ニュースレター国内版 2019年・冬(233号)
日賑グローバル・ニュースレター国内版(第233号)
1. 株式市場はトランプ政権のセーフティーネットか?
2. ブルーンバーグの立候補の動機
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 外国人材アクセスドットコムのコンテンツのご紹介
5.月刊誌「人事マネジメント」に拙稿が掲載されました
1.株式市場はトランプ政権のセーフティーネットか?
トランプ大統領の自慢のネタの1つは史上最高値を続ける株式市場であった。
民主党大統領候補者争いから離脱したブティジェッジ市長の両親がトランプ支持であることをワシントンポストが伝えているが、その理由が株式運用に裏付けられる401(k)年金の払いが良くなるからで、それ以外のことは無視していると語っている。
高騰する株式市場の最大の恩恵を被るのはやはり富裕層であり、これはトランプ減税でも顕著に表れている(フォーブスによれば、富裕層上位1%が減税総額の9.3%を享受、上位5%で26.5%、上位20%で52.2%となるのに対し、下位20%では3.3%となっている)。
今やトランプのスコアカードとなっている株式市場に悪影響を与えないようにということで新型コロナウィルスに関する国民への情報のリリースを統制している様子をワシントンポストが伝えている。
当初、保健省の役人や専門家、或いはCDC(疾病管理予防センター)の関係者が夫々にメディアに発表していたものをペンス副大統領に集約させることを命じた。
ただ、その結果、ウィルスの専門家で全米アレルギー及び感染症研究所長のアンソニー・S.ファウチ博士に対しホワイトハウスからの許可なしに一切口外無用とのかん口令が敷かれていることが明るみに出るなどトランプ政権の情報コントロールが目立っている。
連銀に対しあからさまに利下げの圧力をかけているのも同じ目的だが、もっとひどいのは科学に基づく活動を行う省庁への圧力である。
EPA(環境庁)のウェブサイトから気候変動に関する情報を削除させたり、ツイッターで勝手にハリケーンに関する見解を出して国立気象局に大混乱を引き起こしたこともある。
強気の株価を支えるために「新型ワクチンの早期開発」について製薬会社と話している姿勢を見せるなどジェスチャーには余念がないが、感染者の数や広がりのスピード、企業・学校などへの影響と対策について事実を歪曲したり隠したりすれば大統領選に向けて大きな痛手となりかねず、本来超党派で一丸となって対応すべきものが政局となるかもしれない。
2. ブルーンバーグの立候補の動機
スーパーチューズデーから民主党大統領候補者予備戦に参戦したマイケル・ブルーンバーグだが、結果は精彩を欠くものとなり、直後に戦線離脱を表明した。
勝負はバイデン副大統領とサンダース上院議員の一騎打ちの様相を呈している。
ただ、ブルーンバーグは「トランプ大統領を打ち負かす」ためには私財をいくらでも投入するつもりで参戦しており、彼自身が民主党大統領候補となれずとも、候補となった人物を財政面で支援することは間違いないとみられている。
そこで彼が今回立候補した背景と動機をまとめたワシントンポストの記事を紹介したい。
ブルーンバーグが保有する資産の価値は1月29日現在で605億ドル(約6.6兆円)で、世界で9番目にリッチな人物である。
アメリカの大統領を目指した人物の中で最も裕福な候補であることは間違いない。
自ら操縦する自家用ジェットやヘリ、バミューダにある豪邸や、ロンドンにある別荘、ニューヨークのセントラルパーク近くの本宅など目に見える資産も目立つが、一方でこれまで100億ドル(1.1兆円)を超える寄付をしてきた篤志家でもある。
元々ソロモンブラザーズのパートナーの一人として勤務していた彼が39歳の1981年に同社から追い出され、その際に手切れ金でもらった1千万ドルを元手につくったのが金融機関に迅速な分析を行うブルーンバーグ・ターミナルという装置であり、今のBloomberg LPである。
その会社も今や年間売り上げは2018年で100億ドルあり、ブルーンバーグはその会社の株式の88%を保有している。
彼はボストン郊外にある勤労者階級の家で子供時代を過ごし、学生ローンでジョンズホプキンス大学を経てハーバードビジネススクールを卒業している。
そこからウォールストリートに移り、前述の経緯で自社を創設し、資産家となり、篤志家として銃規制や環境保護、教育、女性の権利やヘルスケアといったリベラルな活動に積極的に寄付を重ねてきている。
ただ、寄付だけでは社会に与えるインパクトに限界があると感じ、2001年にニューヨーク市長選に立候補する。
それまで紛れもない民主党支持者であった彼が、共和党候補として立候補し、7,400万ドルの私財を投じて当選、そして2期目2005年にはそれを上回る8,500万ドルを支出して再選を果たしている。
彼の2期目の最中の2008年のリーマンショックを受け、彼はニューヨーク市長3選禁止規定を改定させるようにロビーイング活動を行い、2009年に3選を果たしている。
その際には1.1億ドルも私財を投じている。
ニューヨーク市長職を3期務めあげた後はしばらくは篤志家活動と悠々自適の生活を楽しんでいたが2014年には自社のCEOを追い出し、自らが返り咲いた。
そして2016年の大統領選参戦を検討したものの見送ったが、トランプが大統領になったことに危機感を持ち2018年の中間選挙では民主党議員立候補者に1億ドルもの選挙資金を供出している。
さらにはトランプ大統領が気候変動に関するパリ協定離脱を決定すると、米国が協定で約束していた拠出金を私財で賄う誓約も出している。
今年の民主党大統領候補者予備選では、当初ブルーンバーグはバイデン候補を想定し、彼のキャンペーンスタッフにアドバイスを送ったりしていた。
ところが、バイデンのキャンペーンスタッフが彼のアドバイスを無視し、またバイデン自身のディベートのパフォーマンスが悪かったこと、さらにはエリザベス・ワレン候補のヘルスケアの政策などがトランプ再選を防ぐ迫力に欠けることから自ら参戦を決めたという。
ただ、彼の友人が語るには、「彼ほど金持ちでもなければ彼ほど賢くもなく、そして彼ほどの篤志家でもない男がアメリカ合衆国の大統領であることが気に障っている。 それらすべての面で勝る自分が大統領になるべきでない理由があろうか?」とブルーンバーグは感じていたという。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 中国による台湾の武力統一をけん制する米国防省
米国政府・国防総省のチャド・スブラジア国防次官補代理は、中国本土が、武力で台湾を統一することは米国の利益に抵触するとの見解を明確に示している。
これは、米国議会の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」の公聴会での公式見解である。
そして氏はこの公聴会の冒頭に於いて、中国本土は米国政府が直面する最も厳しい安全保障上の課題であるとの認識を示した上で、中国本土の国防予算が1999年から昨年までの間に6倍以上に膨れ上がったなどと指摘、人民解放軍は数十年間に軍事力の近代化を積極的に進め、習近平氏が国家主席に就任して以降は、更にそうした動きが加速しているとコメントしている。
更に、地政学的分野では中華人民共和国建国100年に当たる2049年までに主権と領土を巡る紛争に終止符を打つこと、軍事面では少なくとも米国などの列強と肩を並べる地位を得ることが中国本土政府の最終目標と見られるとも指摘し、この中でも特に、「武力による台湾統一」や「南シナ海における領有権の過剰な主張」などが米国やその同盟国の利益に抵触するとの見方を示している。
l 台湾蔡総統支持率上昇中
台湾の蔡総統に対する支持が高まっている。
新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を防ぐ為、クルーズ船の寄港禁止や中国人の入境禁止など毅然とした対応を進めていることが大きな背景と見られている。
台湾の蔡総統の支持率は、2月24日公表の調査では68・5%となっており、先月の総統再選後の調査よりも11・8ポイントも一気に上昇している。
(2)韓国/北朝鮮
l 紙幣消毒を進める韓国銀行
中国本土の中央銀行と同様、韓国の中央銀行である韓国銀行も、新型コロナウイルス対策として、万一でも紙幣に新型コロナウイルスが付着して感染することがないように、各金融機関から韓国銀行に入ってくる貨幣を高温消毒後、2週間金庫で保管することにしたと発表している。
また、大グ市や慶尚北道など新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な地域では主に新券を流通させることにしたとも発表している。
l 保守系から政局に利用されつつある大統領のコロナウィルス対応
韓国では保守系メディアを中心に、韓国国内で不足しているマスクを最近まで中国本土へ大量に輸出していたことや、中国本土からの入国を厳しく制限していないことを問題視する空気が広がっている。
こうした中、大統領府がサイト上で受け付ける国民請願では、「中国人の入国禁止」
に76万人が賛同するという状況も見られている。
更に、こうした韓国政府の対応に関して、文在寅大統領の弾劾を求める請願活動も始まっており、「韓国の大統領でなく中国本土の大統領のようだ!!」
との声も出ている。
弾劾にはすでに約70万人が賛同しているとも見られている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,213.38(前週対比-2.53)
台湾:1米ドル/30.27ニュー台湾ドル(前週対比+0.16)
日本:1米ドル/109.03円(前週対比+2.55)
中国本土:1米ドル/7.0038人民元(前週対比+0.0249)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):1,987.01(前週対比-175.83)
台湾(台北加権指数):11,292.17(前週対比-394.18)
日本(日経平均指数):21,142.96(前週対比-2,243.78)
中国本土(上海B):2,991.329(前週対比-48.340)
4.外国人材アクセスドットコムのコンテンツのご紹介
新たに外国人材アクセスドットコムに掲載したコンテンツを下記リンクにてご覧いただけます。
5.月刊誌「人事マネジメント」に拙稿が掲載されました
人事関連の月刊専門誌「人事マネジメント」の3月号に拙稿『外国籍社員の採用と定着 1.今なぜ外国人材か?-日本で活躍する外国人材の現状と実態』が掲載されております。 連載で8月まで続きます。 予定されているサブタイトルは以下の通りです。
1.今なぜ外国人材か?-日本で活躍する外国人材の現状と実態(今月)
2.ジャパンドリーム -なぜ外国人材は日本に来るのか
3.外国人材の紹介―採用・定着支援―研修の流れ/事例紹介その1
4.外国人材の紹介―採用・定着支援―研修の流れ/事例紹介その2
5.外国人材の紹介―採用・定着支援―研修の流れ/事例紹介その3
6.海外展開と外国人材―どう育成し活用すべきか
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