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日賑グローバルニュースレター第356号

1.頭脳流出が進む(?)米国連邦政府

 

アメリカ国立衛生研究所(NIHでは、感染症、小児保健、看護研究、ヒトゲノムなどに関わる6つの研究所の所長が辞任、あるいは辞任を強いられている。

連邦航空局(FAAでは、最高航空管制官を含む10人近い上級幹部が早期退職を選択した。

財務省では、政府の財政システム運営を担ってきた経験豊富な管理職や高度な技術を持つ専門職200人以上が、トランプ政権による辞職提案を受け入れたという。

複数の機関にわたる18人の職員へのインタビューを含む、ワシントンポストの取材によれば、連邦政府全体で進行している早期退職促進と自主的離職により、前例のない量と質の頭脳流出が起きている。

大統領就任早々の1月に送られた最初の辞職提案では、9月まで給与を受け取り続けることができることを前提に、政府全体で75,000人の職員が退職に同意した。

今春にかけて各省庁に展開された第2弾では、さらに規模が大きくなり、最終的には数十万人規模に達する可能性がある。

運輸省のパイプライン・危険物安全局(PHMSA)は、最初の辞職提案で事務局長、副首席顧問、パイプライン安全局長を含む上級幹部の半数以上を失ったという。

住宅都市開発省(HUD)では最高情報責任者(CIO)関連の幹部のほとんどが退職・辞任し、公営住宅と賃貸支援を監督する「公営・先住民住宅局」は、トップ以下、多くの幹部を失った

国家道路交通安全局(NHTSA)では、自動運転車に特化した少人数の専門チームが大半の職員を失ったという。

トランプ政権は「自動運転」を重要課題と位置づけている一方で、実際には人材が失われている。

2弾の辞職提案では、FAAが最高航空管制官だけでなく、商業宇宙部門の副長官、監査・評価局長、市民権担当の副長官、財務・管理担当の副長官などを失うとワシントン・ポストは報じている。

FAAの実働部隊である「航空交通機構(ATO)」は、ミッション支援、安全・技術訓練など主要5部門の副社長と副副社長を失いつつある。

同機関は、67人が死亡した1月のレーガン・ナショナル空港での事故や、ニューアーク・リバティー国際空港での通信障害など、複数の危機対応が求められているにもかかわらずである。

一方、内国歳入庁(IRS)は、今年に入ってからだけでも4人のコミッショナー(長官)と2人の主席法務官が交代し、さらに首席補佐官、調達責任者、代行調達責任者、人事責任者、戦略変革責任者、多数の上級顧問が退任している。

政府職員によれば、こうした大量退職は行政に影響を及ぼしており、たとえば食品医薬品局(FDA)の食品安全警告の発信や、財務省による支払い処理が遅延または停止している。

今後数か月から数年にわたり、連邦政府機関が長年培ってきた制度的知識を失うことで、業務の質や提供されるサービスに深刻な影響が出ると職員らは予測している。

政府の縮小を支持する人々は、これは高齢化し硬直化した上層部を整理する絶好の機会だと主張する。

もともと何年も前から、ベビーブーマー世代の引退によって連邦政府の退職者が急増する時期が来ると指摘する声もあった。

市民生活に直接の影響が出だした場合、退職していく職員のノウハウや経験値を生成AIがどこまで補えるのか、或は穴埋めに急遽パートや契約社員といった“人間”の採用に動くのか注目ですね。

 

2. 新ローマ教皇レオ14世を歓迎するアメリカ

 

今月、アメリカ人として初めてローマ教皇に選ばれたレオ14世(出生名、ロバート・フランシス・プレヴォスト)の登場を、トークラジオの生放送から、左派、右派を問わず歓喜に満ちたソーシャルメディアの投稿に至るまで歓迎するアメリカの様子をワシントンポストが報じた。

レオ14世の教皇選出以降、教会の礼拝参加者は場所によっては倍増しており、彼の母校であるヴィラノバ大学でもその傾向が見られる

カトリック系の学校や財団の指導者たちは、この好機をどう活かし、どう持続させていくかについて話し始めているという。

「こうした瞬間を、ただの一過性の炎に終わらせるのではなく、より大きな変革の加速剤とするにはどうすればいいのか?」と、非営利団体リーダーシップ・ラウンドテーブルのマネージング・パートナーであるキャスリーン・ポーター・マギー氏は語る。

最近発表されたピュー・リサーチの報告書によると、アメリカのキリスト教信者数の長年にわたる減少は頭打ちの傾向にあるものの、生粋のアメリカ人カトリックに関しては減少が続いていた

アメリカ人に占めるカトリック信者の割合は何十年もの間約20%で安定しているが、それは主にラテン系移民の増加によるもの

そして、アメリカのカトリック教会は、他のどの国のカトリック共同体よりも、政治的に深く分断されている

「これまでは、分極化がカトリック共同体を引き裂いてきた」と前出のマギー氏は語る。

しかし、「(今は)何か違う感覚がある。ワクワクしている」。

レオは分断された人々に語りかける術を見出した。それこそが希望を生む要因です」と続けた。

教会を研究する社会学者たちは、新しい教皇に関する熱狂が持続するかどうかは、教区や学校といった制度の変化にかかっていると指摘する。

実際の問題は、人々が教会に定期的に通わないことです。理由を尋ねると、多くは『関わりを感じなかった』『歓迎されなかった』『退屈だった』と答えます」と、ジョージタウン大学にあるアポストレート応用研究センターの所長、トーマス・ゴーント神父は語る。

「違いを生むのは、地域の教区がより魅力的で、より歓迎される場になるかどうかです」。

『岐路に立つカトリシズム』の共著者で、南カリフォルニア大学・高度カトリック研究所の研究者であるモーリーン・K・デイ氏は、1970年代から続くアメリカのカトリック信者による女性司祭叙階への支持の推移を追った研究が、教皇関連の出来事と関連していると述べます。

全体としては、女性の叙階への支持は2000年代初頭まで上昇し、その後安定しており、支持率は60%台前半から中盤に留まっていると彼女は説明します。

しかし、ヨハネ・パウロ2世の訪米やベネディクト16世の退位後には支持が下がった

教皇の存在感が高まるとき、カトリックとしてのアイデンティティも強まり、人々はより『カトリック的』になり、教義への同意も増える傾向があります。つまり、より正統的になるのです」と彼女は語ります。

レオがアメリカ出身であり、「Wordle(ワードゲーム)」をする話などをすることで、「カトリックがより身近なものになる」と彼女は言います。

「これは触媒であり、一つの『瞬間』なのです」。しかしその瞬間も、「しっかりと掴まなければ、その勢いは失われてしまいます」と彼女は付け加えた。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  科学・技術革新企業に対する支援を強化する中国政府

中国政府は、科学・技術革新企業に対する資本市場支援を更に強化し、この分野の企業に対する銀行の信用支援を拡大すると発表している。

米国との地政学的緊張が高まる中、中国は外国技術への依存を減らし、「自立自強」を推進する姿勢を明確にしている。

科学技術部、中国人民銀行(中央銀行)など7当局が共同で発表したガイドラインによると、国家重点科学技術プログラムや中小ハイテク企業に対する金融支援を強化するとしている。

法律に従い、一定の基準を満たしたハイテク企業の国内外での株式公開を奨励するとも発表している。

 

l  台湾との連携を強化するNVIDIA

NVIDIAの経営者であるジェンスン・フアン氏は、台湾のサプライチェーン・パートナーとの関係をより緊密化しようとしている。

特に同氏は、TSMC創業者であるモリス・チャン氏と会い、Blackwell Systemの大量生産の成功を祝うなどを通して、関係緊密化を図った。

尚、Blackwell (ブラックウェル)は、NVIDIAが開発した新しいGPUアーキテクチャで、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の学習・推論を高速化する為に、設計されたGPUであり、特にデータセンターやサーバー向けのGPUとして、NVIDIA H100の後継モデルとなるGPUである

 

l  急成長中の台湾、ウィストロン

ウィストロン(緯創資通有限公司)は、台湾を拠点とする企業であり、主にコンピューター、通信、消費者向け電子製品とその周辺機器及びコンポーネントの研究、開発、設計、生産、製造、テスト、アフターサービスを行う企業である。

主要製品には、ノートパソコン、スマート携帯電話などが含まれ、製品は主にアメリカ、ヨーロッパ、香港、日本に輸出されている。

そのウィストロンは本年4月の売上高が1,337億400万ニュー台湾ドルとなり、前月対比12.6%減したものの、前年対比84.1%増となったと報告している。

市場顧客からの強い需要がグループ全体の営業実績の堅調さに繋がっている。

ウィストロンは最近、米国工場の拡張に向けた複数の投資計画を発表しており、近年業績は好調となっており、主力成長製品である「AIサーバー」の販売も好調となっている。

 

(2)  韓国/北朝鮮                                  

l  韓国の4月のICT輸出前年比10.8%増

韓国政府・科学技術情報通信部は、4月の韓国の情報通信技術(ICT)分野の輸出額は189億2,000万米ドルとなり、前年同月対比10.8%増加したと発表している。

1月に同0.4%減少した輸出額は2月(0.2%増)に増加に転じ、3月(9.3%増)に続き4月も増加幅が拡大している。

しかし、対米輸出額の増加率は1月の24.5%から11.6%、19.4%、0.5%と毎月鈍化しており、米国・トランプ政権の関税政策による不確実性の影響を受けたとの分析も出ている。

輸出先別では米国(0.5%増)、ベトナム(13.4%増)、欧州連合(EU、14.7%増)、日本(8.5%増)となった。

米国の関税政策の影響を強く受けた中国本土への輸出額は1.5%減少している。

品目別では、半導体の輸出額は116億8,000万米ドルとなった。

DRAMの固定取引価格の上昇、広帯域メモリー(HBM)など高付加価値製品の需要増加に伴い、4月としては過去最高となっている。

 

l  好調な韓国造船業

韓国の造船業3社(HD韓国造船海洋・ハンファオーシャン・三星重工業)の受注残高が今年200兆ウォン突破を間近に控えている。

米中摩擦の関係で中国本土への発注を控え、韓国に対する発注が増えていることもあり、造船業超好況期が続いているとの背景の下、韓国の造船会社各社が強みを持つLNG(液化天然ガス)運搬船など高付加価値船舶の需要が着実に増えている。

上述したように、最近、米中摩擦によりグローバル海運業界で中国産船舶をリスクとする雰囲気も拡大しており、韓国造船会社は漁夫の利を得ているとも言えよう。

外貨獲得にいそしむ韓国にとっては朗報である。

その韓国造船1位のHD現代重工業と2位のハンファオーシャンの代表は、南部・済州島で米国政府・通商代表部(USTR)のグリア代表と面会し、協力策を協議している。

面会は米国側からの要請を受けたものであると韓国側は伝えており、今後の米韓通商協議において韓国の造船業が交渉を合意に導く、一つの「キー」となるとの見方も韓国では示している。

HD現代のチョン・ギソン首席副会長は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会合出席の為、済州島を訪れたグリア代表と米韓造船産業の協力策について協議した。

チョン会長は、米国が意識する中国の造船業界を念頭に起きつつ、米国との共同技術開発や船舶建造協力、技術人材育成など具体的な協力策を提示し、造船産業の協力拡大の必要性を強調した。

米国内の港湾クレーンに関する協力も提案した。

また、ハンファオーシャンキム・ヒチョル社長も、グリア代表と米韓の造船協力について意見交換し、米国内での生産基盤拡大や技術移転を中心に、サプライチェーンの安定や競争力強化に向けた戦略を説明した。

また、同社は昨年買収した米国大手のフィリー造船所に同社のスマート生産システムを導入して船舶建造技術と生産性を高める基盤を整える構想を示し、また米国内での新たな生産拠点の設置も検討していることを伝えた。

 

l  ソウルー函館線を新規就航させるチェジュ航空

韓国の格安航空会社(LCC)の一つであるチェジュ航空は、6月5日に仁川(ソウル)―函館線を新規就航すると発表した。

まずは週2往復(木・日曜日)運航し、7月1日からは週4往復(火・木・土・日曜日)に増便するとし、運航スケジュールは、函館行きが仁川国際空港を午後1時45分に出発し、午後4時20分に到着。仁川行きは函館空港を午後5時20分に出発し、午後8時25分に到着するとしている。

チェジュ航空は今月から日本路線の運航を拡大し、消費者の利便性を高めたいとしている。

現在週28往復で運航中の仁川―福岡線は16日から24日まで週2往復、25日から6月30日までは週3往復増便、また仁川―広島線は10日から31日まで週2往復増便し、週13往復としている。

そして、仁川―大阪線・静岡線と釜山―東京(成田)線・福岡線もそれぞれ週3~14往復の増便を検討している。

 

l  千葉に餃子工場を開設する CJ第一製糖

韓国食品大手のCJ第一製糖は、日本事業の拡大に向けて千葉県にマンドゥ(ギョーザ)工場を建設すると発表した。

工場は千葉県木更津市の産業用地であるかずさアカデミアパーク内の約4万2,000平方メートルの区画に、約103億円を投じて、約8,200平方メートルの規模で建設される計画となっている。

同社にとって日本国内で5番目の工場であり、延べ面積基準では日本国内の既存の4工場を合わせたものより大きくなる。

7月に完工する予定であり、最先端生産ラインが設置され、9月から「bibigo(ビビゴ)マンドゥ」を日本全国に供給することになる。

CJ第一製糖は日本で広がる韓流ブームに乗って冷凍ギョーザ市場の攻略を強化し、現地で成長期に入った食品事業を本格的に拡大したいとしている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,398.12(前週対比+0.75)

台湾:1米ドル/30.20ニュー台湾ドル(前週対比-0.01)

日本:1米ドル/145.57(前週対比―0.33)

中国本土:1米ドル/7.2090人民元(前週対比+0.0307)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,626.87(前週対比+49.60)

台湾(台北加権指数):21,843.69(前週対比+928.65)

日本(日経平均指数):37,753.72(前週対比+250.39)

中国本土(上海B):3,367.462(前週対比+25.463)