ニュースレター国内版 2022年・夏(292号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第292号)
1. 安倍元首相を悼むアメリカ
2. 大胆さを増す共和党内のトランプ推薦候補への対抗馬擁立の動きと返り討ちに遭うペンス前副大統領等の状況
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 
4. 寺島実郎さんメディア出演情報
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1.安倍元首相を悼むアメリカ
ワシントンポストの特集のポイントを一部紹介する。アメリカでは銃で殺される人が30分に一人いるが、日本では2021年通年でわずか1人であり、アメリカの人口が日本の2.6倍あるとしても、この著しい死亡者数の違いは日本の厳しい銃規制にあることは間違いない。  
今年も銃乱射事件で多くの人が亡くなっている米国だが、1963年のケネディ大統領暗殺以降も大統領や元大統領を狙う狙撃行為は1975年のフォード大統領暗殺未遂(弾丸は2発撃たれたが、いずれも外れた)と1981年のレーガン大統領暗殺未遂(外れてリムジンで跳弾したものが大統領に当たり重症なるも一命はとりとめた)以降は目立った動きは生じていない(湾岸戦争後しばらくして大統領職を離れたジョージ・H・ブッシュ元大統領を当時のイラクの大統領のサダム・フセインが暗殺しようとしたが計画が明るみに出て実行されていない)。 
先進国において1920年から1970年までの半世紀で現職か引退後の大統領や首相が暗殺されたケースは13件あり、1971年から今日までの間では7件あった。そして過去20年であればゼロとなっていた。日本に至っては過去80年間、銃による首脳暗殺は皆無であった。こうした統計を探しては提示しながら我々日本人のショックの大きさを察しているが、それ以上にアメリカ人としてのショックもかなり大きかったことが伝わってくる。 
筆者はアメリカと仕事で付き合うようになって40年を超えたが、音信が途絶えていた方も含め、かなり多くのアメリカ人から哀悼のメッセージを頂戴した。彼ら彼女らが日本(人)に対して何かを伝えたいと突き動かすものがあったと拝察した。
以下は筆者の米国駐在時代の知見に基づくものだが、当初2006年の安倍氏自身の第一次政権から2012年の政権奪還に至るまでの6年間で首相が6度交代するという状況に対し、ワシントンポストなどのメディアやシンクタンクからは「1年ごとの回転ドア」、「顔の見えない日本の首相」などと揶揄されていたことを思い出す。
一方、2012年に首相に復職した安倍氏のその後8年弱に及ぶ安定した政権運営で、“回転ドア”の印象がなくなるどころか、アメリカの外交・安全保障の玄人筋はそれまでの日本に対する認識(米国が働きかけ、日本が受け身で動く)を大きく変化させていった。
安保面から見れば安保法制の実現や集団的自衛権行使への解釈の踏み込みなど日本のイニシアティブが目立つかたちで安保関係を主体的に支えていこうとする安倍氏の強い指導力や存在感を米政権は肌で感じていた。それは米政権が2017年にトランプ政権に移行してからも変わらず、安倍氏は外交・地域安全保障の点では「自由で開かれたインド太平洋」の概念を示し、米・印・豪と地域安保の利害を共有するという分かりやすい地図でトランプ政権をリードした。  
そして、安保や外交の玄人でなくとも一般の米国民の多くがメディアを通じ、安倍氏による初の現職米大統領(オバマ)を招いての広島訪問・原爆犠牲者鎮魂の実現と、安倍氏自身によるハワイ真珠湾を訪れての日本政府代表による初の真珠湾攻撃犠牲者鎮魂の実現を目撃している。そこには真珠湾攻撃と広島・長崎の原爆投下という両国においてどこかわずかながらもわだかまりを持つ世代に正面から向き合い、積極的に和解に努めようと努力していた安倍氏の姿勢があった。
それは日本首脳として初の上下両院での演説(アドレス)の機会を得て、アメリカへの想い、感謝を伝えたうえで、互いに過去をひきずらず、未来志向の日米関係のビジョンを共に目指すという姿勢に繋がっている。
これらの安倍氏の姿や言葉がどこまでアメリカ人の心に響いていたかは、その当時は知る由もなかった。日本人である筆者としてはこれを「画期的」と思いつつも、地元アメリカ人は「ワシントンでは良くあるパフォーマンス」と思っていたのだろうとも思っていた。 
が、今回の事件に対するアメリカ人のリアクションは、安倍氏の姿、メッセージがアメリカ人に深く刺さっていたと感じさせるものであった。連邦政府は星条旗を半旗とすることで安倍氏の逝去を悼んだ。
2.大胆さを増す共和党内のトランプ推薦候補への対抗馬擁立の動きと返り討ちに遭うペンス前副大統領等の状況
中間選挙における上下両院改選議員はもとより、今年予定される州知事選の共和党候補の地位を得るための予備選を前に、トランプ前政権の主要幹部や知事がトランプ前大統領の発言を批判したり、彼が推す候補に対抗する別の共和党候補者を擁立乃至支持している様子をこれまでのニュースレターでもお伝えしてきた。現在トランプの怒りを買っているのがマイク・ペンス前副大統領、ジョージア州知事のブライアン・ケンプ、そしてアリゾナ州知事のダグ・デューシィである。トランプとの対立の最大のポイントは、「2020年の大統領選挙に不正があり、選挙結果はトランプの勝利である」というトランプの主張を認めるかどうか。
従い、中間選挙や直近の知事選に向けてはトランプの主張を認める共和党の立候補希望者の中からトランプが厳選して推すというトランプ陣営の動きに対し、ペンス等は、2020年の大統領選挙に不正があったとは認めないものの、共和党としての伝統的価値観を具現化し、民主党候補に勝利できる候補を支持するとしている。
今年予定されるアリゾナ州知事選には再選禁止規定で立候補できないデューシィ現知事が、トランプが推すカリー・レイク候補に対し、カリー・テイラー・ロブソン候補を推薦し、党内で真っ向から対立する姿勢を取った。 
これが物議をかもしているのは、デューシィ知事がアリゾナ州を代表するのみならず全米の共和党州知事協会の会長を務める要職にあるため。さすがに同協会会長の立場でロブソン候補を推してはいないものの、同協会への政治資金提供者に対してロブソン候補の支援を依頼しているという。 
また、トランプが推すレイク候補のような極端な志向の候補者を排除しようとするマイク・ペンスも別途ロブソン候補を支持する可能性もあり、そうなるとトランプ陣営との対立構図が際立つ。
8月2日に予定される共和党予備選に向けて、当初はレイク候補が世論調査でトップを走っていたものの、最近はロブソン候補が追い上げ、予断を許さない状況にある。仮にロブソン候補が勝てば、トランプ陣営にとって大きな痛手となりかねないという。既報の通り、2か月前のジョージア州知事予備選でペンスはケンプを推し、ケンプはトランプが支援したデイビッド・パデュー元上院議員に74%対22%の得票率の差で勝利した。 
そしてそのケンプは下院議員の決選投票でトランプが推すバーノン・ジョーンズ候補に対抗するマイク・コリンズ候補を支援し、コリンズがジョーンズに約50ポイントもの差をつけて勝利している。ネブラスカ州でも同様の状況が起きている。トランプの推薦のカウントの仕方にもよるが、これまでに10件の予備選でトランプが推す候補は敗退している。  
それではこれらがトランプ自身の人気度の下降を示しているのかといえばそうではないようで、実際は共和党支持層における支持率を下げているのはペンス前副大統領の方であり、ペンスの2024年出馬の可能性に危険信号が灯っている。共和党の支持層の多くは、連邦議員や知事には真っ当な人材を望むものの、大統領にはいまだにトランプかトランプ的な人材を望むという複雑な心情を有するのであろうか。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1)  中国
*  民主主義へのこだわりを本土との差別化とする台湾の蔡英文総統
台湾の与党、民進党主席を兼務する蔡英文総統は、ブルガリア・ソフィアで開催された自由主義政党の国際組織である自由主義インターナショナルの総会にビデオメッセージを送り、「台湾は国際社会との連携を強化し、民主的で自由な世界秩序を共同で守る準備ができている」ことを強調している。
蔡総統は、同党が数十年にわたって台湾民主化の最前線で、「民主主義を守り、権威主義体制に対抗してきたと強調し、近年は、台湾が勝ち取ってきた民主的な生活を破壊しようとする、中国本土の脅威が日増しに高まる中にあっても、台湾人は更に力強く戦っている。
また台湾は、権威主義に対抗した経験を分かち合う考えがある。新型コロナウイルスの感染拡大初期に、世界各地の友人に向けてマスクや医療物資を提供し、自由主義者として、台湾は更に多くのことが出来、またすべきであると信じている」と強調している。
*  中国の消費者物価と工業製品卸売物価の動向
中国政府・国家統計局が発表した本年6月の中国の消費者物価指数(CPI)は、前年同月対比2.5%上昇している。伸び率は前月から0.4%ポイント拡大し、2020年7月以来、1年11カ月ぶりの水準を記録している。ロシアのウクライナ侵攻を背景とした国際的なエネルギー価格の高騰が影響したと分析されている。そして、国家統計局によると、燃料ではガソリンと軽油が3割超の上昇だったとも報告されている。
一方、上海市のロックダウン(都市封鎖)解除など中国国内で新型コロナウイルス対策が緩和されたことを受けて、航空券は28.1%上昇している。中国人の食卓に欠かせない豚肉の下落率が急速に縮小したことも響いたと分析されている。一方、統計局が同時に発表した6月の工業品卸売物価指数(PPI)は前年同月対比6.1%上昇、その上昇率は前月から0.3%下がり、8カ月連続で縮小してい
る。国家統計局は、コロナ禍からの生産再開が進み、主要なサプライチェーンの安定化が進んでいるとも分析している。
(2)  韓国/北朝鮮
*  韓国の6月の消費者物価指数前年同期比6%上昇
韓国政府・統計庁は、本年6月の韓国の消費者物価指数が前年同月に比べて6.0%上昇したと発表している。6%台の上昇は韓国にとっては、23年7カ月ぶりとなり、世界的なインフレが韓国でも顕在化した形である。特に、豚肉、鶏肉、白菜などの食材からガソリン、電気代、ガス代まで幅広い、庶民生活関連品目で物価高が加速しており、その一方で、賃金があまり増えていない国民、特に低所得の国民からは不満が出てくる可能性が高まっている。
*  仁川国際空港の夏の予想利用者数は前年同期比9倍増を見込む
韓国の主要な国際空港である仁川国際空港公社は、7月22日から8月10日までの20日間の空港需要を予測した結果、前年同期(19万人)対比約9倍の171万
人と集計されたと発表している。期間中の1日平均予想旅客数は、前年同期対比747%増の約8万5,000人となっている。8月7日(日曜日)が9万8352人でピークとなる見通しともなっている。航空機の運航便数も前年同期対比約7倍増の8,071便と推算され、1日平均で404便が運航される計算となっている。
[主要経済指標]
1.    対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,294.68(前週対比+3.99)
台湾:1米ドル/29.75ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)
日本:1米ドル/136.08円(前週対比-0.90)
中国本土:1米ドル/6.6945人民元(前週対比+0.0055)
2.      株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,350.61(前週対比+45.19)
台湾(台北加権指数):14,464.53(前週対比+121.45)
日本(日経平均指数):26,517.19(前週対比+581.57)
中国本土(上海B):3,356.078(前週対比-31.559)
4.寺島実郎さんメディア出演情報
寺島実郎さんのメディア出演情報を入手したので共有させていただきます。
●TOKYO MX1「寺島実郎の世界を知る力」
【第3日曜日】第22回放送:7月17日(日)午前11時~
番組前半では、「民主主義とは何か」をテーマに、英国・ジョンソン首相の辞任、安倍元首相銃撃事件、そして先日の参院選を踏まえ、民主主義の本質や向き合うべき現代の大衆民主主義の課題や試練について、考察を深めます。後半では、「プーチンはロシア史を歪めている―ロシア史の深層」をテーマに、ーチン大統領が「ロシアの日」の演説で持ち出したロマノフ王朝・ピョートル大帝に焦点を当て、18~19世紀におけるロシアと日本の関係について、寺島独自の視点から深掘りします。
【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第16回放送:7月24日(日)午前11時~
<ゲスト>:加藤登紀子氏(歌手)
今回は、ゲストに加藤登紀子氏をお迎えし、「今、そして未来への思いを歌い続ける歌手・加藤登紀子との対話」をテーマに対談致しました。満州引揚げから1966年のデビュー、世界が新旧の価値観の間で揺れ動いていた1968年に訪れたソ連での体験等、戦後日本の歩みと加藤氏自身の体験・活動とを重ねながら、加藤氏の原点を寺島との対談を通じて振り返ります。さらに、故・中村哲医師の医療活動を支援する「ペシャワール会」への活動支援や、直近ではウクライナ戦争の悲劇を目の当たりにし、チャリティ・アルバム「果てなき大地の上に」を制作するなど、
常に「時代」と向き合い、不条理に対するメッセージを発信し続けている加藤氏に、寺島が迫ります。寺島の一人語りの第3日曜日と対談篇の第4日曜日は、「全体知への接近」をテーマに、本当のことを知り、考える情報番組として、日本国内・海外在住の幅広い年代層の方々にご視聴いただいております。熱心に番組をフォローして下さっている視聴者が大変多く、これまで放送された全36回のYouTube視聴総数が、7月8日に600万回を超えました。