ニュースレター国内版 2021年・秋(273号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第273号)

 

1. バイデンの3.5兆ドルの社会福祉・気候変動対応プログラムは過剰か、過少か?

2. トランプ前大統領の2024年に向けた準備状況

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

 

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1.バイデンの3.5兆ドルの社会福祉・気候変動対応プログラムは過剰か、過少か? 

 

日本円で400兆円近くに及ぶバイデン政権の提唱する3.5兆ドルもの社会福祉改善と気候変動対応プログラム(Reconciliation 法案)は、以前の当ニュースレターでも報告の通り、その金額の大きさから議会共和党の強い反対はもとより、民主党中道の議員からも反対者が出ている。 同民主党議員曰く、大幅に減額し、かつ、同時に進行中の約1兆ドルものインフラ整備法案を先に通過させなければReconciliation法案への投票を行わないという。ペロシ下院議長以下の民主党幹部による説得もらちが明かず、101日にはバイデン大統領自らが議会を訪れ、反対者への説得にあたった。ワシントンポストによれば、説得に際し、大統領は、3.5兆ドルからのある程度の減額の余地を示した模様。3.5兆ドルという金額は確かに巨額だが、バイデン大統領が標榜したフランクリン・ルーズベルト大統領の「ニューディール政策(1933年~37)」やリンドン・ジョンソン大統領の「偉大な社会政策(1964年~65)」と比べ、その支出規模や経済へのインパクトがどれほどのものかをワシントンポストが別の記事で検証していたので、その比較の中の一部を抜粋して紹介する。  

 

   バイデン大統領            ニューディール政策       偉大な社会政策                    

現在の価値            3.5兆ドル                      0.3兆ドル                     0.5兆ドル

実行時のGDP       1.1%/                       2.8%/                        0.9%/年             

 

上記の通り、ニューディール政策の国家経済に占める割合は今回のバイデン大統領のプログラムよりもはるかに大きい。これは、ニューディール政策の頃のアメリカの経済に比べ、現在の経済規模が物価調整後で20倍を超え、偉大な社会政策時よりも5倍大きくなっているためである。また、バイデン大統領のプログラムでは増税などで2.9兆ドルもの収入が見込まれることから、純支出は0.6兆ドルにまで抑えられる。 

 

そして、ニューディール政策では、メディケア(国による65歳以上の医療保険負担)等、今日まで続く政府支出があるのに対し、バイデン大統領のプログラムでは子供税還付プログラムが2025年までで終了等、支出に期限があることから、ニューディール政策ほどの大きなインパクトを社会にもたらすものではないと専門家は見ている。 

 

連邦政府の収支の観点からはむしろトランプ減税の方がはるかにインパクトが大きく、税収減が3.3兆ドルから5.6兆ドル、税収増が1.5兆ドルから1.9兆ドルと独立系専門委員会(Committee for a Responsible Budget)において試算されているということで3.5兆ドルという額面を前面に出してニューディール政策以上に画期的な社会政策に見せるところがバイデン大統領の狙いであったかもしれないが、その実態はそれほどのインパクトのあるものではなく、むしろ額面が目立ちすぎて党内の造反を招くといった虻蜂取らずの可能性が出てきていると言えよう。                     

 

2.トランプ前大統領の2024年に向けた準備状況

 

トランプ前大統領は2024年の大統領選への出馬表明を行ってはいないものの、遊説や資金集めを通じてその意向を暗黙裡に表している様子をワシントンポストが紹介している。102日にはあたかも選挙戦のようにアイオワ州で集会を開き、またオンラインでの選挙資金集めを活発化させている。  

彼の熱狂的な支持者による今年16日の議会襲撃事件の責任を問われ、未だにフェイスブックとツイッターのアカウントから除外されているトランプ陣営だが、毎日のようにメルマガを出し、民主党や反トランプの人々、そしてトランプの言うことを聞かない共和党議員の攻撃を行っている。

今、公に出馬表明を行うと、彼の出馬の是非自身が来年の中間選挙の争点の1つに取り上げられ、仮に共和党が下院乃至上院での多数党の地位を奪還できなかった場合に責任を押し付けられることを懸念するという思惑もあるようである。

 

また、今、正式表明すると現在の資金集めが選挙資金法上違法行為とみなされるらしい。従い、支持者から出馬表明を求められると、ウィンクやうなずきで“肯定”しつつも沈黙を守る格好を取っている。一方、トランプは共和党内の潜在的ライバルの動向にも目を配っているという。 

今のところはフロリダ州のロン・デサンテス知事とマイク・ペンス前副大統領をチェックしている。そのペンスは既にアイオワ州での活動を開始しており、同様にマイク・ポンペイオ前国務長官や何人かの上院議員も同州を訪れている。ポンペイオは他の州も回っており、静かに資金集めも行っている世論調査では共和党大統領候補としてのトランプの支持率は45%を超えられていない

 

さらに、共和党内の調査では40%前後となっている。トランプ陣営は半狂乱的なペースで資金集めを行っており、これを来年の中間選挙における“トランプ支持候補”への選挙資金支援に充て、陣営を強化していくようである。現在75歳のトランプ前大統領に対し、同78歳のバイデン大統領はアドバイザーに対し自ら2024年の再選の意向を伝えている。自民党総裁選において、73歳定年制堅持を主張した岸田首相の発言を両大統領はどう受け止めるであろうか。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  台湾を持ち上げるナウル共和国

太平洋の南西部の島国で、台湾との外交関係を持つナウルのエニミア大統領は、米国・ニューヨークで開催された第76回国連総会一般討論演説にビデオ形式で参加した際に、新型コロナウイルス対策支援の面で台湾に感謝を示した上で、国連に対して、台湾の参加を受け入れるように公式に呼び掛けている。エニミア大統領は約16分間の演説の中でナウルでは全ての成人が新型コロナウイルスワクチン接種を済ませたとした上で、「真の友人であるオーストラリア、インド、日本、台湾の継続的な支援に心から感謝する」とコメントしている。

 

l  中国ゲーム市場上半期売上前期比7.8%増の1,505億元

中国政府・音像・デジタル出版協会ゲーム出版工作委員会によると、今年上半期(1~6月)の中国本土のゲーム市場の売上高は前年同期対比7.8%増の1,505億人民元(約2.6兆円)となっている。中国では8月に未成年のゲームを厳しく制限する方針が示されたが、ゲーム企業各社は、「業績への影響は極めて低い」とコメントしている。人気オンラインゲームを多数出しているIT大手のテンセントは、上半期のゲーム収入が866億人民元となり、NetEaseも295億人民元となっている。

 

l  米台関係深化と米国からの圧力

台湾国内では、米国政府・商務省がTSMCや他の台湾チップメーカーに対して、顧客情報の企業秘密を提供するよう要求しているという見方が流れているが、こうした見方をTSMCなどは否定している。ただ、中台関係が厳しくなる中、米国が台湾に対するアプローチを強める中、様々な要求も台湾に対して出されているとの見方も一部には残っている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  電気自動車へのシフト

GM、フォルクスワーゲン、現代自動車など世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)への転換を進めていく経営姿勢を示す中、大規模な投資と再編計画が示されている。また、これに呼応するように、アップル、小米(シャオミ)、鴻海科技集団(フォックスコン)などIT関連の大手企業も優れたソフトウエア技術とスマートフォンなどの電子製品で蓄積した製造能力でEV市場への参入機会を狙っていると見られている。こうした中、韓国国内では、現代自動車を中心とする韓国自動車メーカーのEV化への転換は予想以上に早いのではないかと見られ始めている。

 

l  国産ロケット「ヌリ」1021日に初打上げ予定

世界的な情報覇権争い拡大の中、軍事的にも経済的にも、「制宙権争い」が活発化してきているが、こうした中、韓国政府・科学技術情報通信部は、韓国の独自技術で開発したロケットである「ヌリ」の1回目の打ち上げ予定日を10月21日に決定したと発表している。打ち上げ時刻は午後3~7時の間で気象状況などを考慮して決めるとし、また、同部は気象などによる日程変更の可能性を踏まえ、打ち上げ予定日翌日の10月22日から28日までの1週間を打ち上げ予備期間としもしている。ヌリは現在、発射場所となる南部の全羅南道・高興の羅老宇宙センターで飛行に必要な火薬類などの搭載作業が行われている。と分析している。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,181.52(前週対比-3.37)

台湾:1米ドル/27.82ニュー台湾ドル(前週対比-0.08)

日本:1米ドル/111.02円(前週対比-0.68)

中国本土:1米ドル/6.4452人民元(前週対比+0.0188)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,019.18(前週対比-106.06)

台湾(台北加権指数):16,570.89(前週対比-689.30)

日本(日経平均指数):28,771.07(前週対比-1,477.74)

中国本土(上海B):3,568.167(前週対比-44.900)

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