1. 連邦最高裁は大統領権限のさらなる拡大を容認するのか? (ワシントンポスト記事)
米国連邦最高裁はドナルド・トランプの大統領就任後の一連の緊急判決において彼の権限拡大を認めてきた。
トランプ大統領は、ここにきて連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事の解任や、追加関税、そして対外支援予算の支出拒否といった行為を司法に認めさせることを通じて、より一層の権力拡大を求め続けている。
これらの3つの大統領の行為に対してなされた訴訟は、最高裁がどこまで大統領による権限拡大の主張を容認するのかを試す重大なテストとなり得る。
クック理事が先週提訴した件に加え、トランプの関税措置をめぐる訴訟がまもなく最高裁に持ち込まれる。
また、議会が承認している数百億ドル規模の対外援助の執行をトランプ政権が停止できるかどうかも、最高裁で争われる可能性がある。
ニューヨーク大学法科教授のシェーン氏は「過去の大統領も与えられた権限を積極的に行使しようとしたが、通常は法解釈の範囲内で、しかも限定的に行われてきた」と指摘する。
一方、トランプが求めている各権限は「これまで議会の中核的な権限とみなされてきたものへの挑戦だ」と述べる。
最高裁はすでに、一部の独立機関のトップをトランプ大統領が交代させたことに関し、その権限を追認する姿勢を示してきた。
5月には、全米労働関係委員会(NLRB)や公務員制度保護委員会の長官を、法的争いが続く中でもトランプ氏が解任できると判断し、トランプ氏に大きな勝利を与えている。
合衆国憲法は大統領に全ての行政権を与えているとし、議会が政治的干渉から独立させるために設置した機関であっても、大統領は「理由なく」長官を解任できると連邦最高裁は判断した。
ただし、最高裁は連邦準備制度は例外とした。
FRBは議会によって大統領から独立して運営されるよう設立され、政治的圧力ではなく経済状況に基づいて金利を決定する役割を担う。
そのため、FRBの理事は「正当な理由」がなければ解任できないとされてきた。
しかしトランプは、この例外にも挑戦するかのようにクック理事を解任した。
111年のFRBの歴史で、理事を1人でも解任しようとした大統領はトランプが初めてである。
トランプ大統領は、クック氏がFRBに指名される前の2021年に住宅ローン申請書類で虚偽申告を行ったことを「十分な理由」としての解任だと主張。
政権はさらに追加の疑惑も提起している。
最高裁に判断が委ねられる第二の訴訟は関税をめぐるものだ。
控訴裁判所は先週、トランプ大統領が外国製品に追加で課した関税を違法と判断した。
トランプは最高裁への上訴を示唆している。
トランプ大統領は今年2月から国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく「緊急事態」を宣言し、追加関税を課し始めた。
同法は外国からの脅威に対応するために大統領に一定の権限を与えるが、関税を無制限に課す権限までは含んでいない。
合衆国憲法は輸入品への課税権を議会に付与しているため、控訴裁判所は「この法律は大統領に関税や課税権限を与えるものではない」と判断したもの。
第三の訴訟は、政権が数百億ドル規模の対外援助を凍結できるかどうかに関わるも。
議会が予算化した資金が9月末で失効を迎えるため、法廷闘争は決着に近づいている。
連邦地裁のアミール・H・アリ判事は今年2月、トランプ氏に資金を凍結する権限はなく、執行を再開するよう命じた。
その後、政権が命令に従っているかどうかをめぐって激しい法廷闘争が続いている。
これにより、案件は再び最高裁に持ち込まれ、大統領が予算を差し止める権限を持つかどうかをめぐる大一番となる可能性がある。
トランプ大統領は、行政府の権限をめぐって300件以上の訴訟を抱えている。
現在進行中の訴訟群は、その中でも特に重要な「大統領権限と議会権限の境界線」を決定づけるものとなる可能性が高い。
2. 来年の米国中間選挙を占う今年の地方選 (ワシントンポスト記事)
中間選挙はまだ1年以上先だが、今年11月に行われる一連の地方選挙は、有権者がトランプ大統領の政策や、再建途上にある民主党をどう見ているかを示す試金石となる可能性がある。
注目されるのはニュージャージー州とバージニア州の知事選挙、そしてカリフォルニア州での住民投票である。
カリフォルニアの住民投票は、トランプが共和党に呼びかけている「赤い州」での区割り変更に対抗できるかどうかを決めるものになる。
ニュージャージー州とバージニア州の知事選は、トランプの大統領復帰後初の州規模の大きな選挙戦である。
バージニア州では民主党が現職の共和党知事グレン・ヤンキンから知事職を奪還しようとしている。
民主党候補はニュージャージー州がミキー・シェリル下院議員、バージニア州が元下院議員アビゲイル・スパンバーガーで、両者とも世論調査で優位に立っている。
ニュージャージー州の共和党候補は元州議会議員のジャック・チャタレッリで、2021年の知事選では僅差まで迫った実績がある。
バージニア州では共和党候補はウィンサム・アール=シアーズ副知事である。
カリフォルニア州では、民主党が州の独立した区割り委員会を迂回し、議会の地図を新たに導入するための住民投票に賭けている。
この施策により民主党は5議席を追加で獲得できる可能性がある。
主導しているのはニューサム知事で、彼は2028年大統領選の有力候補とも目されている。
狙いは、トランプ大統領の要請に応じてテキサス州が共和党に有利な区割り変更を行い、追加で5議席を生んだ施策に対抗することにある。
最新のバークレーIGS世論調査では、カリフォルニア州民は、賛成48%、反対32%と支持が優勢だが、多くが態度未定である。
この住民投票は、ニューサムの大統領選への野心にも直結する。
勝利すれば全国的な知名度を高められるが、敗北すれば大きな痛手になる。
尚、別の「赤い州」であるミズーリ州も、トランプの要請に基づいて区割り作業を進めている。
ニューヨークでは市長選が予定されており、民主社会主義者の州議員ゾーラン・マムダニ(33)が最有力候補に浮上している。
彼は6月の民主党予備選で元州知事アンドリュー・クオモを含む多数の候補を破って勝利し、現在は無所属で出馬するクオモと一般選挙で争う構図となった。
現職のエリック・アダムス市長はトランプ大統領との関係改善に動いたことで民主党からの支持を失い、無所属で再選を狙うことになる。
マムダニが当選すればニューヨーク初のイスラム教徒の市長となる。
9‐11のモニュメントのあるグランドゼロを据えるニューヨーク市にムスリム市長誕生となれば、やはりエポックメーキングなことになるのでしょうね。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l GDP比3.32%に達した台湾の防衛費
台湾政府・行政院が発表した2026年政府予算案は、防衛費が過去最高の9,495億ニュー台湾ドルとなり、国内総生産(GDP)対比は3.32%に達する見通しとなった。
米国のトランプ政権は台湾に防衛費の大幅増額を求めており、コルビー国防次官(政策担当)はGDP対比10%まで増額すべきであるとも主張している。
頼清徳総統はこれまで防衛予算をGDP対比3%以上に増加させる方針を示してきたがこれを具現化する予算案が検討されている。
防衛予算は米国からの兵器購入費などを盛り込んだ1,868億ニュー台湾ドルの特別予算を計上している。
通常の予算と合わせた総額は前年対比22.9%増で、GDP対比では同0.5ポイント増となる。
l CO2排出量が前年比で1%減少した中国
ヘルシンキを拠点とするエネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)の調査によると、中国の上半期の二酸化炭素(CO2)排出量は前年同期比で1%減少したとしている。
太陽光発電設置の効果との見解も示されている。
l TSMCの最先端製品動向と営業秘密漏洩問題
Googleは、同社で最も高性能な新型スマートフォンである「Pixel 10」シリーズを発表したが、台湾積体電路製造TSMCが自社開発した3nmプロセスTensor G5プロセッサを搭載し、「デュアルAI」機能を搭載している。
これは、Appleの次期iPhone 17シリーズの新型スマートフォンをターゲットにしており、フラッグシップスマートフォンを巡る新たな戦いの火蓋を切る可能性があると台湾では期待されている。
台湾高検は8月27日、TSMCの営業秘密を違法に入手したとして、TSMCの元従業員ら3人を起訴したと発表した。
このうち1人はTSMCを離れて、半導体製造装置大手の東京エレクトロンの子会社に在籍していた。
当該発表によると、東京エレクトロンに移籍した元従業員は、同社の設備サプライヤーとしての立場を強化する為、今回<共に起訴された旧知のTSMC従業員2人を通じて、最先端の2ナノメートル半導体の重要技術に関する情報を取得したとされている。
東京エレクトロンは8月7日、台湾の子会社の元従業員1人の関与を確認し、この従業員を解雇したと発表していた。
(2) 韓国/北朝鮮
l 米政府の半導体関連施策に揺れる韓国
韓国大統領室のカン・ユジョン報道官は、米国のトランプ政権が半導体補助金を支給する見返りとして、三星電子などの株式を要求することを検討しているとの報道について、
「事実無根」と否定している。
カン報道官は、「まだ補助金を受け取った韓国企業はない。企業も米国政府から連絡を受けていないことを確認している」と述べている。
その上で、「交渉を控え、様々な噂が流れているのではないかと推測している」としている。
ロイター通信はラトニック商務長官がCHIPS・科学法に基づく支援を受け、米国に工場を建設する半導体企業の株式を政府が取得する案を検討していると報じていた。
対象企業は台湾積体電路製造(TSMC)や米国のマイクロン・テクノロジー、三星電子などが挙がっていると伝えていた。
そして、米国のトランプ政権は8月29日、三星電子やSKハイニックスなどが中国本土国内の工場に米国の半導体製造装置を設置する場合、1件ごとに許可を受ける形へと規制を強化した。
米国連邦政府の同日付官報で分かった。
米国政府・商務省は三星電子、SKハイニックス、インテルなどの企業が米国製半導体製造装置を中国国内の工場に設置する際、例外的に認めてきた包括的許可を取り消した。
l 「韓国型電子戦機」のシステム開発商戦に参入する大韓航空
大韓航空は防衛産業企業である「LIGネクスワン」と提携し、敵のレーダーなどを無力化する、「韓国型電子戦機」のシステム開発の受注戦に本格的に参入するとしている。
大韓航空は、LIGネクスワンとコンソーシアムを組み、9月初めに電子戦機システム開発事業の提案書を提出することを明らかにした。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,388.47(前週対比+9.17)
台湾:1米ドル/30.56ニュー台湾ドル(前週対比-0.07)
日本:1米ドル/147.00(前週対比+0.84)
中国本土:1米ドル/7.1304人民元(前週対比+0.0472)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,186.01(前週対比+44.27)
台湾(台北加権指数):24,233.10(前週対比+270.47)
日本(日経平均指数):42,718.47(前週対比+108.30)
中国本土(上海B):3,857.927(前週対比+86,828)
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