1.LGBTQに対する逆風が目立ちつつあるアメリカ
アメリカでは6月にLGBTQの人々が集ってプライド というパレードやお祭り的イベントが開催され、目印として虹色のプライドフラグがその象徴となる。
同性婚も合憲となり、LGBTQの人々にとって国と社会の理解が進み活動しやすくなっていると思っていたが、ここにきて共和党を中心とした反LGBTQの動きが米国全体に影響を及ぼしている様子をワシントンポストが伝えている。
反LGBTQの急先鋒は次期大統領選共和党候補に名乗りを上げているフロリダ州のデサンティス知事で、すでに小学校で小学生に性の志向を尋ねることを禁じる州法を通している。
共和党が与党となっている州議会ではゲイや性転換者の権利を制限する州法を次々に通している。
ほぼ同じタイミングでLGBTQに対する世論も変化している。
プライドのプログラムに子供向けのものがあったり、官公庁の建物にプライドの旗がたなびくのを見たりするとき、「行き過ぎ」と感じる人が多いようである。
昨年のギャラップの世論調査で同性婚を支持する割合が71%であったのに対し、最近の調査では64%にまで低下、その大きな原因が共和党支持層の変化で、56%から41%にまで一気に下降している。
別のギャラップの調査では共和党支持層の55%が、「同性婚が合法であることは社会にとって良くない」と回答している。
キリスト教信者のグラフィックアーチストが同性婚のカップル向けの結婚式用のウェブサイトづくりに反対したことに対する訴訟に関し、最高裁は6月30日被告の判断を支持する判決を言い渡している。
次期大統領選共和党候補者の本命のトランプ前大統領は同性婚に特に政治的興味は持っていないという。
ただ、前回2020年の大統領選ではトランプ・プライドという提携をLGBTQ支援組織と交わしてはいた。
彼は政治の世界に入る前には性転換者への支援も公言していたことがある。
次期大統領予備選立候補を公表している前副大統領のマイク・ペンスは大リーグのドジャーズがプライドのイベントで球場に女装の男性同性愛者を迎えたことを非難しているが、同性婚を否定するところまではいっていない。
共和党自身はLGBTQの支援組織と連携してきているが、上記のような政治の風向きの中でどこまで表立って連携を維持していくか慎重に検討しているようである。
同様に予備選立候補を検討しているティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州選出)もドジャーズのイベントを「恥ずかしく、胸がむかむかする」と非難した。
彼は同性婚を連邦法の中に組み込む昨年の法制化に反対票を投じている。
LGBTQの活動が度を過ぎて目立ち始めていることへのマナー的な抵抗感ということなら健全だが、圧倒的な数の保守系判事により構成される最高裁を背景に保守陣営が大胆な発言をしているということなら不健全とも思える。
日本では毎年5月の連休の頃に代々木公園でLGBTQのイベントとプライドのパレードが開催され、認知も高まっており、先月23日にLGBTQの理解増進を目的とする法律が施行されたところにある。
日本では同性婚には婚姻の法的保護がなされていない現状に関する違憲訴訟が各地でなされているなか、地方裁判所では5件、違憲判決が出されている。
2.米最高裁の立て続けの保守的判断の行方
米国の最高裁判事は自ら引退を表明するか、何らかの理由で弾劾されることが無ければ終身である。
トランプ前大統領の任期中に、たまたま3人の最高裁判事が死亡乃至引退したため、トランプはNeil Gorsuch, Brett KavanaughおよびAmy Coney Barrettの3人の保守系判事を選抜し議会の承認を得ている。
その結果、9人の最高裁判事のうち6人が共和党大統領の選抜による保守系で、残り3人が民主党系となっている。
この保守系への大きな偏りは、昨年の中絶違憲訴訟で従来の合憲判断を覆す結果をもたらし、それがひいては女性の選択権を重視する民主党系支持層の問題意識を高め、昨年の中間選挙での民主党の大いなる善戦につながった。
この最高裁が最近も立て続けに3つの大きな“保守的”判断を下した。
1つは大学入試でのマイノリティ枠を設けるいわゆるアファーマティブアクションに対し違憲であるとの判断を示したこと。
次が本ニュースレター1つ目の記事で触れた、キリスト教信者のグラフィックアーチストが同性婚のカップル向けの結婚式用のウェブサイトづくりに反対したことが合憲との判断。
そして3つ目がバイデン政権による学生ローンの返済免除を行おうとしていることに対し、大統領にその権限はないとの判断である。
1つ目の判決が出た際にバイデン大統領は「今の最高裁は正常な裁判所ではない」と発言している。
一方、この保守系判事が大多数を占める最高裁を利用して保守系の人々が州での選挙区割りを有利に進めようとするための選挙区に関するいくつかの訴え行っていることに対し、それを退けるという判断をロバート主判事が示しており、最高裁の6人の保守系判事の中での左右の別れも生じているとワシントンポストは記している。
今回の判決の結果は学生ローンの免除を公約に掲げていたバイデン大統領の再選の選挙戦を不利にするとの論調が日本のメディアでは見られるが、中絶違憲判断同様、学生やマイノリティの怒りの矛先は最高裁とその判事を任命した共和党に向かい、来年の選挙での民主党支持層の投票率増と言う形でバイデンと議会民主党を有利にするのではないかと筆者は現時点では考える。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l アジア大学ランキング
英国の教育専門誌であるタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は、2023年版アジア大学ランキングを発表したが、この中で、台湾の最高位は29位の台湾大学(台北市)となった。
但し、順位は前年の21位より8位後退している。
トップ100には台湾大を含めて台湾の大学が6校入り、このうち4校がトップ50入りしている。
台湾大以外にトップ100入りしたのは、中国医薬大学(33位、台中市)、台北医学大学(43位、台北市)、亜州大学(49位、台中市)、陽明交通大学(85位、新竹市)、清華大学(95位、新竹市)となっている。
尚、同ランキングは今年で11回目の発表となっており、31カ国・地域の大学から669校がランキング入りしており、1位は清華大学(中国本土)、2位は北京大学(同)、3位はシンガポール国立大学、日本の最高位は東京大学の8位となっている。
l 台湾有事での派兵に反対するオーストラリア世論
オーストラリアの代表的なシンクタンクであるローウィー研究所は、本年3月に実施した世論調査の結果を発表したが、これによると、半数以上の人が、台湾有事を巡るオーストラリア軍の派兵に反対しているとしている。
オーストラリア一般人の安全保障に対する考えの中で、こうした結果が示された。
l 「一帯一路」でイタリアを訪問する中国共産党高官
「一帯一路戦略」は、中国から陸路中央アジアから中東、バルカン半島を経由、中東欧を経て西欧、英国に、そして、中国から海路、シンガポール、マラッカ海峡、ベンガル湾、インド洋、ペルシャ湾を経て中東、欧州へといったルートが想定されている経済構想である。
そして、欧州諸国が中国政府のこの一帯一路経済圏構想からの撤退を検討しているとの観測報道が流れる中、中国共産党高官はイタリアを訪問している。
中国共産党によると、党中央委員会国際部長が6月25日にミラノで実業家らとの会合に出席、会議を行っている。
イタリアは、G7諸国の中で、この一帯一路構想に関する覚書に署名した唯一の国であることを意識し、今後の動向をフォローしたい。
l ニュージーランド新首相中国初訪問
ニュージーランドのヒプキンス首相は、1月の首相就任以来初めて中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。
ヒプキンス首相の訪問は、中国と米国の対立が激化する中、ニュージーランドが外交上の関係改善を目指すと言う方針の中で行われたものと見られている。
今回の会談で両首脳は、両国が昨年外交関係樹立50周年を迎えた事実を先ずは称賛するところから始まった。
習国家主席は、「中国本土とニュージーランド両国が新たな50年間の関係構築に乗り出し、包括的戦略的パートナーシップの着実な発展を促進する為に協力する必要がある」
と述べ、米国を意識した、ニュージーランドに対する前向きな外交姿勢を示した点が特筆されている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 質を重視した国家研究開発を目指す韓国
ユン・ソクヨル大統領は、国家財政戦略会議に於いて、30兆ウォンに達する国家研究・開発(R&D)予算の運営指針の見直しを指示している。
これまで研究開発の量の拡大にだけ焦点を合わせ、結果的には成果の上がらぬ「不良研究開発が絶えなかったのではないかとし、国家研究開発のマネージを効率化し、国際競争力を備えることが出来るシステムに再編せよと指示を出している。
l サウジアラビアからの建設受注が続く韓国
韓国政府・国土交通部は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが同国東部・ジュベイルに建設する石油化学プラント「アミラル」のプロジェクトを建設大手・現代建設が50億米ドルで受注したと発表している。
今回の契約は韓国企業がサウジアラビアで受注した事業の中では最大規模となる。
韓国の上半期の海外建設受注額は137億米ドルを超えており、昨年1年間の受注額(120億米ドル)を既に上回っている。
現代建設が受注したのはプラントパッケージの第1番と第4番プロジェクトで、エチレンなどの石油化学製品を生産することとなっている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,317.50(前週対比-8.41)
台湾:1米ドル/31.14ニュー台湾ドル(前週対比+0.08)
日本:1米ドル/144.47円(前週対比-0.87)
中国本土:1米ドル/7.2575人民元(前週対比-0.0796)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,564.28(前週対比-5.82)
台湾(台北加権指数):16,915.54(前週対比-286.86)
日本(日経平均指数):33,189.04(前週対比+407.50)
中国本土(上海B):3,202.062(前週対比+4.161)
4.明日TAC企業経営アドバイザーセミナーに登壇します
明日午前11時から掲題のセミナーの講師役として登壇します。
タイトルは『多様性から事業成長を促す!戦略的な外国人材活用のススメ』です。
オンラインで聴講は無料です。 土曜日ですがお時間がございましたら是非ご笑覧ください。
申込は以下のリンクからお願いします。
https://www.tac-school.co.jp/kouza_kigyou/webinar/20230708.html
5.イスラエルセミナーのご案内
日本とイスラエルのハイテクビジネスの懸け橋となっている株式会社ミリオンステップスから下記のセミナーの案内を得ましたので共有いたします。
お世話になっております、ミリオンステップスの小野です。
銀行様主催のイスラエルセミナーが 7月12日(水)に開催され、ミリオンステップスの井口も登壇いたします!
以下、詳細のご案内です。
ーーー
イノベーション大国の1つとして注目を集めるイスラエル。同国のエコシステムや注目すべきテクノロジー、日系企業-イスラエル企業の連携方法について事例を交えながら解説頂きます。
講師は在日イスラエル大使館、イスラエル輸出・国際協力機構(IEICI)、イスラエルの弁護士事務所やベンチャーキャピタルの方と多岐に渡り、イスラエル企業との協業経験を有する日系企業も参加されます。ネットワーキングの場としてもご活用頂けますと幸甚です。
イスラエルスタートアップとのビジネスや協業にご興味をお持ちの皆さま、この機会にぜひご参加ください。
日時:7月12日(水)16時から18時
場所:みずほ銀行丸の内本部ビル28階(東京都千代田区丸の内1-3-3 丸の内タワー)
※オンライン配信はございません
対象者:オープンイノベーション・新規事業担当部署の方
※申し込み多数の場合は1社あたりの参加人数を相談させて頂く可能性もございます
言語:日本語、英語(同時通訳あり)
参加費:無料
申し込み方法:添付の参加申込書をご記入の上、下記へ送付ください
innovative.startups@mizuho-bk.co.jp
申し込み締切:7月10日(月)