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ニュースレター国内版 2023年・冬(303号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第303号)
 
1. ビジネスリスク2023 ― サイバーアタックにご注意!
2. アメリカで最も幸せを感じる仕事は木こり?
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 
4. 拙稿が文藝春秋2月号に掲載されています
5. 寺島実郎さんメディア出演情報
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1.ビジネスリスク2023 ― サイバーアタックにご注意!

 

米国の国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる地政学リスク調査会社のユーラシアグループによる新年恒例の地政学トップ10リスクでは「ならず者国家ロシア」「中国習近平の権力最大化」「大量破壊兵器」「インフレ衝撃波」「追い詰められたイラン」「エネルギー危機」「途上国人材開発の停止」「分裂するアメリカ」「Z世代の抵抗」「水不足」といったことが原因やきっかけとなる争いのリスクを掲げていた。 

 

一方、世界最大の法律事務所の大成Dentonsは、企業にとっての今年の目立ったリスクとしてユーラシアグループが掲げたもの以外では「時間差で今年中国にインフレが生じ、それが世界に飛び火する」や「欧州の右傾化に伴う保護主義」に加え、特に目立ったのは「サイバーアタック」に対する警鐘であった。最近出されたCybersecurity Venturesの報告では今年のサイバー犯罪による予想被害は世界で8兆ドルを超えると予想されている。ダークウェブではランサムウェア(身代金要求型サイバーアタック)用のツールが100ドル以下で購入できるようで、犯罪者予備軍の増大が見込まれている。

 

金目当てとは別にロシアのサイバーアタック集団のように国家間対立に介入してくる攻撃が敵対国の社会インフラを中心に民間に及ぶ可能性も高い。国家自体がスポンサーとなっているスパイ行為のためのサイバーアタックも特に中国発のものが見込まれている。ハイテクを有する企業はそのような“攻撃”による知的財産の喪失のリスクが高いという。単に機密情報を奪われるだけでなく、ハードディスク内の全てのデータを消去するワイパー・マルウェア攻撃を受けた場合の企業の損失は計り知れない。 

 

このような高度なサイバーアタック技術を有するAdvanced Persistent Threats(APT)という連中は、目的が身代金狙いであればそ

の金額を吊り上げる根拠としてワイパー・マルウェアを用い、国家間対立であれば敵対国に大きな損害を与えるべくその利用をためらわないという。インフレ対策などでサイバーセキュリティ対策への予算を削る企業もあるであろうが、ATPが呈するサイバーリスクには可能な範囲で備えておいた方がよさそうであ

る。  

 

 

 

2.アメリカで最も幸せを感じる仕事は木こり? 

 

2010年から2021年の間に、米国労働統計局が1万3千人を超えるアメリカ人に対して行った日常の時間の使い方に関する調査の質問の中には幸せを感じる時間や有意義な時間、ストレスや苦痛、悲しみを感じる時間など、回答者の感情を問うものが含まれていた。 その結果をワシントンポストが集計し、ワークとライフのそれぞれの幸福度ランキングを出していたので紹介する。

 

アメリカ人の中で最も幸福を感じ、遣り甲斐や意義を感じ、最もストレスが低いと感じられている職業は林業であった。6点満点で幸福度が4.4、意義が5.2、ストレスが1.9(少ない方が良い)であった。コロナ対応で大活躍の医療関係従事者やソーシャルワーカーは林業に次ぐ高い遣り甲斐と意義を仕事に感じている(4.9)が、幸福度は4.0とやや低く、ストレス

は2.6と結構高い。

 

ストレスが最も強い職業分野は金融・保険業界と教育業界で共に2.9、プロフェッショナル・技術サービス業界が2.7で続く。ブルーカラー職よりもホワイトカラー職のほうが圧倒的に高いストレスを感じていることもわかった。

 

また職種別では弁護士のストレスが最も高い結果となっている。逆に林業、特に木こりはストレスを最も感じていないものの、仕事上、危険や苦痛を感じるレベルは最も高いと回答している。この“ストレス”と“苦痛”の違いを説明できるのが「最も意義と幸せを感じるアクティビティは?」という別の設問に対する回答で、トップは「宗教やスピリチュアルな活動」であったが、2番目が「スポーツやエクササイズ、リクリエーション」であること。即ち、屋外での活動が、多少息が上がっても、つらくても意義と幸せを与えてくれるようである。 

そして林業には森林浴のように木が発散する成分を浴びることによる癒し効果があることも幸福度を高める。 

 

さらにはCO2削減に貢献する植樹、自然保護の意義や自分が植えた木が数世代後の人々の生活に貢献していくという持続性への貢献意義なども得点を高めている。われわれ農耕民族と比べ、狩猟民族は人間との共同作業にストレスを感じ、森に帰る方に安らぎを感じるのであろうか。

 

因みに日本の得意なものつくりの製造業におけるアメリカ人の幸福度は3.8(耐久消費財製造は3.7)、意義は4.1(同4.2)、ストレス

は2.5(同2.6)であった。

 

 

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

 

*  台湾人の国防意識調査

台湾の政府系組織である台湾民主基金会が実施した台湾人の民主主義の価値観に関する世論調査では、中国本土が「統一」の為に台湾に武力行使した場合には、「台湾を守る為に戦う」と回答した人が7割を超え、71.9%になったとしている。2021年の調査に対しては0.6%下がり、戦いたくないとする回答者は19.3%と前回調査対比0.7%増えている。同調査は2011年から行っているもので、4年前からは国立政治大学選挙研究センターに委託して実施している。台湾の人々の民主主義に対する態度と台湾を防衛する決意を調べるのが狙いとなっている。

 

*  中国、宇宙ステーションの運用開始に迫る

 

中国の宇宙開発に携わっている中国国営企業のトップは、「宇宙ステーションは昨年完成した」と語っている。

 

また、この有人宇宙ステーション計画の開発段階を更に進め、2023年には宇宙ステーションの通常運用を開始するという目標も改めて明らかにされた。

 

宇宙ステーションは、コアモジュールと 2つのラボモジュールを備えた、長さ約30メートルのT字型の構造となっている。中国はこの宇宙ステーションを10年以上運用し続ける計画であり、17カ国の研究者が参加して様々な実験が行われるとしている。中国はまた、宇宙開発の主要国になることを目指して、月と火星にも探査機を送り込み研究開発を進めている。

 

 

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

*  韓国の2022年の貿易収支は過去最大の赤字を記録

 

韓国政府・産業通商資源部は、2022年の韓国の貿易収支は赤字となり、その赤字額は過去最大の472億米ドルに達したと発表している。通年の貿易収支が赤字となるのはリーマン・ショックが起こった2008年の132億6,000万米ドル以来となる。

 

更に、赤字の規模は過去最大だったアジア通貨危機直前の1996年の206億2,000万米ドルの2倍以上ともなっている。輸出額は前年対比6.1%増の6,839億米ドルと過去最高を記録し、世界7位から6位に上昇したが、世界的なエネルギー・原材料価格の高騰により輸入額が大幅に輸出額を上回ったことが赤字の背景となる。昨年の輸入額は前年対比18.9%増の7,312億米ドルとなっている。

 

尚、昨年12月の貿易収支は46億9,000万米ドルの赤字となり、輸出は前年同月対比9.5%減の549億9,000万米ドル、輸入は2.4%減の596億8,000万米ドルとなっている。前年同月と比べて、輸出額が減少するのは3カ月連続であり、貿易収支は9カ月連続赤字となった。

 

*  外国人観光客コロナ禍前の3割強に回復

 

韓国観光公社が発表した統計によると、2022年11月に韓国を訪問した外国人観光客は最終的には45万9,906人となり、前年同月対比387.4%増加している。

 

新型コロナウイルスの水際対策が厳しかった時期からは大きく回復したが、感染拡大前だった2019年11月の145万6,429人対比では31.6%水準に留まっている。米国からの観光客が6万4,861人で最も多く、日本は前年対比3,746.1%増の6万2,422人と次いで多かった。またこれに続いて、シンガポール(3万3,212人)、タイ(2万9,316人)、ベトナム(2万7,313人)となっている。増加率では香港が最も高く、昨年の119人から1万4,721人に増え、1万2,276%増となっている。

 

*  韓国政府半導体産業支援強化

 

韓国政府は、半導体の設備投資などを行った大企業に対して投資額の15%の税額控除を行い、追加投資も加えると税額控除率を最大25%まで引き上げる内容を盛り込んだ半導体投資税制支援強化策を発表している。

 

韓国政府は支援強化に消極的な立場であったが、ユン・ソクヨル大統領の意向を受け、方針転換をしている。尚、韓国政府案によると、半導体業界に対してのみならず、バッテリー・ワクチン・ディスプレーなど国家戦略技術の設備投資を行った大企業に対する税額控除率も現

行の8%から15%に引き上げられる見通しである。

 

 

 

[主要経済指標]

 

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,269.75(前週対比-17.14)

台湾:1米ドル/30.71ニュー台湾ドル(前週対比-0.06)

日本:1米ドル/134.25円(前週対比-2.42)

中国本土:1米ドル/6.8581人民元(前週対比+0.0385)

 

 

 

2.      株式動向

 

韓国(ソウル総合指数):2,289.97(前週対比+53.57)

台湾(台北加権指数):14,373.34(前週対比+235.65)

日本(日経平均指数):25,973.85(前週対比-120.65)

中国本土(上海B):3,157.637(前週対比+68.379)

 

 

 

4.拙稿が文藝春秋2月号に掲載されています 

 

 

現在発売中の文藝春秋創刊100周年二月特大号の「目覚めよ!日本 101の提言」の中の「経済復活の切り札は?」のセクションに拙稿『「高度人材」が働きやすい国に』が掲載されております。360ページ目です。 ご笑覧頂ければ幸いです。

 

 

5.寺島実郎さんメディア出演情報

 

一般社団法人寺島文庫殿から掲題の最新情報を頂戴しましたので共有させていただきます。

 

●TOKYO MX1「寺島実郎の世界を知る力」

【第3日曜日】第28回放送:1月15日(日)午前11時~

新年初回の番組では、番組テーマである「全体知への接近」の試みとして、「日本人として持つべき時代認識・歴史認識のプラットフォーム」をテーマに据え、今年度から高校教育で必修科目として導入された「歴史総合」を皮切りに、明治期、戦後期、そしてこれからの未来について、戦後日本人が踏み固めておくべき時代認識・歴史認識を、「77年」をキーワードに寺島独自の視点から語ります。

 

【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第22回放送:1月22日(日)午前11時~

 

<ゲスト>:渡部恒雄氏(笹川平和財団 上席研究員)、柯隆氏(東京財団政策研究所 主席研究員)

 

今回の鼎談では、2023年の世界認識と日本の針路をテーマに、日米中トライアングルの視点から議論いたします。

 

是非、ご視聴頂けましたらと存じます。