米国情報アーカイブ

米国情報3月号
原子力発電はアメリカの経済成長(Economy)を支える電力供給の1つの主要な柱であり、そのエネルギー源がオイルショックで乱れた影響を受けた際には国内の大切なエネルギー安全保障(Energy Security)を支える柱の1つとなり、一方で使用済み核燃料処理の点では核汚染の環境(Environment)への影響が懸念されてきました。  その後、21世紀に入りフラッキング技術の革命で国内の天然ガスが大量に安く出回るようになり、一方再生可能エネルギーの普及と経済性が向上する中で、原発の経済性が相対的に大幅に低下、早期廃炉の動きが出てきました。 そこに気候変動問題が登場し、脱炭素エネルギー源としての原発が再評価され、インフラ法やインフレ抑制法で巨額の補助金を得る形で延命が図られている状況です。 この経済とエネルギー安全保障及び環境の3つのEの要に加え、昨今はロシア、中国、イラン、北朝鮮の核兵器開発や宇宙空間での核兵器配備などのきな臭い敵対国(Enemy)の核のEも出てきました。 今週封切りの映画オッペンハイマーの通り、もともとは戦争の道具として登場した核技術を民生転換して生じた原子力発電・・
米国情報2月号
タイトルは「米国におけるエネルギー・トランジションの現状と見通し」です。 食料と共にエネルギー輸出国であるアメリカがなぜエネルギー・トランジションかと言えば、もちろん気候変動の脅威への対処と世界に対するリーダーシップがありますが、加えて太陽光パネルとEV/電池で世界市場を席巻する中国との覇権争いがあります。 また、フラッキング技術で石油・ガス掘削に革命を起こし世界最大の化石燃料生産国となったアメリカの次の経済推進の柱としてのクリーンエネルギー技術があろうかと思います。 バイデン政権が実現したインフラ法とインフレ削減法では数十兆円もの連邦資金が再生可能エネルギーやEVバッテリーと充電ステーション、電力網などの補助金に投じられ、それを呼び水としてもっと高額の民間投資が米国内の経済を刺激しています。 共和党はインフラ法には賛成したもののインフレ削減法には一票も投じませんでしたが、そのカネはレッドステーツ(共和党州)に多く流れており、その効果を共和党側も無視できないようです。 いまや「もしトラ」が「ほぼトラ」となりそうな気配で、仮に来年トランプが再度登場する場合、また化石燃料への投資強化・・

米国情報2024年1月号
1月の米国情報をお送りします。 タイトルは「台湾総統選挙の結果を踏まえた米国による対中関係管理を巡るリスク」です。 総統選から1か月経ち、中国は春節を迎えて今のところ台湾海峡に目だった脅威の兆しはなさそうです。 ただ、中国のフリゲート艦が4隻、台湾の近海で四方を固めている常駐が続いています。 台湾議会で民進党が過半数を握れなかったことが本土を少し安心させているところもありそうです。 肝心のアメリカは内心では民進党3期連続勝利で喜んでいるんでしょうが、頼次期総統がアメリカ寄り過ぎて放言などで本土を刺激しないように間接的にメッセージを送っているようです。 アメリカは台湾市民が民主的に本土と統一を選択したらそれを祝福すると表向きは述べてますが、仮にそうなったら大切なTSMC他の半導体サプライチェーンはもとより、人民解放軍が台湾に駐留し、第一列島線が押さえられ、また台湾所有の米軍兵器も押さえられてしまうので、そんなシナリオを到底容認できるとも思えません。 その意味でも本土が非民主的で高圧的であることを内心はほっとしているのかもしれません。
米国情報12月号
タイトルは『米国における、2024年の重要イベントと重要政策課題及び地政学リスク』です。 仮に来年の大統領選挙でトランプ前大統領が勝利するなら、アメリカのPolitical Realignmentと称する過去数十年に一度生じてきたと見られるアメリカの政治潮流の大きな変化が2016年のトランプ初当選の時点に遡って生じていたと政治学者は結論付けることになると思われます。 前回の潮流の変化がいつの選挙であったかは政治学者の間で論議を呼びますが、1932年のフランクリン・D・ルーズベルト大統領当選とそのニューディール政策は間違いなく政治潮流を変えたものと認識されています。 それに次いで、1980年のロナルド・レーガン大統領の当選と保守政策も変化を起こしレーガン・デモクラットと呼ばれる民主党支持層からのレーガン支持者を生み出しています。 トランプ勝利の場合、共和党、民主党それぞれが培ってきた政治的価値観の選択肢とは別に、アメリカの有権者が新たな政治スタイル、即ちエリートに対する非エリート、非白人に対する白人、ワシントンコンセンサスに対する内陸部の不満、ポリティカルコレクトネスに対する本音、世界の

米国情報11月号
●米国における投資規制・輸出管理などこれまでの対中経済安全保障措置の総括と、 2024 年大統領選挙に向けた対中デリスキングの見通し、 対して、中国との二国間「2020 年代気候行動強化WG 」が開催可能性などグリーン分野での協力に向けた具体的動き
米国情報10月号
●米国における2030年時点における政治経済地政学情勢見通し(国内の政治的社会的  分断の今後。米国が機能不全に陥るリスクを踏まえつつ) はじめに 米国の国家情報会議(NIC: National Intelligence Council)ではほぼ4年毎に約15~20年後の世界と米国の見通しとしてGlobal Trendsを作成し、公表している。 本稿では2012年に2030年を予想したGlobal Trend 2030と2021年に2040年を予想したGlobal Trend 2040を参照してみる。  NICの分析は、人口動態という最も先読みのしやすいデータに基づき、主要国の国力を予想しつつ、地政学、安全保障上のリスクはもとより自然災害やパンデミックなどの外部環境変化を予想していく手法で、アメリカ自身の視点で行う外部・内部の見通しの考え方をまず紹介していく。  その上で、現在の米国内の政治的社会的分断の延長線上としての7年後の状況を考察していく。

米国情報
9月の米国情報を送らせていただきます。 テーマは「米国における企業の非財務価値向上と開示に向けた政府の政策動向、企業の取り組みと今後の展望」です。 従来の印象では投資ファンドは気候変動や人権、ダイバーシティや社会貢献といった直接利益と関係ないと見られる分野での活動まで企業の活動情報開示を求め評価して投資するというリベラルな方向に進んでいるイメージがありました。 それが昨今はフロリダ州など保守系の州を中心にそういったESG情報重視型ファンドを排除する動きが顕著になってきています。 背景にトランプ共和党の人種問題のとらえ方や世代間ギャップがあるようです。 人口動態的にはいずれ白人がマイノリティになっていくことへの危機感、一方でシニアの方は2050年を過ぎても白人のマジョリティが続き共和党を支える基盤が続くこともあります(若年層は既に白人はマイノリティ)。 もう1つ共和党の強気の背景に、リベラルなテーマで規制や情報開示を民主党政権が求めても、州の訴訟で最終的に最高裁でひっくり返せるという自信があるからでしょう。  なにせ6対3で保守判事が圧倒的に多い現在の最高裁ですから。
米国情報8月
テーマは「米国における重要インフラ(電力・水・通信など)の災害対応・防衛(サイバー・物理的防衛)を巡る政策動向と、インフラ関連企業に求められる規制対応の展望」です。ハリケーンや竜巻、山火事などの自然災害による米国内の損害規模は別紙2の通り急増中です。同様にコロニアルパイプラインへのランサムウェア攻撃に象徴される米国内インフラへのサイバーアタックの被害も増えています。気候変動に関しては協力し合うべき中国がサイバーアタックでは最重要脅威となっており、その点で米国内のインフラ防護は今や軍事施設のような安全保障対象に位置付けられています。 グローバルにはアメリカは中露北イランなど専制主義国に対抗し、自由・人権・民主主義というソフトインフラとハードインフラを世界に広げていくことを重視し、中国の一帯一路に対抗する「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を推進中です。 以上の動きは超党派ですが、企業に対するインシデント報告の義務付けなどの規制についてのあり方については企業の負荷も高いため、議会でも議論がなされています。

米国情報7月
タイトルは「米国によるAI(生成 AI 含む)推進政策・企業の対応・取り組みと、倫理的課題などをめぐる検討動向」です。てっきり2045年ころのシンギュラリティとやらに向けてAIもゆっくり進化しているのかと思いましたが、実際は昨年11月のChatGPTリリースで一気に人間を知的に超えるAIの現実感と加速感をもたらしています。アメリカのイノベーションの一端を担ってきた米軍の国防先端研究プロジェクト局は半世紀以上AIへの投資を行っており、2018年にも2千億円を超える投資を行っているようで、生成AIがもたらす新たなパラダイムに対する軍事的な準備に抜かりはないようです。 米国の産官学は個人情報や知的所有権侵害から偽情報問題まで様々なリスクの問題でブレーキを踏むふりをしながら、その実、対中国など地政学的にもビジネス的にも米国の優位を大幅に増すパラダイムシフトのチャンスととらえ、その戦略化に余念がありません。AI規制を求めた全米映画俳優協会や脚本家協会のストが続いていますが、現在の米国のタイトな労働市場と流動性の高さを見ると、「AIに雇用が奪われる」という危機感よりはまだ処遇交渉の段階のようです。
米国情報6月号
●米国におけるサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を巡る政策動向と今後の 展望 はじめに  米国の循環経済の話題は、プラスチックごみの海洋投棄問題などが大きく取り上げられた際にはプラスチック製品を紙や木製素材に切り替えるといった企業努力がメディアを賑わしたが、最近の話題ではやはりサプライチェーンのレジリアンス確保のニーズからサーキュラーエコノミーを求める政治的な動きが目立つ。  循環経済に関わる米国の官民の動向を時系列的に調べ、考察してみた。

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