ニュースレター国内版 2021年・秋(274号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第274号)

 

1. “Great Resignation”を駆動するテレワークと”tele-migration”の動き

2. 米国のインフレは一時的なものか、それとも長期的に続くか

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 寺島実郎氏メディア登場情報

 

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1.“Great Resignation”を駆動するテレワークと”tele-migration”の動き

 

マッキンゼーが、昨年、米国、日本、中国、フランス、ドイツ、インド、メキシコ、スペイン及び英国の800もの職種を調査した結果を基に、テレワークの将来予測を出した。それによれば、就労者の約2割は生産性を落とすことなく週3日乃至5日のテレワークが可能であるという。特に、金融・保険業界はテレワークの潜在性が最も高く、活動の75%がテレワークで可能と。次にマネジメント職、専門・技術サービス職及びIT・通信分野の58%68%がテレワーク可能と見ているが、他の職種は可能性が大きく下がる。 

 

また、国別では、メキシコ、中国、インドでは米、日、仏、独、英に比べ、リモートワークの可能性が下がるという。一方、経営者側のメンタリティーとして、ウォールストリートの金融・保険企業の経営者や法律事務所のトップは平均より高いオフィス再開率を示しており、技術的問題というよりはオフィスカルチャー的理由でテレワークを避けようとしている態度が見受けられる。逆に多くのテックカンパニーはテレワークに移行しつつあり、ツイッター社やDropbox社はリモートワークを継続するとしている。ただ、アップル社のようにオフィスに人が集まって議論することによるイノベーションを求めようとする会社もある。 

 

当ニュースレターで何度かお伝えしたように、米国では”Great Resignation”というトレンドが顕著で、コロナ禍を契機としたワークライフバランスの見直しやテレワーク環境を求めた転退職が進んでいる。さらには”tele-migration(遠隔移民)”という国境を越えたテレワーク雇用の動きも出てきている。リモートワークが可能な職種では、アメリカの経営者がコロナ後の人手不足を国外の人材のオンライン雇用で充足し、一方、国内で適切なテレワーク職が得られないアメリカ人就労者が国外のテレワーク職に就くという動きである。各国の異なる労働法制や労働慣行をクリアして合法的に越境雇用・就労を可能とする仲介サービスを新興ベンチャーのRemote社やDeel等が提供している。ヒトモノカネ情報技術がクロスボーダーで自由に流れるグローバル化の中でこの"tele-migration"が今後どのような役割を果たすのか注目したい。          

 

2.米国のインフレは一時的なものか、それとも長期的に続くか

 

バブル崩壊後の経済の低成長、デフレやゼロ金利が続く日本のように、米国もまた2008年の金融・経済危機以降、低成長、低インフレ率、ゼロ金利が続いていたが、ここにきてインフレ率が高まり、懸念を招いている様子をワシントンポストが報道した。現在のインフレ率は5.4%で、2008年の世界同時不況・金融危機直前以来の高さにある。食料やガソリンといった身近なものから車、家電等の耐久消費財、そして住宅まで値上がりしている。政策決定者等はこの“一時的なインフレ”がどこまで続くかを議論しているが、その疑問に対する答えとして気になるのがアメリカの消費者とビジネス界の物価の先行きに対する意識や態度の変化である。もしこの物価高が長く続くと就労者が考えれば、賃金を上げるように雇用者側に強く求めることになり、人手不足の中で雇用を維持しようとする雇用者は製品・サービス価格を値上げするという”wage-price spiral(賃金増―価格上昇の循環)“に陥るとエコノミストは指摘する。この場合、インフレが続くことからFRB連邦準備制度理事会が公定歩合を上げる形で介入することになる。 

 

一方、急な物価高騰に対し、消費者が買い控えに進めば経済は不況に陥る。先週行われたNY連銀の消費者意識調査では、回答者が来年のインフレを4%、その後の3年でも3.4%と予想していることが判明、この調査が開始された2013年以降で最高値を示している。ビジネス界もこのインフレが続くと想定して値上げに舵を取っている。FedEx、ペプシ、マコーミック、Helen of Troy(家庭用品、美容品等)といった大手が既に製品やサービスの値上げを発表乃至その可能性を発表している。また、人手不足のレストランではメニュー価格を今年に入って2回も値上げしている様子が伝えられ、2度とも従業員の賃金上昇のためと説明されている。米国全土でレストランの値段は1年前に比べ約5%上昇していると労働省が先週発表した。 

また、元々ドライバー不足に悩む運送業でも、ディーゼル価格がガロン当たり4ドルに急騰し、東海岸から西海岸までのトラックの燃料費が以前は750ドルであったものが1,000ドルの負担となって経営を圧迫している。一方、ミシガン大学の消費者信頼感調査では住宅や車の購入を計画している人の数が1980年台初頭以来の低さに落ち込んでいる。 

 

ただ、他のエコノミストによれば、このインフレはパンデミックに伴うサプライチェーンの詰まりや雇用の急速な再開等がもたらした”一時的なもの“であり、今後数か月で元に戻ると語る。実際、中古車や木材価格は2-3か月前のピークから下がってきている。来月のサンクスギビングのブラックフライデーやサイバーマンデーの消費動向など今後数か月の米国のポストコロナの経済状況が注目される。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  国慶節連休中の国内観光客数前年比1.5%

中国政府・文化観光部は、今年の国慶節連休(10月1~7日)期間中の国内観光客数が前年同期対比1.5%減の延べ5億1,500万人であったと発表している。新型コロナウイルスの感染拡大前と比べると70.1%の水準に留まっており、観光業の回復が進んでいないとの見方が改めて示されている。中国本土では他国に比べて、総じて新型コロナウイルスの感染は抑制されていると見られてはいるが、各地での散発的な感染発生に伴う行動制限や旅行の自粛などが観光業の復活には悪影響を及ぼしていると言うのが、中国国内の見方の中心となっている。尚、連休期間中の観光収入は前年対比4.7%減の3,891億人民元、新型コロナウイルス感染拡大前との比較では59.9%の水準と報告されている。また、こうした中、中国政府は、初接種後から6カ月を過ぎた人民への追加接種を開始するとしている。

 

l  辛亥革命記念日の中台トップの発言

所謂、中華民族にとって、近代史の中での「辛亥革命」は極めて大切なものであり、台湾にとっても、中国本土にとっても、10月10日の記念日は重要なものとなっている。習近平国家主席は、北京で開催されたこの辛亥革命110周年の記念式典で演説し、共産党政権の悲願である中台統一について、「必ず実現しなければならないし、必ず実現できる。中台統一に関しては、何人もこれに介入してはならない」との主旨の発言をした。国力の向上を背景に将来の台湾統一への意欲と自信を強調し、台湾のみならず、米国や英国なども強く牽制するコメントを示した。台湾政府は、この双十節=Double Tenth(日にちに因んで10と10、二つの十)と呼ばれる辛亥革命110周年を記念するイベントで、上述の習近平国家主席の台湾に関連する演説に対して鋭く反応し、「1911年の辛亥革命は権威主義と専制主義を主張したのではなく、民主主義と共和主義を確立するものであったのである。中華民族を含む台湾国民の多くは独立を望んではおらず、現状維持を望んでいるのだけである」との声明を発表している。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  25回世界韓人会議開催

中華民族が「世界華人会議」を開催しているのと同様、韓国も、「世界韓人経済人会議」を開催している。そして、今年も、1012日から15日の間、韓国の首都・ソウル市で、オンラインとオフライン両方で「第25回世界韓人経済人大会」が開催された。大会はソウル市、世界韓人貿易協会、連合ニュースの共催で開催され、64カ国・地域の138都市で活動する在外韓国人や韓国内の中小企業関係者ら約700人参加し、新型コロナウイルス禍の経済活性化を主要テーマ、解決策を模索する会議となった。具体的には、ソウル投資誘致説明会などが開催されていた。

 

l  三星電子、本年第3四半期営業利益前年比27.9%増

韓国のトップ企業である三星電子が発表した本年7~9月期の連結決算(速報値)によると、営業利益は15兆8,000億ウォンとなり、前年同期対比27.9%増加している。また、売上高は同9.0%増の73兆ウォンで、7~9月期としてはこれまでの最高だった前年同期の約67兆ウォンを上回り、過去最高を更新、増収増益となっている。半導体の好調や新型折り畳み式スマートフォンの人気が業績好調を牽引したと見られている。営業利益も7~9月期としては過去2番目の高水準で、今年通年の営業益は50兆ウォンを突破する見通しとなっている。部門別では、半導体部門だけでも前期を3兆ウォン程度上回る9兆7,000億~10兆ウォンの営業益を上げたものと見られている。半導体メモリー価格の上昇、システムLSI(大規模集積回路)やファウンドリー(受託生産)部門の収益改善がその背景と見られている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,185.12(前週対比+9.86)

台湾:1米ドル/28.09ニュー台湾ドル(前週対比-0.06)

日本:1米ドル/113.42円(前週対比-1.55)

中国:1米ドル/6.4362人民元(前週対比+0.0106)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,988.64(前週対比+32.34)

台湾(台北加権指数):16,387.28(前週対比-253.15)

日本(日経平均指数):28,550.93(前週対比+501.99)

中国(上海B):3,558.280(前週対比-33.887)

 

4.寺島実郎氏メディア登場情報

 

寺島文庫殿より寺島実郎さんのメディア登場の情報を下記の通り入手しましたので皆様と共有させていただきます。

 

【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第7回放送:1024日(日)午前11時~

<ゲスト>:坂村健氏(東洋大学情報連携学部[INIAD] 学部長、東京大学 名誉教授)

今回は「DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何か―我々はどう進むべきか」をテーマに、IoT分野の第一人者の坂村健氏をゲストにお迎えし、20174月に開学し、開学当初より学部長を務めておられる東洋大学情報連携学部の赤羽台キャンパスにて対談致しました。1970年~80年にかけてのコンピュータの進化や8090年代にかけてのインターネットの登場に代表される情報技術革命など、それぞれの現場の最前線で活動された坂村氏の実体験に触れながら、情報技術革命の進化の歴史の中でDXが持つ意味、そしてDXの本質とは何かについて、寺島と議論します。また、日本にとどまらず世界中であらゆる機械に組み込まれている「TRON」を開発された坂村氏ならではの着眼点で、進展するDX時代で日本が抱える構造的な課題、人工知能(AI)と人間の関係性のあり方などについて、寺島との対談を通じて、多角的な側面から深く掘り下げます。

 

是非、ご視聴頂けましたらと存じます。

 

第3日曜日「世界を知る力」(第1回~第12回までの放送)・

第4日曜日「世界を知る力-対談篇-」(第1回~第6回放送)につきまして、おかげさまでYouTubeでの再生回数が合計198万回以上となりました。

日本国内にとどまらず、海外の邦人含め、「本当のことを知りたい」、「本物の情報に触れたい」と強く思う方々に、大変多くご視聴頂いていることを実感しております。

 

ぜひ皆様のネットワークご関係者へ、引き続きお知らせ頂ければ幸いに存じます。

 

《メディア出演情報(一覧)》

2021/10/17(日)11:0011:55

TOKYO MX1 「寺島実郎の世界を知る力」 第13

 

2021/10/19(火)06:03頃~

TBS系ラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」

※うち、「今朝のニュースピックアップ」コーナー 全国33局ネット

 

2021/10/24(日)11:0011:55

TOKYO MX1 「寺島実郎の世界を知る力-対談篇 時代との対話」 第7回

ゲスト:坂村健氏(東洋大学情報連携学部[INIAD] 学部長、東京大学 名誉教授)

 

2021/10/31(日)08:00

TBS系列「サンデーモーニング」

 

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TOKYO MX テレビ】 

『寺島実郎の世界を知る力』、『寺島実郎の世界を知る力-対談篇-時代との対話』

<見逃し配信>

Youtubehttps://www.youtube.com/playlist?list=PLkZ0Cdjz3KkhlIA30hZIT5Qnevsu0DBhY

エムキャス

(第3日曜日):https://mcas.jp/movie.html?id=749856148&genre=453017953

(第4日曜日[対談篇]):https://mcas.jp/movie.html?id=749856661&genre=453017953

 

*寺島文庫ウェブサイトからもアクセスできます。

https://www.terashima-bunko.com/minerva/tokyomx-2020.html

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