ニュースレター国内版 2022年・春(289号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第289号)

 

1. 共和党におけるトランプの威光に陰り?

2. モノからコトに一気に支出を転換し出したアメリカの消費者

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. アンガーマネージメントのこと

 

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1.共和党におけるトランプの威光に陰り?

 

先週火曜日に行われたジョージア州の共和党予備選でトランプ前大統領が支援した州知事候補者と州務長官候補者が二人とも敗れた。現職のブライアン・ケンプ知事とブラッド・ラフェンスパーガー州務長官は2020年の大統領選でトランプが主張した選挙不正の存在を認めず、ジョージア州としての選挙結果(バイデン勝利)をそのまま擁護した。トランプはこの州務長官に電話を入れ、投票結果を覆すだけの票を“探せ”と迫ったという。トランプの期待に応えなかった二人に不満を持ったトランプは、今回のジョージア州の予備選で同州選出の前上院議員デイビッド・パーデューをケンプ知事に対し、また下院議員のジョディ・ハイスをラフェンスバーガー州務長官に対する刺客として送り込んだ当初は接戦が予想されていたものの、ふたを開けると二人の現職の圧倒的勝利となった。既報の通り、トランプと袂を別ったマイク・ペンス前副大統領はケンプ知事を支持し、実際ジョージア州に行って支援演説を行っていた。

 

また、ウィスコンシン州の党大会で行われた党の代表者に対する調査で、40%2024年の大統領選へのトランプの出馬を支持したものの、33%は不支持、22%は支持候補不明となった。さらに、この調査で「2024年の共和党候補者として誰を望むか」との問いに対しては、フロリダ州のロン・デサンティス知事が38%でトップとなり、トランプは32%の得票率で2位であった。今年2月のConservative Political Action Conferenceでの調査ではトランプは59%の得票率でダントツトップであったことに比べると、その変化が目立つ。

 

もちろんトランプの刺客が成功しているケースもある。トランプ自身を次期大統領に望む岩盤支持層は分厚いものがあるものの、先の選挙に不正があったとの彼の主張に同意するかしないかを踏み絵とするトランプの姿勢に対する飽きというか嫌気が感じられつつある。 

 

従い、今後共和党支持層の中で、2024年の共和党大統領候補として、「トランプイズムの教祖であるトランプでなければならない」と考えるグループと、ロン・デサンティス知事のような別の候補の力を通じてトランプイズムを具現化することを支持するグループ、そしてトランプイズムそのものを支持しないグループに分かれていく可能性を示している。

 

共和党として、終わったことにこだわり続けるのではなく、バイデンを正当な大統領と認め、それを上回る将来のビジョンを熱く語るという姿勢でまとまっていくのか、はたまたトランプイズムをトランプ自身がさらに強力に打ち出すことで党の支持層の求心力を分散させないようにするのか、まずは今年の中間選挙に向けてその動静が注目される。 

 

2.モノからコトに一気に支出を転換し出したアメリカの消費者

 

コロナパンデミックにおいて、アメリカの消費者は家でテレビやパソコン、オーディオ、家具そして家の補修などのホームプロジェクトにおカネを投じ、外食や旅行、その他対面型サービスへの支出を控えてきた。 

 

ところが、今やアメリカの消費者が対面型サービスへの支出をパンデミック前の勢いにまで増やしている様子をワシントンポストが報じた。一時はモノへの支出がサービス支出よりも15%も多かったが、今はコロナ以前のモノ消費より5%高いレベルとなっている。今は丁度、モノからサービスに消費が向かい始めているときといえる。外食、旅行、航空予約、ホテル予約もすべて増えているこれはモノのインフレ圧力を和らげ、連銀による政策金利上昇の度合いを緩和することに役立つと見られている。4月の小売販売は前年同月と比べ8%増だが、インフレ調整前の数値である。 

 

一方、レストランやバーでの飲食代は約20%も上昇している。今年3月のサービス消費額はインフレ調整後で8.6兆ドルと、これまでで最高の20202月の値を超えたホテルチェーンのマリオットの観光旅行者の今年第1四半期の部屋需要は2019年の同時期の予約の10%増しであり、サウスウェストエアラインの第2四半期の営業収入はパンデミック前を超える見通しという逆に大手チェーンストアのターゲットは最近不意打ちのような状況にある。

 

というのも、少し前まで品不足気味であったものが、急に品余りの状況となり、テレビや家電の在庫が増え安売りをせざるを得ない状況にあるという。このモノからサービスへのシフトのスピードは夫々の業界筋の予想をはるかに上回るものとなっている。トラック輸送の需要もまだ高いものの、3月初旬を境に3分の1ほど減少した。先週27日の時点でロサンゼルス港の沖合で入港の順番を待つコンテナ船の数は25隻と、記録的な数となった1月のときの109隻からかなり減っており、同港への入港隻数も前年同期比で7週連続下回っている。  

 

ロサンゼルス港に入港した輸入貨物は3乃至4週間前に海外に発注されたものであるので、この入港隻数の減少が上記の消費のモノからサービスへのシフトによるものかどうかはまだ定かではない。 

 

今後、ロシアのウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンへの影響や、中国の上海や広州におけるロックダウンの影響が時間差で港への影響を及ぼすと見られている。  

昨年、耐久消費財の値段は14%上昇したが、サービスの費用は5.4%であった(労働統計局データ)。  

 

パンデミックの最中は、製造部門と輸送部門が人手不足で、雇用を積み増し、倉庫だけでも675千人が雇用された一方、20202月にレジャー産業やホスピタリティ産業にあった約150万もの雇用はパンデミックで消えてしまっていた。今やサービス業が人手不足で、求職者一人に対し、求人企業2社の状況にある。 

 

ただ、Integrated Resortで著名なラスベガスを訪れる月間訪問者数は2019年よりもまだ10%程度低く、展示会参加者数に至ってはまだ40%も低い状況にあり、サービス分野でのビジネスの戻りにはまだ時間がかかる部分もありそうである。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  中国への革新的重要技術や営業秘密の流出を防ぐ台湾

台湾政府・行政院はハイテク産業の保護や重要技術の流出を防ぐことを目的にして、国家安全法の改正案を提出、立法院は第3読会で同改正法案を可決した。

改正法では、外国や中国本土、香港、マカオ、域外の敵対勢力或いはそれらが設立、実質的に支配する組織や機関、団体、またはそれらから派遣される人の為に国家の核心的重要技術を侵害する行為を禁じるとしている。

また、「国家の核心的重要技術」を「外国や大陸地区、香港、マカオ、域外の敵対勢力に流出した場合、国家の安全や産業の競争力、経済発展に重大な損害をもたらす」ものと定義している。

更に、新たに罰則も加えられた。

国家の核心的重要技術の営業秘密を不正に取得、または取得後に使用、漏えいさせた場合、5年以上、12年以下の懲役を科すとし、併せて500万ニュー台湾ドル以上、1億ニュー台湾ドル以下の罰金も科すことができるとしている。

また、営業秘密は膨大な商業利益に関わることから、罰金の上限は不当利益に応じて柔軟に調整できるとし、違反者が得た利益が罰金の最高額を上回る場合、得た利益の2~10倍の範囲内で加重することができると定めてもいる。

 

l  台湾によるLNG船調達開始

台湾は、自前のLNG(液化天然ガス)船隊の構築を目指していると見られている。

台湾政府は、LNG輸入の増加が今後も見込まれる中で、自前の船隊を持つことの重要性を指摘し、LNG船16隻程度が必要になるのではないかとの試算も示している。

台湾で、海事産業を所管する交通部航港局は、LNGの輸入増加に対応しつつ輸送効率向上を図るには、台湾独自のLNG建造と船体の構築が不可欠ではないかとの見方を示唆し始めている。

こうした中、台中港、台中港パイロット、台湾CNPCの共同の努力により、最初の18万立方メートル級LNG船である「グローバルシーライン」が、台中港西部に上陸している。

 

l  中国恒大集団のリファイナンス計画

ロイター通信は、経営危機に陥っている中国の不動産開発大手である中国恒大集団が、190億米ドル相当の外貨建て債務の再編を検討していると報じている。

当該外貨建て債務を新たな債券と傘下企業の株式に交換すると見られている。

再編案では外貨建て債務について、新たな債券と交換した上で、7~10年かけて元本と利子を支払うとしており、また債務の最大2割は、電気自動車(EV)メーカーの中国恒大新能源汽車集団(恒大汽車)など、香港証券取引所に上場する傘下2社の株式に交換できるようにするとしている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

l  新政権発足と共に大規模な投資計画を発表する韓国大手企業

三星グループや現代自動車グループなど韓国の主な大企業がユン・ソクヨル政権発足から約半月過ぎ、相次いで大規模な投資計画を発表している。

即ち、三星とSK、現代自動車、LG、ロッテのトップ5グループとハンファグループが5月26日までに発表した3カ年または5カ年の中期計画の投資額は計940兆6,000億ウォンとなっている。

ユン・ソクヨル新政権が掲げる、「民間主導の経済成長」を積極的に後押しする意思の表れとも見られている。

当該6大グループの2026年までの投資額は韓国の2022年度(1~12月)予算(607兆7,000億ウォン)より332兆9,000億ウォン多く、昨年の韓国の名目国内総生産(GDP、2,057兆4,478億ウォン)の45.7%に当たっていることなどと比較してみても巨額であることが分かる。

韓国経済にとって、官民連携で、「雇用と納税拡大」が期待できるこうした動きを新政権が開始したことについては大いに注目したい。

 

l  バイデン訪韓のフォローアップを進めるユン政権

韓国のユン新政権は米国のバイデン大統領の訪韓に合わせて、臨時配備状態にある在韓米軍高度防衛ミサイル(THAAD)の基地(慶尚北道星州郡)の早期正常化を積極的に推進するとしている。

ユン・ソクヨル)大統領の公約であるTHAAD正常化を、バイデン大統領訪韓をきっかけに急ぐとしている。

また、米韓首脳会談では、海外原発市場共同進出宣言と、次世代原発「革新型小型モジュール原子炉(SMR)」共同開発を含む原発協力案が発表された。

所謂「米韓原発同盟」の糸口となるアクション・プランを打ち出している。

更に、三星電子も訪問し、「米韓半導体同盟」も印象付ける動きを行っている。

 

l  韓国国産ロケット「ヌリ」615日に2回目打ち上げ決定

韓国政府・科学技術情報通信部は、韓国初の国産ロケットである「ヌリ」の2回目となる打ち上げを6月15日に実施すると発表した。

当日の天候などにより日程が変更される可能性もあり、同月16~23日を予備日に設定している。

科学技術情報通信部と事業主体の政府機関である韓国航空宇宙研究院の関係者で作る「発射管理委員会」はこの日、打ち上げ場所の南部の羅老宇宙センター(全羅南)で会議を開き、日程を確定した。

来月打ち上げるヌリには、ヌリの性能を確認するための重量180キロの衛星と4基のキューブサット(超小型衛星)が搭載される。

昨年の1回目の打ち上げでは機能を持たない1.5トンのダミー衛星だけが搭載されていた。

 

l  男性の育児・家事参加率向上が出生率向上の必要条件と啓蒙する朝鮮日報

韓国の主要紙・朝鮮日報は、「女性が仕事に就いたからといって出生率が低くなるわけではない。しかし、男性が育児と家事を減らせば減らすほど出生率は低下する。

韓国は男性の育児分担率が日本やポーランドと共に低い3カ国の中の一つであり、出生率は最低だった。低出産を克服する為には、男性がより積極的に育児に参加しなければならないという意味である」との文章で始まる記事が掲載された。

当該記事によると、こうした結果は、米国・ノースウェスタン大学経済学科のマティアス・ドゥプケ教授の研究チームが先月、全米経済研究所(NBER)を通じて公開した「出産の経済学:新しい時代」と題する報告書に盛り込まれた内容を引用したものである。

ドゥプケ研究チームはOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に約40カ国に上る女性の経済活動への参加率、男性の育児分担率などと出生率の相関関係について調査したとしている。

これによると、女性の経済活動が活発な国で出生率が高いことが分かったと報告している。

研究チームは、「女性が仕事場に多く出れば出るほど、子どもを少なく産もうとするという過去の概念はもう有効ではない。

今日の先進国ではほとんどの女性は職業と家族(子ども)を共に欲している」と指摘し、教育水準もほとんど関係がなく、高学歴だからといって出産を避けるという時代は過ぎ去ったと指摘しているとし、韓国の状況を改善すべきであるとの主旨の指摘を朝鮮日報はしている。

 

l  金浦・羽田路線など日韓国際線運航再開

韓国空港公社は5月24日、6月から金浦(ソウル)―羽田(東京)など22の国際線の運航を再開し、便数は週68往復になる予定と発表した。

金浦―羽田線は6月初旬の運航再開を目標に日本側と協議が進められている。

再開されれば週8往復運航されることになる。

同路線は新型コロナウイルス感染拡大により2020年3月以降、運航を停止している。

同路線はコロナ禍になる前は年間205万人が利用していた。

 

[主要経済指標]

  1.  対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,249,12(前週対比+18.76)

台湾:1米ドル/29.27ニュー台湾ドル(前週対比+0.39)

日本:1米ドル/126,87円(前週対比+0.90)

中国本土:1米ドル/6.6920人民元(前週対比-0.0131)

 

  1.  株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,638.05(前週対比-1.24)

台湾(台北加権指数):16,266.22(前週対比+121.37)

日本(日経平均指数):26,781.68(前週対比+42.65)

中国本土(上海B):3,130.239(前週対比-16.328)

 

4.アンガーマネージメントのこと

 

この度、弊社にてアンガーマネージメントファシリテーターの資格を取得しました。 

アンガーマネージメント1970年代にアメリカで始まった怒りの感情のコントロールに関する考え方や手法で、日本では一般社団法人日本アンガーマネージメント協会(https://www.angermanagement.co.jp/)がその考え方や手法の普及を担っています。

怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としている活動で、会社などの組織では現在パワハラ防止や社内コミュニケーション活性化などの研修で広く採用されているようです。 

自らの価値観や観念・意識(日本では○○であるべき)への捕らわれに気づき、自分の価値観や考え方と異なるものを排除・拒絶するバリアを下げ、少しずつ受容していくことにこのレッスンが役立つことから、異文化コミュニケーションなどにも応用が利くと思い、アンガーマネージメントのファシリテーター資格を取得したものです。 

この資格において企業社員や組織職員の方々に対する「アンガーマネージメント入門講座」を開催することが可能となっております。 

異なる価値観や考え方を積極的に取り入れていくダイバーシティ価値実現の前提として、自分のこだわり(べき)と、それに基づく自分の怒りのメカニズムを理解し、社内・組織内のコミュニケーション活性化を促すことにご興味のある方は是非ご連絡お願いします。

 

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