ニュースレター国内版 2020年・秋(247号)
日賑グローバル・ニュースレター国内版(第247号)
1. 再選どころか3選を語るトランプ大統領
2. 米国大統領選挙における白人女性票とフロリダ票という着目点
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
1.再選どころか3選を語るトランプ大統領
去る土曜日にネバダ州ミンデンで行われたキャンペーンスピーチでトランプ大統領は支持者に対し、「再選勝利の暁には、その後の交渉を通じ、もう4年間大統領職を務める資格を獲得できるかもしれない」と3期目への意欲を示した。
憲法修正第22項は大統領の人気を最大2期までと定めている。
昨年4月の傷病兵プロジェクトでのイベントにおいて大統領は聴衆に対し、「自分はオーバルオフィスに少なくとも10年乃至14年は居続けるかもしれない」と語っている。
さらには昨年6月に「私の支持者たちはできるだけ長く大統領で居てくれと言われている」とツイートしている。
2018年の共和党支持者向けのスピーチでは、中国の習近平国家主席が終身国家主席となったことについて「彼がそうできたことは素晴らしい。多分、我々もいずれそれを検討しなければならなくなるであろう」とジョークのように語ったというが、本音とも受け取られかねない行状が続く。
UAEに続きバーレーンがイスラエルとの国交を樹立することを推進できたことは間違いなくトランプ政権の大きな得点といえよう。
また、中国に対する厳しい姿勢も超党派で支持を得ている。
さらには失業率も一応8%台に下がっているという改善状況も多少なりとトランプ大統領に余裕をもたらしているのであろう。
確かに保守系のメディアでは、バイデンが副大統領であったオバマ政権においては中東リスクマネジメントはイラン核合意実現を以て任務達成とし、中東和平もイスラエル―パレスチナの現状維持を超える発想はなく、今回の外堀からの中東和平のアプローチは考えつかなかったであろうと、トランプ政権のアプローチを称えている。
肝心の大統領候補者討論会が9月29日に第一回目を迎えるが、大統領の鼻息の強さにバイデン候補がどう対応するか注目される。
2. 米国大統領選挙における白人女性票とフロリダ票という着目点
2016年の前回の大統領選ではトランプ大統領は白人女性票をものにしたと言われている。
ヒラリー・クリントン候補に比べ事前調査で2%ポイント、出口調査では場所によっては12%ポイントも差をつけていた。
白人男性内のトランプ岩盤支持層は別として、白人女性が前回同様の票をもたらしてくれることがトランプ再選に必須とトランプ陣営も捉えている。
ところが先月行われたワシントンポストとABCニュースの共同世論調査ではこの白人女性票はバイデン候補との間で2分されている状況にある。
学士以上の学歴を持つ白人女性は2016年でも過半数がクリントン支持であったが、最近の調査ではそれ以上の割合でバイデン支持と回答している。
一方、学士以上の学歴を持たない白人女性は、前回は23%ポイントから33%ポイントの差でトランプに投票したが、上記の世論調査ではその差が16%ポイントにまで縮まってきている。
そのまま投票行動に反映されるかどうかは別として、前回トランプに投票した白人女性の中で今回はそうしないと思っている人々の理由の多くにCOVID-19対応のまずさ、分断を煽っていること、そしてヒラリーは今一つ信じられなかったがバイデンは信じられるといったものが挙げられている。
白人女性の投票行動と共に注目されるのがスイングステーツの動向だが、その中でも注目が高まっているのがフロリダ州である。
代表選挙人数29を有し、かつてフロリダを落として大統領になったのは1924年のクーリッジしかいないほど同州を押さえる重要性が高いと言われている。
ここに別荘を持つトランプ大統領が「地元」と呼び、大変な力を入れているが、現状の調査ではバイデン候補と支持がほぼ拮抗している。
フロリダ州は9月24日に期前投票が始まりその開票結果報告が11月3日の投票日当日かそれ以前になされることもあって、その推移が全国的にも影響を与えかねないことからトランプ大統領自身、身銭を切ってテレビ広告などを強化しようとしている。
これに対し、民主党大統領候補選に参戦したものの途中リタイアし、その後バイデン支持に回り、かつバイデンの勝利のためには「いくらでも金を出す」と語っていたマイケル・ブルーンバーグ氏が1億ドル以上もの資金をフロリダでの宣伝に集中的に投下すると発表した。
ヒラリークリントンよりも白人とシニア層に受けの良いバイデンだが、ラテン系の有権者の支持が低いことからフロリダでの広告はスペイン語でも流されるという。
白人女性票とフロリダ票の動向は夫々コロナ、経済、人権、自然災害(ハリケーン)、外交などでの今後のトランプ政権の対応でも変わってこようが、これから始まる期前投票にどのように絡んでくるか注目されよう。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 米台FTA?
米国上院議員であり、共和党のスコット議員は、ライトハイザー米国通商代表に対して書簡を送り、「台湾と米国の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始するように」
と呼び掛けている。
l 中国本土の戦闘機にスクランブルをかける台湾軍機
台湾政府・国防部は、9月9日午前、戦闘機スホイ30、「J10」など様々な機種の中国本土軍機が多数、台湾南西の防空識別圏に入ったと発表している。
そして、台湾軍機が緊急発進し、こうした中国本土軍機の監視の任務に就いたとも発表している。
このように、台湾海峡に於いて、中国本土の人民解放軍が動きを活発化させているのを受け、台湾の蔡英文総統は、
「台湾は、国土の主権は一歩も譲らない。民主主義と自由を固く守り引き下がらない」とする姿勢を改めて強調している。
米国を含む主要国の台湾サポートも強まり、蔡政権は明確な姿勢を取りやすい状況にある。
l チェコへの報復を開始する中国
チェコの上院議長らが国交のない台湾を訪問したことに関連し、チェコの老舗ピアノメーカーである「ペトロフ」は中国からの注文が取り消されたと発表している。
チェコ議長らの訪台を受け、中国は、王毅国務委員兼外相が、「チェコには必ず大きな代価を払わせる」などと、訪台への報復の可能性を示唆していたことから出ている観測報道であると見られる。
l オーストラリアを非難する中国政府
中国政府はオーストラリアの諜報官が中国からのメディア報道記者の住居を捜索したことを明らかにした。
中国外交部、新華社通信と中国・中央テレビを含む国営の報道機関の四人のジャーナリストの家宅捜索であったとコメントしている。
そして、四人はオーストラリアのセキュリティインテリジェンスオーガニゼーションによって尋問され、ラップトップと携帯電話が押収されたと発表している。
更に、中国外交部は、「オーストラリア政府は今回の措置に関する合理的な説明を中国政府に対してしていない」ともコメントしている。
そして、中国政府は、オーストラリア政府に対して、「こうした露骨な、非合理的な行動を止めるべきである。オーストラリアの中国人への嫌がらせと抑圧は極めて遺憾である」
とコメントしている。
(2)韓国/北朝鮮
l 造船受注2か月連続世界一位
造船・海運市況調査分析機関である英国のクラークソン・リサーチが発表した資料によると、本年8月に世界で発注された船舶86万CGT(標準貨物船換算トン数)・36隻のうち、韓国の造船所が73%に当たる63万CGT・23隻を受注し、2カ月連続で受注量世界1位を記録している。
主力船種の液化天然ガス(LNG)運搬船や超大型エタン運搬船(VLEC)の発注再開による結果と見られている。
l 米国の対中制裁の影響を受ける三星電子
米中対立、就中、米中情報覇権争いが激化する中、ソフトの情報覇権争いの中核となる5G開発に関して、中国の華為(ファーウェイ)に対する米国の圧力は更に強まる可能性がある。
そして、そのファーウェイとの連携の可能性もあると見られる韓国の三星電子の動向も注目されている。
そして、ファーウェイへの半導体供給を封じる米国の追加制裁発効が迫る中、三星電子とSKハイニックスは、米国のファーウェイに対する制裁が適用されれば、両社もファーウェイへの半導体メモリの供給を停止する可能性を示唆した。
米国としては、ファーウェイに対する、迂回輸出、迂回取引も含めて制裁の網をかけてくる可能性は高く、三星電子の対応の幅は狭められている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,186.55(前週対比+3.16)
台湾:1米ドル/29.28ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)
日本:1米ドル/106.15円(前週対比+0.20)
中国本土:1米ドル/6.8330人民元(前週対比+0.0078)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,396.69(前週対比+28.44)
台湾(台北加権指数):12,675.95(前週対比+38.00)
日本(日経平均指数):23,406.49(前週対比+201.06)
中国本土(上海B):3,260.346(前週対比-95.021)