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日賑グローバルニュースレター第323号

1.熾烈さを増す共和党大統領候補2位争い

 

元サウスカロライナ州知事でトランプ政権時代に国連大使であったニッキー・ヘイリーが、共和党内の大統領候補争いで3位に浮上し、2位のデサンティスフロリダ州知事に追いつく勢いを示している様子をワシントンポストが報じた。 

同紙の10月の平均支持率ではデサンティスが14%に対し、ヘイリーは8%となっている。 

最新の調査では、ヘイリーはニューハンプシャー州と地元サウスカロライナ州で2に浮上している。 

デサンティス陣営も彼女の勢いを感じているが、一方でヘイリーの支持層が共和党支持層の中では少数派の反トランプ派であることから、どう頑張ってもトランプには勝てないと見ている。 

今月ユタ州で開かれた共和党支持の大口献金者向けカンファレンスは元下院議長でミット・ロムニーが2012年の大統領候補の際に副大統領候補に選んだポール・ライアンが主催したもので、ロムニー上院議員も参加し、トランプが来年の大統領候補となることを望まない献金者が多く顔をそろえた

ヘイリーはそこでのスピーチで、「トランプを望まないからといってじっとしているのではなく、反トランプの候補を支えるべく(献金に)動くべきであり、私を選んでほしい」とはっきりと語っている。 

彼女のキャンペーン資金はデサンティスより豊富で、連邦選挙委員会に届けられている予備選向けの政治資金額はデサンティスが500万ドル(内100万ドルは借金)に対し、910万ドルをキャッシュで有している。 

ロシアのウクライナ侵攻、中国というライバルの台頭、北朝鮮やイランの問題、そして今のイスラエルーパレスチナ紛争など、外交安全保障の話題が目立つ中、国連大使時代の外交経験を強みとし、アメリカにとっての脅威を具体的に示し、新たな時代のリーダーの必要性を説く姿勢が候補者のディベート等を通じ、徐々に共和党支持層に浸透してきているのかもしれない。  

圧倒的支持率で高みの見物をし、各候補をあだ名で呼んで馬鹿にしているトランプ前大統領だが、ヘイリーの台頭を気にし出したようで、昨今のスピーチでは彼女をけなす内容が増えてきているという。 

予備選の皮切りとなるアイオワ州で彼女がどこまで支持を伸ばしてくるか注目される。

 

2.トランプ前大統領への忠誠度が問われた下院議長選出

 

米共和党が昨年の中間選挙で下院において与党を奪還したものの、その下院議長選出において、15回の投票を経てようやく議長の座に就いたケビン・マッカーシー議員(カリフォルニア州選出)は身内からの解任動議が下院多数で可決され解任された。 

先月の次年度予算をめぐる与野党攻防で連邦政府閉鎖の危機が迫る中、最終的に合意に達した姿勢が共和党内保守強硬派に嫌われたためである。 

その後、下院共和党内序列第2位のスティーブ・スカリス院内総務(ルイジアナ州選出)が同党議長候補に選ばれたが党内造反者にて選出されず、次にトランプ前大統領が推薦したジム・ジョーダン議員(オハイオ州選出)が候補に選出されたが彼もマジョリティを確保できず、さらには3人目のトム・エマー議員(ミネソタ州選出)も党内反対派の存在で選出されず4人目のマイク・ジョンソン議員(ルイジアナ州選出)でようやく党内の一致をみて選出されている。 

この4人の中ではトム・エマー議員だけが2020年の大統領選の結果を認めバイデン大統領の誕生を承認、他の3人は承認していない

にジム・ジョーダン議員は2020年の大統領選を公に否定してきた人物であった。 

新議長に選ばれたジョンソン議員も強力な親トランプ派で、2017年の議会による大統領弾劾の動きに対し、最前面で防戦を張り、2020年の大統領選結果に対しては、バイデンの勝利に重要となった4つの州の投票集計マシンのソフトに不正ありと主張し、再集計を裁判所に求める共和党議員のリーダー役を務めている。  

ジョンソン新議長の当面の課題はマッカーシー前議長の解任につながった来月17日までのつなぎ予算の後の次年度予算について民主党およびバイデン政権との合意に達することができるかどうか

トランプへの忠誠度を測るような議会共和党の動きに反トランプの共和党支持層はもとより無党派層がどのような判断を大統領選はもとより議会選に下すのか注目される。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾総統選状況

台湾の今後の行方に大きな影響を与える総統選挙は来年一月に予定されている。

約3カ月後に迫っている選挙の最大の争点となるのは、対中政策であり、これに関して、与野党は論戦を交わしている。

中国の習近平政権が武力による統一の可能性に言及する中、与党・民進党の頼清徳副総統の「警戒」路線に対して、野党の3候補は中国本土との「融和」を掲げ、現状維持を望む有権者にアピールしている。

中国本土は、中台が一つの国に属する「一つの中国」原則を双方が認めたとする「1992年合意」の受け入れを対話の条件としており、もちろん、共産党政権主導の統一を狙っている中で台湾がどうこれに対応するのか、台湾国民は難しい選択を迫られている。

こうした中、総統選の4人の候補者で、頼候補は1992年合意を「受け入れない」としている。

そして、頼氏は、「合意を受け入れれば台湾は消滅するだろう。主権がない平和は偽りの平和である」と強調し、米国と連携して防衛力の強化を目指す立場を示している。

これに対し、最大野党・国民党候補の侯友宜・新北市長は1992年合意の受け入れを表明、「民進党が政権を担ってから戦争が徐々に近づいている」と明言して、中国本土との融和路線の必要性を訴えている。

 

l  将来に向けた危機感を煽るTSMC創業者

TSMCの創設者であるモリス・チャン氏は、現在は台湾の半導体産業の世界的な優位性を享受できているが、20~30年後には台湾の優位性が失われていく可能性もあり、普段の経営努力が必要であるとの見方を示唆している。

そしてその、ファウンドリー(半導体受託製造)世界最大手でもあるTSMCが発表した本年7~9月期決算によると、当期純利益は前年同期対比24.9%減の2,110億ニュー台湾ドルとなっている。

需要回復が鈍く、売上高も10.8%減と2四半期連続の減収減益となっている。 

また、TSMCは台湾北部・桃園サイエンスパークの第3期工事に参画、新工場を建設すると言う計画を事実上、断念したと見られている。

地元住民の反対が強まっているとも見られており、フォローしたい。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  イスラエルの状況から防衛意識を高める韓国

イスラエルの状況を見て、韓国国内では、軍事的リスクに対する意識が再び高まっている。

こうした中、韓国で首都圏防衛の脅威となっている北朝鮮の長射程砲対策の為、韓国軍は長射程砲迎撃システム(LAMD)、所謂、「韓国版アイアンドーム」の開発を進めているが、現時点でこれは170ミリ自走砲の攻撃を防げないのではないかとの見方が強まっており、懸念が拡大している。

北朝鮮長射程砲を迎撃するシステムの開発と量産には2兆8,900億ウォンという巨額の予算が投入される為、一部では「効率性」の問題を指摘する声や「迎撃能力の大幅な強化」を含む全面的な見直しなどを求める声も上がってはいる。

そして、2026年を目標に開発が進められている長射程砲迎撃システムは北朝鮮の240ミリと300ミリ放射砲弾(ロケット弾)の迎撃が可能であると見られているが、これら迎撃する能力は韓国軍作戦要求性能(ROC)にないのではないかとの懸念が出ているのである。

                                        

l  ソウルADEXで防衛産業を売り込むユン大統領

韓国は、韓国の防衛と共に輸出産業として、防衛産業を産官学金融で発展させている国である。

最近では、ウクライナ紛争でロシアの脅威を感じているポーランドに対して防衛装備品の輸出も行われており、また、そうしたことから、ポーランドの選挙動向にまで関心を示しているのが今の韓国である。

こうした中、韓国最大級の航空宇宙・防衛産業の展示会である「ソウルADEX」が10月17日、ソウル近郊で開幕した。

ウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化を背景に兵器への需要が高まる中、韓国政府は武器輸出を拡大する方針である。

ユン・ソクヨル大統領は開幕式で、「防衛産業は安全保障と経済を支える国家戦略産業である」とも強調している。

 

l  世界初のアンモニア船を受注したHD韓国造船海洋

HD韓国造船海洋は、世界で初めてアンモニア推進船の受注に成功したと発表している。

アンモニアは船舶運航中に温室効果ガスの排出を減らすことができる環境に優しい燃料の一つとして注目されており、グローバル海運・造船会社のアンモニア推進船の開発・導入競争が激しく行われているが、韓国の造船会社が初めて受注を獲得したとしている。

尚、船舶の脱炭素燃料の中で特に注目はアンモニアと言われており、アンモニア燃料船の導入に関心を示している日本企業の一つは日本郵船でもある。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,358.05(前週対比-5.84)

台湾:1米ドル/32.36ニュー台湾ドル(前週対比-0.14)

日本:1米ドル/149.83(前週対比-0.28)

中国本土:1米ドル/7.3174人民元(前週対比-0.0125)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,415.80(前週対比-40.35)

台湾(台北加権指数):16,452.73(前週対比-329.84)

日本(日経平均指数):31,430.62(前週対比-885.37)

中国本土(上海B):3,005.393(前週対比-82.706)