ニュースレター国内版 2019年・春(235号)
日賑グローバル・ニュースレター国内版(第235号)
1. コロナ禍に霞み気味のバイデン候補
2. コロナショック -2008年世界同時不況・金融危機との比較
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 弊社サイトリニューアルのこと
1.コロナ禍に霞み気味のバイデン候補
ワシントンポストとABCニュースが民主党の大統領候補をジョー・バイデン前副大統領とした場合のトランプ大統領との現段階での支持率の共同世論調査を行った。主な結果を下記する。
バイデン トランプ
どちらに投票するか 49% 47%
どちらが好きか 50% 44%
経済政策 42% 52%
コロナ危機対応 43% 47%
ヘルスケア 51% 41%
因みに、回答者の53%はトランプ大統領の新型コロナウィルス危機対応を支持している。
現状、もう一人の民主党大統領候補バーニー・サンダース上院議員はまだ撤退を決めておらずバイデンは残りの州でのサンダースとの戦いを継続する必要がある。 一方、トランプ大統領はコロナ危機対応で連日国民にメッセージを送り、“大統領らしさ”を訴求できている。
そのお陰もあってか、大統領のツイッターとフェイスブックのフォロワーの数は夫々7,500万人と2,800万人もいる。
これに対し、バイデンは順に460万人と170万人とトランプの10分の1にも満たない。
これはとりもなおさず、若者を中心としたネット市民へのプレゼンスの差となっている。
元々ネットを通じた選挙資金献金受領額でも圧倒的に大統領に差をつけられているバイデン候補はこのコロナウィルス禍で献金を募ることが難しくなる可能性もある。
民主党内の選挙参謀は、バイデンが本来、スーパーチューズデーを機に盛り上がった勢いで一気に民主党候補となって、その勢いを駆って本選に臨むシナリオをベストと見ていたが、サンダースの粘りと、それ以上に新型コロナウィルスがトランプ大統領に有利に働いている状況を認めている。
今、むしろ民主党の人物で目立つのがニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモである。
毎朝知事公邸からNY州の新型コロナウイルス感染の悲惨な状況をTVニュースを通じ淡々と赤裸々に発表し、全米に助けを求める必死な姿が多くの国民の共感を呼び、危機におけるリーダー像として絶大な人気になりつつある。
ワシントンポストの記事によればトランプは彼の毎朝のTVニュースをチェックし、そのメディアに対するブリーフィングスタイルを真似ているという。
トランプとクオモは共にニューヨーク市の出で、知己であり、クオモ知事は気兼ねなくホワイトハウスのトランプ大統領に連日コンタクトし状況報告や支援要請を行っている。
大統領選クオモ待望論も出ているもののさすがに今年の大統領選には間に合わない状況であり、むしろ民主党知事ながらトランプの引き立て役に利用されて終わるかもしれない。
実際、2012年の大統領選直前にニューヨーク州とニュージャージー州を大型ハリケーンが襲い、両州に甚大な被害をもたらした際に、オバマ大統領が両州の知事の要請に従い連邦政府として直ちに支援に動いた際に、ニュージャージー州知事(当時)のクリス・クリスティ(共和党)が大統領を称える賛辞を贈ったことが、オバマが本選で共和党大統領候補のミット・ロムニーに勝利したことに貢献したとの見方もあった。
いずれにしてもコロナ禍でプレゼンスが霞んでいるバイデン候補が如何に表舞台に戻ってこれるかが注目される。
2. コロナショック -2008年世界同時不況・金融危機との比較
ハーバードビジネスレビューが掲題の比較論文を掲載していたので要点をご紹介する。
3月23日の週の失業給付金初回申請者数の予想は160万人であったが、実際は328万人とリーマンショック時の最大の初回申請者数の5倍規模。
新型コロナウィルス感染の広がりを抑え込めていない今の経済予測に根拠はない状況。
世界同時不況・金融危機の後の不況とその後のリカバリーのパターンとして3つあった。
1つ目がV字回復。カナダで見られたように危機での落ち込みからの回復が大きく、危機前の成長トレンドラインに戻ることができたケース。
2つ目がU字回復。米国のパターンで信用緊縮からサプライサイドが大きく打たれ、労働力低下、生産性低下となってアウトプットが危機前の成長トレンドラインに戻れないまま前のトレンドラインと平行する形でそれなりに成長を続けているケース。
3つ目がL字型で不況後停滞が持続し、サプライサイドに構造的なダメージをもたらし、その結果危機前の成長ラインに戻れないどころか当初の成長率よりもかなり低いところに固着してしまうケース。ギリシャがその例。
従来見られた金融危機は経済のサプライサイドにダメージを与えてきたが、これに対処する政策の歴史はある。一方、今回の新型コロナウィルスの場合、流動性の問題と資本の問題を金融システムと実体経済の双方にもたらしている。具体的に見ると
金融システムショック 実体経済凍結
流動性 流動性問題が信用仲介と投資を 健全な家計と企業がキャッシュフロ
問題 妨げてしまう。 ―の問題に直面し投資を妨げる。
資本 資本問題が信用のチャネルを閉じ ダメージを受けた家計と企業のバラ
問題 資本形成にダメージを与え、最終的 ンスシートが投資を制限し、最終的
に経済成長に悪影響を及ぼす。 に経済成長に悪影響を及ぼす。
金融システムショックのリスクと実体経済凍結のリスクは相互に関連している。
まず、長期化するCOVID-19危機は倒産など実体経済の破綻を加速し、それに対する金融システムの管理を困難にする。
一方で、金融システムショック自身は実体経済に提供する信用を枯渇させてしまう。
金融危機に対する政策の教科書は備わっていても、これだけの大規模な実体経済の凍結に対する政策の教本は存在しない。
今も起こっている生命の危機への対処と経済への危機の間のトレードオフという手に負えない選択問題になっている現状に空前のスピードで介入していく政策のイノベーションが求められている。
医療政策としては、一気にワクチン導入には至れない現状、今の社会距離拡大政策の内容をイノベーションで一歩ずつ改善していくことが求められる。
例えば既存の手当の有効性を高めたり、医療リソースの最適な移動・分散体制を構築するなど。
経済政策としては、2兆ドルを超える刺激策でコロナ危機の悪影響を和らげる手を打ったが、そのあとの政策のイノベーションが求められる。
例えば、連銀は流動性の問題が銀行システムを破壊しないよう短期資金を無尽蔵に提供する“ディスカウント窓口”を提供しているが、今必要なのは健全な家計や企業に無尽蔵な流動性を提供する“実体経済用ディスカウント窓口”である。
この点で、既に政策化されている消費者や企業向けの金利ゼロのブリッジローンや返済の猶予、リファイナンス、条件緩和などの政策は意義がある。
問題はそれらを如何に素早くタイムリーに行うことで、L字型を避けることはもとより、U字も避け、V字回復に至れるかである。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 2月の都市部失業率6.2%
中国政府・国家統計局が発表したデータによると、本年1月から2月にかけて、都市部における新規雇用者数は108万人となっている。
一方、本年2月の都市部失業率は6.2%、31大都市の失業率は5.7%となったと発表している。
また、このうち、全国の主要就業者群である25~59歳人口の失業率は5.6%で、全国都市部失業率に比べて0.6ポイント下回っている。
失業問題は社会不安混乱の火種となる。
中国政府としては、そうした意味からも、各ビジネス現場での早期操業再開を目指していると言えよう。
l 中国の統計操作と批判者排除の疑い
香港の英字紙であり、有名なサウスチャイナ・モーニングポストは、
「中国政府は、新型コロナウイルス検査で陽性反応の出た感染者4万3,000人以上(2月末時点)を、発熱やせきなど肺炎でみられる症状を示さなかったことを理由に統計から除外していた」と報じている。
こうした観測報道は、中国政府の内部資料から判断したとして、報道されている。
中国本土に対しては、「統計データに関する疑義」がもとより持たれている中、こうした報道が、サウスチャイナ・モーニングポストで示されたのは、影響が大きい。
一方、そもそも中国当局への批判的な発言で知られる著名企業家の任志強氏が、インターネット上で、
「中国本土当局は流行初期の感染を隠蔽し、対応に成功したとの宣伝を狙っている」
と中国本土政府を批判しており、実際にこうした文章が広まっているとされる中、今月中旬から行方不明になっているとの観測報道が香港などで見られ始めている。
一部には、新型コロナウイルスの対応を巡り習近平政権を非難していたことから、当局に拘束されたとの情報もあるとされている。
l 工業部門企業利益前年同期比38.3%減
中国政府・国家統計局が発表した本年1~2月の工業部門企業利益は、前年同期対比38.3%減の4,107億人民元となり、少なくとも10年ぶりの大幅減となっている。
新型コロナウイルス感染拡大の経済への影響が広がる中、鉱業、製造業、電力部門の利益が大幅に減った。
(2)韓国/北朝鮮
l 中国軍機KADIZ侵入
韓国軍・合同参謀本部は、中国の軍用機1機が韓国南部・済州島東南の韓国防空識別圏(KADIZ)に入ったと発表した。
Y9偵察機とみられるこの中国軍用機は、済州島の南の岩礁、離於島近くの韓国と中国本土の防空識別圏が重なる上空からKADIZに入り、離脱した。
その後、日本の防空識別圏を飛行し、KADIZに再び進入し、韓国と中国本土の防空識別圏が重なる上空に抜けたと報告されている。
韓国の防空識別圏に入った時間は合わせて約35分だったとも報告されている。
韓国軍は、中国軍用機がKADIZに進入する前にこれを確認し、戦闘機を緊急発進させた。
同軍は軍用機のKADIZ進入前に中国本土側と直通電話で通信し、中国本土側は、「通常の軍事活動中である」と応答したとしている。
l 日韓通貨スワップについて
丁世均首相は、日本との通貨スワップ協定の再締結は貿易や金融安定の強化に資するとして望ましいとの認識を示した。
丁首相は記者団に対して、「日本との通貨スワップは以前、失効するまで、長きにわたってあり、為替市場に多大な貢献をした。
従って、日本との通貨スワップの締結は正しいと言える」と述べている。
日韓関係が悪化して、既存の通貨スワップが失効する際、日本からのアプローチにも拘らず、その延長に応じなかった韓国であったが背に腹は代えられぬということであろう。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,223.50(前週対比+25.05)
台湾:1米ドル/30.21ニュー台湾ドル(前週対比+0.15)
日本:1米ドル/108.07円(前週対比+1.74)
中国本土:1米ドル/7.0967人民元(前週対比+0.0074)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):1,717.73(前週対比+260.09)
台湾(台北加権指数):9,698.92(前週対比+1,017.58)
日本(日経平均指数):19,389.43(前週対比+2,836.60)
中国本土(上海B):2,772.200(前週対比+70.070)
4. 弊社サイトリニューアルのこと
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お時間ございましたらチェック頂ければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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