ニュースレター国内版 2021年・春(267号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第267号)

1. 来年の中間選挙に向け選挙法改正でぶつかり合う民主・共和両党

2. かつてない速度で消費経済を回復させているアメリカの富裕層

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

-------------------------------------------------------------------

1.来年の中間選挙に向け選挙法改正でぶつかり合う民主・共和両党

 

当ニュースレター第262号において、「選挙法改悪に物申す企業経営者」のタイトルで記事にした通り、ジョージア州では今年、投票法選択の自由を大きく制約する新たな投票法が共和党与党の州議会で承認され、また同様の州法が共和党勢力の強いネバダ、アラバマ、フロリダといったいくつかの州で承認されている。

 

ジョージア州では、州の下院野党リーダーのStacey Abrams女史が長年、「ジョージアをひっくり返せ」というキャンペーンを行ってきたが、昨年の大統領選で州の選挙人をバイデンにもたらすことに成功し、今年1月に行われた連邦上院議員2名の補選でも共和党から民主党に「ひっくり返す」ことに成功している。トランプ前大統領と共和党幹部は昨年の大統領選で郵便投票などの投票手続きに不正ありとして抗議をしてきたが、具体的な対抗策として登場してきたのが冒頭の投票規制の州法であった。基本的に投票がしやすくなれば民主党が有利になるという構図があるためである。これに対し、連邦議会上院与党民主党はFor The People Actという法案を提出、上述の州法を無効化することを目指している。州が決めるべきことに連邦が口を出すことは許されないとする立場の共和党は一枚岩でこの法案に反対している。 

 

党派間対立を抑え、超党派の活動を目指すバイデン政権と議会民主党は、民主党のマンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)をして共和党の主張にも配慮した法案の改訂版を出させたが、共和党は一歩も引かない状況にある。マンチン上院議員は州内に石炭産業を抱え、民主党の進める脱炭素化には是々非々の立場であり、その意味で共和党側が自らのアジェンダを進める際に引き抜きしやすい大切なターゲットともいえるが、今回の彼の誘いには応じない。上院の100議席は現状、民主、共和両党間で50対50に分かれており、わずか1議席の造反で主客が変わる状況にあることから、各党共に党内の引き締めを行い、For The People Actに対しては共和党はフィリバスター(議事妨害)行動に出ている。

 

民主主義の根幹をなす投票行為を行いやすくするべきと主張する民主党と、州の権利を連邦政府が侵してはならないという共和党のイデオロギーのぶつかり合いのようにも見えるが、その実は来年の中間選挙を有利に戦うための環境づくりの争いであり、もちろん大統領選の結果を根に持つトランプ前大統領が共和党の動向をコントロールしていることは間違いない。民主党側がこのデッドロックの状況を如何に解除するのか注目される。

 

2.かつてない速度で消費経済を回復させているアメリカの富裕層

 

バイデン大統領はアメリカ人のワクチン接種を進めることで経済をボトムアップで、されには中間層を拡大することで回復するという目標を宣言している。 実際のアメリカ経済もまた急速に回復、拡大の状況にある。但し、その過程がバイデンの求めるボトムアップやミドルクラス中心ではなく、富裕層の消費によるトップダウンである様子をワシントンポストが特集した。コロナへの感染懸念から、今年は遠出をせず、バハマのような近場へ行くクルーズ船の旅が人気で、近海にもかかわらず2万ドルで完売している。2023年の180日間世界一周クルーズの旅は一人最低4.6万ドルのキャビンから16万ドルのスイートまで売り出し日で即日完売している。現時点で、アメリカの消費の4割が最低年収12万ドル以上のトップ2割にて支出され、最下層2割の消費のシェアは9%となっている。 

 

また、富裕層は今回のパンデミック不況の影響を受けないままに富を蓄えていったので、通常よりも2.5兆ドル余計に貯蓄がなされている。高騰する株価と住宅価格のお陰もあって、上位1割の資産は8兆ドル以上増えている。かかる状況下、富裕層の消費が今年3月にリバウンドしはじめ、今や前年比11%増となり、このままいけば1946年来最速の消費支出の伸びを示すことになる。特に伸びが目立つのがライブエンターテイメントで60%増、次いでアミューズメントパークやその他リクリエーション(54%増)、会員制クラブ(45%増)、ホテル(33%増)となっており、いずれも富裕層が多く消費する分野となっている。J.Crewやユニクロといったアパレル小売もでも新作が従来より高値で飛ぶように売れている。別荘の需要も急増中で、4月は昨年比178%増、5月で48%増となっている。教育産業はもとより、ホテル、リクリエーション、エアライン、クルーズを含めた輸送、観光業はパンデミックで最も打たれた業界だが、その間、従来以上に富をため込んだ富裕層がこの業界分野の消費に一気になだれ込んでいる様子をワシントンポストは「津波」と表現している。 

 

隔年で行われる連銀による銀行のストレステストが今日行われ、大手銀行に特に問題がなければ1,300億ドル相当の配当や自社株買いが行われ、株価高騰と相まって富裕層のさらなる富の増大が見込まれる。同じく連銀は、急な公定歩合の引き上げはしないと言っているが、一方で、この消費支出の急増が物価を予想以上に長く高止まりさせるとの警鐘を鳴らしている。  

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

 

*  ワクチン接種者の数は6億人超

 

中国政府・国家衛生健康委員会(NHC)は、既に6億人超が1回以上新型コロナウイルスワクチンの接種を受けたと発表している。

 

中国政府は6月末までには約14億人の人口の40%に対してワクチン接種を完了する目標を掲げている。

 

*  第2回米台対話の動向

 

米台対話に関して、米国・商務省の次官補の候補者はまだ正式に決まっていない為、今年夏に開催される予定であった第2回の台湾と米国のサプライチェーンに関する対話は、おそらく9月以降にずれ込むであろうとの見方が台湾では出てきている。 

 

この点について、台湾政府・経済部は、米台対話が8月に開催されるという保証はないが、しかし、いずれにしても、米台両国の実務レベルの協議は続くと強調している。 また、米台対話の議案としては、5Gだけではなく、電気自動車、医療、半導体、情報セキュリティなどにも広がるであろうと見られている。

 

*  福島原発汚染水処理を国際問題に位置づける中国

 

王毅国務委員兼外相は6月1日に開催されたBRICS外相会議に於いて、日本政府による東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出方針に関して、「利害関係国と国際機関との協議を纏める前に、勝手に放出してはならない」とテレビ会議形式で演説している。

 

王外相は、福島での汚染水処理問題を、パレスチナ問題やイラン核問題と並ぶ国際問題と位置付けてもいる。

 

(2) 韓国/北朝鮮

 

*  農業協力を目指す韓国

 

李仁栄統一部長官は、「食糧問題は南北すべての住民の為に必ず解決しなければならない課題である。

 

南北農業共同研究団地の造成など南北の農業協力に多角的な努力をしていく」とコメントしている。

 

文政権の南北融和姿勢は依然として貫かれている。

 

*  海軍力強化と軽空母装備

 

韓国第二の都市・釜山市で6月9日から12日まで開かれていた国際海洋防衛産業展(MADEX)に参加した韓国国内外の軍需企業が開発、販売競争を繰り広げたと韓国紙が報じている。

 

特に韓国海軍が推進する軽空母(CVX)事業を巡り、韓国の現代重工業と大宇造船海洋がプレゼンスを高めたと見られている。

 

尚、韓国防衛産業業界によると、今回のMADEXで競争が激しかった事業は、昨年9月の「2021~2025国防中期計画」に正式に盛り込まれ、来年入札が予想される韓国型軽空母となっていた。

 

1990年代から海軍の念願だった軽空母は探知装置と防御武装などを備え、様々な航空機の搭載と運用を行い、制海権確保や上陸作戦を行う艦艇が想定されており、建造費は約2兆300億ウォン、年間の運用費用は1,000億ウォンと推定されている。

 

*  国家競争力5段階上昇の23位

 

スイスのローザンヌに本部を置くビジネススクールでもある国際経営開発研究院(IMD)が発刊した「2021年IMD国家競争力年鑑」によると、韓国は評価対象64カ国のうち23位となったと韓国政府・企画財政部は発表している。これは昨年と同じ順位である。昨年は2019年の28位に比べて5階段上っていた。

 

また、企画財政部によると、IMDが1989年国家競争力順位を発表以来、韓国の歴代最高は22位(2011〜2013年)であり、最低は41位(1999年)である。

 

[主要経済指標]

 

1.    為替市場動向

 

韓国:1米ドル/1,129.78(前週対比-18.25)

 

台湾:1米ドル/27.77ニュー台湾ドル(前週対比-0.16)

 

日本:1米ドル/110.08円(前週対-0.63)

 

中国本土:1米ドル/6.4364人民元(前週対比-0.0469)

 

2.       株式動向

 

韓国(ソウル総合指数):3,267.93(前週対比+18.61)

 

台湾(台北加権指数):17,318.54(前週対比+105.02)

 

日本(日経平均指数):28,964.08(前週対比+15.35)

 

中国本土(上海B):3,525.097(前週対比-64.651)

 

---------------------------------------------------------------------------