2022年12月米国情報アーカイブ

2020年〜2022年

 

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2022/12

米国における、中間選挙などを踏まえた2023年の重要イベントと重要政策課題(政治、経済、外交、通商 など)

 

「政治」では来年早い段階でバイデン大統領が再選出馬の意思表明を行うのが一つのイベントでしょう。トランプは今年1115日にさっさと出馬表明をして、現役時代に機密情報を別荘まで持ち出した疑惑などを司法省が訴追することをけん制しようとしましたが、同省はさっさとジャック・スミスという特別検察官を任命、“大統領候補”に配慮しない姿勢を示しました。来年の共和党サイドのイベントはトランプ以外の立候補者の動向です。

 

先月の共和党支持層に対する次の大統領候補に関する調査ではトランプが相変わらずトップで二位のデサンティス フロリダ州知事に18ポイント差をつけていましたが、今月の同調査では同率で並んだようです。「経済」では今年11月時点で9カ月連続Conference Boardの先行指標がマイナスとなり、米国経済が不況に突入する予兆を示しています。11月の住宅販売も前年同月比35%ダウンとなりました。これはFRBの利上げによる住宅ローン値上げやハリケーン、山火事、大雨などの自然災害に対する住宅保険が異常に高騰していることなども原因のようです。ただ、この2年間でざっと4兆ドル以上もの財政支出を決めたバイデン政権のおかげで、来年もかなりの政府支出が期待されることから景気の下支えとなる模様です。実際雇用市場は未だに過熱したままです。「外交」ではウクライナ問題を解決するための米ロ会談などが水面下でなされるかもしれませんが、やはりヘビー級のイベントは米中間のぶつかり合いでしょう。 

 

軍事衝突になる前の様々な外交チャネルを駆使した駆け引きが米中首脳会談を含めなされるものと思います。「通商」のほうは既に米国から中国への半導体の輸出が4割減といった制限がかかっており、ハイテク分野のデカップリングは強まるのでしょうが、一方で日常品など352品目については中国製品への制裁関税を課さない手配を9カ月延長するとUSTRが発表したところでもあります。それにしても驚くべきは、バイデンが要求した来年度国防予算を満額回答どころか450億ドルも追加して8,580億ドルもの史上最高の国防予算を付けた議会です。それだけ中国に対する対抗意識は高まっていると見たほうが良いと思います。

2022/11

COP2711/6-11/18で開催されますので、COPに向けた米国の動き(エネルギー・環境政策見直し含め)と今後の展望

 

先般エジプトで行われたCOP-27に関する米国の動きと思惑です。これを書いたのがCOP-27と中間選挙の直前だったのですが、その後の今も特に内容に変化はないと思います。もちろんバイデンは3時間だけですがCOP-27に参加し、スピーチで欠席した習近平との違いを誇示していましたが、肝心の米国としてのコミットの内容はレポート内に記載の通りでサプライズはありませんでした。

 

米国内の世論の半分(右派)は気候変動問題に関心が極めて低いという状況においてはバイデン大統領の気候変動政策は左派民主党の結束の意義が強いのでしょうが、昨年のインフラ法はもとより今年のインフレ削減法においても多額の気候変動対策予算枠を取り、また政府内でも運輸省、財務省、内務省、農務省、EPAを通じたゼロエミッション化のための多様な政策は取っており、少なくとも米国内において大きな前進をもたらしています。

 

対外的にもMEFQUADIPEFG7などあらゆる枠組みを通じて気候変動対応のリーダーシップを取る姿勢を示し、中国との違いを見せつけようとしています。 ただ中国の14億人の規模に基づく再生可能エネルギー推進やEV化推進では中国の後塵を拝しています。いずれにせよバイデン政権はトランプ前政権に比べるべくもなく目に見える進捗を行っていますが今回のCOPではパキスタンを始め、かつてない自然災害に襲われた国々から先進国、特に欧米に対する損害賠償請求的抗議が出ていました。ホワイトハウスはその点に沈黙を保っています。 

 

一方、気候変動の被害は国ではなく、被災者の人権問題という見方が強まっており、今後この観点で企業も国任せにせず、自らが人権擁護の立場から気候変動対策に意識を高めないと投資家、消費者そして社員からそっぽを向かれる可能性も出てくるのではと思われます。

2022/10

 米国におけるメタバースの産業活用の動向および政府の振興・規制政策の動きについて(プライバシー保護、データ安全性、NFT などを巡る規制など注目すべき動向)

 

今月はメタバースとNFTについてです。いわゆるバズワードで雰囲気が先行しているようですが、米国ではかなりリアルにビジネスにつなげようとしているようです。広義では2030年までに世界で13兆ドルもの市場規模などと言われていますが、今のところ没入型エンタメやゲーム、教育、宣伝広告など限定的な分野のようです。

 

そこで使われる暗号通貨やNFTのような暗号資産の普及が本格化するとそれを媒介としたビジネスが花開くようで、バイデン政権もそろそろ本格的な規制&振興政策を取り始めているようです。海外では当然中国との争いになるのでしょうが、現実に即した仮想空間を忠実に再現する技術においてアメリカが先を行っているものと思います。Web3.0という参加型の環境の象徴としてのメタバースではGAFAのようなWeb2.0の巨大プレーヤーがいなくなるようなことを言われていますが、今のところメタを中心にGAFAがメタバースのプレーヤーとして目立っています。 

 

ただ、NFTではBored Ape Yacht Clubといった聞いたこともなかった新興企業がとんでもない企業価値になっているようです。コンテンツでは強いジャパンも大いにチャンスがあるのではと期待します。

2022/09

米国におけるEV(水素など低環境負荷車両含む)を巡る外交、産業政策(開発投資、クラスター形成、技術保護)動向について

 

 

日本ではEV販売台数はまだ自動車販売総数の1%未満のようですが、中国ではこの上半期で24%と圧倒的に先行しており、次いで欧州(EU)が同20%、そしてアメリカは5.2%と遅れ気味です。

ただバイデン政権になって過去2年間で各種大統領令と共にインフラ法、CHIPS(半導体国内生産)法そしてインフレ抑制法(Build Back Betterの縮小版)と立て続けに大物の法律を通し、その中でEV化に必要なサプライチェーンの国内基盤整備を進め、また充電ステーションの全米への設置、そして国民向けのEV購入補助金を一気呵成に進めており、2030年までに新車販売の半分をEVで、という目標に向かっています。また、内外企業からの米国内への関連投資も大きく伸びているようです。

サプライチェーンでは半導体と共に量産のネックになるのがリチウムやコバルト、ニッケルといった鉱物資源で、これも米国内調達を目指して国防生産法を活用し、外交面でも中国にそれらを依存しなくて済むような同盟国・友好国のネットワークを築こうとしています。

ただ、国内資源開発には環境汚染の問題、海外の場合には資源ナショナリズムの懸念などがあって一筋縄ではいかないようです。

EVはアメリカの経済と雇用を生み出す自動車産業という切り口や気候変動対策というグリーン化、そしてコネクティッドカーといった米国が牛耳るアプリのプラットフォーム化の切り口からも重要なテーマであり、また政策の進捗がEVや充電ステーションの数と言う形で見える化しやすいのでバイデン政権にとって非常に魅力のあるサブジェクトだと思います。

ただ先行する中国のサプライチェーンの規模の利益や同国のトップダウンの支援からして価格競争力では米国は中国の足下に及ばないのではとも思われ、中国とデカップリングする場合に痛みを伴うのはアメリカの消費者ではないかとも思われます。

いずれにせよ日本のEVのキャッチアップが望まれます。

2022/08

Kozo 米国経済指標

2022/08

米国に おける現下の資源・食糧を含むインフレ動向および政策対応と経済への影響

(本年2 月テーマの情報更新を念頭に: 2 月テーマ「米国におけるインフレ(状況・要因・影響)

・政策対応の現状と今後の潜在的インフレリスク発現の可能性」

・新興国からの資金巻き戻しの状況含む

 

今月のテーマは「米国における現下の資源・食糧を含むインフレ動向および政策対応と経済への影響」です。

6月末までのデータが中心ですがインフレ率が年率9.1%という最高値が記録されましたが、7月にはそれが8.5%まで下がり、食料価格は6月比9%ダウン、石油価格がこの2日間で8%も下がるなど少なくともインフレの昂進は落ち着きつつあるようです。

ただ心配なのはロシアが欧州へのエネルギー供給をさらに絞ることの余波や、欧米を襲った異常な熱波と水不足による農作物や畜産業への直接・間接被害が食料価格などをさらに高騰させることです。

バイデンはInflation Reduction Act of 2022を成功裏に法制化し、財政赤字削減を含めたインフレ抑制対策を進めていますが、学生ローンの免除などはインフレに悪影響を与えかねないといわれています。いずれにせよ今月に予定される連銀による追加利上げでどこまでインフレが抑え込めるか、またその分、経済は第一、第二四半期同様マイナス成長となるのか注目されます。 ただ、別紙で添付しましたマクロ経済指標を見てもわかる通り、アメリカの経済は健全な状況で成長を続けていると言え、そのベースにエネルギー安全保障と食料安全保障という基盤がしっかりしていることがあります。 金利差と相まってドルの強さは当面続くのであろうと思われます。

唯一のアメリカの懸念は政治の分断とその対立、特に議論の質を問うはずの民主政治が今や罵詈雑言で相手を貶めたり、偽情報が当たり前の悪質で下品な議論に落ちていることでしょう。

中間選挙の結果に拠らず、上質な議論が戻ることを期待したいですが、トランプがいる限り難しいかもしれません。

2022/07

米国によるインド太平洋地域関与の現状

( 政策概要の整理、②発表後の具体的な政策アクション・変化、③アジア各国の経済・政治への影響分析など)

米国によるインド太平洋経済枠組み( IPEF )およびインド太平洋地域関与を中心に( QUAD 含む)

通商・供給網、安全保障など、重点領域を分析

 

もともとは「アジア太平洋地域」と称され、アメリカにとってもAPECに象徴される米中含めた経済的な枠組みに象徴される地域関与でしたが、一帯一路政策やアジアインフラ銀行創設を通じ、地域への影響力を増す中国に対し、オバマが政権ではTPP(環太平洋経済連携協定)でこの地域でのハイスタンダードな貿易取引ルールづくりで中国の商取引をけん制しようとしたわけです。ただ、トランプによるTPP脱退でとん挫しました。

一方、中国はRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)の締結、そして日本が米国抜きで取りまとめたTPPへの参加要請など地域経済連携での進展が目立ち、さらにはBRICSや上海機構を通じてのインド、ロシアとの連携などもあり存在感を増していたわけです。

そんな状況下で、安倍政権が「自由で開かれたインド太平洋構想」をトランプ政権にぶつけたところからアメリカの当該地域関与の積極性が増し、バイデン政権となってもこの安倍構想がQUADとなり、またIPEFのような枠組みで「インド太平洋地域戦略」という形でまとまってきました。

G7NATOもこの地域戦略と連携を取る方向にありますが、その実効性をどこまで高められるかはインドという大国の今後の成長と、同国の「非同盟中立」の国是と米国との距離感によるのでしょう。

一方、アメリカが台湾を民主主義陣営として取り込もうとする当該地域での性急な動きは中国の尾を踏む危険性をはらんでます。 

資料の別紙を見て頂くと分かる通り、経済(貿易と観光客数)では中国に依存し、軍事(安保条約や武器輸入)では米国に依存する当該地域の国々(日本を含め)は、この米中競争の様々な枠組みの中で自らのポジション取りをしていく必要があるのでしょう。

米国としてはインドをしっかりと懐柔し、対中の地域的面圧を高めていこうとするものと思いますが、台湾取り込みなど単独の拙速な動きは中国に有利に働くのではと感じます。

2022/06

コロナによる中国ロックダウン・台湾感染拡大に伴う米国における供給制約の影響と対応政策・企業動向

(リショア、ニアショア、半導体等重要物資の協調調達など)

 

内容は中国のゼロコロナ政策に伴うロックダウンが米国に与えているインパクトと、それが米企業のリショアやニアショアをどう加速しているのかについてまとめたものです。今回の上海、広州のロックダウンは一昨年の武漢のそれとは比べ物にならない規模で、アメリカではB2B用の部品から完成品、B2Cの消費財まで上海・広州製の製品の品不足やインフレの影響が今後高まると思われます。

改めて米国の中国でのオフショア生産の依存度の高さが見て取れます。特にシリコンバレーのテックカンパニーの影響は大きいようです。当の中国は最新の貿易統計では輸出入とも順調に伸びているようで、表向き貿易面ではインパクトはなさそうですが、自動車の国内新車販売の急激な落ち込みなど国内消費に与えるインパクトは大きいようです。トランプ時代の米中貿易摩擦あたりから中国でのオフショアを見直し、米国に回帰するリショア、ニアショアの話はありましたが、その後のパンデミックに伴うサプライチェーンの問題発生、そしてロシアのウクライナ侵攻に伴う供給問題、そして今回の中国のロックダウンの問題はダメ押しのようにリショアを後押しし出しているようです。

連邦政府、州政府によるリショアのインセンティブはそれを加速する一方、アメリカで起こっているGreat Resignationと言われるコロナに端を発した就労離脱者・転職者の急増、ベビーブーマー(日本よりかなり若い)のリタイヤなどからリショアを支える有能な人材不足をどうカバーするかが課題となっています。インフレと労賃高騰の克服も課題です。もちろんいずれ世界一の消費市場となるであろう中国市場を“捨てる”ことはありえず、米国の内需に応える分だけをリショアするという製造キャパの分散を米企業経営者は検討することになるのでしょう。

2022/05 米国における、ウクライナ問題を踏まえた中長期的エネルギー安全保障・脱炭素政策、食糧安全保障政策
2022/04 米国における、ウクライナ問題の影響・対応と今後の見通し(経済・通商、対露外交姿勢、国内世論の動向など)
2022/03 米国 における 「成長と分配」に関わる政策動向(格差拡大が米国 内の政情不安定要因になる想定にて、税制、社会保障、教育などの米国 の政策動向)
 2022/02  米国 における インフレ(状況・要因・影響)・政策対応の現状と今後の潜在的インフレリスク発現の可能性
2022/01 米国 における、 対内・対外マネーの流れ( FDI 、証券投資など)の最近の動向と展望(背景・データ含む分析)
2021年  
2021/12 米国における、2022年の重要イベントと重要政策課題(政治、経済、外交、通商、コロナ対応 など)
2021/11 米国における、COP26結果のレビューおよび今後の展望(10月度時点での見通しの事後評価も含め)
2021/10 米国にとってのG20(閣僚会合およびサミット)およびCOP26に向けた重要トピックスについて
2021/09 米国における、半導体供給不足・資源価格高騰(例レアメタル、銅、鉄など)による経済的影響と安定的なグローバル調達の展望
2021/08 米国における、レジリアンス視点によるインフラ投資の対応(国内投資および海外協力・支援策の両取組について)(B3W 日・米・豪+G7、バイデン大統領令)
2021/07 米国による、インド太平洋地域への関与を巡る政策の方向性(G7、Quad、台湾支援に至る一連の対アジア関与の実情)
2021/06 米国における、人権・民主化運動に関する外交・内政政策および国際企業対応の現状・留意点(バイデン政権・米議会の人権外交政策(中国・ミャンマーなど)および国内の人権
2021/05 米国における脱炭素(省エネ含む)関連産業の育成政策(ネットゼロ産業構造転換方やトランジション政策(財政支援策含む)の計画や進捗、実情の視点から)
2021/04

米国におけるデジタル主権・国際ルール形成をめぐる政策動向

・ AIガバナンス(AIの適切な利用に向けた倫理・法・社会規範確立など)

・ データ越境流通(個人データ・非個人(産)データの利活用と、プライバシー・ 営業機密・知財保護とのバランスなど)

2021/03 コロナ禍での米国における社内・対外マネーの流れ(FDI、M&Aなど)の動向と背景
2021/02 米国におけるワクチン研究開発・供給状況、経済再開・回復の見通し、およびワクチン外交(他国からの確保、他国への供給に向けた国際連携)
2021/01 米国における2021年の重要課題(政治、経済、外交、通称、コロナ対応等)
2020年  
2020/12 米国新政権による対中、対EU、対インド・ASEAN、対日政策の変化
2020/11 米中覇権の争点としての先端デジタル資産(注)に対する米国の産業・通商・外交政策動向注)半導体・ロボット・デジタル工作機械などデジタル製品およびそのソースコード、アプリケーション・ソフトウェアのソースコード、AI学習用のデータ、アプリケーションの顧客価値を高めるビッグデータなど
2020/10

米国の持続可能な社会・経済構築に向けたインフラ投資、政策動向(サステナビリティ(環境・社会価値)を考慮推したインフラ開発、費用便益分析法、サステナブルファイナンスの検討など)

※パンデミックで政策変更の動きがあるのであれば、それについても分析をお願いいたします。

2020/09 中国外交(※)に対する米国の外交政策(変化)について『韜光養晦(とうこうようかい;才能を隠し好機を待つ)』方針から強権外交へ転換
2020/08

米国の5G整備とデータ・ガバナンス規制(Huawei対策を含む)の状況

注:データ・ガバナンス規制を例示すると、以下の通り