ニュースレター国内版 2020年・夏(242号)

1. 分断を深めるトランプ大統領とバイデン大統領候補の独立記念日のスピーチ

2. 「自由のアメリカ」と「公益のためのアメリカ」の議論に希望の光を見るアメリカ人

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

4. 補助金を使って越境ECサイトを制作しませんか?

5. 月刊『人事マネジメント』の拙稿第5話 

6. アメリカ人外交官Ken Reiman氏の著作『Love Both, Keep Both』のオーディオ版がリリース 

1.分断を深めるトランプ大統領とバイデン大統領候補の独立記念日のスピーチ

 

74日の独立記念日を前にトランプ大統領はサウスダコタ州の4人の大統領の顔が彫られたマウントラシュモアモニュメントの前でスピーチを行なった。

YouTubeで見た範囲だが、トランプ大統領は40分のスピーチを通じ、人種差別に対する抗議活動が暴徒化し、南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部連合の指導者の彫像を各地でひき下している運動について、左翼による「文革」であり、「米国の文化の打ち消し(キャンセル・カルチャー)」だと表現、米国の価値の破壊であり全体主義を導くもの、アメリカを終わらせようとするもの(End Americaと強く非難した。

そして「社会正義(ソーシャルジャスティス)などというが、彼らのやっていることは社会を破壊する不正義な行為であると非難。悪質な破壊行為には禁固10年の刑を設ける」と語った。

また、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、アブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズベルトの4人の大統領の一人一人の行動と偉業を細かく思い出させつつ、今日のアメリカの栄光は彼らの偉業の上に築かれたものであり、それらを否定することはアメリカを否定することであるとした。

2つの大戦を勝利に導き、経済・軍事・発明発見など如何なる分野でも世界に君臨するアメリカ」、というフレーズから感覚的には1960年代の最盛期のアメリカとそのカルチャーのデジャヴを得た。

マウントラシュモアに集まった観客はビデオ画面で見る限り白人層中心で、マスクは付けず、声を張り上げ、60年代を知るシニア層というよりは、トランプの岩盤支持層のコアといったところか。

トランプによる「国民の武器所持の権利堅持」、「警察力の重要性」、「国境の壁建設」などへのコミットに強い喝采を送る一方で、大統領のスピーチがキング牧師やモハメドアリ等、黒人の著名人に触れた部分では喝采のトーンが抑えられているように感じた。

外部の敵、ライバルを執拗に責めて国内の融和を図るという従来の大統領の常とう手段ではなく、国内にアメリカを否定する敵がいるとして河のこちら側の体制を固めるという分断を以てキャンペーンに臨む姿に見える。

スピーチの最後には過去の偉大なアメリカ人の新たなモニュメントづくりを命ずる大統領令を発したとのことであった。

一方、民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領は独立記念日当日にビデオと署名入り寄稿でこれに反論し、国民の融和を求めた。

トーマスジェファーソン大統領は奴隷を所有しており、1920年までアメリカでは女性には完全な形の市民権を与えられていなかったなど、建国の父たちの創ったアメリカにも欠点はあった。 ただ、彼らの建国の理念は希望をもたらした」と語っている。 

そして「アメリカとしてこれまでの道のりを振り返り、コースを修正してより良い方向を目指すべき可能性」を提言している。 

ただ、公表するとしていた経済力と警察力に関する具体的な計画はまだ発表されていない。 

すべての人々は平等に創造されている」という建国の理念は、我々を分断する人種差別主義と継続的にぶつかり合ってきた」 「独立記念日は、より大きな正義に向けた我々の行進を祝う日であり、「全ての男性が平等に」、から「(女性を含めた)全ての人間が平等に」へ拡大し、そして「すべての人間が生涯を通じて平等に扱われるべき」という正義に発展すべき」であると語った。 

80年代後半の米国で抑留キャンプに強制収容された日系米人への謝罪と補償及びモニュメントの建立の法案が議会で可決され、レーガン政権がそれを履行した記憶が残るが、人権に関する反省や償いがそれなりになされているイメージがアメリカにはある。 

ジョージ・フロイド事件を契機とした今回の全米に広がる抗議活動の結果が黒人奴隷時代にまで遡っての謝罪や償いに至るかどうかは不明だが、世相を見るに敏感な企業の動き(例えば商品名から人種に関わるネーミングを削除する等)を見ると、そちらの方向に着実に備えているように見える。

 

2. 「自由のアメリカ」と「公益のためのアメリカ」の議論に希望の光を見るアメリカ人

 

74日に244回目の独立記念日を迎えたアメリカはコロナの感染再爆発とそれに伴う不況突入、そして人種差別問題による国の分断と三重苦に見舞われている。

それを象徴するような国民意識調査結果がある一方で、不思議なほど将来への希望を感じている傾向も見られることを報道するワシントンポストの記事を紹介する。 

まずギャラップの世論調査では自国を極端に或いは非常に誇りに思っている割合が先月63%にまで下がり(白人以外は24%)過去20年で最低となっている。 

9-11からしばらくたった2002年には92%の高さにあった。 

次にピューリサーチセンターの調査では、回答者の過半数が次世代の人々の生活は今よりもっと悪くなり、71%が今の国の状態に怒りを感じ、66%は恐怖を感じていると答えているが、一方で将来に向けての楽観の割合は昨年の秋の調査よりも高まっている

回答者の25%がアメリカ人の生活はよくなると楽観、その内、白人は22%に対し、黒人は33%となっている。 

1968年、マーチンルーサーキング牧師が殺された際には36%のアメリカ人(黒人の48%)が「アメリカは病んでいる」と答えている。 

憲法に定める理念に基づき人権を発展させていく国としてのアメリカと、系統的に人種差別を行ってきた国の二面性、議論が頂点に達しつつあると専門家は語る。

というのも抗議活動や暴動がジョージワシントンやアブラハムリンカーンの彫像にまで及んでいるため。 

政府が国民にマスク着用を求めるべきかどうかは「個人の自由を重んじるアメリカ」と「公益を大切にするアメリカ」の間の「古典的な対決」といえる記事は語る。 

アメリカで繰り広げられている抗議活動に、社会正義(公益)のために立ち上がるというアメリカの伝統が生きているという証として希望の光を感じている人も多いという。 

一方、マンモス大学の調査では、コロナウィルス感染症発生に際し、アメリカ市民の対応が「悪かった」と回答した割合は「良かった」と回答した割合の倍にのぼった。 

コロナとの戦いに対するトランプ大統領の評価は54%が「悪い」であったが、市民の対応については59%が「悪い」とし、大統領よりも自分たち自身の対応の悪さを認めている。 「自由のアメリカ」がもたらす欠点を認めた格好といえる。

それでも6月中旬に行われたギャラップの世論調査では70%以上のアメリカ人が「幸せ」と「喜び」を感じていると回答、3月末の前回調査から大きく増加している。 

「自由」と「公益」の対決はコロナの土俵から人権問題(人種差別vs.社会正義)に飛び火し、気候変動問題(化石燃料vs.気候正義)にも広がっている。 

新たな次元の「正義」に向けて進化するアメリカが来年以降見られるであろうか。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  台湾の防空識別圏侵入を繰り返す中国軍機

中国軍の航空機が、台湾南西部の空域に一時入り、台湾空軍の警告を受けて台湾の防空識別圏(ADIZ)から離れたと発表されている。

台湾国防部は、「中国軍は状況を全て把握しており、適切に対応した」としている。

中国軍機による台湾のADIZ侵入は6月に入ってから約10回ともなる。

中国本土の台湾海峡に於ける活動も、東シナ海、南シナ海全体の情勢変化の中で活発化している。

 

l  リニアモーターカー時速600キロのテスト走行実施

中国本土製リニアモーターカーが、時速600キロのテスト走行に成功したと見られている。

2015年に日本のJR東海が高速走行試験で記録した時速603キロに迫っており、中国本土は高速の国産リニアの事業化へ向けて、そしてその後は高速鉄道のグローバル展開を意識して、その開発作業を急いでいる。

 

l  香港国家安全維持法施行に伴う内外の動き

米国のポンペイオ国務長官は、香港への米国製の防衛装備品の輸出を停止し、軍事転用可能な技術の輸出についても中国本土と同じ規制をかけると発表した。 

中国による国家安全法制度の導入を受けた対抗措置の一環と見られる。

但し、この点は香港にとっては想定内であり、あまり、影響は大きくないと香港政府当局は見ていると言う点を認識しておきたい。

一方、その香港国家安全維持法(国安法)が中国本土の常務委員会の決定を経て成立した6月30日、香港では民主派団体が今後の社会の行方を危ぶみ、相次ぎ解散を表明した。

更に、レッセフェール、香港の繁栄を支えてきた自由が侵されることになるとの見方は経済界でも強まり、国際経済都市としてのネームバリューにも影響が出よう。

頑なに導入を進めた中国に、米欧などが批判を強めているが、筆者は中国本土国内情勢から、習近平政権が様々な意味で統制を強めないといけないような状況に追い込まれているとも聞いている。

そして、香港でこの「香港国家安全維持法(国安法)」が施行されたことを受けて、日本や英国、ドイツ、フランスなど27カ国は、国安法を非難し、中国本土に法律適用の再検討を求める共同声明を出している。

こうした動きに対して、中国本土政府は、中国政府が香港に設置する出先機関となる「国家安全維持公署」の署長に、かつて広東省で農民の抗議デモに対応した同省共産党委員会秘書長の鄭氏を充てる人事を決定、また、香港政府の国家安全政策を事実上指揮する「国家安全事務顧問」には、香港連絡弁公室主任兼香港マカオ事務弁公室副主任のらく氏を兼任させると発表している。

いずれも香港国家安全維持法(国安法)によって新設されるポストで、香港の直接統治に動いた一つの証とも見られている。

 

(2)韓国/北朝鮮

l  5月の韓国訪問外国人観光客数前年同月比97.9%

韓国観光公社が発表した統計によると、本年5月に韓国を訪れた外国人は前年同月対比97.9%減の3万861人となっている。

国・地域別では、米国からの訪韓客は8,753人で90.9%減り、中国本土からの訪韓客は5,124人で99.0%減少している。

また、日本は413人で99.9%減、台湾は189人で99.8%減となった。

韓国も外国人観光客の減少は顕在化しており、経済的影響は小さくない。

 

l  EV車用バッテリー市場で存在感を増す韓国3

世界の電気自動車(EV)用バッテリー(電池)市場で、LG化学と三星SDI、SKイノベーションの韓国3社が存在感を増していると報告されている。

即ち、本年1~5月のEV用バッテリー市場シェア(使用量ベース)でLG化学は1位を守り、三星SDIとSKイノベーションもそろって順位を上げている。

韓国調査会社のSNEリサーチによると、本年1~5月の世界におけるEV用バッテリーのエネルギー総量は32.5ギガワット時(GWh)で、前年同期対比23.9%減少した。

EVの主要市場である中国本土、米国市場が新型コロナウイルス感染拡大を受けて低迷を抜け出せなかったことが影響したと見られている。

 こうした中、競合国メーカーのバッテリー使用量は減少した一方、韓国3社はそろって増えていると報告されている。

 

[主要経済指標]

1     対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,198.93(前週対比+5.09)

台湾:1米ドル/29.45ニュー台湾ドル(前週対比+0.07)

日本:1米ドル/107.48円(前週対比-0.35)

中国本土:1米ドル/7.0656人民元(前週対比+0.0114)

 

2.       株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,152.41(前週対比+17.76)

台湾(台北加権指数):11,909.16(前週対比+248.49)

日本(日経平均指数):22,306.48(前週対比-205.60)

中国本土(上海B):3,152.813(前週対比+173.262)

 

4. 補助金を使って越境ECサイトを制作しませんか? 

 

中小企業のサービスなど生産性向上のために政府が拠出するIT導入支援事業費補助金の特別枠の利用において申請者が申請時に必要とするIT導入支援事業者の一社として弊社が採択されました。

申請企業が計画する越境ECサイト(海外向けオンラインショッピングサイト等)制作の初期投資分の費用の最大4分の3が助成されます。

弊社の位置づけはこの補助金制度での「C類型-2の乙:非対面型ビジネスモデルへの転換(非対面・遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルに転換するために必要なIT投資を行う)」を支援する事業者です。

弊社の米国パートナーのGriddable社による越境ECサイト作成ツールがITツールとして補助金対象となります。

補助金の対象は初期投資のサイト構築分で、毎月のサーバー・URL費用、その他のいわゆるメンテナンス費用は対象とはなりません。

補助の対象の契約金額の上限は、「賃上げ条件なし」の場合で299万円(内最大224万円が国負担)、「賃上げ条件あり」の場合で449万円(同336万円)です。

中小企業事業者による補助金申請は当該ECサイト制作契約の前に行い、その際に本補助金制度に採択・登録済みのIT導入支援事業者とITツールを用いることが条件となります。

詳細は下記の公募要領と交付申請の手続きをご参照ください。

 

公募要領          https://www.it-hojo.jp/r01/doc/pdf/R1_application_guidelines_second_tokubetsuwaku.pdf 

交付申請の手続き         https://www.it-hojo.jp/r01/doc/pdf/r1_application_manual.pdf 

登録済み弊社ITツールNo.: TL01-0059700 

弊社・Griddable社による越境ECサイトの例: https://hanko-square.com/

 

5.月刊『人事マネジメント』の拙稿第5話 

 

シリーズで掲載させていただいています外国人材の活用と活躍のストーリーの第5弾です。

ご笑覧頂ければ幸いです。

 

6.アメリカ人外交官Ken Reiman氏の著作『Love Both, Keep Both』のオーディオ版がリリース

 

かなり以前のニュースレターで紹介したアメリカ人外交官Ken Reiman氏の著作『Love Both, Keep Both』のオーディオ版がリリースされたとのことで本人から下記の通り案内がありました。 彼はお母さまが日本人、お父様がアメリカ人で日本の国籍もキープしています。 小生はワシントンDC駐在時代に知己を得ました。 

日米という2つのルーツを持つことについて深く思索し、感じ、それを最大限生かそうとしている御仁です。 ご参考まで!

https://www.amazon.com/Love-Both-Keep-Prosperity-Strengthened/dp/B088YFDQ5P/ref=tmm_aud_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr= 

The audiobook version of my book just came out last month.

Might you be wil ling to share with your audience?

Would welcome it if you read or listened to my book and were able to leave a review. I am still searching for a Japanese publisher who would be willing to publish it in Japanese.

The dream lives on!

Best wishes,

Ken