が強まっていることを前提にして、電気自動車(EV)の普及拡大に注力している中国本土政府の意向なども反映して、今回はEVが注目されている。そうした中、例えば、中国市場から世界市場を狙う韓国の現代自動車も、EV専用プラットフォーム「E―GMP」を採用した初のEV「アイオニック(IONIQ)5」を、子会社の起亜自動車は同社初のEV専用モデル「EV6」を公開したりしている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  韓国、台湾の半導体製造企業に米国への投資を期待するバイデン大統領

米国のバイデン大統領は韓国トップ企業である三星電子や台湾の台湾積体製造など世界の主要半導体関連企業19社を集めて、オンライン会議を開催したが、半導体不足でGMやフォードなど米国企業のほか、韓国・ドイツなど主要企業が工場の稼働を中断する状況となっている中、「国籍に関係なく“半導体価値同盟(AVC=Alliance Value Chain)”を構築して中国を牽制すべきである」と強調している。中国が半導体サプライチェーンを再整備し、米国など世界を相手に攻撃を準備しているという理由を上げており、更にバイデン大統領は、三星電子を含めた主要各社に対して、「米国への投資を増やしてほしい」とも要請している。

 

l  中米経済統合銀行との関係を深める韓国と台湾

韓国政府・企画財政部は、韓国が8月1日から中米経済統合銀行(CABEI)の域外パートナーになると発表している。CABEIが出資比率8%以上の域外加盟国もパートナーになれるよう規定を改めた為、昨年1月にCABEIに加盟し、既に出資比率が9%となっている韓国は域外パートナーとなることとなったということである。CABEIは中米5カ国(エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラス、コスタリカ、グアテマラ)が地域の均衡の取れた開発と経済統合を目指して1960年に設立した国際金融機関であり、現在は15カ国・地域が加盟しており、韓国は6億3,000万米ドルの出資をしている。国際金融には弱い韓国が、こうした動きを取りながら、その立ち位置を更に強めていこうとしてくるものと見ておきたい。

 

一方、台湾政府・外交部は中米経済統合銀行(CABEI)と台湾事務所の開設に関する協定を締結したと発表している。

国際政府機関が台湾に事務所を置くのは初めてとなる。台湾の呉外交部長は調印式の挨拶で、CABEIや中米の国交樹立国とより堅実な協力関係を築いていくことに期待を寄せているとコメントしている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,116.68(前週対比-2.45)

台湾:1米ドル/28.07ニュー台湾ドル(前週対比+0.26)

日本:1米ドル/107.68円(前週対比+1.13)

中国本土:1米ドル/6.4904人民元(前週対比+0.0259)

 

2.    株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,186.10(前週対比-12.52)

台湾(台北加権指数):17,300.27(前週対比+141.46)

日本(日経平均指数):29,020.65(前週対比-662.72)

中国本土(上海B):3,474.166(前週対比+47.548)

 

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