1. 伝統的支持層が入れ替わる共和党と民主党
ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュの政権時代、減税の恩恵を受けた裕福なアメリカ人は、共和党支持者であることが多く、一方で、民主党の支持者は、労働者階級や中間層の割合が高い傾向にあった。
しかし、2024年のピュー・リサーチの調査によれば、年収21万5,400ドル以上の高所得層の半数以上が現在は民主党に投票しているという。
所得上位20%の層は、2008年の選挙では2.5ポイント程度の差でバラク・オバマに多く投票していたものが、2020年にはジョー・バイデンに約15ポイント差で支持を寄せた。
逆に、長年にわたり民主党を支持してきた低所得層の黒人やラテン系の有権者の多くが、数十年ぶりに共和党へと票を移したことが2024年の大統領選挙でさらに顕著になっている。
ミシガン州立大学の政治学者マット・グロスマン氏は、「共和党の支持層が労働者階級中心に変化しているにもかかわらず、その政策はその変化に追いついていないという議論は多い」と語る。
「しかし、もう一方の事実として、民主党の多くの政治家が、実は共和党の税制の方が恩恵を受けるような非常に裕福な有権者によって選ばれているという点にはあまり注目が集まっていない」とも指摘している。
その結果、共和党の税制改革法に盛り込まれた多くの条項が、今や民主党支持層となりつつある裕福な有権者に恩恵をもたらす構図となっている。
総額3.4兆ドルのこの法案は、最高税率の引き下げを延長し、年収100万ドル以上の富裕層への新税を導入するという大統領の提案を却下している。
また、連邦相続税の課税対象を縮小し、最大1,500万ドル(夫婦で3,000万ドル)までの資産を非課税で相続できるよう恒久化している。
さらに、「パススルー事業体(法人や組合などにおいて発生した利益に対し、直接当該の法人や組合には課税されず、その利益の配分を受けた出資者、構成員等に課税される制度」」として設立された企業への大規模な控除も恒久化され、州税・地方税の控除上限も引き上げられる。
これらすべてを組み合わせると、トランプ政権2期目のこの税制改革法案は、年収40万ドル超の人々に約1兆ドルの減税を提供する内容となっており、これは低所得者向けの連邦医療保険制度「メディケイド」の削減規模と同等となっている。(もっとも、法案の多くのコストは、中間層向けの児童税額控除や標準控除の拡充といった項目に費やされている)
特に富裕層に有利な条項が「オポチュニティ・ゾーン(機会区)」制度の拡充で、これは、経済的に困窮した特定の地域に利益を再投資することで、キャピタルゲイン課税を先延ばし、あるいは恒久的に回避できるという仕組みである。
投資家はこれを利用することで、税の支払いを回避することができる。
このワシントンポストの記事では何名かの富裕者が「減税の財資は連邦赤字の解消や、格差是正に使うべきで、自分たちへの減税は不要」と語っている。
選挙資金では優位にあった民主党も、有権者数で圧倒的に多い労働者階級や非白人層に刺さるメッセージをトランプ陣営が的確に出していたことを反省しているのでしょうが、それにしてもメディアが日々トランプのお騒がせな動きを報道し続け、トランプ自身も自分のSNSで固定客をつかんで面白おかしくつ発信し続けていることから、なかなか民主党サイドの情報発信は難しいのかもしれません。
2.データセンター構築に伴う電力問題が顕在化しつつある米国
データセンターの増加により電力需要が高まり、電気料金が上昇している。
データセンターを建設している企業には、Google、Meta、Microsoft、Amazonなどが含まれており、多くの住民は、これらのテック企業による電力需要の増大により自分たちの負担が増えることに不満を抱いている。
例えばオハイオ州コロンバス市では、地元の電力会社AEPが今年、平均的な家庭の電気料金が月額約27ドル上昇すると発表したが、その理由として「キャパシティ(供給能力)」への支払いが増えたことを挙げている。
これは、ピーク時の需要に対応するための十分な電力供給を確保するための費用である。
このキャパシティの価格は、13の州(デラウェア、イリノイ、インディアナ、ケンタッキー、メリーランド、ミシガン、ニュージャージー、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、テネシー、バージニア、ウェストバージニア)とワシントンD.C.にまたがる電力会社が発電事業者から供給能力を入札する毎年のオークションで決定され、昨年は833%という驚異的な上昇を記録、その影響が該当する州の家庭の電気料金に反映されている。
当初、なぜこれほど急激に価格が上昇したのかは明らかではなかった、6月にPJMという電力市場を監視する独立監査人が発表した報告書によると、価格上昇の約4分の3は、既存および計画中のデータセンターからの需要によるものであった。
実際、今月初めに終了した今年のオークションでも、キャパシティ価格はさらに約22%上昇している。
AIやその他の技術革新が世間を魅了し、経済においてますます重要な存在となる中、データセンターの急成長は全米に広がっている。
政治家やテック業界の関係者は、こうした施設を雇用の源として評価し、複数の州が施設誘致のために税制優遇措置を講じている。
例えばバージニア州は、他のどの州よりも多くのデータセンターを抱えており、大規模なデータセンターを誘致するため、小売売上税および使用税の免除を提供している。
これにより、データセンターやそのテナント企業は、コンピュータやサーバーなどの機器を売上税なしで購入できる。
ChatGPTのようなAIアプリケーションは手軽に使える反面、単純な処理でも大量の電力を必要とする。
例えば、AIモデルを使って高解像度画像を生成するには、スマートフォンの充電キャパシティの50%程度の電力が必要だと、AIプラットフォーム「Hugging Face」とカーネギーメロン大学の研究者らによる調査が報告している。
研究者の一人であるサーシャ・ルッチオーニ氏は、「ユーザーはAIアプリの使用にどれほどの電力が必要かを自覚していない」と述べている。
今月初め、オハイオ州のエネルギー規制当局は、データセンターに対して、電力網の拡張費用のより大きな負担を求める決定を下した。
これに対し、テック企業は不公平な扱いだとして反発し、後日発表されたメール声明で、業界団体の「データセンター・コアリション」は、この決定に「非常に失望している」とコメントした。
日本でも原発の再開の背景にデータセンターの電力源としての期待があげられていますが、原発への懸念はもとより、さらなる温暖化問題等、AI化は雇用以外にも社会問題を提起しそうですね。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 野党議員のリコール不成立
台湾で最大野党・国民党の立法委員(国会議員)計31人に対する解職請求(リコール)の是非を問う投票が26日から行われた。
過去最大のリコール投票で、立法院(国会)の形勢逆転に繋がる可能性がある。
リコール運動を展開してきた市民団体は「親中派立法委員」の解職を主張して運動を展開している。
リコール投票は、計31の市民団体から、規定の署名を受け取った中央選挙委員会が今月18日までに実施を決めた。
26日にはこのうち24人に対する投開票が行われた。
「リコール同意は、反共(中国共産党への反対)の更なる力になる」とし、多くの人が、「反共保台(中国共産党に反対し、台湾を守る)」
という手旗を持っていたが、いずれもリコールは成立しなかった。
リコール運動に支持を表明してきた与党・民進党の頼清徳総統の求心力低下を招く可能性がある。
l 台湾の林佳龍外交部長が来日
台湾の林佳龍外交部長が来日した。
超党派で作る日本の国会議員連盟である「日華議員懇談会」の古屋会長が会談の様子の写真をSNSにも投稿している。
台湾の現役外交部長の訪日が明らかになるのは異例のことであり、その政治的背景は、「反共保台」と関連しているのか、注目されている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 韓国製戦車K-2のトルコでの耐久試験を行う韓国人エンジニア
韓国は、産官学金融力を合わせて防衛産業の拡大強化に努めている国である。
こうした中、例えばトルコでは韓国人エンジニア達が、軍戦車試験場で戦車変速機耐久性試験に繰り返し、防衛装備品の品質向上に向けて努力をしている。
試験対象は、K2戦車に採用されているトランスミッションであるSNTダイナミックスであり、20年近く試行錯誤を繰り返しているものであり、開発中の国産戦車用変速機の試験走行を現在も展開している。
高温、砂塵、未舗装といった過酷な環境であっても3,800キロを問題なく連続走行しなければ試験に合格出来ないという状況下での開発である。
l 米国自動車業界の業績悪化に身構える韓国自動車業界
韓国国内自動車業界では、米国自動車業界の業績悪化を背景として、例えば、「米国自動車ビッグ3の一つであるクライスラーなどの親会社であるステランティスは、今年上半期23億ユーロの当期純損失が予想されると発表している。特に米国関税の影響だけで今年10億~15億ユーロの利益減少が予想される」との見方をした上で、「第2四半期を終えたところで、いわゆるトランプ関税がグローバル自動車企業に与える影響が顕在化してきている。トランプ発関税衝撃が本格的に実績悪化に繋がり始めた。ステランティスのようなグローバル企業も悪影響が顕在化している。韓国と日本、ドイツの自動車メーカーも実績悪化が避けられない」
としたうえで、
「その衝撃の余波は韓国が相対的に大きいと思われる。米国輸出比率が日本車より高く、核心顧客層が欧州車より価格変動にもっと敏感で、今回の関税措置が更に深刻な影響を与える」
との見方を示している。
尚、上述のステランティスは、2021年に設立された多国籍自動車製造会社であり、フランスの自動車メーカー・グループPSAと、イタリアとアメリカ合衆国の自動車メーカー・フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の対等合併により誕生した会社であり、2024年現在、販売台数でトヨタ、フォルクスワーゲン・グループ、現代自動車グループ、ゼネラル・モーターズに次ぐ、世界第5位の自動車メーカーとなっている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,383.30(前週対比+4.85)
台湾:1米ドル/29.47ニュー台湾ドル(前週対比-0.11)
日本:1米ドル/ 147.66(前週対比+0.76)
中国本土:1米ドル/7.1679人民元(前週対比+0.0097)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,196.05(前週対比+7.98)
台湾(台北加権指数):23,364.38(前週対比-18.750)
日本(日経平均指数):41,456.23(前週対比+1,637.12)
中国本土(上海B):3,593.655(前週対比+59.172)