ニュースレター国内版 2020年・夏(243号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第243号)

 

1. 世論調査と実際の投票行動のズレの4つの可能性

2. 人権活動家ジョン・ルイス議員逝去

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

1.世論調査と実際の投票行動のズレの4つの可能性

 

今年113日の大統領選に関する最近の米国内での世論調査ではバイデン候補がトランプ大統領を大きく引き離し、ワシントンポストとABCニュースの去る日曜日の調査では15ポイントもの差が見られた。 

前回2016年の選挙戦でもトランプ候補はヒラリー・クリントン候補の後塵を拝していたがここまで差を付けられたことはなかった。

ただ、それでバイデン候補の勝利が現実的かというと選挙当日までの3か月半で多くのことが起こり得、その中でもトランプ大統領に有利に働く出来事が4つあり得るとワシントンポストが分析していた。 

 

  1. 最高裁判事の空席が生じること 

前回の2016年の大統領戦中の2月にアントニン・スカリア最高裁判事が逝去し、オバマ大統領がその後任を指名したが、その指名は次期大統領がなすべきであるとして上院与党共和党はオバマ大統領指名者の承認を拒んだ。 

トランプ候補は共和党の正式指名をうけたのち、自らが大統領となったならば誰を最高裁判事に指名するか、そのリストを公表した。

その結果、トランプに投票した人々の4分の1以上がそのリストを根拠として投票したと後日の調査で回答している。 

先週金曜日にルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事ががんの再発があったことを公表している。 

今のところ彼女の治療はうまく行っているようだが、87歳と高齢であることから将来空席となる可能性が意識され始めている。 

そうなると空席を埋める候補者の指名は次期大統領が行うこととなる。

現在5人対4人で保守系が多数派ではあるものの最近、リベラル寄りの判決も下しており保守派としては6対3として確実に保守的な判断を最高裁に期待するためにもたとえ個人的にはトランプを避けていても投票するという層が増える可能性がある

 

  1. 投票率が下がる場合

現状の世論調査は113日に投票所に行かないであろう人々にも尋ねている。 

一般的に共和党支持層は候補者に拠らず投票所に向かう割合が高い。 

マンモス大学の世論調査では投票登録済みの投票可能性の高い人々の間ではバイデン候補がトランプ大統領を13ポイントリードしたが、投票率を低く設定するシミュレーションではそのリードが7ポイントにまで縮まっている。 

トランプを支持する岩盤支持層の熱狂に対し、バイデンの支持層の熱狂度は低いと言われ、バイデン陣営の頼みの綱は投票所に行くことでトランプを大統領の座から卸すことに熱狂している人々がいること。 

その熱が選挙当日まで続くかどうか。

 

  1. バイデンのしくじり

バイデン自身、自分が放言や失言があることを認めているが、最近であれば「トランプに投票する黒人は黒人ではない」と語って黒人層の顰蹙を買っている。 

コロナウィルス感染症問題からバイデン陣営は専ら準備されたオンラインメッセージを中心に活動をしており“当面(?)”失言の可能性は低いが、いずれ3回のディベートがあり、また全国放送メディアのインタビューも予定される。 

 

  1. コロナウィルスのさらなる悪化

感染第二波が最悪の米国にあって113日の投票が通常通り行えるか、郵送投票になるかなどまだ未確定なことは多い。 

ただ、トランプ岩盤支持層は元々コロナウィルスをそれほど気にせず(信じず?)、間違いなく投票行動を起こすと見られている。 

上記②と同じ理由だが、ただ郵送投票が認められればバイデンに有利となる。

 

特に副大統領候補に関する記述はなかったが女性であることは決まっているので投票率へのプラスや失言の少なさは期待できるのではと思われます。

 

2. 人権活動家ジョン・ルイス議員逝去

 

人種差別への抗議が続くアメリカで、717日、下院議員(民主党ジョージア州選出)ジョン・ルイス議員がすい臓がんで亡くなった。 

18歳のころから人権運動に参加し、マーチン・ルーサー・キング牧師にも会っている。

25歳となった1965年にはアラバマ州で平和的な抗議デモを行っている最中に警戒する州兵に叩かれ頭がい骨骨折を経験するなど筋金入りの人権活動家であったが、47歳となった1987年から亡くなるまで連続して下院議員として当選し、下院民主党の幹部を務めると共に人権運動のリーダー的存在でもあり続けた。 

オバマ大統領時代に文民の最高位の勲章となる大統領自由勲章を受章している。 

同僚の民主党議員連は彼の死を単に悼むだけでなく、彼の活動の遺産としてルイス議員の名を冠した投票権を守るための法律John R. Lewis Voting Rights Act of 2020を残すべくトランプ大統領や上院の院内総務のミッチ・マコーネル上院議員(共和党、ケンタッキー州選出)に早期法制化を求めた。 

また、上記のアラバマ州での平和行進で怪我をした場所にあった橋の名前がEdmund Pettus Bridgeといい、南北戦争時代の南部同盟の将軍の一人で、後にKKKを創設した人物の名を採っているが、これをルイスの名前に改名すべきという運動もなされ始めている。 

元統合参謀本部議長でジョージ・ブッシュ政権時に国務長官を務め、最近では共和党員でありながらトランプ大統領不支持を明らかにしたコリン・パウェル氏は「アメリカはジョン・ルイスのような人物をもっとたくさん必要としている」と語り哀悼の意を表している。

故ルイス議員はトランプ大統領の政策や国の分断を深める発言に最も厳しい批判を行ってきていた。 

トランプ大統領からは亡くなった翌日にツイッターでお悔やみのメッセージが出されたのみという。

大統領選は黒人や被差別層のアイコン的人物の弔い合戦ともなるのであろうか。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  PAC3更新を米国政府が承認

台湾政府・国防部は、台湾の地上配備型迎撃ミサイルパトリオット(PAC3)の更新計画を米国政府が承認したと発表した。

ミサイル性能の維持が目的で、費用は約6億2,000万米ドルとなるとされている。

米国のトランプ政権が台湾への武器供与を決めたのは、昨年の新型戦闘機「F16V」を含め、今回で7回目となる。

また、台湾周辺では、中台統一を目指す中国本土が軍事活動を一段と活発化させている中、総統府報道官は、

「わが国の防衛能力の強化に協力し、台湾海峡と周辺地域の平和と安全を確保してくれていることに感謝する」

との声明を出し、米国政府の決定を歓迎している。 

 

l  台湾積体(TSMC)史上最高売上

世界のファウンドリ(半導体受託生産)1位である台湾の「台湾積体=TSMC」は、本年6月に史上最高の売上高を記録している。

新型コロナウイルス拡散の影響で、データセンターの需要が増えサーバーのシステム半導体生産注文が集まり、ファーウェイ、シャオミ、ビボなど

中国本土のスマートフォンメーカーのAP(モバイルアプリケーションプロセッサ)の注文も増えたことなども増加の背景と見られている。

TSMCは、本年6月に売上高が1,208億7,800万ニュー台湾ドルを記録したと発表している。

これは前年6月に比べて40.8%増加したことになり、また史上最高となっている。

TSMCは本年3月の売上高1,135億2,000万ニュー台湾ドルを記録し、最高記録を立てたばかりであるが、3ヶ月後に更にこれを更新している。

TSMCが6月に好実績を記録したことを受けて、TSMCは本年第2四半期(4〜6月)には3,107億ニュー台湾ドルの売上高を記録している。

前年第2四半期の2,410億ニュー台湾ドルより29%上昇している。

TSMCが市場シェアを拡大して、世界のファウンドリ市場を掌握している様子がこうしたことからも垣間見られると評価されている。

 

l  台湾に歩み寄るインド

台湾要人からの現地語ニュースによると、

「インド政府は、対米重要交渉人であり、インド外務省・アメリカ大陸部署の責任者であるゴランガラルダスをインド・台北協会の会長に選び、台湾に対する最高要人に選出した」

とのことである。

「こうしたインド政府の動きは、インド政府がインドと台湾の関係を強化する意図があることを示している」ものであると見られている。

そしてまた、中国本土は軍事的および経済的拡大政策を通じて世界の安全を脅かし続けており、米国と中国本土の間の紛争も増加している中、民主主義国家の中には、

中国本土の権威主義体制の拡大に対抗する為に力を合わせることが重要であると言う姿勢が示し始められており、こうした中、台湾の地位もますます重要になってくるとの見方もなされている。

また、インドのシンクタンクや戦略専門家の多くは、インド政府に、インドと台湾の実質的な関係を改善するよう常に求めてきたが、ゴランガルダス氏の任命は、

正にこれらの要請に対するインド政府の反応と見るべきであろうとの見方を示している点も留意しておきたい。

尚、ダイ・グオラン氏がインド外務省のアメリカ大陸局の局長を務めたとき、彼はインドとアメリカの関係の継続的な改善に貢献し、インド、アメリカ、

日本、オーストラリアでの四面メカニズムの確立の為に働いたが、今度は台湾も含めた連携となる可能性もあるとの見方も出ている。

 

(2)韓国/北朝鮮

l  朴前大統領への差し戻し審で実刑判決

韓国の前大統領である朴権恵被告が韓国の財閥から巨額賄賂を受け取った贈収賄事件などで、収賄や横領の罪に問われた朴被告に対する差し戻し審の判決公判が、ソウル高裁であった。

ソウル高裁は、「国政に大きな混乱が生じ、政界をはじめ国民全体の対立が激化した」として、朴被告に懲役20年、罰金180億ウォン、追徴金35億ウォンの実刑判決を出した。

この朴前大統領弾劾の結果、現在の文政権が突然登場し、南北融和路線に韓国が大きく舵を切ったことを念の為、我々は再認識しておきたい。

一方、韓国政府・産業通商資源部は、新型コロナウイルス感染拡大による危機を克服し、コロナ後の時代の世界経済をリードする為の国家発展戦略「韓国版ニューディール」の総合計画の実行に向けた司令塔として、

「産業・エネルギー韓国版ニューディール推進団」を発足させたと発表した。

 

l  現代自動車グループ、エコカー販売好調

韓国では、本年上半期(1~6月)に現代自動車とその傘下の起亜自動車のエコカー販売が好調となっている。

両社のエコカー販売台数は前年同期対比36.2%増の6万7,798台で、完成車全体の販売台数が同5.7%増に留まったのに比べ、増加率は6倍を超えている。 

新型コロナウイルス余波もあってのことと見られている。

今後の動向をフォローしたい。

こうした中、その現代自動車グループの実質トップである鄭義宣首席副会長は、大統領府で開かれた国家発展戦略となる「韓国版ニューディール」の報告大会にテレビ電話で参加し、

文在寅大統領が打ち出した気候変動に対応する、「グリーンニューディール」に関連して、2025年までに世界市場で電気自動車(EV)の売り上げ100万台、シェア10%以上を目指すと発表している。

文大統領のポプュリズム的政策姿勢に乗せられた感じである。

 

[主要経済指標]

1     対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,204.95(前週対比-3.82)

台湾:1米ドル/29.48ニュー台湾ドル(前週対比+0.02)

日本:1米ドル/107.21円(前週対比-0.43)

中国本土:1米ドル/6.9979人民元(前週対比+0.0021)

 

2.   株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,201.19(前週対比+50.94)

台湾(台北加権指数):12,181.56(前週対比+107.88)

日本(日経平均指数):22,696.42(前週対比+405.61)

 

中国本土(上海B):3,214.129(前週対比-169.193)