ニュースレター国内版 2021年・秋(276号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第276号)
1. バイデン政権としてのCOP26の総括
2. アフガン難民をスムースに受け入れる米国の地域社会
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 日米オンライン交流in 世田谷 参加者募集
5. 寺島実郎氏メディア出演情報のこと

 

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1.バイデン政権としてのCOP26の総括
物価高など内政問題で支持率を下げるバイデン大統領にとって、11月1日から13日まで英国グラスゴーで行われた気候変動サミットCOP26で米国が顕著なリー
ダーシップを発揮することは、大型財政出動のインフラ整備法案や社会保障・気候変動投資のBuild Back Betterの法案議会通過と共に重要な課題で
あった。 
バイデン政権にとってのCOP26に対する当初の目論見と結果総括についてまとめてみた。
a. トランプ政権とのプレゼンスの違いを見せつける ⇒自らを含め主要閣僚全員を含め12人もの閣僚メンバーを連れて参加。
b. 削減誓約のリーダーシップを取る ⇒ メタンガス排出削減合意取り付けに成功。
同時に、バイデン大統領は、2050年までの脱炭素に向けた長期戦略報告書を発表、EVやヒートポンプといった新たな技術や、送配電網といった国のインフラ整
備により、2030年までにGHG排出を2005年比で50乃至52%削減し、2050年までに脱炭素経済を実現する足場固めを目指した。
特に2030年までの削減目標を2030 Nationally Determined Contribution (NDC)と名付け、これを着実に実現する
ことで2050年のネットゼロ実現の覚悟と実力を世界に示すこととしている。
米国はまた、洋上風力発電をもっと大胆に拡大することを他国に呼び掛けた。
尚、米政府は英国やカナダがリードした「新車排出ゼロ」合意には参加しなかったが、日、英、独など約20か国と共に、EV等のゼロエミッション車の普
及に向け、充電インフラの普及や、走行性能の統一基準の検討、中古市場整備、サプライチェーン強化などのための実行計画を取りまとめている。
また、米国のピート・ブティジェッジ運輸長官は、2050年までに航空部門の排出をネットゼロとする目標を設定したと発表した。
c. アダプテーションのイニシアチブをとる ⇒ President’s Emergency Plan for Adaptation and
Resilience (PREPARE)
COP26のオープニングに合わせ、バイデン大統領は、2030年までにアメリカの温室効果ガスを50乃至52%削減し、2050年までにネットゼロを実現させ
ることと関連して、緊急プランを発表、2024年までに毎年30億ドルを米政府として供出し、世界中で気候変動の影響に最も脆弱な地域の悪影響を抑制する適応対
策(アダプテーション)のための融資を行うことを発表。
d. ファイナンス誘導のイニシアチブを取る ⇒ Forest Finance Risk Consortiumを立ち上げた。
森林監視と気候変動融資のディスクロージャーにおいて金融機関と専門家を一堂に会し、投資ポートフォリオにおける森林関連の排出へのエクスポージャーを評価し開
示するもの。
Glasgow Financial Alliance for Net Zero: 世界45か国の450以上の銀行、保険会社、資産管理会社によるアライア
ンスは、ネットゼロ経済への転換を支援するために今後30年間において最大100兆ドルもの融資枠を準備することに合意。
米国は、また途上国におけるクリーンエネルギーとサステナブルなインフラの規模を増すため投資適格な債券を発行したり、その他のファイナンスを起こす新たなキャ
ピタルマーケットメカニズムを支援すると発表した。
e. 途上国支援のイニシアチブをとる ⇒ 米国やカナダを含む25か国が2022年末までに排出削減対策が無い石炭や石油などの化石燃料産業への国際的な支
援を停止し、クリーンエネルギーへの意向を強化することで合意。
尚、バイデン大統領の得意の外交で習近平国家主席との直談判による削減リーダーシップを示す場は無かったが、ケリー気候問題担当大統領特使は、中国の解振華気候
変動事務特使との間で米中共同宣言をまとめ上げ、中国によるメタンガス削減の行動計画策定や石炭消費量の段階的削減への取り組みなどの合意を取り付けたことは成
果といえる。
今回のCOP26のバイデン政権としての評価として、ワシントンポストの報道では、交渉に参加した米政府高官の話として、「石炭火力の合意文書の内容が「廃
止」から「削減」に変わったことは驚きと怒りを感じたが、少なくとも中国は将来の「廃止」表現に合意した点は、ケリー特使の個別交渉の成果」とした。
そして、「今後、同様の個別交渉を石炭火力が主体の南アフリカ、インドネシア、ベトナムとも行っていく」という。
最後に、バイデン政権としてのCOP26の総括評価として、ホワイトハウスは「パリ協定実現への道を進む新たなルールができ、各国の誓約を行動に導く透明性をも
たらし、支援を必要とする国々への資金を倍増する道筋もできた。ただ、それでも十分ではない」 、「米国は科学が導く、進むべきステージに到達すべく国内はもとよ
り海外においてもより一層の進捗を求めてプッシュを続ける」と公式に告げ、過去4年間の停滞から一気に世界のリーダー役に復帰できていると総括している。
2.アフガン難民をスムースに受け入れる米国の地域社会
米軍のアフガニスタン撤退と、その後のタリバンによるアフガン政府軍の駆逐、国権掌握により生じた難民の多くが米軍と旧アフガン政府に関わる仕事に携わってきた
ものであり、タリバンの報復を恐れてアメリカへの移住を希望、その多くが米軍輸送機でアメリカに移っている。
米国内の様々な地域に落ち着きつつあるアフガン難民家族が、夫々の地域住民組織から英語のレッスンや家族の生活支援、そして母国で受けたトラウマを癒すためのカ
ウンセリングなどを受ける様子をワシントンポストが報じている。 
今現在でも約5万3千人もの難民家族が米国内の8つもの軍用居住施設にて生活しており、その約半分は18歳以下の子供たちである。 
すでにそこで英語などを学習しているが、きちんとした教育は、この軍事施設を出て難民受け入れ先の市町村に移ってからとなる。 
来月以降の数か月で軍施設に居る多くの難民家族が全米に移っていくに際し、受け入れを認めている市町村の中で親族や友人がいる地域に近いところ、或いは就職のし
やすいところを選ぶという。 
入校が予定されているバージニア州やテキサス州、カリフォルニア州の学校関係者は、米国に公立学校が創設されてから今日まで、常に国外からやってくる子供たち
を受け入れ、教育を提供してきた自信と使命を語る。
さらには、学校運営のための予算も、英語学習を必要とする子供、ある特定な教育ニーズのある子供、低所得の家族の子供といった立場の夫々の数に応じてのメッシュ
の細かい追加予算を市町村が手配している。 
米国最高裁は移民であることを以て無償の公的教育を受ける権利を否定されてはならないとの判決をかなり以前に示している。 
そして地域住民が彼ら難民を温かく受け入れ、多くのボランティアが生活立ち上げに必要な寄付や家具などの現物提供等を送っている様子も伝えている。 
移民や難民を地域として受け入れ、子供たちに教育を施していくハードとソフトのインフラがアメリカにはしっかり息づいている様子が伝わってくる。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1)  中国
*  台湾の今年の経済成長率6.1%に上方修正
台湾経済研究院は、輸出と投資に牽引される形で、2021年の台湾の経済成長率を6.1%になると上方修正した。
これは7月の予測から0.7ポイントの増加であり、他機関の見通しの主流となっている6.0%成長よりも高い水準となっており、台湾の主要な国内シンクタンク
の中で最も楽観的な見通しが示された。
尚、台湾経済研究院は、2022年の台湾の経済成長率は4.1%と予測されるとの見通しも示している。
*  ドイツフリゲート艦の日本寄港をけん制する中国
中国政府・外交部は、ドイツ海軍のフリゲート艦が日本に寄港したことに関して、
「関係国が防衛分野を含む協力を発展させるのは、地域の国々に於ける相互信頼の増進や、地域の平和、安定、発展の促進の為になるべきであり、その逆であってはな
らない」
と批判のコメントを発表している。
*  米中軍事関係について
ロイター通信は、10月に撮影された画像を基にして、新疆ウイグル自治区・タクラマカン砂漠にある米国の空母と2隻の誘導ミサイル駆逐艦のような形をした、現寸
模型が映し出されているとの報道を行っている。
この画像は、米国の宇宙技術会社MaxarTechnologiesによって撮影されたものとされ、米国内ではこの写真を基にして、こうした現寸模型の構造
物は、弾道ミサイルのテストの的として使用されていると考えられている場所にあるとのコメントも付記されている。
(2) 韓国/北朝鮮
*  中国の尿素水輸出制限の影響を受ける韓国
韓国では極端な不足が指摘されている尿素水に関して、韓国政府・国防部によると、オーストラリアに緊急派遣された韓国空軍の多目的空中給油輸送機である「シグナ
ス」、オーストラリアから尿素水を輸送した。
今回の尿素水は、韓国主要企業の一つである現代グロービスのオーストラリア法人が2019年から取り引きしているオーストラリア最大の尿素水生産企業を通じて調
達したものと報道されている。
韓国政府・産業資源部と大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、中国による尿素水輸出制限に起因する尿素水不足問題が発生した直後の11月3日、海外からの尿
素・尿素水調達を模索していたが、現代グロービスのオーストラリア法人が現地の尿素水生産企業と取引があることを把握し、「官民合作」によって今回の契約と輸
入を実現させたと報告されている。
*  大統領選でリードを続けるユン・ソギョル前検事総長
韓国の世論調査会社4社が11月11日に発表した来年3月の大統領選候補の支持率を見ると、保守系最大野党「国民の力」のユン・ソギョル前検事総長が39%とな
り、革新系与党・「共に民主党」の李在明前京畿道知事の32%を7ポイント上回っている。
前回調査の11月第1週に比べて、ユン氏と李氏の支持率の差は5ポイントから7ポイントに拡大しているが、国民の力の公認候補に選出されたユン氏が、同党内予備
選をしっかりと戦い、その効果が支持率の上昇に繋がったと韓国国内では分析されている。
表向きには5日に最終候補に確定した最大野党「国民の力」のユン・ソギョル候補の一時的な人気上昇現象であると説明されているが、李候補の支持が伸びる前向き
な要因も今は見当たらない。
[主要経済指標]
1.    為替市場動向
韓国:1米ドル/1,178.82(前週対比+2.19)
台湾:1米ドル/27.78ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)
日本:1米ドル/113.97円(前週対比-0.57)
中国本土:1米ドル/6.3840人民元(前週対比+0.0140)
2.      株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,968.80(前週対比-0.47)
台湾(台北加権指数):17,518.13(前週対比+221.23)
日本(日経平均指数):29,609.97(前週対比-1.60)
中国本土(上海B):3,539.100(前週対比+47.532)
4.日米オンライン交流in 世田谷 参加者募集
わたくしが理事を務めております一般社団法人日本国際教育協会のイベントのご案内を添付の通りご紹介します。 
世田谷区と米国アーリントンの姉妹都市的関係で行われていた中高生の交流の輪を、日米草の根交流に興味のある大学生や一般の老若男女に広げようとしております。
ご興味のある方、或いはご子息、ご息女でご興味ありそうなご家庭では是非ご応募頂ければ幸いです。
5.寺島実郎氏メディア出演情報のこと
寺島文庫から掲題情報を下記の通り入手いたしましたので共有させていただきます。
●TOKYO MX1「寺島実郎の世界を知る力」
【第3日曜日】第14回放送:11月21日(日)午前11時~
番組前半では、「2021年総選挙の結果と日本の針路」をテーマに、
衆院選の結果を通じてあぶり出された与野党の現状を分析し、総選挙の総括をいたします。
その上で、日本における金融・経済政策の抱えている構造的な問題や岸田政権が取り組むべき課題などに、寺島が迫ります。
後半では、「米国史の深層底流としてのオランダ」をテーマに、
寺島独自の切り口で、現代の米国を理解する上で重要な「17世紀オランダ」に着目し、
米国における宗教分布を分析しながら、米国に埋め込まれたオランダのDNAについて、広く、深い視座で踏み込みます。
【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第8回放送:11月28日(日)午前11時~
<ゲスト>:下斗米伸夫氏(法政大学 名誉教授、神奈川大学 特別招聘教授)、宮田律氏(現代イスラム研究センター 理事長)
今回は「ユーラシア地政学の変化-ロシア、そして中東」をテーマに、
ロシアがご専門の下斗米氏、中東がご専門の宮田氏との鼎談をお送りいたします。
ソ連崩壊から30年が経ち、2000年ににプーチン氏が世界の舞台に登場して以降、
「正教大国」として存在感を徐々に高めつつあるロシアの現在と展望について、
そして、9.11から20年が経ち、かつて世界の警察と言われた米国の影響力の低下によって
引き起こされている中東地域の構造変化について、
欧州・中国・日本などユーラシア大陸全体を俯瞰し、エネルギー地政学や米国との力学などの視座も交えながら、
鼎談を通じて深く掘り下げております。
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◆◇AOKIグループ・快活CLUB様と寺島文庫が提携◇◆
『学びの再出発』
~寺島文庫のオリジナル動画が全国約500店舗でご視聴いただけます~
【月1回更新】 今月分は18日(木)より配信!
寺島が語る「なぜ今『学びの出発』が必要なのか」では、
「3.11から10年~思考の再起動~」をテーマに、
2011年8月に発刊した『世界を知る力 日本創生編』(PHP新書)に触れながら、
震災復興の10年間であぶりだされた日本の課題に踏み込みます。
また、昨年からのコロナ禍により明らかになった、
日本人が喪失した心の基軸を指摘し、今後の社会を生き抜くためのヒントを語ります。
ぜひ快活クラブの店舗にてご視聴頂けましたらと存じます。
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