ニュースレター国内版 2021年・夏(268号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第267号)

1. 来年の中間選挙に向け選挙法改正でぶつかり合う民主・共和両党

2. かつてない速度で消費経済を回復させているアメリカの富裕層

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

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1.独立記念日にパンデミックとの戦いの勝利宣言を出せないバイデン大統領

 

今年3月のテレビ記者会見で、バイデン大統領は「(コロナ対策を実行すれば)74日の独立記念日には小規模のグループが集えるようになっていたい。ただ、大人数が集まる大規模イベントは難しいであろう」と語っていた。それが今週日曜日の74日には、1千人もの招待客をホワイトハウスの南庭に招き、独立記念日を祝えたのであった。招待客の多くはマスクを着用せず、バーベキューを楽しんだ。 エッセンシャルワーカーの人々や軍人家族なども招待されていた。このイベントはバイデン大統領にとっての初の大規模イベントとなるものである。 

 

その意味で、コロナの行動制限から通常の生活に戻って良いと、あたかも国のトップが是認するような1つの大きなイベントとなった。パンデミックに打ち勝つことはバイデンが大統領を目指す際の、そして大統領となった後も中心的なビジョンであり、その実現が彼の政権の求心力とも位置付けられている。その点で、ワクチン接種を加速させ、上記のイベントの実現に至るまでに新規感染者数や新たな死亡者数を抑え込んできたことは彼の大きな政治的得点となっている。 

 

実際、フォックスニュースの最新の世論調査で、64%が大統領のコロナ対応を評価しており、トランプ支持層ですら30%もの人が評価した。大統領自身も、米国がコロナパンデミックに打ち勝ち、経済ともども良い方向に向かっていることを強調した。ところがパンデミックの状況は予断を許さず、新規感染者数は上昇傾向にある。その原因にデルタ株の広がりがあり、昨日のCDC(米国疾病管理予防センター)の発表ではデルタ株の新規感染者数に占める割合は50%を超えている。経済界はバイデン政権に海外渡航制限を撤廃するよう求めているが、感染再拡大の危険があることから同政権はまだそれを認めてはいない。

 

何はともあれ、ワクチン接種が最も効果的な感染予防、重症化予防であるにもかかわらず、現状の接種状況は大統領の当初の目標である「独立記念日までに国民の7割が少なくとも一回接種」を達成できていない(昨日時点で55.1%)。ピーク時には一日当りの米国のワクチン接種者の数が300万をはるかに超えていたのが、現在は100万未満にまで落ちてきている。ジョージ・W・ブッシュ大統領が2003年、イラク侵攻を行い、サダムフセインの排除を成功裏に終え、“ミッション達成”の横断幕で米国民にアピールしたものの、その後のイラク統治任務の間に自爆テロなどで9-11の被害者総数をはるかに上回る戦没者を出し、ブッシュ政権の支持率が地に落ちた失敗をバイデン自身が間近で見てきている現段階でパンデミック勝利宣言をしてしまうことは国民に誤解を与え、後々、経済的にも政治的にも大きな混乱をもたらすリスクをはらんでいることからバイデン大統領も慎重にならざるを得ない。

 

2.黒人にとっての独立記念日とは

 

米国メリーランド州出身の奴隷として1818年に生まれたフレデリック・ダグラスは、その後、奴隷の立場から逃れ、奴隷制度廃止運動家として活動し、政治家にもなり、多くの講演や執筆の記録を残している。ワシントンポストは独立記念日の1つの特集として、フレデリック・ダグラスが1852年の独立記念日にニューヨーク州ロチェスターで行った奴隷制度廃止に関する有名な演説の一部を紹介したので一部のみ抄訳を下記する。 

 

「みなさん、申し訳ありませんが、今日何故私がここで話すために招かれているかわかりますか? 私が持つもの或いは代表するものと、あなた方の国の独立とどのような関係があるでしょう? 政治的自由や公然の正義といった独立宣言に具体的にうたわれている偉大な原理は我々にも及んでいるのでしょうか」

 

「今日、あなた方が喜ぶ神から与えられた祝福は、広く共通には享受されていません。 建国の父達が遺した正義、自由、繁栄、そして独立という豊かな遺産をあなた方は共有しているが、私たちはしていません。あなた方に生命と癒しをもたらす陽光は、我々にとってはむち打ちや死をもたらしてきました。 74日はあなたがたのためのものであり、わたしのものではない。あなた方は喜び、私は喪に服さなければならない。 足かせをはめられた人間を輝かしい自由の神殿に引っ張ってきて、あなた方と嬉しそうに国歌を唄えと要求することほど非人間的茶番で、神を冒涜する皮肉はないでしょう」

 

「アメリカの奴隷にとって74日とはなんでしょうか。私は答える。他のどの日よりも彼(奴隷)が恒常的に犠牲となる不正義や残虐さが明らかとなる日であると。彼にとっては、あなた方のお祝いは見せかけであり、あなた方の自慢の自由とは不浄なライセンスであり、あなた方が語る国家の偉大さは果てしない虚栄心の広がりであり、あなた方の喜びの声は空っぽで心無く、あなた方が他国の暴君を非難することは非常な図々しさであり、あなた方が自由と平等を叫ぶことは中身のない茶番であり、あなた方の祈りや讃美歌、説教、感謝祭、宗教的パレードや祭典は彼にとっては単なる大言壮語であり、欺瞞、詐欺、不信心で偽善であり、野蛮な国としての不名誉をもたらす犯罪を覆い隠す薄いヴェールなのです。 今この時においてアメリカ合衆国の人々以上に驚くべき血なまぐさい罪を犯している国はこの地球上に1つとしてありません」

 

辛辣なスピーチはまだまだ続き、奴隷制度に無関心であったアメリカの教会にもその舌鋒は及ぶ。ただ、最後に「この国に絶望はしていない」と「希望」を語る。彼の希望の根拠の1つが合衆国憲法であり、そこにアメリカを真の自由に導く精神を感じ取っていたとワシントンポストは解説する。奴隷解放をもたらす南北戦争がはじまる1861年より9年も前のスピーチであるが、そもそもこのような演説を許し(地元の名士数百人を前に)、それがそのままメディアに載って、多くの読者に読まれるという点で合衆国憲法に基づくアメリカの懐の深さがあることは事実であろう。

 

現在、米国民主党は黒人奴隷に対する賠償の在り方を真剣に検討しているという。一方、その演説から170年を経て、BLM(ブラックライブズマター)や人種に基づくヘイトクライム、白人至上主義活動が横行する今のアメリカを見たとき、ダグラスはどう感じるのであろうか。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  TSMC魏社長の半導体需要に関する警鐘

台湾国内では、台湾積体電路製造(TSMC)のCEOである魏Zhejia氏が、Institutional Investor Magazineアジアから半導体業界の最高経営責任者に選ばれたことが注目されている。魏社長は、新型コロナウイルス感染拡大により半導体需要が以前の予想よりも増加してはいるものの、今後の需要動向には注意を払わないといけない状況にあり、そうした業況見通しを早く、正確にしていくことが、半導体業界の経営には強く求められるチェックポイントの一つであるとの主旨のコメントもしている。

 

l  台湾国軍の国土防衛意識

台湾の邱国防相は、新任の陳参謀長と徐陸軍司令官の任命式に於いて、新型コロナウイルス感染拡大、異常気象、中国本土軍用機の継続的な台湾国内侵入など、台湾は複数の脅威に直面していると述べた。その上で、台湾国軍の将校や兵士は、「国家安全保障を守る」、「国民の生命と財産を守る」と言う責任を負っており、特に今現在は、新型コロナウイルスとの戦いと仮想敵からの防衛が、国軍の極めて重要な任務となっているということを改めて示している。

 

l  中国共産党政府による配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディチューシン)への規制

中国政府は、インターネットの規制を担当する国家インターネット情報弁公室を通して、配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディチューシン)について、国家安全上の問題があるとして審査を開始すると発表している。この審査中は新規の利用者の登録を停止するようにも命じている。中国のネット通販最大手であるアリババ集団への処分をきっかけにした、習近平政権によるIT企業への統制強化の一環と見られている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  UNCTADによる韓国の先進国グループ入り

韓国国内では、国連貿易開発会議(UNCTAD)が、韓国の地位を開発途上国グループから先進国グループに変更したことが大きく報じられている。韓国国民のプライドをくすぐるニュースだからであるが、むしろこれまでは、UNCTAD基準では、韓国は先進国とは認められていなかったと言うことの裏返しでもある。そして、1964年にUNCTADが設立されて以来、開発途上国から先進国へとグループが変更された事例は韓国が初めてとなると誇り高く報じられている。

 

UNCTADは創設時の決議に従い、アジア・アフリカなど主要な開発途上国が含まれるグループA、先進国グループB、中南米諸国が含まれたグループC、ロシアと東欧のグループDの4つのグループで構成されている。これまで韓国はグループAであったが、今回からグループB、即ち、先進国へとその地位が変更になったのである。そして、韓国国内の報道は、これに伴い米国、英国、ドイツ、フランス、日本など31カ国が所属するグループBに韓国が入ることとなり、またグループBはこの結果、32カ国へと増えることになったと報じている。

 

l  文大統領の訪日に反対する韓国国民

韓国の世論調査機関は、東京五輪に合わせた文在寅大統領の訪日について、反対が6割を占めたとの結果を発表している。文大統領は開会式に出席することに対する意欲を示し、外交得点に結びつけることも検討しているようであるが、韓国国内世論はこれには必ずしも好意を示していない模様であり、大統領の判断が注目されている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,130.53(前週対比-3.41)

台湾:1米ドル/27.89ニュー台湾ドル(前週対比+-0.00)

日本:1米ドル/111.04円(前週対-0.27)

中国本土:1米ドル/6.4721人民元(前週対比-0.0176)

 

2.       株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,281.78(前週対比-21.06)

台湾(台北加権指数):17,710.15(前週対比+207.16)

日本(日経平均指数):28,783.28(前週対比-282.90)

中国本土(上海B):3,518.760(前週対比-88.802)

 

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