ニュースレター国内版 2022年・夏(299号)
日賑グローバル・ニュースレター国内版(第300号)
1. 米国選挙結果の行方
2. 急遽COP27に参加したバイデン大統領の思惑
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 拙著 『外国人材が中小企業を救う』発売中
ニュースレター第300号のこと
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1.米国選挙結果の行方
今朝現在の日本の報道では、上院で与党民主党が48議席、野党共和党が49議席で残り3議席が集計中(内、ジョージア州の1議席は来月6日に決選投票)となっている。一方、現地時間昨日のワシントンポストの記事では残り2議席のアリゾナ州とネバダ州のいずれにおいても民主党が優勢ではないかとの観測記事を出していた。具体的にはアリゾナ州では民主党の現職のマーク・ケリー上院議員が対抗馬のブレイク・マスターズ上院議員との戦いで僅差ながらもその差を広げつつある。
同様にネバダ州でも民主党現職のキャサリン・コルテツ・マスト上院議員が残りの未集計分の開票においてわずかながら対抗馬のアダム・ラクサルト氏をリードしつつあるという。仮にいずれかの候補が最終的に敗れても、ジョージア州では民主党のラファエル・ワーノック氏の得票率が49.4%、共和党のハーシェル・ウォーカー氏の48.5%を上回っており、リバタリアン党のオリバー・チェース氏の得票率2.0%がワーノック氏に流れる可能性が高いので、現状の50議席確保の可能性が高い。即ち上院議長のカマラ・ハリス副大統領の一票を加えて与党維持が可能となる。
一方、下院では共和党が議席数を伸ばしており、同じく今朝の日本の報道では与党民主党191議席、野党共和党が211議席で、共和党はあと7議席で与党奪還となる。ただ、同じくワシントンポストによれば未開票の多くが西部のアリゾナ、カリフォルニア、ネバダ、オレゴンおよびワシントンの民主党の強い5州であり、現時点で少なくとも10+αの議席数が民主党に加わる勢いという。それでも共和党が有利な情勢は変わりないが、選挙翌日の水曜日時点の出口調査の段階での予想は共和党が225議席を奪取すると見られていたものの最新の見通しでは220議席まで減り、与党奪還ぎりぎりの線にまで落ちてきている。
その理由は、郵便投票など、時間をかけて開票されている投票が約4分の3の割合で民主党候補に投じられているためという。そして最新の予想には±7議席分の誤差があるという。ということは民主党が与党を死守する可能性が残っていることをワシントンポストは伝えている。
2.急遽COP27に参加したバイデン大統領の思惑
バイデン大統領は昨日エジプトで開催されている国連気候変動サミットCOP27でスピーチを行い、米国として宣言している削減目標達成を保証し、米国が培った気候変動対応の技術を世界に共有すると宣言、「米国は行動している。誰もが行動すべきだ」と主張した。バイデン大統領は来週インドネシアで行われるG20サミットなどアジア歴訪の途中で3時間エジプトに立ち寄った格好である。当初は参加を予定していなかったが中国やロシアのトップが参加しない中、自らが参加して世界の気候変動対応をリードする姿勢を示した。
来週、中国の習近平国家主席と初の対面での面談を行う前に、スピーチで途上国の石炭火力へのファイナンス支援を批判し、再生可能エネルギー化に尽力すべきとのプレッシャーもかけた。昨年のCOP26ではトランプ前政権の気候変動問題への無関心から一転し、米国として対応努力をコミットしたバイデン大統領を歓迎する雰囲気にあふれていた。それが今回は気候変動の犠牲となっている被災国を中心に米国を中心とした先進国の不作為への強い批判の高まりからかなり辛辣でとげとげしい場となっている。バイデン大統領は昨年110億ドルの途上国支援予算を約束したものの、議会との間で予算が取れていないとの説明に終始。
今年法制化されたインフレ削減法の中で3,690億ドルもの予算がクリーンエネルギー化に注ぎ込まれ、それが世界に浸透すると伝えたものの、今年のCOP向けの新たな政策としては石油ガス会社によるメタンガス排出の管理を強化させ、連邦政府と契約する企業にパリ協定と整合の取れた排出削減を求めるという方針を示した程度。また、途上国でのクリーンエネルギープロジェクトに必要な資金を2030年までに1千億ドル以上を民間から募ることを提案。
ただ、これらの米側の提案は途上国側からは懐疑的に見られ、むしろ先進国はロシアのウクライナ侵攻で巨額の臨時収益を得たエネルギー企業に課税し、その税収を気候変動の被災国に提供すべきとの声が強まっている。グテレス国連事務総長もその案を支持している。これに対し、バイデン大統領も政権関係者も沈黙を保っている。損害賠償請求訴訟が日常茶飯のアメリカにおいて、一旦この手の損害補填の支払いを認めると、過去の米国の排出に伴う損害賠償請求額は数兆ドルにも上るとの懸念もあるようでアメリカとしてはあくまで自らの削減努力と途上国のクリーンエネルギー化支援に焦点を当て続ける必要があるようである。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国
l 双十節で民主主義国家の自覚と防衛を呼びかけた蔡英文総統
台湾の与党・民進党の党主席(党首)を兼務する蔡英文総統は党会合に出席し、蔡総統は、中国の権威主義、専制主義の拡張を前にして、「我々台湾が備えを万全にすればするほど、北京が攻めてくる可能性は低くなる」として、党員はもとより国民に対して挙国一致団結を呼び掛けた。蔡総統は、中国の中国共産党第20回党大会が行われたことに触れて、「中国とは違い、台湾は民主主義国家である。市民一人一人が清き一票で自分たちの未来を決めることが出来る。台湾の自由は天から降ってきたものではない。気を抜いたら全てを失ってしまう」と警鐘を鳴らした。更に、「世界民主主義運動世界総会」が台湾で行われたことに言及し、「世界が民主主義の台湾を支持していることを示している。民主主義を守ることが台湾の与党・民主進歩党としての使命でもある」
とコメントしている。
l 農村のインフラ投資を加速させる中国
中国政府・農業農村部は、農村のインフラ投資を加速させる計画を発表した。経済を安定させると共に、食料供給能力を高めることが狙いとされている。中国経済は、新型コロナウイルス抑制策や不動産市場低迷を背景に減速しているが、今回発表された計画には、灌漑システムの改修、貯水池の補強、温室や漁業の近代化、低温貯蔵施設建設などが含まれ、農村問題を解決する中国政府の意思が示されている。そして、可能な限り早期の開始を促すと共に、地方政府にこれらのプロジェクトを支援するよう要請もしている。同部は、「農業と農村のインフラ整備強化は有効な投資を拡大し、経済市場全体を安定させる上で重要な課題である」としている。
l 台湾、TSMCの海外での工場建設への懸念
台湾議会・立法院が主催したフォーラムで、台湾最大野党・国民党の江議員は、「台湾の護国神山・国を守る神霊的な山と見られている台湾積体電路製造・TSMCが米国や日本、ドイツなどにファウンドリ(半導体委託生産)工場建設を推進することは台湾としての国家安保にはマイナスとなるのではないか」との議論を展開した。世界ファウンドリ市場シェアで53%を占めるTSMCは生産工場12カ所のうち9カ所を台湾に置いているが、最近、米国・アリゾナ州、日本・熊本県に大規模工場を建設中であり、ドイツでも工場建設の為の土地を探していると見られており、台湾国内では、こうした状況に関して、「中国と緊張関係にある台湾にとって、台湾の中核企業であるTSMCの生産基地が今後更に海外に移っていくと米国の保護を受けられなくなる可能性があると憂慮される」と見られている。こうした一方、TSMC傘下で、8インチウェーハのファウンドリの中核企業の一つである世界先進積体電路は、グローバル・カンファレンスを開催し、端末需要の減少、顧客の継続的な在庫調整、設備稼働率の低下に対応する必要があるとして、本年の設備投資額を当初計画の230億ニュー台湾ドルから210億ニュー台湾ドルに規模縮小し、かつ、来年もウェーハ関連5工場の生産能力を減速させ、設備投資も引き続き抑制していくとしている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 韓国によるポーランドへの多連装ロケットシステム輸出契約締結
韓国は、国家防衛力強化と外貨獲得が同時に可能となる防衛産業の、産官学金融による発展を推進している。こうした中、韓国政府・防衛事業庁は、防衛産業大手のハンファエアロスペースがポーランド当局と韓国製の多連装ロケットシステム(MLRS)「天舞」を供給する35億5,000万米ドル規模の1回目の履行契約を締結したと発表している。これにより、韓国の今年の防衛産業における輸出受注額が170億米ドルとなり、年間受注額の過去最高を更新している。同社はポーランド側と288基の天舞を供給する契約を交わしており、今回の契約では、このうち約200基が引き渡されることになる。また、韓国の防衛産業に於ける輸出受注額は2020年まで年平均30億米ドル程度であったが、2021年は約72億5,000万米ドルに増加しており、今年は、ロシアのウクライナ侵攻により、防衛意識が高まるポーランドとの契約だけでも124億米ドルに達し、前年を2倍以上上回る成果を得ている。
l 韓国原発APR1400ポーランドに輸出
韓国の原子力発電所運営会社である韓国水力原子力(韓水原)は、独自技術で建設した原発・「APR1400」をポーランドに輸出するとしている。同原発の輸出は2009年にアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発を受注して以来、約13年ぶりとなる。また、欧州諸国への同原発の輸出はこれが初めてとなる。韓国とポーランドは、ソウル市内でポーランドの原発事業に関する了解覚書(MOU)を締結した。MOUにはポーランドの民間エネルギー企業と国営電力会社PGEが推進する原発事業を韓水原が支援し、韓国とポーランドが定期的に情報を共有しながら協力を拡大するとの内容が盛り込まれている。同事業は韓水原とPGE、ポーランド民間企業の3社がポーランドの首都ワルシャワから西に240キロ離れた場所にAPR1400の技術を基盤とした原発を建設するという内容を骨子となっている。
l ユン政権宇宙航空庁新設へ
ユン・ソクヨル大統領は選挙公約の中に、「宇宙航空庁設立」を入れていたが、10月の政府組織改編案の中からは、その宇宙航空庁新設案が抜けていたことから、当面は、国内の反対意見が強いこともあり、同庁の新設は見送られるのではないかとの見方が出ていた。しかし、ここに来て、宇宙航空庁設立準備の為の大統領訓令が作られ、韓国政府・科学技術情報通信部は国会に対して、同庁設立を企画する推進検討チームの運営の為の新規予算25億9,000万ウォンを要求したとされ、ユン大統領は同庁新設を諦めていないということが確認されている。国会では、野党を中心にして、米国のNASAに類似する組織を韓国政府組織として設立することの意味をあまり感じないとして反対の声が強く、今後、どのような動きとなるのか注視したい。
l イスラエルとの関係を深める韓国
韓国政府・産業通商資源部は、韓国とイスラエルの自由貿易協定(FTA)が12月1日に発効するのを前に、ソウル市内のホテルで広報説明会を開き、FTAの主な内容や活用策、両国の経済協力事例を紹介した。韓国はアジアの国として初めてイスラエルとFTAを締結した。これにより、半導体・電子・通信など先端装備(装置・設備)の輸入先の多角化や企業間の先端技術協力拡大の効果が期待されている。また、FTAの発効と同時に自動車や自動車部品、繊維、化粧品などに対する関税が即時撤廃され、関連輸出が増加すると予想されるとしている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,408.95(前週対比+9,89)
台湾:1米ドル/32.03ニュー台湾ドル(前週対比+-0.00)
日本:1米ドル/147.10円(前週対比-0.83)
中国本土:1米ドル/7.1826人民元(前週対比+0.0504)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,348.43(前週対比+59.65)
台湾(台北加権指数):13,026.71(前週対比+100.34)
日本(日経平均指数):27,199.74(前週対比-145.50)
中国本土(上海B):3,070.796(前週対比+87.893)
4.拙著 『外国人材が中小企業を救う』発売中
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ニュースレター第300号のこと
お陰様で300号を迎えることが出来ました。これも皆さまのご愛顧の賜物と心より御礼申し上げます。実は先週まで軽い脳梗塞で入院しておりまして本号の発出も遅れました。
今後は仕事も少しペースダウンしていこうと思います。 そのためニュースレターの頻度も落ちるかと思いますが引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。皆さまも何卒ご自愛のほどお願い申し上げます。
米山伸郎 拝