ニュースレター国内版 2020年・冬(253号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第253号)

 

1. かつてない政権移行期間中のアメリカ

2. 経済復活で先を行く中国に米国の超党派でかつ同盟国との統一戦線による封じ込め圧力

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4.新版「中東フリーランサー東京報告2」

5.文藝春秋にミッキー・カンター氏へのインタビュー記事を寄稿

6.防衛技術ジャーナル誌への寄稿

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1.かつてない政権移行期間中のアメリカ

 

民主主義大国の米国で政権移行が本格的に進む12月には、メディアと国民の関心はそれまでのニュースの中心であったホワイトハウスから次期大統領とその政権移行チームに移るのがこれまでのパターンであった。

 

ところがあとわずか6週間弱で大統領就任式を迎えるこの時期の政権移行状況は従来とはかなり異なる様相を呈している様子をワシントンポストが取り上げている。まず、通常去り行く大統領は、大統領としてのオーラを消し、次期大統領が輝きを増していくものだが、選挙での負けを認めていないトランプ大統領は今でも自らの威光を強く発しようとしている。 

 

例えば、国防長官を始め政府高官を罷免したり、在外米軍の撤収を命じたり、自らの威光に沿わない法案に対し、拒否権発動カードを見せて法案修正を求めたりしている。

 

国防権限法内に組み込まれたSection 230という条項はウェブサイト上に他者が損害となるような内容を掲載した場合に、当該ウェブサイトに法的な保護を与えるものだが、この条項を削除しないと拒否権を発動するとトランプは脅しているそうすることで、選挙期間中、自陣営に対し不公平であったと彼が信じるツイッター社や、その他テックカンパニーの自社プラットフォーム監視方法に対し、法的に責任を取らせることを検討しているという。

 

一方、バイデン次期大統領は、現時点で過去の大統領による閣僚候補指名のペースを上回るスピードで閣僚指名の発表を行っている。 大統領選後5週間の時点で、オバマ大統領は7人、トランプは5人、クリントンはゼロであったが、バイデンは8人を指名した。ジョージWブッシュは、2000年のこの時点ではフロリダ州の集計が終わっておらず、勝者と判明していなかった。

 

パンデミックで困難な状況にある人々へのトップとしてのいたわりのメッセージは、トランプ大統領でなく、バイデン次期大統領から出され、その間、トランプは、大統領選の正当性を攻撃する46分ものとりとめもない虚偽で固められたビデオをリリースした。 

 

バイデンは既に共和党の上院議員と私的に対話し、新政権の大胆な政策を大統領令や法案を通じて実行していくための根回しを行っている。また、州知事や市長、労働組合の代表、黒人団体の幹部等とも面談している。バイデンとしては就任後の100日以内に、全国民にマスクの着用を奨励し、また自らのワクチン接種を公開し、その安全性を訴える。 

 

近年の政権移行で最も成功裏に終わったのはWブッシュからオバマへの移行であったといわれる。 

20089月のリーマンショックの後であったため、ブッシュ政権は危機対応政策に関し、オバマ政権移行チームと調整しながら進めた。 

 

一方、オバマは、外交においてブッシュ大統領の評判を損なうことを注意深く避けていた。  

現在の政権移行は全く逆の分断状態にある。

 

唯一、政権移行らしい動きは、各省庁の職業官僚がバイデンの政権移行スタッフとの面談を開始していること。 

 

最近のトランプ大統領は、大概の時間を大統領執務室内で過ごし、「選挙不正」への怒りをぶつけるといった私的なことに費やしているという。彼の大統領最後の数週間は恩赦の実行や、保守的価値に絡む大統領令の発令に費やされそうであるが、ジョージア州の上院議員残り2議席の共和党の維持のための応援演説をすることでトランプのレガシーを守るべきとの補佐官の助言に従いつつもある

 

そんな中、ホワイトハウスのアリッサ・ファラー広報部長が先週辞任し、トランプの敗北を間接的に示しつつある。多くのホワイトハウスのスタッフもテレワークと称して自宅から求職活動を行っているツイッター上で過激なメッセージを発していたトランプに近いスタッフ連は、その劇毒性から政治銘柄の就職は難しく、政治から離れたポストでクーリングオフが必要と見られている。 

 

狂乱状態にあったホワイトハウスの静けさ、暗さと訪問者の少なさが際立つ、と記事は締めくくっている。 

 

2.経済復活で先を行く中国に米国の超党派でかつ同盟国との統一戦線による封じ込め圧力

 

今週、OECDは「米国を始め主要国経済が逆風を受ける中、中国主導の経済復活とワクチン開発のスピーディーな進展から世界経済の見通しは改善している」と発表した。本社がアメリカにある世界最大の法律事務所DENTONSはこの発表を受け、米国の視点から中国経済のリカバリーの状況をレポートしているのでその概略を示す。 

 

l  中国経済の復活は秋になっても衰えず、10月の鉱工業生産や国内消費は増大している。

l  11月のPMIは過去10年で最高値を示した。

l  輸出も西側諸国の2度目のロックダウンにも拘らず、堅調な値を示している。

l  中国共産党は内需を来年の経済成長の主要なエンジンにしようとしている。 

l  CNBCによるグローバル多国籍企業のCFOに対するアンケート調査では西側経済に比べ来年の中国経済の見通しが明るいと回答。

l  IMFは今年の中国のGDP成長率を1%と予測していたが、Oxford Economicsはこれが2%となると予測している。 ただ、中国の経済復活は10月にピークアウトし、11月、12月から来年の前半は停滞が続くとみるトップエコノミストも何人かいる。Oxford Economicsでは来年の中国の成長率は7.8%まで回復すると見ている。 ただ、その後、中長期的には諸外国との貿易摩擦の影響で5%未満の成長率に抑えられると見ている。

l  バイデン次期大統領はトランプ政権による対中関税率を下げるつもりはないものの、彼自身の対中貿易政策は知的財産権の侵害や国有企業への不当な補助金の是正に対し中国の譲歩を勝ち取ることに集中すると語っている。 

l  下院は米国株式取引所から中国企業を排除することを可能とする法案を満場一致で可決している。

 

尚、DENTONSは、米国の金融安定監視評議会が米企業の借入金の返済不能による倒産の波が生じる可能性について警鐘を鳴らし、また今年3月以降で2兆ドルを超える米企業の借入金の信用格付けが下げられた事実に注目しているという。、

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  プラス成長を見込む中国経済

中国の李克強首相は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)など国際経済に関わる6機関のトップらとテレビ会議方式で会談した中、「中国経済は今年、プラス成長を実現できる」と強調した。新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な打撃を抑制し、2020年通年でのプラス成長に自信を見せている。

 

l  月の土採取成功

中国国家宇宙局によると、12月3日午後11時10分、月で採取した土などを収容した無人月探査機「じょうが5号」の小型機が月面から発射され、その後、月の周回軌道に入った模様である。今月中旬に地球への帰還を目指すとも報道されている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  次期大統領候補

韓国の世論調査会社であるリアルメーターが11月30日に発表した次期大統領選挙(2022年)への出馬が予想される人物の支持率調査で、ユン・ソギョル検事総長が19.8%と、調査対象になった6月以降で最高となり、前月の17.2%と比べても2.6ポイント上昇している。与党「共に民主党」代表の李ナギョン前首相が20.6%で1位、同党所属の李在明京畿道知事が19.4%でユン氏に次ぐ3位に入っている。また、前月対比で李ナギョン氏は0.9ポイント、李在明氏は2.1ポイント、それぞれ下落している。文政権が次期政権でも継承されるのか否かは韓国を見る上で重要であり、更にその後継者の人気には今後も注視しなければならない。

 

l  日韓経済人会議開催

日本と韓国の企業トップが日韓ビジネスに関する協力策を議論する「日韓経済人会議」が11月27日に開催され、新型コロナウイルスの影響を受けながらも、「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」を目指して、経済・人・文化の日韓交流を続けることが重要であるということを確認している。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,083.75(前週対比+23.64)

台湾:1米ドル/28.20ニュー台湾ドル(前週対比+0.31)

日本:1米ドル/104.13円(前週対比+0.12)

中国本土:1米ドル/6.5300人民元(前週対比+0.0443)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,731.45(前週対比+105.54)

台湾(台北加権指数):14,132.44(前週対比+286.78)

日本(日経平均指数):26,751.24(前週対比+213.93)

中国本土(上海B):3,444.581(前週対比+74.848)

 

4.新版「中東フリーランサー東京報告2」

 

三井物産戦略研究所シニアフェローでおられた大橋誠さんから添付の新版「中東フリーランサー報告2」をお送りいただきましたので皆様と共有させていただきます。

大橋さんからは以下のコメントを頂いております。

 

「米大統領選は、概ねバイデン新大統領で寄り倒しみたいな感じですが、むしろだからこそ、残りの2か月間足らずに、トランプ大統領が何をやらかすのかを心配しつつ、特に最近のイスラエル・GCC接近(アブラハム合意)を中心にトピックスを漁ってみました。ネタニヤフイスラエル首相を筆頭に、トランプがいなくなると困りそうな人達がいますが、サウジなどは、多少距離を置いて乗り換え姿勢も見せています。

 

一方UAEは一段突っ走りを見せて、13か国ビザ発給停止を発表しました。そんな中、イランでは核開発指導者が殺されると言う事態が発生し、とにかく事態が極めて流動的ですので、取り敢えず今俯瞰できる事象を取り纏めてみました。」  

 

5.文藝春秋にミッキー・カンター氏とのインタビュー記事寄稿

 

昨日発売になりました月刊誌「文藝春秋」に、ビル・クリントン政権下USTRや商務長官を務められたミッキー・カンター氏の「バイデン政権の対中政策」と題するインタビュー記事が掲載されています。ワシントンDC駐在時代に得たご縁で、小生がインタビューを担当させていただきました。

 

カンター氏は、TPPへのアメリカの復帰を強く希望すること、国際的ルール作りの点で中国が入ったアジア・太平洋の15カ国によるRCEPに対しては非常に危惧していること、バイデン政権にとって日本を中心とした同盟関係の緊密化が非常に重要であることを特に強調されています。81歳と高齢なので自分は現役ではなく、バイデンのチアリーダーだ」と語られつつ、きわめて簡潔にポイントをつく即答と、「友人が多くいる日本が今でも好きだ」と日本への強い関心を持たれている様子がとても印象的でした。 

 

6.防衛技術ジャーナル誌への寄稿 

 

小生が前職で防衛ビジネスに関わっていたご縁で防衛技術ジャーナル誌のご依頼を受け、添付の記事を寄稿いたしました。ご笑覧頂ければ幸いです。

ジャーナルは下記のリンクにご覧ください。

  1. 2020年防衛技術ジャーナル誌寄稿.
  2. 中東フリーランサー報告