ニュースレター国内版 2021年・秋(277号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第277号)

 

1. 厳しい政治状況の中、中間選挙の年に向かうバイデン大統領

2. 今年のブラックフライデーの様子

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

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1.厳しい政治状況の中、中間選挙の年に向かうバイデン大統領

 

バイデン大統領が今年1月に大統領に就任した段階での優先課題は、①パンデミック対応と経済の復興、②ニューディール政策級の大規模社会投資、そして③党派分断の修復の3つであった。ところが来年、中間選挙の年を迎える段階で、このどれもが達成されていない。パンデミックについては、今年7月の独立記念日の段階では新規感染者数が収束したように見えたことから大統領は、「まもなく自由な生活に戻れる」と宣言したが、その直後にデルタ株の感染が急拡大、ワクチン接種要請と行動制限に戻っている。先週の段階で一日当たりの新規感染者数はほぼ10万、そして2021年でのコロナ感染死亡者数は2020年通年の総死亡数を既に超えている。新規感染や感染者の重症化を抑えるために、大統領はワクチン接種を強く国民に求めてきたが、州や市町村の単位で接種しているところとしていないところの境がはっきり分かれており、パッチワーク状況にある。

 

さらには、企業の従業員に接種を求める大統領の強制方針が共和党支持層から強い反発を受け、党派対立の様相を呈している。また、今週、連邦裁判所は、バイデン政権によるオハイオ州とテネシー州の連邦政府契約相手方企業社員へのワクチン接種条件を取り下げさせる判決を下している。②の大規模社会投資については、3月に1.9兆ドルもの経済刺激投資が実現し、国民にもキャッシュがある程度行き渡り、次いで先月、1.2兆ドルの国内インフラ投資法案の議会通過も果たして、大統領の署名を以てGoとなったことはプラスだが、それ以上に期待されている2兆ドル弱のBuild Back Better法案(社会保障・気候変動投資)については上院通過前に民主党内の反対にあって失速しており、大統領の指導力が問われている状況にある。③については、前述のインフラ投資法こそ「超党派」の名前が冠についたものの、前述の通り、コロナワクチン接種については共和党支持層の反発が強まり、分断を強めており、トランプ前大統領の政権批判の発言が油を注ぐ状況にある。失業率は4.6%と低く、企業の業績は上向きであり、人手不足から賃上げが進んでいるといった良い面も過去のニュースレターで伝えてきた。

 

ところが最近の物価高騰と商品供給の滞りというサプライチェーンの問題が米国民のバイデン大統領に対する評価を大きく落としつつあるままクリスマス休暇と新年を迎えようとしている。現時点の各種世論調査でも有権者の関心事項のトップは経済問題となっている中、大統領として如何なる方策で新年に向けて政治資本を取り戻せるのか注目される。 

 

2.今年のブラックフライデーの様子

 

サンクスギビングデ―には家族が集い、詰め物の七面鳥や手作りのデザートを楽しみ、そして翌日の金曜日は総出でクリスマスプレゼント等を購入しにショッピングモールに繰り出し、ショッピングカート一杯に買ってくれるので、お店がその一日だけで年初来の赤字を黒字にできるということでブラックフライデーと呼ばれてきた。このアメリカのビッグショッピングイベントは、昨年はコロナ感染の最中で制限があったが、今年はそれなりに復活させようと期待する売り手の様子をワシントンポストが伝えている。ニュージャージー州にできた米国最大のショッピングモールの“アメリカンドリーム”モールでは先着500名に800ドル相当のギフトを配ったり、ダンスパーティ、無料のキャンディ棒、サンタとのアイススケートなどのイベントで来客を歓迎した。南カリフォルニアの“アーバインスペクトラムセンター”では無料のヴァレーパーキング、アイススケート場、メリーゴーランドといったアレンジで当日を迎えた。バージニア州のタイソンズコーナーではブラックフライデーの朝6時に営業やイベントを開始している。 

 

ただ、密を回避すべく、モール内の人数制限はなされていたようである。直前に南アフリカで新型変異種のオミクロン株が見つかった報道があったものの、事前の調査では、およそ3人に2人がこのサンクスギビングの週末にショッピングをし、その中で18百万人はブラックフライデーにオンラインも含めてショッピングを行うと回答している。 

 

実際にモールやショッピングセンターを訪れる消費者は昨年の38%から76%に倍増したと見られているサンクスギビングを含めた今年のホリデーセールの売り上げは昨年比10.5%増の8,590億ドル(98.8兆円)と見込まれている。ただ、パンデミック前の2019年と比べると消費者一人当たりのギフト購入額は648ドルと2%減少する見通しにある。モールを訪れる人の中には、モールで実物をチェックしたうえでオンラインで購入する人や、オンラインで購入したものをモールでピックアップするといった“ハイブリッドショッピング”が増えており、パンデミックの影響とみられている。今年の特徴として、世界のサプライチェーンの滞りの問題から品薄な商品が見込まれ、消費者がサンクスギビングを待たずにホリデーショッピングを始め、店の方も、サンクスギビング並みのディスカウントを早めに打ち出すことでホリデーショッピングの前倒しが進んでいた。 

 

一方、ショッピングのオンライン化はパンデミックで加速することはあっても減ることはなく、特に密を恐れる人々がオンラインに移っている。ということで、最終的な統計値を見ないと何とも言えないが、昨年のリベンジを実際のショッピングモールで果たそうとした人はそれなりに多いものの、オミクロンの懸念やサプライチェーンの問題などから、ブラックフライデーがかつてほどの輝きや賑わいをもたらしてはいないのかもしれない。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  台湾との断交、中国との国交樹立を掲げるホンジュラスの野党大統領候補

蔡英文総統は、訪台中の中米の国、ホンジュラスのエルナンデス大統領と会談し、

「台湾とホンジュラスは今後、国際社会で助け合い、共に発展することを期待する。」

とコメント、これに対してエルナンデス大統領も台湾を支持する立場を改めて表明している。

尚、ホンジュラスは台湾と外交関係がある15カ国の国の中の一つであるが、11月28日に行われる大統領選挙では、

「台湾と断交し中国本土と国交を樹立する」と主張する野党候補が世論調査ではリードしている。

 

l  台湾の来年の経済成長予測4.15%

近年の台湾の経済成長率の目覚ましい伸びにより、台湾政府は、台湾の1人当たりGDPが2021年には32,787米ドルに達すると予測している。

こうした予測をベースに、2025年には韓国を超えるとも予想されている。

また、台湾政府・行政院・主計総処は、2021年の域内総生産(GDP)予測を5.88%増から6.09%増に上方修正しており、好調な輸出を背景に、11年ぶりの伸びになる見込みであるとしている。

そして、高速通信規格5G、電気自動車、高価格帯コンピューターなどへの世界的な需要の高まりを受け、今年の輸出成長見通しも上方改定され、2022年の経済成長率予測も4.15%増とし、従来の3.69%増から引き上げている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  韓国製迎撃ミサイル「天弓2」のUAEへの輸出内定

韓国政府は、「国防産業を有望成長産業として捉えている」と見られる。

こうした中、韓国製迎撃ミサイルである、「天弓2」のアラブ首長国連邦(UAE)への輸出が事実上内定した模様である。

これに対して、韓国国内では、「世界の兵器市場で大きな影響力を持つ中東への本格的な輸出の橋頭堡を確保し、これまで足踏み状態にあった防衛関連の大規模輸出の道を切り開いた点で大きな意味がある」

との評価が出ている。

 

l  婚姻・出産の低下と死亡の増加が続く韓国

韓国では今年9月に行われた結婚式は、1万3,733件に留まり、昨年9月に比べて10.4%も減少し、1981年の婚姻統計開始以来、最低となり、この婚姻だけでなく出生・死亡という人口に関わる3大統計が全て悪化したと報告されている。

即ち、9月の出生数は2万1,920人となり、前年に比べて6.7%減少、死亡数は2万5,566人で前年に比べ5%増え、9月基準では過去最多となった。

そして、死亡数が出生数を上回ることにより発生する人口の自然減も3,646人で過去最多となった。

韓国政府・統計庁は、「婚姻年齢層の人口が減少し続けている上、晩婚傾向も進んでおり、新型コロナウイルス感染拡大の第4波の影響で結婚を延期するケースも多かった。出産も減り続けている」とコメントしている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,194.43(前週対比-10.71)

台湾:1米ドル/27.86ニュー台湾ドル(前週対比-0.03)

日本:1米ドル/113.44円(前週対比+0.92)

中国本土:1米ドル/6.3930人民元(前週対比-0.0079)

 

2.       株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,936.44(前週対比-10.94)

台湾(台北加権指数):17,369.39(前週対比-471.98)

日本(日経平均指数):28,751.62(前週対比-847.04)

中国本土(上海B):3,564.089(前週対比+43.378)

 

 

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