ニュースレター国内版 2020年・夏(245号)
日賑グローバル・ニュースレター国内版(第245号)
1. 大統領のUSPS攻撃をチャンスととらえる民主党
2. 黒人とアジア系の融和に期待のかかるカマラハリス民主党副大統領候補
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
1.大統領のUSPS攻撃をチャンスととらえる民主党
米国郵政公社(USPS:U.S. Postal Service)に対するトランプ大統領の締め付けが逆に今年の選挙における民主党にとっての新たな訴求点を提供している様子をワシントンポストが紹介している。
オバマ前大統領やナンシー・ペロシ下院議長といった民主党の有名人は、トランプ大統領がUSPSへの予算を抑え、郵便業務を混乱させていることを民主主義への攻撃であり、日々の配達に依存している市民のニーズに悪影響を及ぼす愚行として非難している。
退役軍人や高齢者、そして地方に住む人々に共和党支持層が多いが、彼らのUSPSへの依存度が高いことから、大統領選はもとより、知事選、上下両院議員選挙での民主党候補は共和党地盤を覆すチャンスと捉えている。
ピューリサーチセンターが4月に行った調査ではUSPSは米国民の91%の支持を得ている。
現在、トランプ大統領は11月の選挙で郵便投票を認めるためのUSPSへの追加予算を差し止めようとしてる。
大統領は根拠なく、郵便投票が大掛かりな不正を招きかねないとして各州への選挙支援予算36億ドルと、郵政公社の緊急援助資金250億ドルを認めず、郵便投票を止めさせようとしている。
トランプ大統領も彼の家族も、そして彼の補佐官たちも皆、郵便投票を行ってきているのにである。
無論、理由は郵便投票による投票率増大が彼の再選を危うくするためである。
「高齢者は年金小切手を、退役軍人は薬の処方箋を、個人事業主等はビジネスの機会をUSPSに依存している。 彼らを、ウィルスの抑制でなく、投票を抑圧しようとしている政権の犠牲にしてはならない」と、オバマ前大統領は14日にツイートしている。
共和党幹部はこの状況が党の選挙戦を不利に落とし込むと判断し、ケビン・マッカーシー共和党下院院内総務(カリフォルニア州選出)は「USPSへの予算支出を支持する」と同じく14日にCNBCで表明した。
同14日に、30万人規模の組合となる全米郵便物配送者協会は「バイデンがこれまでも、そして今後もUSPSの同志である」として同候補を支持する声明を出した。
トランプによるUSPS攻撃は、バイデンを含め11月3日に信を問われる民主党候補者連に①「年金受給者」、「退役軍人」そして「処方箋薬依存者」といった重要な有権者への訴求点を与え、また②元々共和党支持層であった地盤への民主党の浸食のチャンスをもたらし、さらには③期前投票の動機付けとなるといった3倍美味しい効果をもたらしているというのが本記事の主旨である。
11月3日の選挙での共和党上院議員の改選議員数は23で、民主党の12よりはるかに多く、民主党が今より3乃至4議席多くとりさえすれば与党の座を奪還できる(大統領選でバイデンが勝てばカマラハリス上院議員が上院議長となるため3議席追加でOK)。
バイデンが勝利すれば恐らく下院を含め政権与党が議会を制し、新たな政策を推進しやすくなるであろう。
2. 黒人とアジア系の融和に期待のかかるカマラハリス民主党副大統領候補
インド出身の母とジャマイカ出身の父を持つカマラハリス上院議員(カリフォルニア州選出)がバイデン大統領候補にランニングメートとして選ばれ、今週の民主党党大会で正式に指名された。
インド系アメリカ人でハーバード大学新聞のSharmila Sen編集長が同じくインドの血を引くハリス副大統領候補についてワシントンポストに寄稿したので要点を紹介する。
インドの人口は13億8千万人と、近々中国に並ぶ人口大国であるにもかかわらず、インド系アメリカ人の割合は全米国人口の約1%に過ぎない。
それでもインド系アメリカ人の世帯収入や新築住宅保有率の高さ、何千年も続いてきた信仰、低い離婚率、高いSATの点数などから名誉白人のような地位を静かに占めてきている。
彼らが居住地を白人居住地の近くに移してきた理由は白人の地位に興味があったからではなく、黒人居住地から離れたかったからである。
インド系アメリカ人の黒人差別はインド国内にある肌の色に伴う人種差別、大英帝国植民地時代に植え付けられた反黒人の偏見、そしてアメリカ国内の人種差別が混濁している。
米国に移民してくる前の1838年にインド人は英国領であったカリブ海のトリニダードトバゴの砂糖プランテーションに初めて出稼ぎで入り、1845年にはハリスの父が生まれたジャマイカに入っている。
大英帝国の植民地政策はアフリカから連れてこられた黒人労働者とインド人出稼ぎ労働者を分断統治する格好で分裂させ、その分断はアメリカ国内にもその後持ち込まれ、上述の反黒人の偏見に繋がっている。
1923年にはインド人が白人の地位を求めて連邦政府を訴えたが、これは当時、白人でないと市民権を得られなかったためで、インド系はインド系としての人権運動を展開してきた。
ハリス候補をインド系アメリカ人として誇りに思うときに、同時に彼女の黒人としての血を認め、黒人との融和を図るときである、というのが寄稿の趣旨である。
いわゆるアフリカ系アメリカ人はカリブ出身も含め全人口の13%とインド系に比べて圧倒的に多く、カマラハリスへのバイデン候補の期待値は女性票と共に黒人票であるが、彼女をインド系と呼ばず南アジア系と呼んでアジアにも共感を求めるところに伸長著しいアジア系アメリカ人からの支援への期待も感じられる。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l パプアニューギニアでファーウェイによる工作の疑い
中国の支援でパプアニューギニアに設置された情報通信施設に保安上の重大な欠陥が見つかったとの見方が、調査を協力したオーストラリアから出ている。
施設の整備は中国の通信機器大手である「ファーウェイ」が受注しており、意図的にスパイ活動に使えるような整備が行われた可能性もあるとの見方も出ているのである。
l 半導体企業トップ10に入ったファーウェイの子会社
研究機構であるIC Insightsは、本年上半期に世界のトップ10に入った半導体企業を発表した。
そして、その中で、台湾積体製造・TSMCの収益は200億米ドルを超え、3位にランクされたと発表している。
また、中国のファーウェイの子会社であるHiSiliconの収益は、本年前半に49%増加しており、世界で10番目に大きな半導体工場となったと報告している。
但し、今後については、米国がファーウェイの封じ込めを拡大するにつれ、HiSiliconのトップ10入りは短命になると予想されている。
l 台湾海峡での軍事演習を繰り返す中国
中国本土軍の台湾有事に対応する「東部戦区」の報道官は、中国本土と台湾を隔てる台湾海峡とその周辺で最近、実戦を想定した軍事演習を連続して実施したと発表している。
台湾への武力行使の備えを示し、米台接近をけん制する狙いと見られている。
(2)韓国/北朝鮮
l 米韓FTAを非難するトランプ大統領
米国のトランプ大統領は、米国のオハイオ州クライドの家電メーカー・ワールプールの工場を訪問し、自らが進める、「米国優先主義(アメリカ・ファースト)」
について演説した。 その中でトランプ大統領は、米韓自由貿易協定(FTA)などを名指しして、「ぞっとする合意である。
韓国と他の国のライバル企業が洗濯機をダンピング販売するのを突き止め、最高で79%に達する反ダンピング関税を賦課した。
LGと三星は関税を支払うよりも中国に向かうことを選んでいる」と述べている。
2017年にLG電子と三星電子は、米国際貿易委員会(ITC)から中国製洗濯機に対する反ダンピング関税の適用を受けたことがある。
l 軍備増強を進める韓国
韓国軍当局は、原子力推進機関搭載の可能性も取り沙汰されている4,000トン級潜水艦を建造する計画を発表した。
韓国の首都圏を狙った北朝鮮の長射程砲を防ぐ「韓国型アイアンドーム」開発にも着手することとしたとしている。
韓国国防部は、こうした内容が盛り込まれた、「2021~2025年国防中期計画」を発表した。
来年から5年間で計300兆7,000億ウォンが投入される予定であり、計画通りであれば、韓国の国防予算は2024年に60兆ウォンを超えることになる。
l 三星電子の大型投資・雇用計画発表
韓国トップ企業である三星電子は、8月8日に、史上最大規模の投資・雇用計画を発表した。
そして、現在の主力事業である半導体・ディスプレイ・スマートフォン事業と共に4大成長動力である人工知能(AI)、第5世代移動通信(5G)、バイオ、自動車用電装部品に集中投資するとしている。
3年間180兆ウォン規模の投資が当初予想されていたが、この投資規模をはるかに上回る規模の投資となることが発表されたわけである。
また、これは三星電子が、今後3年間得るであろうと予想されている営業利益のほとんどを再投資するという数字ともなる。
更に、採用規模も大きく増やしている。
当初、この期間に2万〜2万5,000人ほどを採用する計画であったが、より多くの採用をすると表明したものである。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,185.69(前週対比-1.02)
台湾:1米ドル/29.39ニュー台湾ドル(前週対比-0.04)
日本:1米ドル/106.75円(前週対比-1.20)
中国本土:1米ドル/6.9486人民元(前週対比-0.0049)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,407.49(前週対比+64.88)
台湾(台北加権指数):12,795.46(前週対比-118.04)
日本(日経平均指数):23,289.36(前週対比+871.21)
中国本土(上海B):3,360.099(前週対比-26.364)