ニュースレター国内版 2022年・春(288号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第288号)

 

1. 今年の米国中間選挙の争点

2. ホワイトハウスvs. ジェフ・ベゾス ツイッターの応酬

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 寺島実郎さんコンテンツのご案内のこと

 

-------------------------------------------------------------------

1.今年の米国中間選挙の争点

 

今年118日に行われる米国中間選挙に関し、ワシントンポストがその争点や注目点を特集した。過去8回の選挙で7回において多数党の変更があり、またバイデンの前の4人の大統領は皆、その任期中に上下両院の多数党の地位を失ってきており、近年の有権者の投票行動の揮発性が高まっていると言われる。半年近く先の投票であるため、有権者の判断に影響を与える出来事は今後まだ生じる可能性が高いが、現段階での争点と、両党のキャンペーンの方向性は下記の通り。  

 

<インフレと経済>  

現状、最大の争点バイデン政権としては、就任後800万人分の雇用を創出し、過去半世紀で最低の失業率を達成していると自己評価している。

一方、最新の世論調査(ワシントンポストとABCニュース共同)では70%が大統領のインフレ対応を支持せず、50%は、インフレ対応において民主党より共和党を信頼すると回答(その逆は31%)。  

 

<中絶の合法性> 

既報の通り、ミシシッピー州の中絶制限法の上告に対する最高裁の判断が来月にも出され、従来の合法判断から違法に覆されるとなると、かなり大きな争点となりえる。 

共和党支持層に比べ、投票率が低いと言われる民主党支持層の投票意欲と行動を大いに高める争点になると見られる日々の食品のインフレの苦痛の方が投票判断において勝ると一部の共和党幹部は語るが、この争点が目立つと共和党のリードを抑えられかねないと共和党のストラテジストは語る。 

 

<犯罪>

多くの都市で殺人事件やその他の犯罪の発生率が高まっている。また、2020年にミネアポリスで白人警察官により黒人男性ジョージ・フロイドが殺された後に生じた「警察予算を打ち切れ」の民衆運動は現状、民主党に不利に働いている。バイデンは年初の一般教書演説で、「(犯罪増加)への答えは警察予算打ち切りではなく、警察にしっかり予算を付けることだ」と述べたが、そう語らざるを得ないほど受け身に立たされていると見られている。 

 

<不法移民> 

バイデン政権はメキシコとの国境沿いにから流入する不法移民の急増を未だコントロールしきれていない。また、トランプ政権による難民希望者の越境を妨げる規制(Title 42)を撤廃するというバイデンの提案に対し、民主党内で賛否が分かれている。 

接戦が見込まれる同党の改選上院議員の何人かは撤廃に表立って反対している。 

 

<教育とLGBTQ> 

長年、教育問題は民主党に有利に働く争点であった。ところが、昨今「批判的人種理論(Critical Race Theory)」という法学運動が様々な教育問題の代名詞となっており、共和党はその理論を民主党の教育政策にかぶせて攻撃している。LGBTQでは、ロン・デサンテスフロリダ州知事(共和党)が性認識に関する教育を幼稚園の3級までは行わない州法に署名。いくつかの州では性転換した生徒が学校でのスポーツに参加することを禁止しようとしている。  

 

<ウクライナ問題> 

連邦議会は超党派でウクライナ支援を行っていることから今のところ争点とはなっていない。また、外交専門家や欧州同盟国からのバイデン大統領に対する高い評価も米国内での支持率には寄与していない。ただ、この問題が内政面で今後どう展開するかはまだ予想がつかない。

 

<コロナパンデミック> 

前述の世論調査でバイデンが最も評価されたのはコロナ対応であった。ただ、この問題への有権者の関心度が昨今大きく下がってきている。 

 

連銀は3月と5月に続き、年内にあと5回利上げを行うと見られているが、11月に入ってインフレがどこまで改善しているか或いは悪化しているかが1つの注目点と言える。

 

2.ホワイトハウスvs. ジェフ・ベゾス ツイッターの応酬

 

当ニュースレター第285号でお伝えしたように、今年4月初頭に、ニューヨーク市スタテン島にあるアマゾンの倉庫従業員が組合結成を決める画期的な投票を行った。そこから1か月して、同じスタテン島にあるアマゾンの集配所従業員が同様の投票を行った結果は組合結成反対票が賛成を上回った会社側の強い反対工作の働きかけがあったとみられる。  

労働組合結成など組合活動の活性化を促すことを選挙公約の一つに掲げていたバイデン大統領は、アマゾン社員の組合組成を推進する幹部連を最近ホワイトハウスに招き面談している。  

 

その数日後に、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスはツイッターでバイデン政権の経済政策を批判するメッセージを発散、曰く、「政権はすでに過熱気味のインフレ経済にさらに刺激予算を注入しようとしている。マンチン(上院議員)だけがさらなるインフレから経済を守ってくれている。インフレは貧困層を痛めつける逆進税だ。誤った方向に行っては我が国にとって良くない」と。このメッセージへのコメントをワシントンポスト(ベゾス個人はワシントンポストの社主)から求められたホワイトハウスは、アンドリュー・ベイツ報道官が「地球上で最も富裕な人のうちの一人がミドルクラスのための経済政策に反対する理由はわかる。 というのも、中流層の家庭が直面する家計負担を和らげ、インフレと長期的に戦い、歴史的な連邦赤字削減を達成しようとするこの経済政策の財源として超富裕層や企業に公平な負担を求めているからだ。また、このツイッターのメッセージが、アマゾン社の従業員を含む組合運動幹部と大統領が面談した後に発せられていることも何ら驚きではない」と語っている。 

 

因みに、エコノミストによれば、3月にホワイトハウスが提案したBuild Back Better法案に基づくと、ベゾスが追加で負担する税額は350億ドルにも及ぶ。このホワイトハウスのコメントに対し、ベゾスは再度ツイッターで、「(ホワイトハウスは)別の理由を持ち出して人の気を逸らそうとする。彼らはインフレが貧困層を最も傷つけることを知っている。組合がインフレを起こしているのでもなければ、富裕層が起こしているのでもない。政権は3乃至5兆ドルもの連邦支出を追加しようとした。 彼らは失敗したが、もしうまくいっていたら、インフレは今よりもひどくなっていただろう」と反論。ハーバード大学学長を務め、オバマ政権時にはホワイトハウスの国家経済会議委員長を務めた経済学者のラリー・サマーズは、「ベゾスのコメントは誤っている。インフレを抑制すべく需要を抑えるための増税を可能な限り累進化するべきと信じることは完璧に合理的な考えである」とツイッターでコメントし、バイデンの経済政策を肯定している。組合結成が否決され、極端な増税も今のところ予定されていない状況で、ツイートする必要が無いにもかかわらずやってしまったのは、ベゾスにとってバイデンの組合支援の動きが脅威であったのか、あるいは単なる憂さ晴らしであったのか・・。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  14月のロシアからの輸入、前年同期比37.8%増

中国政府・税関総署が5月9日に発表した貿易統計によると、本年4月の輸出は前年同月対比3.9%増の2,736億米ドルとなったが、増加率は前月の14.7%増から大幅に鈍化した。新型コロナウイルス感染拡大で物流が滞る一方、ロシアからの1~4月の輸入が前年同期対比37.8%増となっている。ロックダウンにより世界最大規模の港湾である上海港の稼働が制限され、貿易業務に大きな支障が出ていることによる影響が出ており、日本向けの部品などの輸出も停滞、サプライチェーン問題も顕在化する可能性がある。輸入は2,225億米ドルとなり、増加率はほぼ横ばいとなっている。

 

l  4月の新車販売台数、前年同月比48%減

中国自動車工業協会は、本年4月の中国の新車販売台数は前年同月対比約48%減の118万台となったと発表している。中国での新車販売の減少は2カ月連続となっており、減少幅は3月の約12%から更に広がっている。厳しいゼロコロナ政策の影響が大きく、制限が長引けば、販売は更に停滞しかねないと見られている。

 

(2)  ロシアの4月の消費者物価指数、前年同月比17.83%増

ロシア政府・連邦統計局が発表した本年4月のロシアの消費者物価指数(CPI)は、前年同月対比で17.83%上昇しており、3月の16.69%から更に加速し、2002年1月以来の高水準となっている。不安定なルーブルと西側諸国の制裁措置が物価を押し上げたと見られている。一方、前月対比は1.56%上昇と1999年1月以降で最高となった3月の7.61%上昇からは鈍化している。

 

3) 韓国/北朝鮮

l  大統領就任式に参加した5大グループと経済6団体のトップ

国内5大グループと経済6団体の長が5月10日に開催された大統領就任式に参加、その後の開催された晩餐会にも招待された。就任式にはイ・ジェヨン三星電子副会長、チェ・テウォンSKグループ会長(大韓商会会長)、チョン・ソンソン現代自動車グループ会長、ク・グァンモLGグループ会長、シン・ドンビンロッテグループ会長が参加。

また、ソン・ギョンシク韓国経営者総協会会長、ホ・チャンス全国経済人連合会会長、ク・ジャヨル韓国貿易協会会長、キム・ギムン中小企業中央会会長、チェ・ジンシク韓国中堅企業連合会会長も就任式に参加した。政府と財界の関係緊密化に向けて新政権発足後の動きが出てくるものと期待されている。

 

l  1~4月の造船累計受注量、前年同期比11%増、世界シェア46%

造船・海運市況分析機関である英国のクラークソン・リサーチが発表した本年4月の世界全体の新造船発注量は前月対比36%減の251万CGT(標準貨物船換算トン数、71隻)となり、韓国はこのうち82万CGT、16隻を受注し、世界第2位であった。中国は154万CGT、45隻で、世界1位であった。韓国の1~4月の累計受注量は前年同期対比11%増の581万CGTとなり、世界シェア46%を記録した。4月末時点の手持ち工事量は688隻(3268万CGT)で、2016年4月以来、6年ぶりの高い水準となっている。

 

[主要経済指標]

  1.  対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,281.39(前週対比-11.40)

台湾:1米ドル/29.79ニュー台湾ドル(前週対比-0.13)

日本:1米ドル/129.79円(前週対比+0.77)

中国本土:1米ドル/6.5898人民元(前週対比-0.1982)

 

2. 株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,604.24(前週対比-40.27)

台湾(台北加権指数):15,832.54(前週対比-575.66)

日本(日経平均指数):26,427.65(前週対比-575.91)

中国本土(上海B):3,084.285(前週対比+82.724)

 

4.寺島実郎さんコンテンツのご案内のこと

 

寺島文庫から下記の通り情報を得ましたので共有させて頂きます。

 

TOKYO MX「寺島実郎の世界を知る力」(2022515日放送)

【第20回放送】「ウクライナ危機下の世界経済の現状と今後の展望/ロシア革命以降のロシア近現代史と日ロ関係」

https://www.youtube.com/watch?v=Ni--i6kRGVA&list=PLkZ0Cdjz3KkhlIA30hZIT5Qnevsu0DBhY&index=1

 

また、今週末の「対談篇 時代との対話」(第14回放送・2022522日(日)午前11時~)は、ゲストに渡部恒雄氏(笹川平和財団 上席研究員)、柯隆氏(東京財団政策研究所 主席研究員)をお迎えし、「ウクライナ侵攻から100-長期化する戦争」をテーマに、鼎談致します。これまでの鼎談企画を通じて踏み固めてきた議論を土台に、日米中トライアングルからの視界で、更に一歩踏み込んだ、世界情勢の現状と今後の展望について議論しております。ぜひご視聴頂ければと存じます。

 

さらに、AOKIグループ・快活CLUB様と寺島文庫が提携し、全国約500店舗の「快活CLUB」で視聴頂けます寺島文庫オリジナル動画及び寺島文庫YouTubeチャンネルに関して、お知らせ致します。

 

*********************************************************

◆◇AOKIグループ・快活CLUB様と寺島文庫が提携◇◆

『学びの再出発』

~寺島文庫のオリジナル動画が全国約500店舗でご視聴いただけます~

【月1回更新】 5月分は26日(木)より配信予定!

 

今回は、「円安ショックから考える為替の本質」をテーマに、

寺島の海外での経験等を踏まえながら、急速な円安を経験している今、

自国通貨の価値が下がることの本質について掘り下げます。

 

また、「今月の本棚」では、毎日新聞出版『週刊エコノミスト』編集部の

濱條元保氏との対談(後編)をお送りします。

今回は、『自動車の社会的費用』等のご著書を書かれた経済学者の故・宇沢弘文氏が

提唱された「社会的共通資本」をテーマに、宇沢氏との交流の記憶を交えながら、

生身の人間として経済を捉えることの重要性について、寺島との対談を通じて深めます。

 

ぜひ快活クラブの店舗にてご視聴頂けましたらと存じます。

 

・詳細はこちら

https://www.terashima-bunko.com/minerva/kaikatsu-manabi.html

 

・お近くの店舗の検索はこちら

https://www.kaikatsu.jp/shop

*********************************************************

 

*********************************************************

■□寺島文庫【公式】YouTubeチャンネル□■

「寺島文庫とは?寺島実郎が本にかける想いからルーツを語る」、

https://www.youtube.com/watch?v=uOgcnHILN4U

 

◆寺島文庫リレー塾アーカイブス配信中!◆

★第12期(2021年度)後期

 第1回講義(講師:寺島実郎)、第2回講義(講師:二木芳人氏)

https://www.terashima-bunko.com/minerva/bunko-archives.html

 

◆寺島文庫オリジナル「60de新常識シリーズ」配信中!◆

★第1弾「資産運用『お金を増やす常識・非常識』」

★第2弾「ビジネスの新常識-グローバル化とダイバーシティ」

https://www.terashima-bunko.com/minerva/60min.html 

 

 

◆『「みねるばの森」基金 設立にあたって」配信中!◆

https://www.youtube.com/watch?v=rxB8V3pJQDc

 

◆書籍紹介コーナー◆

「寺島文庫×NHK出版 コラボ企画」配信中!

https://www.youtube.com/playlist?list=PLJPVVD8dB3b34896ZMEQIA9ze1WXR6S2l

 

「寺島文庫×岩波書店 コラボ企画」配信中!

https://www.youtube.com/playlist?list=PLJPVVD8dB3b3TYPOrtDdkdEzIOPHvNFzn

 

◆文庫犬エリゼ◆

「幸運を招くうわさのビションフリーゼ 文庫犬エリゼ」配信中!

https://www.youtube.com/playlist?list=PLJPVVD8dB3b33UZCHbArIjWO3uYW_mDdW

 

 

-------------------------------------------------------------------------------