ニュースレター国内版 2020年・秋(250号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第250号)

 

1. 前回2016年の最終週の状況との比較でバイデンが有利と判断する切り口

2. 前回2016年の最終週の状況との比較でトランプが有利と判断する切り口

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. ワシントンDC日米協会チャリティイベントのご案内

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前回の米国大統領選挙の振り返り

 

4年前の今頃はヒラリー・クリントンの勝利を予想し、その後の閣僚指名などを予想していたことを思い出します。それが日本時間の114の日中にネットで見たCNNの文書のニュースで“Its Trump!”という見出しを見て驚いたことを思い出します。その後はヒラリーの支援者というよりはトランプを嫌う女性のグループを中心に“Not My President!”と悲鳴のような声を上げて街中をデモする人たちをテレビニュースが放映していました。いずれにしても自分が理解していたアメリカ合衆国とは違うアメリカの存在を知った感覚に襲われました逆に言えば、如何に自分の米国の知識と経験が狭く、浅いか、またトランプが言うようにメディアによる報道が必ずしも透明性を保ってはいないことも知ったわけです。それから丸4年が経ちました。

 

今年2月までは好況を背景にトランプ大統領の再選の可能性が高まっていましたが、その後発生したパンデミックで大統領選の様相は一変しています。加えてブラックライブズマターの運動と、それに伴う暴動は「人権・社会正義」vs. 「法と秩序」のキーワードで社会分断を募っています。らに分断を煽るのがトランプ大統領による超保守派判事の最高裁判事指名と上院与党共和党による議会承認の強行です。トランプ自身のコロナ感染は思ったほどのオクトーバーサプライズとはならず、むしろ「リーダーに求められる強靭さ」を「後期高齢者のバイデン」との対比で前面に出し、激戦州をハードスケジュールで回り、態度を決めかねている5%ともいわれる激戦州の無党派層取り込みに余念がありません。一方の民主党は、年初まで28人もの候補者が乱立する状態で、バイデン候補もやや埋没気味でした。

 

実際、彼はアイオワ州やニューハンプシャー州の出だしの予備選で敗退したわけで、ノースカロライナ州でも敗れれば撤退も止む無しの状況でしたが、“奇跡”ともいわれるカムバックを果たして民主党大統領候補の地位をゲットし、今やトランプ大統領に支持率で4乃至11%の差をつけています。とはいえ、2016年のデジャブと言えなくもないほど激戦州でのトランプ陣営の巻き返しが今まさに眼前で繰り広げられているのも事実です。仮に僅差でバイデン勝利となれば、郵便投票の正当性にクレームをつけ、法廷闘争もいとわない姿勢のトランプ陣営に対し、民主党サイドは上院の与党奪還も含め圧倒的な差で大統領選を勝利することがスムースな政権移行に寄与すると考えているそうです。かかる状況下、前回の大統領選のこの時期の状況との比較から、それぞれの候補の優位性を説く記事をまとめる形でご紹介させていただきます。

 

1.前回2016年の最終週の状況との比較でバイデンが有利と判断する切り口

 

今回の選挙が前回と異なるのは、トランプが既に大統領であり、未知の期待を秘めたフレッシュな候補ではなく、4年間の記録を持つ「現職」であること。通常は「現職」が有利だが、バイデン陣営は「COVID-19の対応の失敗」という現在進行形の事実・記録を数字と共に有権者に訴求することで、今回の選挙をトランプの信任投票として位置づけ、「彼はその職に留まるべき人物ではない」と糾弾する。4年前のこの時期には、トランプ陣営はクリントン候補の電子メール疑惑問題を責め、今回もまたバイデン候補の次男のハンター氏のウクライナ疑惑をバイデン家の不正として声高に責め立てているだ、ヒラリーの時にはFBIまで動いて証拠メールのチェックにまで至ったが、今回のバイデン家への“疑惑”に関しては証拠も挙がっておらず、トランプが叫んでも無党派層には響かない可能性が高い。また、2016年の民主党内は「どうせヒラリーが勝つであろう」ということで、党内も中道と左派が分裂した選挙戦であったが、今回は党内が統一しなければ勝てないとの危機感からサンダースに象徴されるように党内左派がバイデンに対し一枚岩で応援し、取りこぼしが無いようにしている。

 

選挙資金で前回と比較すると、絶対額ではいずれの陣営も前回を凌駕しているが、201610月の最終週のテレビ広告への支出額ではトランプもクリントンもほぼ拮抗し、ヒラリーが8%程度余計に支出した程度の差であった。ところが今回は、過去4週間のテレビ広告においてバイデン陣営はトランプ陣営の2乃至3倍の金額を支出できていることも前回との大きな違いである。

 

さらに言えば、トランプの好感度は元々それほど高くなかったが、ヒラリークリントンのそれも実は低かった。従い、好き嫌いで行っても、前回の選挙では両者にそれほどの差はなかったが、今回、バイデン候補の好感度(差し引きプラス16ポイント)は押しなべてトランプ(同マイナス10ポイント)よりも高いまま今日に至っているところもバイデンの優位性を示しているとワシントンポストなどリベラル系メディアは示唆する。

 

2.前回2016年の最終週の状況との比較でトランプが有利と判断する切り口

 

Frank Luntzという共和党員だがトランプ大統領には批判的な世論調査員が態度を決めかねている有権者だけを集めたフォーカスグループで先週22日の大統領候補者討論会で感じた夫々の候補者の印象を尋ねた。 

 

トランプ大統領に対しては、「抑制された」、「よそよそしい」、「落ち着いた」、「詐欺師的」、「驚くほど大統領らしい」、といった言葉が用いられた。これに対し、バイデン候補には、「あいまい」、「はっきりしない」、「とらえどころのない」、「守勢」、「おじいちゃんのよう」、といった表現となった。トランプ大統領の好感度は2016年の前回選挙の今頃は37.5%であったが、今は43.2%という。また、保守系のRasmussen Reportsが先々週に行った大統領の支持率調査では前回から3ポイント上昇して52%となったという。 さらにはCook Political Reportによると、今年3月以降の、新たな有権者登録数は、フロリダ州で共和党支持者が195,652人に対し、民主党支持者は98,362人、ペンシルバニア州では共和党支持者135,619人、民主党支持者57,985人、ノースカロライナ州で共和党支持者83,785人に対し、民主党支持者38,137人となっている。 

 

即ち共和党有権者基盤の方が活性化で来ているという報道である。激戦州では唯一、アリゾナ州で民主党支持の新規有権者登録数(31,139人)が若干共和党支持者(29,667人)を上回ったのみである。非白人有権者の多くはバイデンを支持しているが、それでもトランプは2016年の前回選挙時点に比べ、黒人の支持率を10ポイント以上増しており、ヒスパニックについては男性の有権者層の支持を増やしている。

 

一方、激戦州となるペンシルベニア州において重要な票田の一つである石油ガス産業関係者の票をバイデンが失うことで同州の選挙人を失う可能性が出ている。バイデンが大統領となればペンシルベニア州のシェールガス・シェールオイル産出のためのフラッキングをやめさせるはずとトランプが声高でキャンペーンを行っているためである。バイデンはそれを完全に否定しているがトランプ大統領の声は大きいというところ。

 

最後に  

「コロナ感染予防 vs.経済成長」、「党派間の融和 vs. 党派対立(分断統治)」、「田舎出身vs.都会出身」、「中流家庭vs. 富裕層」、「職業政治家vs. ビジネス出身」、「慎重vs.大胆」、「改善派vs. 破壊・再建派」、「人権擁護vs.法と秩序重視」、「気候変動対応vs. 石油ガス開発」、そして「静・温vs.動・騒」と、候補者自身も認める正反対キャラのバイデンとトランプですが、前回と異なるのはいずれが勝利しても前回ほどは驚かない耐性が我々にできているということでしょうね。 

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  台湾の防空識別圏への侵入を繰り返す中国軍機

台湾の空軍司令部は、中国本土の人民解放軍のY8対潜哨戒機1機が、台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表している。

 

中国軍の同型機が繰り返し同空域に侵入している。 

 

台湾政府・国防部が公開した資料によると、中国本土軍機のADIZ進入は、同軍が台湾周辺の空域で活動を活発化させた9月16日以降10月17日まででは19度となっている。

 

l  米国の孔子学院閉鎖方針を非難する中国

米国のポンペイオ国務長官は、米国内にある中国の非営利教育機構「孔子学院」を年末までに閉鎖させる方針を示した。

 

これに対して、中国政府は、

「直ちに誤りを正し、関連する教育交流プロジェクトの政治化や、米中間の正常な人文交流を妨げることを停止せよ」と強い非難コメントを示している。その上で、「中国本土政府は更なる対抗措置を実施する権利を留保している」とし、報復措置も示唆している。

 

l  中国最大の貿易相手地域となったアセアン

中国は、東南アジア諸国連合(アセアン)との関係を強化する取り組みを活発化させている。

そして、中国の税関当局は、アセアンが今年1月から9月の期間に中国の最大の貿易相手国となり、欧州連合を上回ったと発表している。

この9か月間のアセアンとの取引は、中国の貿易の14.6パーセントを占めるに至っている。

 

l  フィジーでの中台対立

米国のブルームバーグ通信などは一斉に、南太平洋のフィジーで、中国本土と台湾の外交官がもみ合いになる騒動があり、双方が、「職員がけがを負わされた」と非難しあう事態になった模様であると報じている。報道によると、10月8日、首都・スバのホテルで開かれた台湾の「双十節」(台湾の建国記念日に相当)の祝賀行事会場で、在フィジー中国本土大使館の職員2人が無許可で出席者を撮影し始めた。

 

これに対して、台湾側が撮影をやめて退去するよう求めたところ、もみ合いが起きた。

台湾側は、職員1人が頭にけがを負い、病院で治療を受けたと主張し、中国大使館も声明で、「台湾当局の挑発的な行動で職員1人が負傷させられた」

と主張し、警察に被害を提出したとしている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  THAAD配備に反対するデモ隊

韓国政府・国防部は、トラック31台を使って慶尚北道・星州郡の米軍のTHAAD(高度防衛ミサイル)基地に工事に使用する機器などを搬入した。国防部が大型の機器などを陸路で星州基地に持ち込むのは、2017年にTHAADが臨時配備されて以来、今回が初めてとなる。尚、その過程でTHAAD配備に反対するデモ隊が基地の入り口を封鎖し、機器の搬入を妨害した為、警察とデモ隊が衝突、最終的には、警察がデモ隊を解散させたため機器は搬入されたが、今回のような単純な工事にも反対勢力が大きく動いたことで、米韓関係は更に悪化するのではないかとの危惧が韓国国内で出ている。

 

l  三星電子のブランド価値世界第5

ブランドコンサルティング大手の米国のインターブランドが発表したブランド価値ランキングである「2020年ベストグローバルブランド」で、韓国の三星電子はグローバルブランド5位、現代自動車がグローバル自動車ブランド5位を記録している。

三星電子は1位のアップル、2位のアマゾン、3位のマイクロソフト、4位のグーグルに次いで初めて5位(623億米ドル)となっている。

 

l  ADEKA、半導体材料の研究開発機能を韓国に移転

日本の化学素材メーカーである「アデカ(ADEKA)」が半導体材料の研究開発機能の一部を韓国に移し、三星電子など韓国企業に供給するプロトタイプを生産することにしたとの観測報道が流れている。

 

日本の輸出規制の長期化で、韓国での半導体材料・部品の国産化が加速されると、ビジネスが不利となるとの見方から、韓国での市場シェアを守る為に、韓国の取引先との協力を強化する為に、韓国への進出を計画しているのであろうと見られている。

しかし、半導体関連の核心素材、部品、製品の韓国経由対中、対北朝鮮輸出などを意識する米国が、こうした動きに対して、どのような反応をするのかは、フォローしたい。

 

[主要経済指標]

1.      為替市場動向

韓国:1米ドル/1,129.61(前週対比+11.82)

台湾:1米ドル/28.66ニュー台湾ドル(前週対比+0.09)

日本:1米ドル/104.74円(前週対比+0.64)

中国本土:1米ドル/6.6772人民元(前週対比+0.0190)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,360.81(前週対比+19.28)

台湾(台北加権指数):12,898.82(前週対比+148.45)

日本(日経平均指数):23,516.59(前週対比+105.96)

中国本土(上海B):3,277.997(前週対比-58.361)

 

4. ワシントンDC日米協会チャリティイベントのご案内

 

日本語を学習する全米の高校生の日本語力と日本の文化・歴史の知識を競うジャパンボウルや全米最大のお花見イベント“Sakuramatsuri”など、米国における”日本“紹介の活動を長年行っているワシントンDC日米協会から、来月行われるチャリティトークイベントの案内を入手しましたので皆様と共有させていただきます。 

 

例年であればワシントンDC内の大きなホテルのパーティ会場を借り切って行われるチャリティを目的としたディナーパーティーですが、今年はコロナの影響からオンラインでの著名人によるトークを中心としたチャリティイベントとなります。

オンラインのため、日本側もネットでつないで初めての日米同時開催となるとのことで当方にも案内が来た次第です。 

 

オンライントークでは小池都知事とキャロライン・ケネディ前駐日大使の対談、カート・キャンベル前東アジア担当国務次官補とシーラ・スミスCFR上級研究員の対談、全米バスケットボールのワシントンウィザーズで活躍している八村塁選手もあいさつで参加予定とのことです。 

その他、プログラムの詳細は添付の日本向けフライヤーをご覧ください。 

 

チャリティイベントのため参加費が100ドルと高額であることと、日本時間1118日(木)の午前中9時から11と平日の“営業”時間帯のため、ご参加が難しいかもしれませんが、もしご興味がございましたら以下のリンクからお申し込みください(ペイメントフォームで少しバグがあったようなのでもし申し込まれる場合は少しあとでトライされると良いと思います)。