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日賑グローバルニュースレター第329号

1.米国の司法は今年の大統領選にどのようスタンスで臨むのか?

 

昨年1219日にコロラド州の最高裁はトランプ前大統領が202116日の連邦議会襲撃事件に関与したとして合衆国憲法修正第14条第3項(選挙で選ばれた国民の元代表が暴動に参加した場合、国政選挙への立候補の資格を失うという南北戦争後の南側指導者排除の条項)に該当すると判断、同州での立候補を認めない判決を行った。  

連邦最高裁は先月5日にこの判決に関する判断をコロラド州から受け、手続きを急ぎ昨日討議を開始した。 

コロラド州の予備選は38日に行われる。  因みに同州の選挙人の数は9名である

一方、トランプ前大統領の4件の刑法訴訟については既に立件され、最初の判決(不倫相手への口止め料支払いに関する罪)が34日に申し渡される予定であった。 

トランプ前大統領が一審とはいえ有罪判決を受けるかどうかは共和党支持層であっても注目していると世論調査の結果は示している。 

ところが、トランプ弁護団はこれらの訴追に対し、大統領としての役職権限に置いての行為であるとして国家公務員の絶対免除(absolute immunity)のを主張を行ったためその絶対免除の是非判断のため当初の判決が一旦差し止められ、その絶対免除を判断する控訴審に委ねられていた

今週火曜日に行われた控訴審の判決は3人の判事(2人が民主党政権時任命、1人が共和党政権時任命)の全員一致で免疫性を否定した。 

トランプ陣営はこれを最高裁にまで持ち込むことになると予想されている。

当初、トランプ陣営はこの絶対免除の控訴審に時間がかかり、その間、今後の大統領選のスケジュールの中で共和党大会や様々な公的キャンペーンを理由に裁判所への出席が叶わないとしてそのタイミングを伸ばしていき、絶対免除の判断に行き着く前に11月の大統領選に突入することになるという先延ばし戦術を考えていたようである。  

この点で控訴審の判事は全員一致の判決を速やかに下し司法としての矜持を示したともいえる。 

最高裁としてはまずコロラド州でのトランプの立候補の可否を早々に判断し、次いでトランプ側が上告すればこの大統領の絶対免除の判断を行うことになる。 

最高裁判事9人中3人がトランプ前大統領に任命されていることから両方の判決がトランプに有利な結果となれば国民の司法への信頼も揺るぎかねない。

一方、最高裁の最終判断までが大統領選前になされたとして、上記4件のいずれかで有罪判決が一審で下された場合の大統領選挙に与える影響は不明だが、トランプ自身は有罪判決であっても保釈の身でキャンペーンには参加が可能である。

そしてトランプが大統領選に勝利すれば、晴れて大統領として自らの罪を大統領特権で赦すというマンガのようなシナリオが成り立ち得るという。 

大統領となれば権威主義的施策で、独断で突き進むと予想されているトランプに対し、アメリカの三権分立と正義を守る立場の司法が自らの役割をどう意識し、どのようなスタンスで大統領選に臨むのか注目される。

 

2.好調なマクロ経済の中でレイオフを繰り返すテックカンパニー

 

弊ニュースレターで伝えてきている通り、米国のマクロ経済は好調で、特に労働市場の過熱ぶりは目立っている。 

ワシントンポストによると先月の新規雇用数は多くのエコノミストの予想の2倍の35万3千となった。 

ところが、その明るいニュースに反して暗さを増しているのがテックカンパニーであるという。 

テック産業のレイオフは2年前から始まり、今日まで止まるところを知らない。 

昨年は26万人以上がレイオフされている。 

今年に入ってもグーグル、アマゾン、マイクロソフト、Discord、セールスフォースやeBayが大規模なレイオフを実施している

今月はすでにペイパルが2,500人のレイオフを発表している。

1つの背景には2022年にウォールストリートが収益性の悪化を嫌ってテック株を放出、株価を下げたことから人件費削減を通じた収益性改善を図る動きがある。 

実際、テック企業が上場企業のほとんどであるNASDAQでは2022年に平均株価が丸々3分の1落ちている。 

それが、コストカットによる業績改善で昨年は43%上昇し、先月も3%値上がりした。 

もう1つの背景としてはパンデミックで当初はオンラインサービス中心のテックカンパニーの売り上げが伸び、それに応じて大幅に雇用を増やしたものの、その後、2022年から23年にかけての景気後退やインフレ問題から顧客がソフトウエアやクラウドサービスへの支出をカットしていったことがあげられる。 

そして3番目の要因として、生成AIの登場でソフトウエアのコードを作成する作業が大幅に効率化されたことが挙げられている。 

洗濯費用の肩代わりや、マッサージ、食事、フィットネスクラブの無償提供などの特典や、ストックオプションなどほかの業界から見ればうらやましい限りのテック産業の従業員の処遇は、グーグルやメタを筆頭に廃止乃至カットが行われているという。 

自由経済、市場経済、自由労働市場のアメリカであればこそ、インフレ率を超える賃上げ率を就労者たちはエンジョイできているわけだが、その裏側でいつ何時自分がレイオフされてもおかしくないという緊張感にさいなまれてもいる様子が如実に伝わってくる記事であった。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾立法院院長に国民党議員が就任

1月の選挙で改選された台湾の立法院の初会期が2月1日に開幕し、議員の投票で中国本土融和路線の国民党・韓国ユイ議員が院長(議長)に選出された。

民進党、国民党の2大政党が過半数に届かない中で、キャスティングボートを握る新興の民衆党は最終的に棄権している。

5月に次期総統に就く民進党・頼清徳氏の政権運営にとっては痛手であり、中国本土はこれをTake Chanceして、台湾政界から、「中国本土と合併したい」

との声を強めていく動きを示していくものと見られている。

 

l  米台二重課税協定が米国下院で可決

米台二重課税協定関連法案は大型の国内法案として纏められ、検討が進められた上で、米国時間1月31日夜に米国下院で可決された。

米国・ホワイトハウスも同法案への支持を表明している。

これに関連して、台湾政府・行政院は、「関連事項を推進して戴いた米国と各界各層に感謝する」とコメントした上で、米国と台湾が価値観を共有する国同士であることが確認されたとの主旨のコメントをしている点も付記しておきたい。

 

l  新疆ウイグルのイスラム教信者に中国様式を義務付ける共産党政府

中国の新疆ウイグル自治区では2月1日、改正「宗教事務条例」が施行された。

その内容の中には、地元に多いイスラム系の人が通うイスラム教礼拝所などの宗教施設を新築・改築する際に、「中国様式」にすることなどを義務づける内容も見られる。

習近平政権が掲げる「宗教の中国化」を推進する内容であるが、国際標準である、「信教の自由」は中国本土では認められないと言うことである。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  世界中で昨年好調な成績を残した韓国自動車業界

韓国自動車産業協会(KAMA)は、現代自動車、起亜自動車、韓国GM、KGモビリティー、ルノーコリア自動車、タタ大宇商用車の韓国完成車メーカー6社が2023年に世界196カ国・地域に輸出した自動車の台数は計276万3,499台となったと発表している。

2022年の230万333台から20.1%増加し、KAMAが昨年初めに予想した235万台に比べると41万台多くなっている。

韓国完成車メーカーが年間270万台以上を輸出したのは、2015年(297万4,114台)以来8年ぶりとなる。

地域別では米国を含む北米が154万9,164台と圧倒的に多く、欧州連合(EU、43万5,631台)、中東(21万9,530台)、オセアニア(18万7118台)、欧州・その他(16万4,150台)、中南米(12万3,677台)と続いている。

輸出台数が5万台を下回ったのは、中東を除くアジア(4万3,059台)とアフリカ(4万1,170台)のみとなっている。

韓国政府・関税庁は、2023年の乗用車(新車)輸出額は前年対比30.2%増の638億米ドルとなり、過去最高を記録したと発表している。

関税庁は、エコカー需要の増加や車載用半導体の供給正常化、北米地域での自動車需要の回復などが追い風となったと説明している。

ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など、エコカーの輸出額は前年比50.6%増の240億米ドル、輸出額に占める割合は37.6%といずれも過去最高となったとしている。

国別では米国(44.7%増)、カナダ(43.9%増)、オーストラリア(5.7%増)、ドイツ(62.3%増)などへの輸出が増えた。

輸出台数は18.3%増の273万台、1台当たりの単価は平均2万3,391米ドルで、10.1%上昇したとも報告されている。

エコカーの輸出単価は3万2,446米ドルであった。

尚、昨年の乗用車輸入額は前年対比3.3%増の145億米ドルで、こちらも過去最高を記録したと報告されている。

そしてまた、現代自動車、起亜自動車、韓国GM、ルノーコリア自動車、KGモビリティーの韓国完成車メーカー5社が2月1日までに発表した1月の世界販売台数は63万3,236台となり、前年同月対比4.3%増加している。

国内販売が2.3%増の10万2,794台、海外販売は4.8%増の53万442台と増加傾向が見られている。

現代自動車は1.8%増の31万5,555台であり、国内が3.3%減の4万9,810台、海外が2.8%増の26万5,745台となっているが、韓国西部・牙山工場の設備工事の影響で国内販売が小幅減となったと説明されている。

起亜自動車は4.2%増の24万4,940台であり、国内が15.3%増の4万4,683台、海外が2.0%増の20万257台を記録している。

スポーツタイプ多目的車(SUV)が好調で、「スポーテージ」は国内・海外合わせて最多の4万5,905台を記録したと強調されている。

                                        

l  対中輸出が低調な韓国

2023年、中国輸入市場で韓国が占める割合は6%台に落ちた。 これは、中韓修交の翌年に当たる1993年の5.2%以後この30年で最も低い数値となっている。

中国の国家別輸入国順位でも韓国は3位となった。

これは中国市場で韓国製品が競争力を失っているだけでなく、中国の消費者が積極的に韓国産を求めていないことによるものと分析されており、韓国の対中輸出の不振が顕在化しているものと見られている。

これにより、また、昨年の対中貿易赤字は史上最大の180億米ドルを上回り、米中貿易摩擦によって推進されているサプライチェーンの再構築と共に中国本土の製造業自身の競争力も向上しているとの見方も出ている。

一方、半導体洗浄装置を製造する三星電子の子会社である「セメス」の技術を中国に流出させた犯行グループが裁判を受けることとなった。

グループが不法に流出させた洗浄装置は半導体製造の際に発生する汚染物質を除去するもので、半導体の品質に直接影響する重要技術である。

セメスはこの装置の開発に2,188億ウォンを投資してきたと見られている。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,323.96(前週対比+10.63)

台湾:1米ドル/31.21ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)

日本:1米ドル/146.53(前週対比+1.29)

中国本土:1米ドル/7.1817人民元(前週対比-0.0086)

 

  1.       株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,615.31(前週対比+136.75)

台湾(台北加権指数):18,059.93(前週対比+64.90)

日本(日経平均指数):36,158.02(前週対比+406.95)

中国本土(上海B):2,730.152(前週対比-180.071) 

 

4.中東フリーランサー報告26  

 

三井物産戦略研究所の大橋さんから掲題の報告書を入手しましたので共有いたします。 

大橋さんからは以下のメッセージを頂いております。

 

今回は昨年のレポートで積み残したトピックスをカバーすることから始めました。その中で大きなニュースはクウェート首長の薨去でしたが、私の第二の故郷とも言えるクウェートの近況を調べている内に、つい長文になってしまいました。新春スペシャル?と言う感じでお許し頂き、お時間ある時にご笑覧ください。

今年も引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

大橋誠

 

 

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中東フリーランサー報告26.pdf
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