ニュースレター国内版 2021年・冬(278号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第278号)

 

1. 出口の見えないインフレ -延焼を続ける40年来の米国の物価高

2. 給電ステーション50万か所設置に向け動き出すバイデン政権

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

4. 寺島実郎氏メディア出演情報

 

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1.出口の見えないインフレ -延焼を続ける40年来の米国の物価高

 

11月に労働統計局から発表された最新の物価上昇率は前年同月比6.8%とおよそ40年来の最高値を記録した。過去数か月間、FRBとホワイトハウスは昨今の物価高騰を、パンデミックによる一時的なものであって、いずれ元に戻るという予想を示していた。ところが米国の物価の実態は、未だ下がる兆候を示していない連銀のパウェル議長も最近の記者会見で、「物価高騰がしつこく続く状況下、インフレが長期的に継続するリスクに備える必要がある」と語っている。政策責任者は当初物価高はホテル、エアライン及び自動車産業に限られているとしたが、連邦政府のデータは、より一層広い分野で値上がりが起こっていることを示しており、住宅や食料のインフレが推進力となり、医療、家具及びアパレル分野も上昇している。

 

さらには高騰する住宅価格と賃料がパンデミック後の物価高を引っ張る懸念をエコノミストは指摘している。住宅を初めて購入する人々にとってはその敷居がかなり高く、また都市部に賃貸で済む人々は高騰する賃料を払い続けられるか不安に陥っている。これらに加えてエネルギーコストの上昇がある。エネルギーコスト増はほぼすべての商品価格を押し上げる。食料品店では、乳製品、果物、野菜、パン類及び肉類の値上げが見られるが、特に牛肉、豚肉、鶏肉、魚及び卵の値上げが顕著となっている。ホワイトハウスは食肉大手が価格高騰の責任を負うべきと指摘しているが、業界側は食肉の輸送や梱包のコストが他の商品と同様、上昇していることが原因であると反論している。 

 

一方、新車と中古車の販売価格はパンデミックにおいて、アメリカのサプライチェーンの問題と、それに起因する価格上昇の一種のリトマス試験紙となっていた。その中で、中古車とトラックが今年のインフレの原動力であったと言われている。車用の半導体サプライチェーンの問題から半導体が不足し、新車の供給が遅れる分、中古車のニーズが高まる中、その下取りが減り、中古車価格が高騰するという悪循環が続いている。バイデン大統領は就任後、3月にコロナ救済法を議会通過させ、幸先の良いスタートを切ったが、8月の米軍のアフガン撤退後の読みを誤り、支持率を大きく下げ始めた。

 

そして石油価格高騰に伴うガソリン価格の上昇に対し、連邦政府は友好国との協調による石油備蓄の取り崩しを決め、OPECの石油増産を導いたものの、それだけでは既に焼け石に水のようにインフレの火が方々に延焼している状況にある。従い、米国民の不満はこの物価高に集中している。バイデン政権は今後、ケンタッキー州をはじめとした竜巻被害の地域の復興の道筋を示し、再燃するコロナ感染増を抑え込みつつ、サプライチェーンの問題を解消し、需給バランスを取り戻すことが求められる。 

 

一方、例の1.75兆ドルもの社会保障・気候変動投資を伴うBuild Back BetterReconciliation Bill)は未だ民主党内で止まっている。これを法制化し、先に法制化されたインフラ投資法と共に国内に投資していくことが政権の最大のカードとなるが、新年に向けてどのようにこれらのカードを見せ、或いはプレイに生かして米国社会をリードしていくのか、そして米国民は11月の中間選挙でどのような判断を示すのか注目される。

 

2.給電ステーション50万か所設置に向け動き出すバイデン政権

 

バイデン政権念願の1つのインフラ投資法成立に基づき、ホワイトハウスは電気自動車(EV)の給電インフラ整備の方針を今週公けにした。まず予算執行などにおいて行政の縦割り問題を避けるべく、Joint Office of Energy and Transportationという運輸省とエネルギー省の統合組織を設け、EV化をスムースに進めるためのインフラ整備のワンストップ窓口とした。バイデン政権としてはまずは50万か所のEV給電ステーションを設ける具体的な整備計画をつくっている。 

 

その際に、州政府や地元自治体、製造企業、環境と人権団体等と話し合って利害関係を調整している。また運輸省とエネルギー省はEVに関する諮問委員会を協働で立ち上げるべく、来年3月までに委員の選考を行う予定である。問題として意識されているのはEVのバッテリーなどに用いられる重要物質のサプライチェーンへの懸念である。運輸省は来年2月までに給電ステーション網を全国の高速道路に沿って戦略的に展開するための州と市に対するガイダンスを発表することになっている。

 

そのガイダンスは、地方の田舎町等、商業判断では展開上不利になりえる地域に政府主導でステーションを設けると共に、一方で、民間投資を促す媒介を果たすことを狙う。また同省は来年5月中旬までにEV給電ステーションの標準仕様を発行する。インフラ投資法でEV関連インフラに予算化される金額の内、50億ドルは州政府が上述の給電ステーション網を整備するために用いられるまた25億ドルは競争入札に伴う助成金で、給電ステーションを設けることで地方での大気汚染の改善や地域ごとの不平等の改善に資する提案に供与される。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  民主主義サミットでの台湾のプレゼンス

台湾の林(フレディ・リム)立法委員(国会議員)は、米国のバイデン政権が開催した「民主主義サミット」を前に開かれた関連会議にオンラインで出席して、権威主義に対して台湾がどのように対抗してきたかなどについてスピーチ、台湾こそが国際社会で価値観を共有できる国であることを示した。

 

l  中国の工業部門のグリーン開発5か年計画公表

中国政府・工業情報化部は、工業部門のグリーン開発に向けた5カ年計画を公表した。基本方針として、二酸化炭素(CO2)と汚染物質の排出量を減らし、新興産業を育成するとしている。中国はCO2排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指している。鉄鋼・セメント・アルミなどの産業の生産能力を厳格に管理する方針も示している。今後、鉄鋼・セメント・化学などの産業で水素エネルギー、バイオ燃料、ごみ固形燃料の利用を奨励するほか、クリーンエネルギー消費を増やすとの計画がどれだけ具現化されるのか注目される。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  米韓半導体パートナーシップ対話開催

韓国政府・産業通商資源部は、米国商務省などと第1回の、「半導体パートナーシップ対話」をテレビ会議形式で開催している。

米韓双方は供給網(サプライチェーン)ワーキンググループを設置し、半導体の供給網強化策を議論することで一致している。

 

l  若者の自殺率が高まる韓国

韓国の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は23.5人となり、所謂精神国が加盟していると言われる国際機関であるところの「経済協力開発機構(OECD)」の加盟38カ国・地域の中で、不名誉な1位を記録した。特に、10代と20代の自殺が大幅に増えたとも奉告されている。韓国政府・統計庁が9月28日に発表した「2020年死亡原因統計結果」によると、昨年韓国で自殺による死者数は1万3,195人となっており、前年に比べて4.4%減少はしている。

 

しかし、上述したように、人口10万人当たりの自殺者を意味する年齢標準化自殺死亡率は23.5人となっており、OECD加盟38カ国・地域の平均の10.9人の2倍を超えている。また、加盟国・地域のうち、自殺率が20人台の国は、韓国を除けばリトアニアの21.6人のみとなっている。またこれは、昨年、韓国国内では一日平均36人が自殺したことを意味する。自殺は昨年の韓国人の死因のうち4.3%で、全体では5位だが、年齢別に見ると、10代、20代、30代の死因の中では死因1位となっている。また、40代以上の自殺率は下がったが、10~30代の自殺率は高まっているとも奉告されている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,181.41(前週対比-0.18)

台湾:1米ドル/27.71ニュー台湾ドル(前週対比-0.01)

日本:1米ドル/113.74円(前週対比-0.41)

中国本土:1米ドル/6.3693人民元(前週対比+0.0012)

 

2.       株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,010.23(前週対比+41.90)

台湾(台北加権指数):17,826.26(前週対比+129.12)

日本(日経平均指数):28,437.77(前週対比+408.20)

中国本土(上海B):3,666.348(前週対比+58.916) 

 

4.寺島実郎氏メディア出演情報

 

寺島文庫から寺島実郎氏のメディア出演情報を入手しましたので下記の通り共有させていただきます。

 

TOKYO MX1「寺島実郎の世界を知る力」

【第3日曜日】第15回放送:1219日(日)午前11時~

番組前半では、「ロンドン・エコノミスト誌 新年展望」をテーマに、2022年へ持つべき視界として注目すべきことを取り上げながら、21世紀の20年間における日本経済の実体を踏まえ、寺島がさらに深掘りをして、日本産業のとるべき進路について考えます。後半では、「米国の深層理解」の第2弾として「日米関係の深層」に迫ります。万延元年遣米使節(小栗上野介、勝海舟、福澤諭吉ら)や秋山真之など、19世紀後半に米国の地を踏んだ日本人の人間ストーリーに注目しながら、太平洋国家となったアメリカの歩みについて、踏み込みます。

 

【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第9回放送:1226日(日)午前11時~

<ゲスト>:渡部恒雄氏(笹川平和財団 上席研究員)、柯隆氏(東京財団政策研究所 主席研究員)

 

本年7月に続き、「日米中トライアングル」をテーマとした鼎談の第2弾をお送りいたします。

前回の放送から5ヵ月が経ち、中国・米国の国内政治・経済で起きた構造的な変化などに着目しながら

2021年の総括をした上で、今後の米中関係の展望と注目すべきポイントや

日本の岸田新政権がとるべき立ち位置等について、鼎談を通じて深く掘り下げております。

 

是非、ご視聴頂けましたらと存じます。

 

第3日曜日「世界を知る力」(第1回~第14回までの放送)・

第4日曜日「世界を知る力-対談篇-」(第1回~第8回放送)につきまして、

YouTubeでの再生回数が合計234万回以上となりました。

日本国内にとどまらず、海外の邦人含め、「本当のことを知りたい」、

「本物の情報に触れたい」と強く思う方々に、熱心にご視聴頂いていることを実感しております。

 

引き続き、皆様のネットワークご関係者へ、お知らせ頂ければ幸いに存じます。