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日賑グローバルニュースレター第320号

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第320号)

 

1. バイデン大統領の初のベトナム訪問

2. G20サミットで一帯一路への対抗プロジェクトを発表したバイデン大統領

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 中東フリーランサー報告23

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1.バイデン大統領の初のベトナム訪問

 

今年80歳になったバイデン大統領の世代ベトナム戦争に従軍した人も、大学で反戦運動を行った人も多いが、いずれにしてもベトナムに対する複雑な思いを持っている可能性は高い。 

ベトナム戦争への従軍も、反戦活動への参加もしていないバイデン大統領だが、910日にインドでのG20サミットを終えた足で、初めてのベトナム訪問を果たした。 

バイデンより一歳年下で、ベトナム戦争に従軍したジョン・ケリー気候変動特使(2004年の民主党大統領候補で、オバマ政権での国務長官)もバイデン大統領に同行し、ベトナムを訪問した。 

彼らは、同世代ながら少し先輩で、ベトナム戦争で5年以上もの過酷な捕虜体験の後に奇跡的生還を果たしてヒーローとなった故ジョン・マケイン上院議員(2008年の共和党大統領候補)がベトナムで囚われの身となっていた捕虜収容所を訪れ故人を偲んだ。 

一方、ベトナムの最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長はバイデン大統領との会談場所にホーチミンの銅像のある部屋を用いた。 

ホーチミンはベトナム戦争時、北ベトナムを率いて米国と戦い、統一ベトナムの初代の主席となったベトナムのヒーローである。 

ということで双方、互いの戦争のヒーローを称えたのは夫々の国内へのジェスチャーであろうが、バイデン大統領のベトナム訪問の狙いは対中囲い込みである。 

中国と国境を接するベトナムはロシアの兵器を導入する形で中国の脅威に対処してきたが、中国の軍事力の急速な拡大や、南シナ海での軍事プレゼンスの増大、そして中露接近の動きの中で、ベトナムにとっての中国の脅威は大きくなっている

一方、アジア太平洋地域で米国の覇権を脅かす中国に対し、日米、米韓、ANZAC(米、豪、NZ)といった安保条約に加え、QUAD(日、米、印、豪)やAUKAS(米、英、豪)といった広域な対中網を講じつつある米国にとってASEANの大国の一つのベトナムをそのネットワークに加えることは大きなプラスとなる。 

ということで両国の対中利害が一致した形で、一段と高い次元の包括的戦略的パートナーシップと位置付けた。 

バイデン大統領は記者会見の中で、この新たなベトナムとの関係「対中封じ込めや中国の孤立化を意図してはいない」と明言する形で中国を過度に刺激することは避けている。  

ワシントンポストの記事の中で、この米国のベトナムとの急速な関係づくりに強い懸念を示しているのは米国のベトナム戦争従軍者というよりも、人権保護団体である。 

ベトナムの共産党一党独裁政権が反政府活動家に行っている言論統制や虐待などに強い懸念を表明し、バイデン政権にベトナム政府への圧力と是正措置を求めている。 

民主党内でもリベラル派は同じく懸念を示しているが、対中囲い込みの姿勢は今のところ超党派の支持を得られることから、来年の大統領選を見据えて大局的な視点で動かざるを得ないのであろう。

 

2.G20サミットで一帯一路への対抗プロジェクトを発表したバイデン大統領

 

当初は習近平国家主席との会談を一つの目的としてG20サミットへの参加を予定していたバイデン大統領は、習近平不在でもG20サミットに参加した

バイデン大統領の狙いは中国囲い込みである。 

ベトナム初訪問による関係深化もそうであり、G20サミット参加も、中国と国境を接し、今年中国の人口を超え、宇宙開発でも進展目覚ましいインドとの関係深化が狙いと言える。

そしてバイデン大統領は今回のサミットで中国の一帯一路に対抗するユーラシア大陸インフラプロジェクトを参加国のリーダーと共に発表した。 

ワシントンポストによれば、インド、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエル、UAE及びEU諸国が参加する。 

インドから中東を経て欧州につながる鉄道やエネルギーそしてデジタル情報通信のネットワークインフラである。 

具体例の中にはイスラエルから欧州までの水素供給パイプラインの敷設も挙げられている。 

もともとイスラエルは米国の仲介でエジプトやヨルダンとの国交樹立、経済関係を構築していたが、その後もトランプ政権時、米国の仲介でUAEやバーレーン、オマーンとの国交樹立、自由貿易協定などを締結していた

従い、今回のプロジェクトを通じ、イスラエルとサウジアラビアの間の国交樹立、経済関係構築をすることで中東和平のリーダーシップをとることもバイデン政権の眼目の一つとなる。

そのため、今回のサミットでもバイデン大統領はサウジアラビアの事実上のトップとなるサルマン皇太子と交歓している。 

ただ、同皇太子は、米国在住のサウジアラビア人ジャーナリストでサウジアラビア政権に批判的なカショギ氏の2018年の殺害の黒幕であるとのCIAの見立ても有之で、同皇太子への安易な歩み寄りには米国内のリベラル派からの風当たりは強い。 

そしてこの両者の交歓が2001911日の同時多発テロの犠牲者を追悼する日の前日になされたことも犠牲者家族の神経を逆なでしているという。 

ビンラディンを含め同テロの実行者がサウジアラビア人であり、時のサウジアラビア政権も絡んでいたのではとの疑惑が残り、現在も犠牲者家族が同政権に賠償請求の訴訟を行っている状況にある。

肝心のバイデン大統領はインドからベトナムに向かったため、ニューヨークやワシントンでの犠牲者追悼式典には参加できず、帰路の途中のアラスカの米軍基地で追悼のスピーチを行うこととなった。 

中国囲い込みや中東和平という大きな政権の目的に人権優先の姿勢が譲った格好と言える。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾近傍のフィリピンの離島を地元自治体と共同港湾開拓する米軍

台湾に近いフィリピン最北端の離島で、米軍と地元自治体が商業港の開発を計画しているとロイター通信が地元知事らの話として報じている。

南シナ海を巡って中国本土との関係が悪化するフィリピンでは今年、米軍が使用可能な拠点の増設が決めたが、更に新たな動きを示したと言うことであろうか。

米中対立が鮮明となる中、米国が東南アジアで足場を広げる動きの一環とも見られている。

 

l  EVに傾注することを宣言するフォンハイの劉陽偉会長

鴻海の劉陽偉会長は、

「今年は本格的なビジネス参入してから4年目となるEVについて、我々は多くの経験とノウハウを蓄積してきた。

これまでEVでやってきたことを一挙に具現化し、成果をあげる」

との主旨のコメントをしている。

システム、バッテリーモーター電子制御などの成果、AIとEVの連携、更にスマートシティ分野での成果も示したい」

とコメントしている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  5G加入率世界一の韓国

韓国は第5世代(5G)移動通信システムの加入率が世界で最も高い。

更に、SKテレコムは全世界の通信事業者で5G加入者数が8位にも入っている。

市場調査会社のオムディアによると、昨年末時点で韓国の移動通信加入者のうち5G加入者は36.4%となり、韓国は2019年4月、世界で初めて5Gを商用化した勢いを受けて、5G加入者を増やしている。

韓国に続く2位はイスラエルで30.3%、米国と中国本土はいずれも19.6%に留まっている。

欧州では都市国家であるモナコを除けば、英国が24.2%で最も高かったと報告されている。

                                        

l  韓国若年層の厳しい就労と経済力の実態

中央銀行である韓国銀行が6月に発表した「金融安定報告書」では、

「2020年以降の家計向け融資のうち、30代以下の債務者の債務比率が過去に比べて高い点に注目すべきである。

所得基盤が他の年齢層に比べて弱く、2020年以降に行われた家計向け融資の延滞率が予想よりも上昇する可能性を念頭に置いておく必要がある」

と指摘しており、経済力の低い若年層が借金をして消費をすること、更には借金をして不動産投機などをすることを危惧する見方を示してきている。

また、韓国政府・統計庁が「社会調査」を分析した内容によると、ここ10年で結婚を肯定的に見る青年が大幅に減っている。

青年層の中でも女性は10人に3人が結婚に否定的となっている。

「今でも手いっぱいなのに、結婚して出産や育児までを行いながら、自分の仕事を続ける自信がありません。

女性が独りぼっちになる結婚はする必要がないと思います。

あえて結婚という形で法的に縛られなくても、伴侶としてお互い信頼して過ごすことができるのではないかと思います」

といったアンケート調査の回答が典型的なものであったと報告されている。

統計庁はまた、韓国で高校や大学卒業後も未就職状態である「青年失業者」が126万人に上る中、このうち半数以上は大卒以上の高学歴者であると報告している。

統計庁による経済活動人口調査青年層付加調査によると、本年5月の青年(15~29歳)人口841万6,000人のうち、高校、短大、大学などの学校を卒業(修了・中退を含む)した青年は452万1,000人<ところが、このうち126万1,000人が未就職状態であるということである。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,334.49(前週対比-16.94)

台湾:1米ドル/32.07ニュー台湾ドル(前週対比-0.21)

日本:1米ドル/147.49(前週対比-1.26)

中国本土:1米ドル/7.3472人民元(前週対比-0.0866)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,547.68(前週対比-16.03)

台湾(台北加権指数):   16,576.02(前週対比-68.82)

日本(日経平均指数):32,606.84(前週対比 -103.78)

中国本土(上海B):3,116.719(前週対比-16.528)

 

4.中東フリーランサー報告23

           

三井物産戦略研究所の大橋研究員から掲題の報告書を頂きましたので共有させていただきます。 今回の報告は以下の3つの話題です。

1. BRICSの拡大に乗っかる中東?

2. GCCの人口動態と経済動向

 

3. トルコとロシア・ウクライナ移住者

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