ニュースレター国内版 2022年・冬(280号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第280号)

 

1. 海外の優秀な理工系人材取り込みに動くバイデン政権

2. 中国の天候制御の意図を懸念する米国

3. イスラエル大使館情報 - 日本からイスラエルへの投資額が過去最高

 

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1.海外の優秀な理工系人材取り込みに動くバイデン政権

 

オバマ政権時代にはアメリカのイノベーションを促進するためSTEMScience, Technology, Engineering and Mathematics)という日本で言う“理工系”的人材を増やすという教育政策があった。ところがトランプ前政権では海外からの移民や留学生に対する門戸を狭め、そこにSTEM人材も含まれていた。本来、海外生まれのノーベル賞受賞者には“genius green card”が与えられアメリカでの永住が認められるものがトランプ政権下では、「例外的な能力が実証されていない」との理由でノーベル賞受賞者からのグリーンカード申請が否認されたり、熟練技能を持った移民希望者に対し、過度な官僚的対応で嫌がらせをしたり、気まぐれな対応で、移民申請者の家族を分断したりといった対応が目立っていた。

 

その結果、オバマ政権までは米国を目指す留学生の数が右肩上がりであったものが、コロナパンデミック以前の時点で減少に転じていた。 その間、オーストラリアへの留学生が50%、カナダを目指す留学生は70%増えている。 カナダは、熟練技能を有する移民希望者への入国手続きをスムースにすることで申請から2週間以内に移民承認が下りるようにしている。トランプ前政権下であれば同種の申請そのものが許されるためにはまず抽選に勝ち抜き、そこで”当選“して、申請してから審査に何か月もかかっていた。

 

また、米国に移民できる高技能取得者の数の上限が決められていたのに対し、カナダでは上限は無い。オーストラリアやカナダを始め諸外国はこれまで海外の才能ある人材を確保してきたことがアメリカをして科学や技術、そしてビジネス分野で世界の先端を走り続けることを可能にしていたことを理解し、海外の優秀人材を自国に呼び込むことに躍起になっている。米国の経済やイノベーション、果ては国防における移民者の貢献の割合は生粋のアメリカ人の割合よりも高い西暦2000年以降を見るだけでも、化学、医学、物理学の分野のアメリカのノーベル賞受賞者104人の内、40人が移民者である。フォーチュン500企業の5分の1は移民者が創業しており、海外生まれの高技能保有者はアメリカ人により多くの雇用を創出してきている(移民者の全人口に占める割合は13%程度)。 

 

そして、海外から来る留学生は生粋のアメリカ人学生よりも高い割合でSTEMを専攻しており、企業経営者もまたSTEMの卒業生を必要としている。 

バイデン政権はこれらの事実を良く理解しており、こうした海外の優秀な才能をアメリカに取り込むには移民制度を改良しなければならないと考えているそして中国との競争のためにはより多くのSTEM卒業生を米国内に持つ必要がある。そこでホワイトハウスは先週、STEMの教育を受けている移民希望者が米国に入国することを可能とする具体的な改善手続きを開始したと発表した。例えば、データサイエンスや環境地球科学を含め本来STEMとみなされるべき22もの分野をSTEMに追加し、その分野の卒業生には卒業後も従来より長く米国内で働くことを認める。

 

また、従来は大学やNPOでしか行われていなかったexchange visitorsの制度を民間企業に広げ、海外からのSTEMの研究者を交換研究者として採用することを勧めている。また、これまでその定義があいまいであった「並外れた能力者向けビザ」の要件を具体化することでSTEM分野で非常に優れた能力を持つ外国人材のビザ申請と審査を簡素化させる。バイデンの政策が、過去数年のうちにアメリカへの入国申請で嫌な思いをして、オーストラリアやカナダといったSTEMや熟練技能者などの有能人材を正当に受け入れる国々に流れて行くトレンドを覆せるかどうか注目される。

 

2.中国の天候制御の意図を懸念する米国

 

2008年の夏の北京オリンピックでは開会式直前に雨雲にヨウ化銀の入ったロケットを打ち込んで雨を降らせ、開会式を晴天下で行う中国政府側の努力の様子がメディアなどで紹介されていた。ちょうど一週間後に迫った冬季オリンピックに向けてはもとより、干ばつ・灌漑対策として中国政府が積極的に天候をコントロールしようとしている様子をワシントンポストが特集した。その活動は中国気象協会天候修正センター所属の北京天候修正事務所が主管となっている。この事務所および関係する中国各省の対応事務所に合わせて数万人もの人々が勤務し、日夜ヨウ化銀入りのロケットを雲に打ち込むことで砂嵐を打ち消し、ひょうの大降りをやわらげたり干ばつを防いだりしようとしている。 

 

202012月、中国政府はこの活動を大幅に拡張すると発表、なんと200万平方マイルを超える土地に降雨をもたらすことを目標に掲げ、先月には正式なプログラムとして発足している。この土地の広さより広い面積の国は少なく、187の国々はこれより小さい(日本の面積の2倍よりも広い)。

これだけ広大であるとミャンマーやインド、ネパール、モンゴルなど近隣諸国にも影響を与えかねない。そもそも一国に地域の天候を操作する権利があるのかという疑問もわく。また気候種まき(人工降雨)が科学的に意味があるのかの検討は、気象種まきをしなかった場合との比較ができないため難しいという。 人工降雨はロシアもアメリカも過去に行ってきている。米軍はベトナム戦争時、モンスーンシーズンを長引かせホーチミンルートをぬかるみにしてきたベトナム軍を不利にする目的で人工降雨を行うプログラムを極秘裏に進めていたという。つい最近でも米国西部の干ばつに対抗すべく緊急対策として人工降雨をトライしている。  

 

一方、中国の場合、昨年夏の中国共産党創立100周年イベントの前夜にロケットが放たれ、夜のうちに雨を降らせ、汚染された北京の大気を浄化し、翌日の天安門広場での7万人を集めてのイベントは晴天の下で行われた。そして来週開催の冬季オリンピックから遡ること過去3か月間に250発のヨウ化銀入りロケットが張家口市(河北省北西部に位置する)で発射されている。専門家は、前回の夏のオリンピックのときよりも大規模な人工降雨活動が今回予想されるとしている。長期プロジェクトとしては、中国北部の乾燥地帯を灌漑すべくチベット高原で大規模な人工降雨活動を長期的に進めようとしているアメリカ気象協会によれば中国の人工降雨技術はアメリカの先を行くほど洗練されてきているという。中国では雲は単なる天候ではなく利用可能な「水源」と見られているとまで語る台湾大学の教授のコメントが紹介されている。冬季オリンピックのスキー競技とスノーボード協議が行われる延慶県と張家口市には元々雪がないため、推定4900万ガロンもの水から人工雪をつくっている

 

ただ、環境保護主義者等は北京の水供給に悪影響を及ぼすことを懸念している。さらには大会期間中、必要とされる電力は全て再生可能エネルギーで賄い、石炭火力はその間止めるというが、専門家はその実現性に疑問を呈している。最後に、中国は、環境修正国際会議において生み出された「軍事目的での人工降雨禁止条約」を調印しているものの、長い間批准していない。中国が何をしようとしているのか意図がはっきりしないこと、そして何かをする場合の透明性が欠如していることがアメリカを含めた海外の専門家の懸念を生んでいる。

 

3. イスラエル大使館情報 - 日本からイスラエルへの投資額が過去最高

 

在日イスラエル大使館からの情報を共有いたします。

 

世界が注目するイスラエルのスタートアップ事情 - 協業に向けて日本企業は何を意識すべきでしょうか。

なぜイスラエルではスタートアップが次々と誕生するのでしょうか。先進的な技術を有するイスラエル企業と連携する上で、日本企業はどのような点に気をつければいいのでしょうか。

駐日イスラエル大使館 経済担当公使兼経済貿易ミッション代表 ダニエル・コルバー氏がインタビューに答える形で回答しています。

https://trailer.web-view.net/Links/0X88F62F6CB13436E786F88009D0CEE139D38BDEAE20697F96960D772FF24AD19377D8184EF64C1DCDB5D676504458FDD7D18EAAD5EFA18C04E7ABEA5DD3FF7794F598CD369566B7DD.htm

 

 

 

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