ニュースレター国内版 2022年・夏(299号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第299号)

 

1. 改めて注目株となりつつあるブティジェッジ運輸長官

2. 中間選挙終盤戦でトランプイズムを踏襲する共和党候補

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 拙著 『外国人材が中小企業を救う』発刊のこと

5. 中東フリーランサー報告 15 

6.寺島実郎氏メディア露出情報

 

-------------------------------------------------------------------

1.改めて注目株となりつつあるブティジェッジ運輸長官

 

ブティジェッジ運輸長官はインディアナ州サウスベンド市長の立場から2020年の民主党大統領選に出馬し、バイデン大統領に敗れはしたもののその若さと話のうまさ、頭脳の明晰さやアフガン従軍経験などで多くの民主党員のサポートを得た。その結果、バイデン大統領は彼を閣僚入りさせ、運輸長官に指名したわけである。そのブティジジェッジ長官が昨年法制化されたインフラ法に基づき運輸省に割り当てられた巨額の予算を市町村に振り分けていく立場にある。立法からこれまで約1年、執行のルール作りなど省内の官僚的プロセスに時間を取られたがようやく予算執行の段階に入っている。

 

そこでブティジェッジ長官が全米を回ってサンタクロースのように市町村の道路や橋梁を維持、補強、新築のための予算を配って回る様子をワシントンポストが伝えた。インフラ法で目を惹いているのは全米の隅々にEV用の充電ステーションを設置する巨額予算だが、この予算は全50州の高速道路や幹線道路などに応じて州の自由となるもの。

 

一方、全米の市町村が管轄する道路や橋梁、ガス管・水道管、港湾設備などの公共インフラの整備、修復のための約1,200億ドルの予算はブティジェッジ長官の裁量で各地に配分されていく。民主党色の強い都市のみならず共和党系であれ、政治色に関係なく予算配分するわけだが、予算割り当て決定の会見や着工式などの関連イベントでメディア露出が増し、彼の姿は広く地方に認知されている。ということで彼自身の政治資本が高まっているとも見られるが、ブティジェジ長官は2024年の大統領選への関心は見せず、あくまでバイデン大統領に忠誠を誓う姿勢を示している。まだ40歳の若さであることから民主党幹部の中にも2024年にこだわらず長い目で民主党を代表する政治家になってもらいたいと語るものもいる。 

 

一方、今週行われたワシントンポストによる2024年民主党大統領候補トップ10予想では前回に続きブティジェジはカマラ・ハリス副大統領を押さえ2位に入っている(トップはもちろんバイデン大統領)。 予備選での勢いを決めがちなニューハンプシャー州ではバイデン大統領とタイのトップにある。2020年の大統領予備選で同性愛者であることを公表したブティジェッジは、「母親」として昨夏双子の赤ちゃんを養子で迎え入れている「育児」のために公務の時間が取られていると共和党サイドが批判したこともあったが、今のところうまく乗り切っているようである。バイデン大統領の「老い」が有権者の懸念にある中、ブティジェッジの若さと行動力、そしてLGBTQや女性などマイノリティへの訴求力が今後どう展開していくか注目である。

 

2.中間選挙終盤戦でトランプイズムを踏襲する共和党候補

 

1015日の土曜日にネバダ州ミンデンで行われた共和党の中間選挙向け応援演説会にはトランプ前大統領も参加したが、そこで応援演説をしたTommy Tuberville上院議員(アラバマ州選出)が人種差別的発言を行った。その発言の問題以上に、それを批判しない共和党幹部に「トランプの党」の影響を見るという記事をワシントンポストが掲載していた。問題発言とは「彼らは犯罪支持政党だ。彼らは犯罪を欲する。なぜなら、彼らはあなたがた(聴衆)が入手したものを取り上げたいからだ。彼らはあなたが持っているものをコントロールしたい。彼らは賠償を求める。なぜなら犯罪を犯した者が賠償を受けられると思っているからだ」というもの。

  

ここでいう“彼ら”とは民主党を意味しつつも専ら黒人を示唆し、“賠償”とは民主党が数世紀にわたる黒人奴隷制度に対する償いを彼らの子孫に対し行うべきという民主党議員の主張を指しているまた共和党候補によるテレビの選挙広告でも黒人の犯罪容疑者の顔写真を並べ民主党候補が勝利した場合の犯罪への懸念を煽っている。ネバダ州のように中間選挙戦における激戦州で犯罪への懸念の高いところで共和党候補によるこのような極端な発言や広告が目立つという。またアリゾナ州での上院議員候補応援演説では、グリーン下院議員(ジョージア州選出)が「ジョー・バイデンの500万もの不法移民はあなた方とその仕事、そして学校で学ぶ子供にとって代わろうとしている」という。 

 

ここでは民主党のエリートやユダヤ人が移民を用いて意図的に白人中間層を代替しようとしているという陰謀説を主張。前回のニュースレターで伝えたようにトランプ自身が最近もマコーネル院内総務夫人でトランプ政権時代の運輸長官のエレイン・チャオの台湾出身の出自を茶化した人種差別的発言をしており、大統領時代からのその癖が共和党議員の一部にも浸透し、今も残るトランプイズムが似たような発言を助長していると専門家は語る。 

 

以前は、この手の人種差別的発言には民主党幹部はもとより共和党幹部からもすぐに批判の声明がだされたが今回共和党からは出ていないことに同党の変質が伺える。因みにロスアンゼルス市の民主党市議会議員と労働組合のリーダーが打ち合わせの中で差別的発言を行っていたことが録音されていて最近暴露された際にはバイデン大統領自らが当事者の辞任勧告を行い両名とも今週辞職している。 

 

それに基づき、ホワイトハウスの報道官は「仮に民主党の人間が人種差別的或いは反ユダヤ的発言をした場合にはわれわれはその責任をしっかりと取らせるが、MAGA共和党はそういった発言をしてもそれを喜ぶ群衆に抱かれるだけである」とその違いを強調した。人権は政争とは関係なく守るべきアメリカの価値観という政治的正義は、移民増による白人の割合の低下に伴うしわ寄せやグローバル化に伴う白人労働者層の生活レベルの後退などの不満を見事に救い上げたトランプイズムにより一部「きれい事」となりつつあるようである。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  双十節に対中メッセージを送る蔡英文総統

1911年10月10日は、清朝の圧政に苦しむ中、日本にも来て革命の準備をし、熊本の宮崎四兄弟などにも助けられた「孫文」を軸とする革命軍が、武昌で清朝打倒の行動を起こした日であり、これを記念し、台湾に移った国民党は、10月10日を台湾の建国記念日としている。その双十節に、蔡英文総統は、「台湾は中国からの圧力には屈しない」と強調する一方、中国政府に対して、「人々の交流と対話を通じて緊張を緩和しよう」と対話を求めるメッセージを送っている。

 

即ち、蔡総統は10月10日、台北の総統府の外に出て演説を行い、台湾が建国記念日とする双十節を祝いながら、こうしたメッセージを内外に発したのである。その上で蔡総統は改めて、「中国が近年、台湾に対して軍事的脅迫、外交的圧力、貿易妨害、及び主権の抹消の試みをエスカレートさせてきていることは遺憾である。中国は、台湾海峡と地域の平和と安定を脅かしている」ともコメントしている。

 

l  中国のCPI2.8%上昇

中国政府・国家統計局は、本年9月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月対比2.8%上昇したと発表している。増加率は前月から0.3ポイント拡大し、2020年4月以来2年5カ月ぶりの高水準となっている。中国人の食卓に欠かせないと言われている豚肉の価格高騰が響いた結果と分析されている。また、「ゼロコロナ政策」などにより景気低迷が続く中、中国の家計消費には弱さも窺われるとの見方も出てきている。尚、中国のCPIは、8月には2.5%上昇となり、物価高の圧力がやや緩和されたと見られていたが、9月には再び、物価上昇圧力が強まったとの見方も出ている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

l  LNG船発注増に期待をかける韓国造船業界

世界的にはSDGSが叫ばれる中、環境に優しいエネルギー源とされるLNG(液化天然ガス)のグローバル需要の増加によって、韓国の造船業界の実績改善の期待感が高まっている。今年の世界市場に於けるLNG船の発注量は過去20年間の年間平均発注量の3倍近く増えたものと推測されている中での期待感である。 こうしたことから、LNG船分野で世界最高水準の技術を保有しているとされる韓国造船会社は、これまでの平均価格で言うと1隻当たり約2.4億米ドルの単価となるこの高級LNG船の受注に期待、しかも世界的に見た「韓国勢の受注独占」に期待を寄せている。但し、最近の韓国の受注船種が過度にLNG船に集中している上、世界的な景気低迷により、今後、LNG船の発注も鈍化するのではないかとの不安感も出ている。

 

l  防衛装備の強化の思惑

韓国は少なくとも、パク・クネ政権の頃から、国家として、防衛産業支援に入り、韓国自身の国防力を強化しつつ、これを外貨獲得産業に育成しようと動き始めている。こうした中、韓国では9月末に大韓民国防衛産業展が開催された。その展示会の中で、国産の超音速戦闘機であるKF21の艦載機型モデルであるKF21Nが公開された。

 

これに対して、中国は直ぐに敏感な反応を示したが、韓国のキム・スンギョム合同参謀本部議長は、韓国国会で中型空母の建造を推進する可能性も示唆した。韓国が当初の軽空母開発計画を変更し、一挙に排水量6万トン前後の中型空母と第5世代ステルス戦闘機を配備しようとしているのではないかというのが中国側の分析となっており、韓国に対する警戒心を中国が強めている。このままでは中国が本年6月に進水させた最新鋭空母である「福建」に匹敵する水準となる。

 

中国は、韓国空母が米国の対中牽制に活用されるとの見方も示している。韓国は、中国も米国も決して信頼しておらず、当面は生き残る為に、強き者に付く戦略は続こうが、もしも、自国一国で自立出来れば、それを志向するはずである。従って、韓国の国防力強化は、中国本土にとっても米国にとっても本当は好ましくなく、自らの指揮命令系統の下での国防力強化に向かわせたいはずである。しかし、現状、韓国はどちらにも付かずに、国防力強化を図っているのである。だから、中国も警戒をし、米国も遠くから睨んでいる。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,435.31(前週対比-20.76)

台湾:1米ドル/31.95ニュー台湾ドル(前週対比-0.27)

日本:1米ドル/147.90円(前週対比-2.91)

中国本土:1米ドル/7.1890人民元(前週対比-0.0705)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,212.55(前週対比-20.29)

台湾(台北加権指数):13,128.12(前週対比-574.16)

日本(日経平均指数):27,090.76(前週対比-25.35)

中国本土(上海B):3,071.987(前週対比+47.596)

 

4.拙著 『外国人材が中小企業を救う』発刊のこと

 

この度、晃洋書房から中小企業の成長のための外国人材の活用・育成をテーマとした本を出させていただくこととなりました。弊社にてこれまで行ってきた外国人材の紹介と定着・戦力化支援に関する事例や教訓などを織り交ぜた内容となっております。表装や構成は下記リンクにてご覧いただけます。

http://www.koyoshobo.co.jp/book/b614473.html   

https://books.rakuten.co.jp/rb/17307106/ 

書店には11月初めに置かれるようです。是非ご笑覧頂き、ご意見ご批判など頂ければ真に幸いです。

 

5.中東フリーランサー報告 15 

 

三井物産戦略研究所の元研究員の大橋誠さんから掲題の報告書を頂きましたので共有させていただきます。大橋さんからは下記のメッセージを頂いております。

 

今回は中東にとっては大きなニュースであったエリザベス女王逝去と国葬にまつわる話、そして日本ではあまり紹介されない「アラブ若者調査」の結果について書いていたら、予定の10ページを超してしまいました。ウクライナ戦争はウクライナの反撃が顕著になっていますが、先の見通しはまだまだつかぬ中、中東でも動きがあり、ロシアがシリア撤収に向けてトルコ・シリアの和解を求め、両国情報トップが面談したとのロイター報道がありました。一方イランではスカーフの被り方を巡る女性の死亡事件が、全国的なデモ騒ぎに発展し、実は強い女性の影響力を痛感しました。またウズベキスタンの上海協力機構サミットも重要なイベントでしたが、報道が多かったので割愛しました。

 

この他カタルではFIFA2022を前にホットな空気になっているようですが、これに先立ちシシエジプト大統領が公式訪問した一方、モスレム同胞団の精神的支柱のひとりカラダーウィ師が大往生を遂げ、かの断交カルテットによるカタル締め上げは愈々過去の話となりました。あれだけの事でも、過去の話に出来るところが中東のしたたかさなのかも知れません。

 

詳細はこちら。

 

6.寺島実郎氏メディア露出情報

 

寺島文庫から下記情報を得ましたので共有いたします。

 下記にて、1016日放送のMXテレビ「寺島実郎の世界を知る力」第25回放送につきまして、YouTubeでの見逃し配信が始まっておりますので、ご連絡致します。

 

TOKYO MX「寺島実郎の世界を知る力」(20221016日放送)

【第25回放送】

「異次元の円安の構造と日本再生への視座/英国史の深淵~2人のエリザベス女王(1世・2世)」

https://www.youtube.com/watch?v=PVGwT2Cs7N8&list=PLkZ0Cdjz3KkhlIA30hZIT5Qnevsu0DBhY&index=1

 

また、今週末の「対談篇 時代との対話」(第19回放送・20221023日(日)午前11時~)は、1016日より開催中の中国共産党大会や118日の米国中間選挙の展望など、

日米中トライアングル鼎談「米中の転機としての2022年秋」をテーマに、海野素央氏(明治大学政治経済学部 教授)と柯隆氏(東京財団政策研究所 主席研究員)をゲストにお迎えし、寺島と鼎談致します。

 

《メディア出演情報(追加)》

2022/10/31(月)19:0020:00

ラジオ日本(首都圏)「しあわせになるラジオ」

FBCラジオ(福井県)では同日21:3022:00放送

 

2022/11/13(日)08:00

TBS系列「サンデーモーニング」

 

2022/11/15(火)06:03頃~

TBS系ラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」

※うち、「今朝のニュースピックアップ」コーナー 全国33局ネット

 

さらに、全国約500店舗の「快活CLUB」で視聴頂けます

寺島文庫オリジナル動画及び寺島文庫YouTubeチャンネルに関して、お知らせ致します。

*********************************************************

◆◇『学びの再出発』◇◆

~寺島文庫のオリジナル動画が

 全国約500店舗の「快活CLUB」でご視聴いただけます~

【月1回更新】 10月分は21日(金)より配信!

 

今回は、「歴史から紐解く英国の本質」をテーマに、国民的人気のあるヘンリー8世と6人の妻を取り巻く様々なストーリー、明治期における日英関係、そして英国が持つソフトパワーの強み等について、寺島独自の視点から英国を深掘りします。

 

また、「今月の本棚」では、日本経済新聞社中国支局長、政治部長等を歴任された岡崎守恭氏との対談(前編)をお送り致します。今回は、「論争 関ヶ原合戦」(著:笠谷和比古)と「大名左遷」(著:岡崎守恭)を取り上げ、「関ヶ原合戦」や「赤穂浪士の討ち入り」にまつわる説やエピソードを新しい視点から捉え直すなど、寺島との対談を通じて江戸期日本を深めます。

 

ぜひ快活クラブの店舗にてご視聴頂けましたらと存じます。

 

・詳細はこちら

https://www.terashima-bunko.com/minerva/kaikatsu-manabi.html