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日賑グローバルニュースレター第330号

1.民主党とバイデン陣営にとってのベストシナリオ

 

共和党の大統領候補を選ぶ予備選はトランプ前大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使の一騎打ちとなり、前者が優位に選挙戦を進めている。

これまでのニュースレターでご紹介の通り、仮にニッキー・ヘイリーが共和党の大統領候補となった場合、バイデン大統領との本選ではヘイリーが明らかに優位との世論調査結果が出ている。

一方、トランプの場合には彼の方が若干優位とはいえ、統計誤差の範囲内とも言われている。  

要は無党派層や、両党いずれかの支持者であっても岩盤支持層ではなく、候補者の発言や政策によっては反対の党の候補者に投票しかねない浮動票がヘイリーに流れやすいと見られている。

ワシントンポストによれば、ヘイリーは選挙戦において従来はトランプを直接攻撃することを避けていたが、ここにきて具体的にかつ執拗に彼の過去の実績を基に手厳しい批判を行っているという。 

具体的には大統領選を含め過去3回の国政選挙で共和党が思ったほど議席数を増やせていないのはトランプの存在と彼がもたらした混乱の影響であるとし、彼がさらにまた共和党の代表となることは共和党にとって得にならないというロジック。

さらには今週はトランプの絶対免除の控訴が棄却されたことや、議会で共和党の国境管理強化法案やイスラエル単独支援法案が否決されたこと、全国共和党委員会の委員長の解任に伴う混乱が生じていることなども全てトランプがもたらしたマイナスとした。

それではヘイリーが反トランプ運動として目立っている“Never Trump”運動の事実上のリーダーかと問われると即座に否定している。 

というのも、トランプ自身やその政策を否定することは結果として民主党・バイデン陣営を利することが明らかであるため。 

従い、「トランプは素晴らしかった」彼自身を称えつつ、共和党が勝利する可能性を高めるために自分が立っているとの位置づけ。 曰く、「われわれ(共和党)は負け疲れた」と。

ヘイリーは仮にトランプが共和党の代表となればトランプを支持すると明言し、それはトランプの刑事訴訟で有罪判決が出た場合でも変わらないと表明している。 

かかる状況下では反トランプ運動がヘイリーを担ぐ構図はあり得ないが、バイデン陣営にとってのベストシナリオはヘイリーが共和党予備選でできる限り長く粘り、時間が経つほどに「なぜトランプではだめか」という理由の中に民主党サイドを利する“失言”が出てくることを期待し、最終的にはバイデンvs.トランプの2020年選挙と同様、「トランプ再選を拒否する投票」に持ち込む構図に持ち込むことであろう。 

明日の土曜日にヘイリーの地元のサウスカロライナ州の予備選が行われ、予想ではトランプの勝利が見えているが、少なくとも来月のスーパーチューズデイまでは戦いを継続するとヘイリーが語っていることはバイデン陣営にとっては朗報といえよう。

 

2.アメリカの最新DEI事情

 

米国では白人以外や女性といったマイノリティと言われる人々の社会的地位を人口比並みに高めていくためのアファーマティブアクションというものを取ってきたが、トランプ政権時代に生じたブラックライブズマターの社会運動の中で、企業もそれ以前のDEI方針に輪をかけてDEI専門の執行役員や部署を創設し、米国社会に対してDEIに積極的である姿勢を示していた。 

ところが、保守派判事で固められた最高裁が大学入試選抜におけるアファーマティブアクションを違憲と判断したことに保守陣営は勢いを得て様々なロビー活動を展開、これまでに州議会で65もの反DEI法案が図られてきたという。  

実際、13の州の司法長官はマイクロソフトやその他のフォーチュン100企業にこの判決に基づき各企業でのDEI方針を見直すよう求める書状を出した

そしてハーバード大学の初の黒人総長が彼女の過去の剽窃問題をきっかけに保守派活動家の運動で辞任に至らしめたことを狼煙として企業のトップに対しても反DEIの働きかけが始まった。 

その結果、メタ、テスラ、ドアダッシュ、リフト、ホームデポ、ウェイフェア及びXといった著名企業において上述のDEIの役員や陣容を縮小する動きが強まっていることをワシントンポストが伝えている。

DEIという方向性は守りつつも、外部的に目立つ専門職は置かず、必要に応じて外部コンサルを起用したり、決算説明において従来は触れていたDEIの努力を触れずに済ませる形で保守派活動家の注目を浴びないようにしている。

トランプ前大統領のアドバイザーであったステファン・ミラーが支援するAmerica First Legalというグループはユナイテッド航空やケロッグ、ナイキといった大手企業からFBINFLMLBといった団体に対してまで企業の成績の中にダイバーシティのスコアを含めることに正式な法的抗議文を提出した。

結果として昨年をピークとしてそこから今年にかけて計10%を超えるDEI関係社員のポストが減らされている

ただ、J.M. Smuckerやビクトリアシークレット、マイケルズ、モデルナ、プルデンシャル、コノコフィリップスといった大手は昨年DEIの陣容を5割拡大し、Conagra BrandsNASAなどは倍増させたという。

読者もご承知の通りアメリカの職場は多様性や女性のリーダーはかなり浸透しており、その意味ではかつてほどアファーマティブアクションの圧力は必要ないのかもしれないが、いずれにせよ白人男性を中心とした反リベラルの動きの一環と言えよう。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  中ロ首脳の発言に過敏に反応する台湾

ロシアのプーチン大統領が、中国の習近平国家主席と電話会談をし、「一つの中国」を確認、プーチン大統領が、「台湾問題で中国本土を挑発する行為に反対する」

と主張したことに対して、台湾政府・外交部は、「中華民国台湾と中華人民共和国は互いに隷属しない」とし、

台湾の主権をねじ曲げようとする中国本土やロシアなど全体主義国家の如何なる言説も、国際社会が公に認める中台両岸の現状を変えることは出来ないと反論している。

 

l  タイで行われる「コブラゴールド」軍事演習に参加する中国

中国政府・国防部は、タイで行われる今年の多国間軍事演習である、「コブラゴールド」の人道支援訓練に中国本土軍が参加すると発表している。

参加予定期間は2月10日から3月7日となっている。

 

l  世界に安定をもたらす力を強調する中国

米国のブリンケン米国務長官と中国の王毅共産党政治局員兼外相は2月16日、訪問先のドイツ・ミュンヘンで会談した。

両外相は各分野で米中間の高官協議を続けることを確認したが、ブリンケン国務長官が中国はウクライナに侵攻するロシアへ軍事支援をしているとして改めて懸念を表明し、王外相は米国による台湾への関与を牽制するなど、抜本的な問題での歩み寄りは見られなかった。

尚、王毅外相は17日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、「中国は混乱する世界に安定をもたらす力となる」と強調し、11月の米国の大統領選でトランプ前大統領が再選するシナリオが現実味を帯びる中にあって、揺らぐ危険性を持つ国際秩序への不安を逆に利用して、中国こそが現行の世界秩序を守る国であると印象付け、欧州各国との関係強化を図る姿勢を示している点、注目しておきたい。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  新党「改革新党」の登場

韓国では本年4月の総選挙を前にして、保革二大政党を離党した国会議員らによる4つの政治グループが、1つの新党として合流することで合意したと発表している。

統合する新党名を「改革新党」とし、保守系与党「国民の力」元代表のイ・ジュンソク氏と、革新系最大野党「共に民主党」元代表で元首相のイ・ナギョン氏が共同代表を務めるとしている。

                                        

l  韓国の首都圏人口集中状況

韓国では、総人口と就業者の過半数が首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)に集中しているとのむ見方が出ている。

これは、韓国政府・中小ベンチャー企業部、行政安全部、統計庁のデータによるものであり、2023年12月時点の首都圏の住民登録人口は2,601万人と、全体の50.7%に上っている。

ソウル市が939万人、京畿道が1,363万人、仁川市が300万人である。

ソウル市の人口は減少しているが、仁川市の人口が増え、総人口に占める首都圏の人口の割合は上昇を続けている。

2018年(各年12月時点)の49.8%から2019年は50.0%と初めて過半数に達し、2020年は50.2%、2021年は50.4%、2022年は50.5%となっていた。

また、2023年12月時点の首都圏の「就業者数」は1,448万人で全体の51.6%を占め、ソウル市が519万人、京畿道が765万人、仁川市が165万人となっている。

 

l  韓国航空機輸出額初の10億ドル超え

韓国の2023年の航空機輸出額は初めて10億米ドルを超えた。

軽攻撃機「FA50」の輸出が追い風になったと見られている。

韓国貿易協会によると、韓国の2023年の航空機輸出は10億1,000万米ドルとなり、前年の4.2倍を記録している。

昨年は韓国航空宇宙産業(KAI)が戦闘機FA50をポーランドに12機引き渡している。

KAIは輸出額を公表していないが、市場は5億米ドルとの見方を示している。

昨年の航空機部品の輸出額は前年対比34.1%増の24億4000万ドルで、航空機と同じく過去最高を更新している。

KAIやハンファエアロスペース、LIGネクスワン、大韓航空といったメーカーが胴体、翼、エンジン部品、降着装置部品などさまざまな部品を生産し、海外航空大手のボーイングやエアバスに供給している。

韓国の確実に防衛産業大国の仲間入れを果たしている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,334.42(前週対比-6.89)

台湾:1米ドル/31.40ニュー台湾ドル(前週対比-0.03)

日本:1米ドル/150.31(前週対比-0.93)

中国本土:1米ドル/7.1929人民元(前週対比+0.0043)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,648.76(前週対比+28.44)

台湾(台北加権指数):18,607.25(前週対比+511.18)

日本(日経平均指数):38,487.24(前週対比+1,589.82)

中国本土(上海B):2,865.903(前週対比±0.000)

 

4.ピンクタイパーティのご案内

 

米国の首都ワシントンDCで毎年の風物詩の桜祭りの時期に行われていたピンクタイパーティを東京でも実施することになりましたので、そのご案内をさせてください。

ワシントンに日本の桜を寄贈したことでもお馴染みの尾崎行雄元東京市長の世田谷の旧邸宅で3286時半から開催されます。

詳細は添付の案内をご覧ください。

主催は一般社団法人日本国際教育協会(Japan Global Education: JGE)で、この協会の創設5周年の祝賀も兼ねさせていただきます。

この協会は、われわれが駐在時代のワシントンの恒例であったジャパンボウルを手掛けられていたワシントン日米協会の神尾りささんが当時日本商工会(JCAW)の会長でおられた日立製作所の大出さんを代表理事として創設したもので、ジャパンボウルの世界大会開催を通じた世界の日本(語)好きの若者とのネットワークづくりをビジョンとしています。

同じくJCAWの会長をされたトヨタの大辻さんやワシントンにもおられた山崎ボスニア・ヘルツェゴビナ元大使、MUFJの奥さん、住友商事の吉村さんとともに小生もサイドサポートしております。

コロナ禍の期間は専らオンラインでこの世界大会を催してきましたが、いずれは優勝者(チーム)の日本招待などで日本を身近に感じてもらうべくファンドレイジングも行っているところで、今回のイベントも収入の一部はかかるファンドとして積み立てさせて頂くものです。

みなさまご多忙とは思いますが、是非久方ぶりに一堂に会し、旧交を温めつつ、「もしトラ」や「ほぼトラ」、「裏金」などの憂うべき日米の政治情勢も肴に語り、美しい桜を愛でて頂ければと思います。

現地でお目にかかれますことを楽しみにしております。

下記は旧尾崎邸を紹介する日経新聞のビデオリンクです。

よみがえった明治の洋館、旧尾崎邸(美の窓):映像:日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 

 

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JGE ピンクタイ・パーティー2024 ご案内(3月28日開催).pdf
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